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「待たせたな。ヤリマン甘えたがり魔王が呼び声に応え参上したぞ」


 今日の召喚嬢は大当たりだ。セットは下着の中でちんぽが硬くなるのを感じた。

 召喚式によって発した桃色の煙を手で払いつつ、呼び出された召喚嬢――自称ヤリマン甘えたがり魔王は顔をしかめさせた。

 

「汚らしい部屋だな。このような場所に我を呼びつけるとは、礼儀がなっておらん」

「どんな部屋でも恰好でも呼びつけてヤれるのが召喚嬢のいいとこだろ?わざわざ掃除するぐらいならナンパでもするよ」

「ふん、口が達者な男だ。まあ良いぞ、雄とは粗野で下品なぐらいが良い」   

 召喚嬢とはインキュバス店のデリバリーサビス版だ。魔法陣で召喚することもあれば念話で呼び出して移動は徒歩の安価版もある。店で嬢を選ぶのと違って外見は分からない。チェンジも可能だがやり過ぎるとトラブルにもなる。

 もっとも今回はチェンジする必要は無い、とセットは顔をにやけさせた。目の前の自称魔王は実に美味しそうだったのだ。

 

「ふふふ、我に欲情しているな。よいぞ、ヒトの仔はそうして我に浅ましい視線を向けておればよい」


 ふしだらな目つきが心地良いとばかりに自称魔王は喉を鳴らす。

 その外見は一言で表すならば雄々しい黒竜。全身から無駄な脂肪を削ぎ落し、代わりに筋肉をこれでもかと盛り付けて。関節はくっきりと搾っているくせに四肢も大胸筋も大臀筋もこれでもかとばかり膨れている。抱きついてみたら手が回りきるかも疑わしい。

 

「どうだ?現世では我のような美しい雄に出会えぬだろう。しっかりと魂に刻んでおくがよいぞ。そして、褒めよ!」


 そして、黒竜は美しかった。

 真っ赤なビキニだけを身に着けた身体は筋肉の逞しさが全て見ることができる。

筋肉とは男らしさの象徴であるはずなのに、精巧に彫りこまれた彫刻のような美を感じた。黒真珠のように艶やかな鱗も、筋肉の凸凹も、深い紫の瞳も、何もかもが輝いて見えた。

 

「さあ、来い。我が肢体を讃え、貪りつくが良い」

 

 だから拡げられた腕の中に飛び込んでしまうのも当然と言えた。迷宮で見つけた宝石なんかごみに思える雄へと抱きついて、不遜に突き出した大胸筋に頬ずりをする。

 

「うへへへぇ。雄っぱいでっけぇ~~」

「そうであろう。このような巨乳、我でなければ持ちえぬぞ。もっと褒めながら揉むのだ」


 雄々しい肉体に相応しくサイズも化物じみており、空気でも詰め込んだのかと思うほどのボリューム感があった。乳首に引っかけるように身に着けたビキニはぎちぎちと食い込み、首にかけたアクセサリは谷間の中にすっぽり隠れてしまっている。

 

「貴様の知っているどの雄っぱいよりも素晴らしいであろう?ん?」

「ど、どうだろ。デカさならもっとすごいのが……」

「愚か者め。大きさではなく形や触り心地にも目を向けよ。それ、もっと頬ずりをしろ!我の雄っぱいが一番好きだと言え!」


 セットを身体の中に呑み込んでしまいかねない力強さで抱きしめて、そのまま雄っぱいへとぐりぐり顔面を押し付ける。真っ黒な鱗とは対照的な白磁の肌は雪のように清らかで、肌を触れ合わせてみるとしっとりと吸い付いて来る。

 加えて、顔を受け止める雄っぱいの柔らかさ。押し込んでみるとどこまでも沈み込むくせに、力を緩めると勢いよく押し返してくるではないか。

 そんな魅惑的な肉塊に顔を埋めていると、自己主張の強い香りが脳を犯そうと侵入してくる。香水は違う、きつく雄臭い竜の体臭。触覚と嗅覚で雄っぱいを味わっているとセットの顔がだらしなく崩れてくる。

 

「良い顔だとヒトの仔よ。そろそろ頬ずりではなく揉んでも、んっ❤まだ許可を出しておらぬぞ❤❤うぁ❤」

「悪いなぁ。これでもトレジャーハンターだからな。手が早くなきゃつとまらねえんだ」

「はぁ❤仕方のない雄め❤好きにさせてやる❤❤だが、我をいっぱい可愛がるのだぞ❤」

「どうかな、そんな余裕無いかも」


 金のやり取りで交尾をするインキュバスボーイであろうとも、互いに満足して楽しみたいのがセットの性分だ。といってもこの下品で優美な肢体を前にしては理性を保つ自信が無かった。欲望のままに、肉体をしゃぶり尽くしたい。

 衝動に任せて手のひらで大胸筋を掴み上げた。といっても手のひらでは到底掴み切れない。獣人種の大胸筋ともなれば素晴らしいサイズがデフォルトだがこの竜は特にでかい。

 

「おっほ、むちむちじゃねえか。柔らかくも硬くもなくって、なんだこりゃぁ」

「これが雄っぱいというものであるぞぉ❤おおぉん❤❤も、もう他の雌の乳では物足りなくなるぞ❤」


 手のひらが吸い付き、汗を滲ませた大胸筋が力を込めるとたやすく形を崩れさせる。指の隙間から、絹の肌を張り詰めて肉のスライムがくびり出された。以前抱いた牛のインキュバスボーイよりは小さい、けれどもそこらの雄では相手にならない爆乳。椰子の木の実を相手にしているような迫力と重さで、セットの手へずっしりした重さを伝えてくる。

 

「くうぅぅ❤も、もっと強く揉んでもいいのだぞ❤我は頑丈だからな❤貴様の指程度では痛痒など感じぬ❤❤」

「ほー。じゃあちょっと、たぷたぷ揺らしてみたりとか」

「ううううぅん❤❤いいぞ❤力も技巧も使って雄っぱいを可愛がるのだ❤❤」


 いつの間にやら自分が奉仕する側になっているが、それも善しとしてセットは手のひらに乗せた乳肉を揺すった。魔王相手のイメージプレイなんて何度も経験があるし、こうして尊大な態度を取る雄を可愛がってやるのはなかなかにちんぽが昂る。

 小刻みの震えさせていると竜はもどかしげに腰をくねらせているが、乳が波打つぐらいに強く弾ませてみれば「ん゛ひぃ❤」と乳を揺らした数倍の勢いで身体を震えさせた。

 

「なかなかやるではないか❤❤我も少しは興が乗ってきたぞ❤」

「おれも盛り上がってきたぞ。こっち来いよ」

 

 ベッドに腰掛けて誘うと竜は淫らな顔で抱きついてきた。太ももの上に跨り、雄っぱいで圧迫しながら全身を擦りつける。きわどいビキニに包まれていたちんぽはそそり勃ち、雄臭い粘液でセットの身体を汚していく。

 筋肉の塊は腰をくねらせて踊り、もっと雄っぱいを愛して欲しいとおねだりをしている。

 

 双乳で顔を挟み込まれつつ両手で背中を撫で回すと陶酔とした吐息が髪の毛にかかった。撫でる手を上下させて背筋の起伏をくすぐり、やがて張り詰めた大臀筋を鷲掴みにすると竜は身体を震わせた。

 

「だ、駄目だ❤❤まだ、そこはぁ❤」

「なんだよ、こんなデカケツしてるくせに恥ずかしがってんのか?」

「愚か者め❤我を相手にしているのだぞ❤❤すぐにマンコを使う前にぃ❤前戯で楽しむべきであろう❤❤クンニも手マンもフェラもしないなどそれでもちんぽが付いておるのか❤」


 生意気な物言いだが正しいとセットはケツ肉を揉み込んだ。大胸筋も極上だが尻肉の方は更に肉が詰ってはちきれてしまいそうだ。今まで揉んだ尻の中でも最上位に入るレベルのデカケツである。まだマンコに触れていないが尻に相応しい蕩けたマンコをしていると確信できる。

 加えて、ケツ肉だけではなく全身がどうしようもなく淫らだ。大臀筋から太ももへ指を滑らせると筋肉の豊かな量感と鱗の滑らかさを感じ、いつまでも撫でていたくなる。

 

「言ってくれるじゃねえか。ちんぽぶちこむ前に泣き入れるんじゃねえぞ自称魔王」

「ふん❤貴様こそハメる前にザーメンを漏らすでないぞ❤❤濃厚ザーメンはぜんぶ我の中に出すのだから――おんっ❤」

「おーいい感度してんじゃん。乳首も立派じゃねえか魔王様」


 ならばマンコを犯す前に全身隅々楽しませて貰おう。手始めにいじってやるのは目の前で勃起していた雌突起。豪快に突き出た大胸筋から更に尊大に尖っているデカい乳首をぐりぐりと捏ね繰り回してやった。

 

 真っ白な肌と黒い鱗とも違う、淫らな緋色をした乳首。使い込んでいるのだと一目で分かる雌の肉は突起のでかさもさることながら、乳輪も楕円状にぽってりと拡がっていた。そいつを乳肉ごとつまんで、ひっぱってやると竜ちんぽから出る汁が増えた。

 

「はひぃい❤おっ❤❤」

「こんだけ乳首が感じるなんてさすがは魔王様だな?乳首だけでイけるんだよな?」

「と、当然であろうぅ❤乳首だけでメスイキザーメン漏らすなど、造作も無いわぁ❤❤」


 指の間で突起物を転がしつつ、押しつぶすようにに挟み込んでみる。硬く尖った乳首は半端な力では意味がないから、乱暴なくらいに。普通の女にすれば痛みを覚えるぐらいの力だが黒竜はもどかしそうに太ももを痙攣させ、断続的に呼気を漏らす。

 

 でかいケツ肉が太ももの上で踊り出すと、すぐにズボンに生暖かい感覚が拡がった。ケツから垂れ流される愛液なのか、それともスリットからのものか。確かめようにも乳肉で視界を塞がれては分からない。

 

「もうスケベ汁漏らしてんじゃねえか。ちょっと乳首弱すぎじゃねえか?」

「愚か者めぇ❤❤貴様が下手くそだからまだこの程度で、お゛おぉ❤❤❤すんで、いるのだぞぉ❤」


 この程度では物足りないのだと挑発し、魔王は腰をくねらせた。言葉の上ではまだ強気だが、舌肉をはみださせたその顔は惰弱な雌野郎のそれだ。肌をじっとりと濡らす汗と生暖かい吐息。発情を抑えられない身体は体臭を更にきつくしていた。この痴態を指摘してやってもこの魔王は悦ぶだけなのだろうなとセットは口端を吊り上げた。

 

 強気な雄も淫売な雄も、乳と尻のでかい雄も大好物。ついでに言えば、つるつるとした鱗も。この魔王はセットの嗜好にこの上なく合致していた。ここまでの大当たりを引けるなんて早々無い。最高の獲物を前に唾液が口の中に溜まるのを感じた。

 

「ん゛う゛お゛おおおぉっ❤❤❤乳首、乳首たまらぬぞおぉおぉ❤❤強くぅ❤母親の乳を求めるように吸うのだ、もっどおぉおぉ❤❤」


 口に溜めた唾液に浸すように乳首を咥えた。口唇で感じる乳首は恐ろしく熱く、硬く、咥えただけで嬌声が上がるほどに敏感だった。

 唇でデカ乳首を挟み込んだまま、緩慢に口を拡げて行った。指でつまむのが実に楽である巨大な乳輪を唇で擦り、次に唾液のぬらつきで愛撫しつつ舌でもべろべろ舐め回す。

 すると竜人はまたも両腕でセットを抱きすくめ下半身の摩擦を激しくする。ちんぽ汁と雌の汁の匂いが汗臭と混ざり合う。

 

「あっあっ❤たまらん❤❤もっと我のデカ乳首吸ってぐれええぇ❤マンコクパクパするうぅ❤❤乳首しゃぶられてマンコがおちんぽ欲しがってるのおぉ❤❤❤」


 ズジュルルルッ!耳を塞ぎたくなる下品な音と竜の嬌声が響き合うのを聞きながら、乳輪と一緒に勃起乳首を吸い上げる。

 腹に押し付けられるちんぽからはどくどくと汁が流れ、快楽を得ているのだとアピールしていた。それに対する褒章代わりに乳首への吸い付きを強くしてやった。舌肉を絡みつかせてぬるぬるしごき、唇に挟み込んだまま左右に摩擦する。溢れる唾液を乳首ごとすすり、甘く歯を立てて愛撫もした。乳首は加減をして、乳首周りの肉は歯型が残るぐらい強く。

 

「いいぞ❤❤多少はまともな愛撫ができるではないかぁ❤❤❤そうだっ❤もっと我のマゾ乳首を愛するのだあぁ❤❤」

「うむ゛おっ!?」


 思わず悲鳴が出る強さで抱きしめられる。ただでさえ太い両腕に血管が浮かび猛々しく隆起する。目の前の獲物を決して逃がすまいと竜爪が頭へと食い込んでいた。


「おい、ちょっと強すぎ、うぐっ」

「噛んでえええぇ❤❤我のマゾ乳首いぃい❤❤❤もっと、強くしゃぶっでえぇぇ❤❤キメちゃうぅ❤乳首アクメキメるうぅうぅうぅ❤❤」


 力を弱めろとは到底言えなかった。

 竜族の屈強な脚はつま先をよじらせ、つっぱらせて快楽に酔っている。男として、目の前でよがっている雌への愛撫を止めるなんてできるわけがない。奉仕することも忘れた痴態の竜を、屈服させてやらないと気が済まない。

 

「しょうが、ねえなっ!一発イかせて頭冷ましてやるよ!」

「ん゛ぎいぃいいぃいいいぃぃぃ❤❤❤」


 歯でぎりぎりと引っ張られ雄々しい背筋が弧を描く。そんなことをすれば猶更に乳首が引っ張られてしまうのだが、身体は快楽という電流に抗えない。天井を向いた両眼がどこか虚ろであり、すぐにでも消え失せてしまいそうな儚さがあえう。刃すら通らなそうな肉体を持つこの竜は乳首を愛撫されて意識を飛ばしかけていた。必死に息を取り込もうと口を開け放ち、舌をぴんと突き出している。

 

「のお゛ぉおぉお❤❤乳首千切れるうぅぅ❤やっべぇ❤❤乳首、一人でデカ乳首シコるよりもぉ❤マゾ雌突起しゃぶられる方がずっといいのぉおおぉぉおぉぉ❤❤❤」


 どれだけ強く噛んでも淫乱竜は快楽へと変換していた。片方だけを責めるのではなく、もう片方の乳首も指先で乳首を押し込んで、乳首を捏ね潰していた。綺麗な楕円形をしていた雄っぱいが凹んだかと思うと筋肉の力で跳ね返り、心地よい感触を伝える。

 

「も、もういぐっ❤❤くるくる来るっ❤マゾ魔王は乳首アクメきめちゃうぅうぅ~~~っ❤❤❤」


 乳首を伸ばし、押し込んでいるとすぐに竜の限界が訪れた。全身の血管がぼこぼこと浮かび上がると同時に汗の玉粒が量を増した。暴走する欲望によって筋肉が強張り、黒光りする肉体をメスイキする為の道具へと貶める。筋繊維と神経全てが乳首へと集中し、絶頂を甘受する。

 

「あ゛❤あ、あ゛あぁああぁぁぁ❤❤❤いっぐぅうぅうぅぅぅぅ❤❤」


 唾液を撒き散らして、魔王は果てた。唾液だけではなく全身の穴という穴から汁を飛ばして。涙と鼻水で顔を化粧し、涎を大胸筋まで垂らす無様な巨竜。

 

「お゛おおおぉっ❤❤❤ん゛おぉおぉおぉ❤」


 セットの上で何度も跳ねながら下半身も汁まみれにしていた。ビキニは汁をたっぷり吸いこんで亀頭へと張り付き、ちんぽの全てを露わにしている。我慢汁以外にも愛液塗れになり、性臭を放つ汚物となり果てた下着は今もなお淫液をぶちまけられていた。

 

「すっげぇ汁だな。どんだけ溜まってんだよお前」

「ほおぉーーっ❤❤おおぉ❤だ、だってぇ❤❤乳首アクメ、久しぶりすぎでえぇ❤」


 失神しかけのイキ顔で言うあたり、リップサービスではなく真実かもなとセットの顔がにやけた。デカケツに跨られていた足は痺れている上に雌臭い汁だらけだが、それも許せる淫らさをこの竜は提供してくれた。まだ乳首を虐めてやっただけなのに、ちんぽはズボンを突き破りそうなほど硬くなっている。

 

「ほっ❤ひぃいぃ❤❤なんだ、こんなにちんぽを硬くしおって❤こらえ性の無いちんぽめ❤❤もう出したくなったのか❤」

「こんだけドスケベに踊って貰っちゃったらなぁ。ちょっと上澄み一発口マンコに出させてくれよ」

「んふ❤仕方がないなぁ❤❤魔王のフェラ技に負けぬよう気張れよ❤本当ならぜんぶケツマンコに特濃種付けさせたいのだからな❤❤❤」

 

 下品に舌をちらつかせ、顔の脂を舐め取り始めた。セットの顔はすぐに唾液でべとべとになるが、決して不快ではなかった。飼い犬が主人に親愛を示すような、畜生がつがいをいたわるような混ざりけのない好意であると分かるからだろうか。

 舌を絡ませる代わりに全身の筋肉を揉み解してやった。ただし筋肉を慰撫するのではなく、メスイキで鎮静した欲望をまた滾らせようとするいやらしい手つきだ。

 

「くはぁ❤いいぞ❤❤もっと我を可愛がれ❤全身撫でろ❤我を大好きと言うのだ❤❤」

「なんだよ、ノリノリじゃねえか。そんなに溜まってんのか?」

「当たり前であろう❤ヒトの仔とまぐわうなど数十年ぶりなのだ❤❤はぁ❤ぬくもりと情欲のなんと心地良いことか❤」


 随分と設定を凝ってるな、と思ったが何も言わないで乗っておくことにした。嫌いなシチュではないし、魔王の演技は真に迫っていたからだ。ここで止めるのはあまりに無粋というものだろう。

 

「なぁ❤❤貴様のちんぽを丹念にしゃぶってやるから、上手くできたら頭を撫でるのだ❤❤❤他のどの雌よりも我の口マンコが一番だと褒めながらな❤」

「いいぜ、いっぱい褒めてやるから頑張って舌働かせてくれよ」


 乳首でイキ狂った顔もたまらなかったがフェラをする時はどれだけ下品なのだろうか。想像しただけで口に唾液が溢れ出る。フェラチオをする時はどんな褒め言葉をかけてやる言葉を今からいくつも頭に浮かべていた。

 

「ああ、久方ぶりの雄がこうも猛々しいちんぽを持つとは。口惜しいな。今少し楽しみたかったぞ」


 しかし、淫らな妄想をかき消すような言葉が魔王の口から零れ落ちた。その言葉は悔しそうな、悲しそうな、何かを諦めているような色が滲んでいた。

 何を、とセットは竜を見つめ返していた。さきほどまで、自分のちんぽを美味そうに見つめていたのに今は床に視線を落としている。

 

「すまぬ。我のフェラ技でむせび泣かせてやりたかったのだが、すまぬな」

「なんだよ、今更辞めるなんて言わねえだろうな」

「我も貴様と離れるのは寂しい。が、こればかりはどうしようもないのだ」


 色欲に蕩けていた顔は代わりに寂寥で静まって。今にも消えてしまいそうな儚ささえあった。

 理解が追い付かず、セットは手を伸ばす。分からないがこのままでは目の前の竜がするりと消えてしまいそうな気がして。

 

「何、言って」

「すまぬ。また縁が交わるのを祈っておるぞ。その時は貴様の名を聞かせて欲しい」


 伸ばした手が触れる前に視界が揺らぐ。指先が水面に触れたように波紋が広がり、風景かかき混ぜられる。それでも、竜の手を握ろうとして――

 

「待ってくれ!まだ一発も出してないのに時間切れとか無しだろ!」


 毛布を跳ねのけて飛び起きると、そこに竜はいなかった。

 

「へ、あれ?」


 視界に拡がるのは自分のいた部屋ではなくほの暗い洞窟の中。手が触れるのは柔らかなベッドではなく硬い岩肌。自分を見つめるのは竜ではなく、あきれ顔をした仲間たち。

 

「何言ってんの?精液が金玉に溜まり過ぎてイカれちゃったのかな?」

「フヨウ殿、そのような罵倒をしては可愛そうですよ。性欲を発散してないせいで人間性に影響が出たのでしょう」


 ふりふりのフリルとリボンを付けたエルフと、聖職者然とした恰好の黒山羊がそう言って憐れみの視線を投げる。焚火を囲んで、どうやら見張りの途中のようだった。

 

 見張り、そうだ。自分は冒険の真っ最中だ。先に仮眠を取った二人と交代して。宿屋で召喚嬢なんて呼べるわけがない。夢から覚め切れていない脳が、ゆっくりと現実の形を捉え始める。

 

「ふわぁ、どうしたんすか?もう、出発の時間すか?」

「まだ時間あるかなー、たぶん。馬鹿のセットがエロい夢見て飛び起きちゃっただけ」

「あー、そうなんすか。でも目が覚めちゃったし起きようかな」


 もう一人の仲間――赤い鱗の蜥蜴があくびをしながら身を起こした。申し訳ないことをしたなと思いつつ、自分の手のひらを何度も握りしめては開く。まだ手のひらに残っている鱗の感触。筋肉から伝わった熱の残滓を思い起こしながら。

 

「あれ、夢だったのか……?」

「ぼーっとしちゃって。ヒト族っておじさんくらいの年齢でも夢精とかするわけ?」

「夢精はしてねえ!おじさんでもねえ!」

「セット殿。夢精は生理的な現象ですので恥ずかしがらなくともいいのですよ?」

「だからしてねえ!ああ、クソ。もういいから行こうぜ。溜まってるからあんな夢見るんだよ」


 苛立ちを隠すように毛布を引っぺがし、荷物鞄の中へと詰め込んだ。ついでに、まだ勃ちっぱなしの股間も隠しつつ。鞄の近くに置いてあった短剣や小弓も身に着けて、インキュバスボーイに盛っていた猿から熟練に冒険者へと戻る。

 

「まあまあ、焦らないで朝ご飯ぐらい食べようよ。固形食のスープ作るけど、リーバルも食べるよね?」

「いただくっす。あ、乾パンも食べますか?」

「朝飯なんかいいだろ。とっとと行こうぜ」

「そう焦らずとも今晩中には目的地に到着しますよ。目的地に着いたはいいものの、足腰立たないなんて嫌でしょう?」


 だからしっかり休息は取りましょう、と差し出された干し肉をセットは黙ってかじった。保存用に加工された硬い肉は夢で出会った竜の身体とは違う塩っ辛さがあった。

 なかなか噛み切れない肉を咀嚼して、焦りと一緒に飲み込んだ。自分が何故こんなところにいるのか思い出す。

 

「……そうだな。おれたちには大事な目的があるんだ」


 何故幾日も日の差さない洞窟を歩んでいるのか。

 何故粗末な携帯食と野宿の旅を続けているのか。

 何故幾日も禁欲をしているのか。それは――


「それは、海の向こうにある高級インキュバス店で死ぬほど楽しむためだ!」


***


 この旅の始まりは、一週間前のことだった。


「ね、たまには遠出してみない?」


 フヨウが話を切り出した時は、ちょうど夕飯時。依頼や旅支度を終えた冒険者たちが酒場で腹を満たし、酒をかっくらい、夜遊びのための力を蓄える時間。セットたちのパーティも近場で魔物退治をしてきたばかりであり、報奨金で注文した酒や料理をテーブルに並べていた。


「遠出とは、どこに行く気じゃ?魔法都市あたりか?」

「もっと遠くがいいかなー。魔法都市は遠いっていっても馬車や馬を使えばすぐだしさ」

「もっと遠いってなると……どこらへんになるんすか?」

「山脈を超えるか、海を越えるか、いずれにせよ冒険の類になりますね」


 実行するには金も時間もいります、といってサラダを口に運んだのは鎖帷子とゆったりした法衣を纏った黒山羊。今日の魔物退治でパーティを組んだ癒し手である。

 

「ディック、おれらにそんな金と時間あると思ってんのか?」

「無いでしょうね。セットさんは借金があってもインキュバス店に貢いでしまう方です」

「あのな、おれだってさすがに借金があるのにインキュバス店に行くなんて、無ぇよ、たぶん……」

「そこは言い切ってくださいっす」


 深いため息を吐く蜥蜴にセットは何も言えなかった。昨日だってオキニのインキュバス店に行って授乳手コキプレイや、手作りアイスを雄っぱいの上に落して食べるプレイをしてきたのだ。

 暇や金があったらインキュバス店に行くし、無かったら作り出して行く。宵越しの金なんて獣人のマンコにつぎ込むのが信条である。

 

「ふふーん、そんな脳みそちんぽ野郎に朗報があるんだよね。これを見なさい!」


 どすん、と重たげな音を立ててテーブルに落されたのは巨大な革袋だ。落ちた時の衝撃でテーブルに置かれた皿やコップが音を立てるほどの重量。ついでに、袋の中で鳴る金属音。それだけで自称トレジャーハンダーの目が色めき立った。

 

「おいフレン、これって!」

「お、分かるー?軍資金だよ、これだけあればどーんな高級店でも遊べちゃうでしょ!」


 そう言って袋を開くと中には大量の金貨が詰っていた。依頼を受けて手に入る金とはわけがちがう。これだけの金額があれば5人で一晩中飲み歩いたってお釣りがくるに違いない。

 ランプの光を反射してできる輝きに、同じテーブルの仲間たちだけではなく、周囲の冒険者からも視線が集まった。

 

「どうしたんじゃ、こんな大金。まさか盗みか?」

「フヨウ殿ですし、詐欺の方が似合いそうですが」

「なんでさ!ちゃんとしたお金だよ!きみたち自分で書いた記事忘れてない?」


 びっ!とフヨウが指さした先には冒険者用の掲示板があった。魔物の討伐依頼やパーティ募集の張り紙、そして日々に潤いを与えるような記事が張りつけられる場所だ。

 載せるのは掲載料がかかるが、その代わり記事の写しを求める者がいれば金が貰える。記事を目当てに来るものが増えればそのぶん酒場も賑わうからだ。

 

 そして、セットたちはつい最近記事を書いたばかりである。

 

「オスケモレビュアーズ、でしたか。インキュバス店に皆さんで行った時のレビュー記事」

「そうそう!セットの馬鹿な思いつきでやったんだけど意外にも記事が受けてね。写しを欲しがるやつらがたくさんいたらしいんだよねー」

「そんなにか。キルシュも最近は忙しそうにしてたしなー、良かった良かった」


 すっかり牛の雄っぱいとミルクに惚れ込んだセットは口元をにやけさせる。オキニのいる店が流行るのは嬉しい。自分の書いた記事のおかげならば猶更だ。しかし、フヨウの言葉には釈然としないものがあった。

 

「でも記事の写しでそんな儲かるもんなのか?」

「じゃな。以前装備品についてのコラムを書いたが大して儲からんかったぞ」

「ま、当然の疑問だよね。この金には依頼の前金も含まれてるんだ」


 そして懐から取り出したのは一枚の契約書だ。契約者はフヨウと、ある店の名前だ。その名は階段亭――セットたちが今まさに食事をしているこの店の名前である。

 

「契約の内容についてはオレから話す。面倒くさいけどな」


 セットたちが問う前に鋭い声が遮った。振り返るとそこにいたのは冷たい瞳に白い毛皮をした青年がいた。筋肉質で強面な顔をしているのに、フリル付きのエプロンをしているのがなんともちぐはぐだった。

 

 この店の給仕、雪豹のルークは忌々しそうに睨みつけながら口を開いた。

 

「フヨウの奴が持ちかけてきやがってな。これからもレビュー記事をこれからも店に貼るから、金寄越せってよ」

「お前、勝手にそんな真似したのかよ!」

「いいじゃん、どうせインキュバス店には週3ぐらいで行くんだし。写しが出た時の報酬とは別にお金貰えるなんてさー、最高じゃない?」


 正直を言えば反対する理由は無い。レビューなんてぱぱっと書ける上にネタとなるインキュバス店にはこれからも通い続ける。金もちゃんと全員で分けるというなら、何も困らない。黙って話を進めたのは気に入らないが。

 

「でしょ?って事で契約金を貰ったからそれでパーッと遊んじゃおうってわけ!」

「違ぇだろ。できるだけ客が欲しがりそうな記事を書かせる為に契約金にイロ付けたんだ。どっか珍しい店行ってこい」

「なるほどのう……話は分かった。ワシは構わんと思うがな。遠出してみるのも」

 

 とりあえずフヨウへの文句は棚上げし、目の前の金に視線を向ける。これだけの金があればどんな高級店だろうと楽しめるし、遠出するための旅費にもなる。男を抱くためだけに長旅に出るなんて、浪漫に溢れているではないか。

 

「遠出をするってのは賛成。金があるのは分かった。んで、どこに行くってハナシだな。おれは獣人系じゃないとやだ」

「街から離れた場所となると、森林地帯かのう?鳥人の店があると聞いたんで行ってみたい」

「おれは、別に行きたいとかはないんですけど水棲系のお店とか」

「僕はでっかい子がいるお店じゃないとやだなー」


 金と時間に追われて妥協する必要もない。好きな店に行けるとなれば妄想と期待は膨らみ、語る口が止まらない。

 

「珍しいなら時を超えたインキュバス店とか、異界の扉の先のインキュバス店とかどうだ!誰も行ったことがないだろ!」

「都市伝説でしょそれ。地の底の魔王城インキュバス店と似た類の。もっと現実的なさあ、元国王の獅子さんが働いてるって噂のお店とかさぁ」

「お前さんのも妄想だろう。もっと堅実に、普段は手が出ない高級店ってだけでも」

「会員限定のお店とかってあるじゃないすか。そういうのにおれ行ってみたいっす。お店の中もなんかお城みたいなの!」


 どんな店に行くかとなるといつもの会話に戻る。4人が自分の嗜好をぶつけあい、結局決まらないまま延々と話し続けることになる。

 これでは話がまとまらないだろうとルークが口を挟もうとしたその前に、真っ黒な山羊が口を開いた。

 

「でしたら、私から一つオススメのお店があるのですが――」


***


「『雄々しいサムライどもの雄潮吹き。おいでまわせマヨヒガ』だっけ。確かにサムライって一度はヤってみたいとは思ってたしいいんだけどな」


 先頭を歩くセットがぼやいた。日の一切差さない洞窟の中は本来ならばまともに進むことなどできないが、岩肌や天井のあちこちから幻想的な光が放たれていた。

 岸壁にへばりついた苔から放たれているものもあれば、棒付きキャンディーの飴の部分が光っているような植物もあった。魔力を吸収しているからこうして発光するのだとフヨウがうんちくを垂れたがセットはロクに聞いていなかった。なんせ、何日も同じ景色を見続けているのだ。

 

「やっぱ洞窟ルートは失敗だったんじゃねえかー?こんなところ通るの駆け出しの冒険者ぐらいだろ」

「だーめ。トゥーリスまで船を使ったら移動費だけで赤字になるってコスが言ってたじゃない」

「船賃があんな高いなんて知らなかったっす。でも、他にルートって無いんすか?」

「海を挟んで向こう側の大陸に行くのですよ?むしろ船以外のルートがあるだけ僥倖というものでしょう。まあ、このルートがあるからこそお誘いしたのですが」


 自分のすぐ後ろで笑う黒山羊にセットは唇を尖らせる。実際、このルートを進むしかないのだ。黒山羊に勧められた店はぜひとも足を運んでみたかったし、この洞窟ルートはさほど危険は無く目的地であるトゥーリスまで行ける。問題はひたすらに退屈であるということだけだ。

 

「この洞窟って、海の下を通ってるんすよね?」

「左様でございます。リーバル殿たちのパーティがいた街と、トゥーリスを繋ぐ海底洞窟――通称ホルン大空洞です」


 ホルン大空洞。それは世界各所を繋ぐ巨大な海底洞窟だ。

 セットたちが拠点にしている街とトゥーリスのある大陸、それ以外にも小さな島々や水棲系の種族が住む海底都市にも繋がっている。その構造は極めて複雑であり、地上へと繋がるルートだけではなく更なる下層へも続いている。その構造は巨大な蟻の巣のようであり、全体の構造は未だに解明されていない。

 

「おれたちの上に、海があるんすね……」


 リーバルの瞳が天井を見やる。光苔の煌めく岩盤を見ていると押しつぶされそうになるのか、慌てた様子で目を逸らした。

 ちなみにリーバルが歩くのはパーティの最後尾で、フヨウとディックのすぐ後ろだ。ぶ厚い鎧を着こめない魔術師や癒し手を前衛で挟んで進むのがパーティの基本であり、先頭は罠や敵にいち早く気付く為に斥候役が務めるべきだからだ。

 

「三叉路だ。真ん中が近いけど、遠回りして右からいくぞ。先から魔物の匂いがする」

「おっけー。ザコだろうけど無駄な戦闘は省きたいしね」

「左はだめなんすか?行き止まり?」

「左は中層へのルートですね。光苔も魔光草も輝きを強くする風光明媚な場所ですよ」


 黒山羊の言葉にリーバルはピンと来ていない様子だが、ヒト族とエルフは顔をしかめた。彼らは熟練した冒険者で、何度も中層を訪れたことがあるし、ロクでもない場所であることを知っているのだ。

 

「リーバル、僕らとはぐれても絶対に下に降りたらダメだからね。助けに行く前に死ぬから」

「え、でも……そんな危険ば場所には思えないんすけど。これまでは魔物に全然会わないし、弱いのばっかだし」

「理由は良く分からねえんだけどさ、下に行くほど魔力が濃くなるんだってさ」


 だから魔光草は輝きを強くし魔物はその力と数を増すのだと、セットは珍しく真剣な顔で告げる。下層で死ぬ原因は大概が道に迷った末の餓死だが、中層より下では死亡の原因がほぼ特定できない。骨のひとかけらすら残らずに魔物に貪られるからだ。

 

「下層でも迷って死んだりするって、だいぶ危ない場所なんじゃ」

「そりゃダンジョンだしな。おまけに湿ってるし暗いし景色が悪いし」

「コスは来なくて正解だったかもね。腰を余計に悪くしそう」


 ぬるついた地面を蹴って、ため息を吐いた。

 パーティの一員でありオスケモレビュアーズの一人であるドワーフは今回欠席である。


「かび臭い洞窟なんぞお断りじゃ!とか言ってたけどよ、アイツ絶対店が好みじゃねえから断ったよな」

「嗜好に合わない店の為にこんな洞窟何日も歩きたくないよね。ま、コスには後でレビュー作りを担当してもらうしいいんじゃない?」

「おれらに気を使ってくれたんだと思うんすけど。5人だとそのぶん金がかかるし」


 呟かれた言葉にセットはきまずそうに目線を落とした。仲間でありインキュバス店狂いの同胞であるドワーフが仲間想いの好漢であると良く分かっていた。

 

「申し訳ありません。私が同行しなければ問題は無いのですが……マヨヒガは完全紹介制の店でして」


 紹介だけ頼んで後はもういいよ、なんてできるわけもなく。ディックが同行するのも、コスが気を使ってくれたのも仕方がないことで、そして感謝すべきことなのだ。

 それが分かっているから、セットは過去ではなく未来へ目を向けた。視線の先では薄闇が待ち受けているけれど、その先にお宝が待ち受けていると信じて。

 

「おいディック!マヨヒガってドスケベな身体したオスケモが揃ってんだよな!」

「それは保証いたしますよ。しっかりと脂が乗っておりますし、男同士のまぐわいが風習だからか穴の具合も良いですし。ああ、褌という下着もいいですね。きわどい紐の下着のように布地が少ないのでずらしてそのまま……」

「ちょ、ちょっとディックさん!こんなところでそんないやらしい話すんのやめてくださいよぉ」


 ディックの話を聞いていくうちに、トカゲちんぽが膨らんでいくのをセットは見逃さなかった。動きの邪魔になるからと金属で覆われていない股間部分が小さなテントを作り出している。

 だがそれも仕方ないだろう。セットの股間だって雄々しく、お宝の場所を示す羅針盤のようにそそり勃たっているのだから。旅の間は自慰すらロクにできず性欲が睾丸の中で煮詰まっている。これじゃあんな淫夢を見るわけだと自嘲する。


「ふふ、みなさん待ちきれぬご様子ですね。洞窟を抜ければすぐにトゥーリスまで着きます。焦らず進みましょう」


 全員が頷いて、歩みを再開した。

 目指すは海の向こうのインキュバス店。悪路だろうと、魔物が道を阻もうと、冒険者たちが足を止めることはない。

 

 今度は、夢なんかではない本物のオスケモが待っているのだ。

 

 ***

 

 ホルン大空洞を抜けると、ちょうど太陽が一番高い位置にあった。

 途中の歩哨小屋や宿屋で小休止を挟みつつ、街道を半日ほど歩くと白亜の街並みが見えてくる。

 

「ふわー、綺麗な街っすねぇ」


 港町は初めてなのか、リーバルがはしゃいだ声を上げた。海辺に拡がるのは白茶の煉瓦でできた美しい家々だ。

 港町トゥーリス。セットたちが拠点にしている街とはまるで違う、栄えた港町だ。この大陸の玄関口であり、冒険者や商人たちの出入りが激しい。人も物も、求めれば大体が手に入る。

 

「あ、セットさん!船っす!でっかい船があります!」

「船ぐらいではしゃぐなよ……ガキかお前は」


 リーバルが指さした先には細長い桟橋があり、巨大な船がいくつも停泊していた。セットたちが泊っている『階段亭』よりも大きな船に、船乗りたちがせっせと荷物を運んでいる。

 月灯りを映す真っ暗な海に浮かぶ、木造りの船。こうして栄えた港町にでも来ないと見られない光景に、年若い蜥蜴の瞳がきらきらと輝いていた。

 

「船なんかで、って思うけど初めて見たらすげぇと思っちまうか。おれもそうだったしな」

「僕も初めて船を見た時は驚いちゃったよ。あの頃は子どもだったなあ」

「フヨウ殿が子どもの頃にも船が存在したのですか?」

「したよ!僕が200歳ぐらいのころにはもうできてたし!」


 エルフ的にはまだまだ若いぞと言いたいのかもしれないが、ヒト族のセットには種族の違いというものを再認識する結果にしかならなかった。

 やれやれと首を振り、リーバルを呼び戻す。ここには観光に来たわけではないのだ。

 

「さっさとマヨヒガに行こうぜ。金玉パンパンになってんだよ」

「えー、ちょっと街を見てきましょうよぉ。おれ、美味いモン食べたいっす。あと外国の武器とか見てみたいっす!」

「僕もコスにお土産買っていきたいけど、明日にしようよ。もう夜も遅いしさ」

「えー、でも……」

「ふふふ、急がないと好みのボーイを他の客に取られるかもしれませんよ?」


 う゛、とリーバルが声を詰まらせた。若い男として食い気や武器に興味もあるが、性欲という本能には抗いがたいようだ。目の前で好みのインキュバスボーイが指名されてしまったなんて一度や二度ではすまない。ましてやめったに来れない高級店ともなれば、何としても一番のお気に入りを指名したい。

 

「わ、分かったっす。行きましょう、早く。セットさんも早く!」

「おーう、はしゃいで人とぶつかんなよー」


 セットの静止も聞かずに、リーバルは駆けだしていた。膨れ上がった股間の示す先に任せて進むと、すぐにインキュバス街へと辿り着く。

 建物を形作るのが白茶の煉瓦という違いこそあるが、異種族が混在し、下品な明りと惹句が並ぶというのは何も変わらない。むしろ、セットたちの通うオオカミ通りよりも賑わっているように感じられた。

 

「おー港町だから水棲系の店が多いな。そういや最近抱いてねえや」

「インキュバス街を見ると街の栄え具合が分かるよね。客引きの仔も綺麗な服着てるし、みんな儲かってるんだろうなー」

「はい、トゥーリスのインキュバス街にはあらゆる種族はいますから。商売に失敗したり、船賃を稼ぐために身体を売ったりと人手は溢れるぐらいです」


 などと言葉を交わしていると、インキュバス街の一角に辿り着く。既にリーバルも到着していたその店には『マヨヒガ』という看板がかけられていた。

 

「デカいっす……」


 周囲の煉瓦でできた店とは違う、木造の異国情緒がたっぷりな建物。そのデカさときたら周囲の店の3倍ではきかないだろう。

 石材を薄く延ばしたような屋根に、紙でできた窓。扉一つとっても造りがまるで違う。建物に塗りたくられた塗料は、月灯りを受けると吸い込むでもなく反射するでもなく、ただ受け止めて穏やかに照っていた。

 

「これ、東方の塗料なのかな。不思議な色」


 フヨウの指先が壁の上を滑る。赤い、紅い、どちらの色でもない。血の色とも薔薇の鮮やかな赤色でもない。落ち着いているけれど、地味なわけでもなく。セットの知るどんな色とも違っていた。

 トゥーリスの白亜でできた街並みは異国の風を感じさせるが、目の前にある二階立ての建物は異国どころではなく異世界に迷い込んだかのように思わせた。


「なんか、良い匂いがする」


 ヒト族の鼻では微かに感じ取れる程度の香り。潮風のせいですぐに消えてしまいそうで、けれど忘れらなくなりそうな淑やかな香り。目の前の建物が雄を誘おうと五感を刺激する。

 窓や扉の隙間からは柔らかい光や弦楽器の音と一緒に微かな喘ぎ声が混じっていた。雄の声、蕩けている声。セットたちの愛してやまない嬌声が耳をくすぐる。早く、こちらに来てしまえと店に誘われている。

 

「な、なあディック!早く入ろうぜ!」


 黒山羊の手を引いて、扉へと手をかける。リーバルをはしゃいだ子どもだと評していたが、セットの目もきらきらと、興奮で輝いていた。

 

「おい坊主。ウチの店に来るにゃあ礼儀がなってねえんじゃねえか?」


 興奮を吹き飛ばす、咎める声。

 慌てて後ろを振り返ると豊満な太鼓腹がそこにいた。いや、腹しか目に入らなかったが、よくよく見ると老齢の龍人が口元をひん曲げていた。立派な角とたてがみがなんとも雄臭い。

 

「ようディックの坊主。久しぶりに来たと思ったら妙なのを連れて来たじゃねえか」

「お久しぶりです。友人にリンドウ殿の店を紹介したく、参りました」

「エルフとトカゲはいいとして、ヒトのガキまで連れてきたのか。ヒトは軟弱だからあんま相手したくねェんだがよ」

「ご心配なく。こちらは熟練の冒険者ですから。タフさと性欲は保証いたします」

「……お前さんがそう言うなら、本当なんだろうがな」


 リンドウ、と呼ばれた龍人に睨まれてディック以外の三人は慌てて頭を下げた。愉快そうに弧を描く瞳からしても怒ってはいないようだが、会話からしてこの店の主人か、上の立場にある者なのは間違いない。機嫌を損ねて店に入れないなんて事にはなりたくない。

 

「おれぁリンドウってもんだ。この店の番頭をやらせてもらってる」

「ばんとう?ってなんすか?」

「あー、主人っつーか、坊主たちに分かりやすく言えば受付みたいなモンだ。言っとくがおれぁ抱けねえから勘違いすんなよ!はっはぁ!」


 龍人の冗談に空気が緩んだ。牙も眼光も鋭く、睨むだけで人殺せそうな顔がほころんだ。外見に似合わず柔和そうな人柄にセットたちの緊張がほどけていく。

 リンドウと呼ばれた男は客のインキュバスボーイとしては明らかに歳を取り過ぎていた。フヨウは感じ取る魔力から老齢であると見抜き、リーバルやディックは体臭から年齢を感じとっていた。感覚のにぶいヒト種であってもたてがみに混じる白い毛や雰囲気から歳を食っていると分かる。自分を抱きたがる雄なんぞいないだろうと分かった上での冗談に全員の口元が緩んだ。

 

(店主でこのレベルの高さなのか……良いじゃねえか、この店!)


 その中でセットだけはリンドウへの欲情で鼻を鳴らしていた。

 何よりもまず太鼓腹が目に入ってしまうほどには丸々と張った腹肉。龍人種は少なかれ膨れた腹をしているものだが、目の前の龍人は別格だった。東方のゆったりとした衣服を着ていても均整の取れた円形をしているのが見て取れる、実に美味そうな腹だった。脂肪だけをぶくぶくと詰め込んだのならば醜く垂れてしまうのだろうが、この腹は自分を見ろとばかりに突き出ている。

 

「あんだァ、坊主。ジロジロ見やがってよォ。言いたいことでもあんのか?」

「えっ!いえ、ふへへ。素敵なお店なので早く入りたいなーなんて」


 慌ててごまかしてはみたが、本当に素敵だと思っているのは目の前の豊満すぎる肉体である。太鼓腹に見合っただけの巨漢は、おおよそ細い部位が皆無である。見てくれの為の鍛え上げた身体ならば関節が絞られ、突き出るべきところが突き出るものだがこの龍人はあらゆる箇所に脂肪と筋肉を詰め込んでいる。

 

 まん丸な腹肉に乗っかっているのは少しだけ垂れた大胸筋。ミルクハウスのインキュバスボーイどもには負けるサイズであるが、それでも顔面を挟み込めるほどには馬鹿でかい。腕や足だって、大砲の玉を繋げて作ったみたいな密度と太さがある。あの腕でブン殴られればセットの頭なんて簡単に砕けるだろう。肉厚で脂が滴りそうな身体に唾液が湧き出てくる。

 

「ま、ディックの知り合いを待たせるのも悪ィしな。来い、ウチのガキどもに合わせてやる」


 セットの邪な視線に気が付かないのか、リンドウは店の中へと招き入れた。前からでも見える尻肉をゆっさゆっさと揺らしながら。東方の衣服というものはズボンと違い薄っぺらいからか、肉付きのラインというものが良く分かるのだ。その下半身の肉は肥えすぎているあまり短足であると見紛いそうだった。身長でかいが、ケツ肉を始めとした下半身の肉がむっちりしすぎて縦幅が足りていない。あのケツに押しつぶされたら、どうなるか。


「ほれ、ウチのガキどもから好きなのを選びな。どいつも別嬪で気立ても良いからよ、外れ無しだ」


 ケツ肉を凝視していたら、いつの間にか店内に入っていたようだ。東方の建築様式は内部も目を惹くものばかりだが、何よりも変わっているのは店内に設置された木で作られた牢屋のようなスペースだろう。木製の格子から覗ける内部には小さな酒場ほどの広さがあり、内部では東方衣服を見た獣人たちが寛いでいた。

 

「こちらは張見世、と言いましてインキュバスボーイを選ぶための場所です。写真や硝子越しに見るよりも匂いや魔力を感じとれていいでしょう?」

「いいっすね!うわぁ、すっげぇ良いニオイする!みんなカッコイイし!」

「上玉揃ってるじゃん!あーあの服かわいい!きみ、ちょっとこっち来て!」


 リーバルとフヨウは格子に頭を突っ込み、興奮した様子でインキュバスボーイたちを品定めしていた。自分たちが慣れ親しんだ方法以外でボーイを品定めするのも面白いが、張見世の中にいる雄が誰も彼も美丈夫なものだから気が逸るのも無理は無い。

 

「おやぁ、今日は可愛いお客さんが来とるねぇ。おれのキモノが気になるかい」

「あーそれキモノっていうの!キモノもきみも可愛いんで気になっちゃった!」


 フヨウの声に応じたのは真っ黒な羽毛と華やかなキモノの対比が美しい烏だった。鳥人というのは飛ぶ都合上筋肉を付けすぎてはいけないし、烏となれば鷹や隼の種に比べて肉体が劣るものだが、その烏は見惚れてしまう体躯をしていた。リンドウのように丸々と肥えているのではなく、実践で鍛えた肉体を脂肪で薄っすらと化粧しているような肢体。

 男らしさが滲む身体に纏うキモノは桃色に花を散らした柄の愛らしいもので、本来なら似合わない衣装がかえって男らしさを引き立てていた。

 

「私は……久しぶりですし、馴染みの方にしましょうか。イタドリ殿で」

「随分と顔を出さなかったじゃねえか、旦那。相変わらず食えねえ顔してんぜ」


 そして、黒山羊が選んだのは豪放磊落を絵にしたような虎の雄。仕立ての良いキモノの前を豪快に開け放ち、ぶ厚い胸板を丸見えにしている。下も隠す気がないようで、東方の褌と呼ばれる下着と太ももが全て見て取れた。

 ディックに歩み寄る間に胸板と褌の膨らみがずっしり揺れて、離れていても淫靡な匂いが漂ってきそうだった。

 

「へっへェ。久方ぶりに旦那のデカマラを食えるんだなァ。最近は粗末なモンばっかで腹が空いてしょうがなかったぜ」

「それは申し訳ないことをしました。会えなかった分も可愛がってさしあげますよ」

「ヘッ、会ってねェ間に腕が落ちてなきゃいいがな。どれ、試してやるから口開けなァ」


 二人は格子越しに口を重ねると、慣れた様子で唾液を交換し合う。肉食の牙と絡む唾液を黒山羊は美味そうにすすり上げ、ついでにと舌を口に含んで吸い付いた。

 

「お゛ッ❤グルルッ❤❤ふぁ❤んんんぅ❤」


 すると瞬く間に虎の顔が蕩けだし、自らも唾液を貪り出した。口吻が唾液で汚れることを厭いもせず、山羊の口から溢れる唾液を飲み干していく。ぐちゅぐちゅと水音を響かせながらのキスはどうしようもなく淫靡で、見惚れている男たちの口からもツーッと唾液が垂れた。

 

「くくっ、坊主どもも我慢が効かなくなってきたか?どんな雄が欲しいか言えよ、おれが見繕ってやる」

 

 くつくつと笑いを含んだ声色にリーバルは慌てて涎をぬぐった。この数日自慰もできずに歩きとおしで、目の前には豊満な肢体をした雄たちがずらりと並ぶ。その上目の前でいやらしいキスなんてされたら、脳みそがちんぽでいっぱいになって考えられなくなる。

 

 それでも必死に頭を巡らし、張見世の中の雄たちを見比べる。誰も綺麗なキモノを着ていて、むちむちな身体をしているが受ける印象は違う。あちらの狼は太ももに浮き出た筋肉が艶めかしく、向こうのシャチは黒光りする肌と柔らかそうなお腹が魅力的だ。

 

「リーバル、悩んだらちんぽがデカいのを選んじまえよ」

「そうそう、悩んだら自分の性癖に素直になるがいいよ」

「二人は黙っててください!今、大事なところなんすから!」


 血走ったトカゲのまなこはキモノに包まれた身体を舐め回すように見ている。はだけられた胸元や裾から見える太ももを見て股間のテントを揺らし、褌にできたもっこりを見て尻を揺らす。

 インキュバスボーイたちは初心なのが丸出しな醜態にくすくす笑っているが、リーバルはそれに気づく様子も無いようだ。

 

「ま、ゆっくり選ンでくんな。ヒトの坊主はどうする?スケベそうな顔してるし乳とケツがデカいのがいいか?」

「うん、そうだな。この店で一番乳とケツがデカそうなのにしよう」


 ポン、と太鼓腹を叩いて龍は笑う。豪快な笑い声で揺れる腹肉と雄胸がどれだけいやらしいか自覚していない顔だ。

 こんな店の顔役を務めているのだろうから経験は積んでいるはずだ。霜降りの肉体と勇壮な面構えは男女種族問わずもてたはずだ。それがこうも無防備なのは重ねた歳のせい。こうも老いた自分を抱く雄なんているまいと思いこんでいる。

 

 ああ、なんて馬鹿なんだと怒りと性欲でちんぽがいきり勃つ。

 

「な、リンドウさんが相手してくれよ」


 当たり前のように放たれた言葉への反応は二種類だ。

 くだらない冗談を、とリンドウや張見世の中の男たちは笑う。

 そして、仲間であるエルフやトカゲはこいつ本気か、といった表情で顔をしかめた。

 

「ぶはははっ!おれに相手して欲しいたぁゲテモノ趣味が過ぎるな坊主!」

「ゲテモノじゃないだろ。リンドウさんなら悦んで相手するやついっぱいいると思うぞ」

「こんな爺に世辞使ってねェで、あいつらを口説いてくれや。冗談が上手ェのは分かったから、よ……」


 言葉が尻すぼみになっていくのはセットの視線に気づいたからだ。ぎらついた雄の視線が全身を這いまわっている。冗談ではないとわかる、自分を孕ませようとしている本能剥き出しの瞳だ。

 まだ鱗がガサついてなかった頃はこんな瞳をする男を垂らし込んできた。だから分かるのだ。セットという雄が本気だと。

 

「な、リンドウさんが相手してくれよ。いいだろ」

「オイ、狂ってんのかテメェ。こんな爺を相手に」

「あーヒトって他種族の年齢とかどうでもいいらしいんで。本気だよセットは」


 エルフからの援護射撃にリンドウは口をぱくぱくと開閉させた。

 ヒトの感覚器官がおかしいのは理解しているつもりだったが、こんな爺にまで発情するとは思っていなかったようだ。自分でも分かるまでに年寄りの匂いを放って、鱗や肌も若い連中の滑らかなものとは程遠い。


「あのな、おれァ番頭なんだぞ。お前は坊主だし、その」

「ダメなのか?おれみたいなガキじゃ相手にしてくれねえのかよ」

「ダメってわけじゃなくてよぉ。ううぅ」


 そう、油断していたのだとセットには分かってしまう。威厳に満ちた龍人はまなじりをみっともなく下げて、助けを求めるように周囲を見渡していた。

 ただ嫌がっているわけではないのは荒い息遣いで分かった。ねっとりとした吐息を、浅く吸っては吐き出して。何度も見てみた発情した雌のサインだ。

 あと少しで堕ちる。確信したセットは勝負をかけようと鱗に覆われた手を握りしめた。

 

「な、頼むよ。金なら多く払ってもいいからさ!」

「……!」


 ヒトの手の感触。その手は鱗も獣毛もなく、そのくせ柔らかくて暖かだった。かつて龍の身体を這いまわっていたものと同じぬくもり。

 

「あのなァ、坊主。お前、本当に」

 

 太い首筋が火照りを帯びていくのが見えた。

 威圧的な眼光はセットを射抜かずに、逃げるように伏せられている。セットを見つめ返さないまま、そっと微かな声が漏れる。

 

「本当に、おれでいいんだな?」


 ***

 

「坊主、てめェ趣味が悪すぎるんじゃねェか?干上がってるくせにぶくぶくの爺なんかによくもまァ勃ちやがる」


 何度目か分からない甘い罵りの言葉を、セットは笑顔で受け止めた。仲間たちからは狂人を見るような目で見られたがセットからすればこんなエロい肉の塊を前にちんぽが勃たない連中の方が狂っていた。

 案内された二階の部屋は囲炉裏のおかげで寒くないが、汗をかくほど熱いのはきっと龍のエロさに昂っているからだ。

 

「おれが坊主の何倍生きてると思ってんだ。10倍じゃきかねえんだぞ」


 といわれてもエロいものはエロいのだから仕方がない。煙管をふかす龍は番頭の時の何枚ものキモノを着こんだ姿ではなく真っ白な薄手のキモノと褌しか身に着けていなかった。雪のように白く薄っぺらい布地は淡く透けて、燃えるような赤銅色の鱗を覗かせる。

 

「だからその助平な目つきをやめろってんだ。くすぐってェんだよ」

「いやーエロい目をやめろって言われても無理でしょ。おれが童貞だったら射精してるよ、もう」


 褒めそやすと白い肌が紅潮するのが分かった。不貞腐れた表情でそっぽを向き、頬杖を付いているが尻尾の先がご機嫌に踊っていた。

 胡坐をかいているせいで肉がつきすぎた太ももが剥き出しになり、褌で包まれた股間も丸見えになっていた。スリットに収まっているせいでちんぽの膨らみこそ確かめられないが、龍人種のセックスアピールである陰毛が豪快にはみ出しているのがたまらなかった。

 

「ったく、調子の狂う坊主だ。若いころは、テメェなんぞは手玉に取って遊んでやったんだけどよ」


 今でも手玉に取られている、と心の中で呟いた。煙管をカツリと囲炉裏の枠に叩き付ける仕草もどこか色気があって、灰を落とした煙管で煙をくゆらせるのを見ていると頭が茹って来る。

 

「ヤりたくて我慢できねえって面しやがって。おれはな、お前が思っているよりも爺で」

「大丈夫だって。800歳ぐらいのエルフだってヒトからすりゃ需要あるから」

「そりゃエルフは見てくれが若いからだろ。おれァ鱗がこんな、カサついてるしな」

「めちゃくちゃ綺麗だし、身体もおれ好みだ。ケツがでかいし雄っぱいもむちむちだし、すっげぇ雄臭くって最高だ」


 セットが美辞麗句を重ねるほどに龍の身体は熱を帯びて、いかつい顔が色気を増していった。何を言っても無駄だと諦めているような、恍惚としているような、今にも蕩けてしまいそうな、情欲が複雑に絡まり合った顔をしていた。

 

 セットが何人も抱いてきた、淫乱な雌の顔。金だけではなく、身体を重ねる行為に価値を見出してこの仕事をしている顔だ。

 

「そ、それで?続けろよ」

「腋毛や陰毛もが濃いのも好きだ。顔を突っ込んで匂いを吸って、ヨダレでべとべとにしてやりてぇ。綺麗な鱗も全部舐め回したい」


 全身を視線で犯しながら言葉をつむぐ。頭の中では既に何度もリンドウを犯していた。妄想を現実に変えたいとちんぽが硬くなる。

 

「続けろ、はやく」


 低く野太い声には隠せない甘さが混じっている、喉から搾り出される振動には確かな欲情が感じられた。

 

「リンドウさんのでけぇケツを鷲掴みにして、泣いで謝るまでちんぽをブチこんでやりてぇ。もう自分を干上がった爺なんて言えなくなるまでドロドロに犯して、ちんぽ狂いにしてやる」

「は、あ゛っ……❤」


 性欲がへばりついた言葉を聞いて、しかし龍は怒りではなく悦びで相貌を歪ませた。何かを堪えようとしていたが、やがて疼きに屈してしまったかのように豊満でムチムチの身体をそり返らせた。身体を痙攣させたまま息を漏らし、じゅるりと唾液を口元に擦り付け、言った。

 

「ああ、いいぜ❤❤言った通りにしてみな❤うまくできたら、ご褒美をやるからよォ❤」


 その言葉が、合図だった。

 

「リンドウさんっ!」

「んぶうっ❤はふ、んんんっ❤❤❤」


 舌と舌が触れ合う。キスは最初から情熱的で、互いの唾液を貪り合うような勢いだった。煙の味にセットの中で欲望が爆発する。この男が欲しい、全部食い尽くしたい。自分の腰より太いかもしれない首に抱き着いて、離すまいとしがみつく。手のひらをたてがみに潜り込ませ感触を味わう。

 

「う゛ぁ❤ああっ❤❤」


 牙の生えそろった口に口先を突っ込んで舌肉を舐め回して、吸い付いて、歯列を一つ一つ丁寧になぞっていった。

 口周りの唾液も、自分の唾液で上書きするように舌を這わせ、顔を伝いたてがみの生え際に唇を落とす。おとがいから首筋までを舌先でくすぐってやると尻肉をもじもじと動かした。

 

「お、おおぉ❤」

「リンドウさんって、キスも久しぶり?」

「ふふ゛ぅ❤❤うる、せえぇ❤テメェは、黙って舌動かしてりゃいい、んだよォ❤」

 

 顔の筋肉は腑抜けているが、それでも雄らしさを失うまいと雄臭く煽り立てる。それは男を昂らせるための手管なのか、この店の番頭としての意地なのか。どちらにせよセットを昂らせるもので、敷いてあった布団の上へと押したおすとキモノの裾がふわりと舞った。

 

「う゛うぅん❤ガッツキやがってェ❤❤やっぱまだガキだな❤あ゛お゛っ❤んぐぅうぅ~~❤❤」


 雄臭さを取り繕おうとする言葉は喘ぎ声によって途切れ途切れだ。セットの下で巨大な肉風船が身体をよじらせている。大木のような脚が暴れるたびに床が震える。リンドウからすればなんてことない大きさの指先が踊るだけでも身体が震える。

 

 雄っぱいを剥き出しにするようにキモノの前を開くとむわりと雄臭さが拡がった。胸毛がたっぷりの巨体は隆々として小山のようで、縦にも横にもでかいだけでなく肉がみっちりに詰まった迫力があった。金属製の鎧だろうとたやすく潰せるだろう脚は快楽によってくねり、両腕は顔を守るように組まれていた。

 

「肌ももちもちのすべすべじゃん。隠さないで普段から見せりゃいいのに」

「うるぜぇ❤❤ひぐぅ❤見るな❤こんな身体見るんじゃね――おひいぃ❤」

「ほーら腹もこんな柔らかいし」


 狩人兼盗賊の器用な指先が腹を這いまわる。はちきれそうな肉をつまみ上げ、下腹部のあたりを手のひらで撫で回す。ぐりぐりと押し込んでみるとどこまでも沈み込んでいく。

 龍の巨体は指先に合わせてのたうち回り、それがたまらなく面白くてセットの指使いに熱がこもる。

 

「ぐうぅ❤腹ばっか揉むんじゃねェ❤❤❤あっ❤も、もどかしいんだよォ❤」

「いやーセックスやるのも久しぶりっぽいし慣らしてあげた方がいいかなって。嫌じゃないみたいだし」


 龍の脚は大きく開かれて、どう見たって犯されるのを歓迎していた。腹を撫でられて大腿筋が震え、快楽が走る。威圧的な姿だったインキュバス店の顔役は唾液と鼻水によって無様に化粧されていた。

 セットはそんな男の腹を捏ね回した。揉み込んでは押し込んで、雌の烙印を押すかのように手形を残す。

 

「は、腹やめりょおぉ❤もっと、あ゛ぉああぁ❤❤❤」


 腹を揉み潰されている間リンドウはわめき続け、上質な羽毛布団へ唾液を垂らす。セットからは見えなかったが、褌は既にぐっしょりと濡れて、スリットの形を透かせていた。餅のように腹肉を愛撫されて軽度のメスイキを重ね、身体が孕むために仕立てられていた。

 

「全身スケベだな。こんなんで何年もセックスしてなかったってマジかよ」

「ふぐぉ❤❤ヒ、ヒトの客なんでえぇ❤ロクに来なかったんだ、よぉ❤❤❤」


 だからこんないやらしい自分に無自覚だったのか。セットは怒りにも似た気持ちで手のひらを滑らせた。腹肉を丁寧に揉み込みながら、悶える龍を堪能しながら、ついに胸毛が森を作る大胸筋を捉える。

 筋肉と脂肪が適量で混ぜられた胸筋を揉まれ、母乳の代わりに媚び媚びな声が漏れ出てくる。力を込めれば金剛の硬さを得る乳は弱々しく震え、指の間からこぼれるほどに強く捏ねられると背骨が蛇のごとく踊った。

 

「うっほ、柔らけぇじゃん。後でパイズリもして貰うかな」

「ああぅ❤❤くそがァ❤誰が、ンなみっともねえマネするがァ❤んおおおぉおぉ❤❤❤」


 下から乳を押し上げて、ぱっと離せばたぷんと音を立てて揺れ、腹肉にするよりも強く揉むと乳首がいっそう硬く尖り出す。セットがそれを見逃すはずもなく乳房を揉みつつ乳首をコリコリと転がした。

 

「ぢぐびぃい゛ぃいいぃ❤❤お゛っ❤ずっげぇ❤ぢぐび、ごんなにぃいぃい❤❤❤」

 

 乳首がこんなに気持ちいいなんて、忘れていただろう?セットは消えかけていた情炎を再び燃え上がらせようと乳輪ごと捏ね潰す。

 いつの間にか逞しい脚がセットへと絡みついて、尻尾までもが足首へとすがりついていた。今も顔を隠している両手は、欠片ほどの意地を守ろうとする防波堤だ。

 

 だがしかし、その体勢は顔の代わりにリンドウの恥部を曝け出してしまっている。他の鱗持ちの種族にはない、卑猥な腋毛が丸見えなのだ。折り曲げられた腕は丸く盛り上がり、力こぶは宝玉のような美しさを放っている。その剛腕から地続きの腋からは、雄のフェロモンがこれでもかと放たれていた。

 

「リンドウさんの腋やっべえな。鼻曲がりそうだよ」

「ぐぅうぅっ❤❤うっせぇ❤なら嗅ぐんじゃねえ゛❤んんむうぅうぅ❤❤❤」


 ひくひくと匂いを堪能していた鼻を腋に茂みへ突っ込み、より深くリンドウの匂いを肺へと取り込んでいく。身をよじらせて「やめろ」だの「臭い」だと拒んでいたが、セットにとっては香水や花の香なんかよりもよっぽど昂る芳香だ。

 ツンと鼻にくる刺激臭を取り込みながら、ぐりぐりと鼻先を押し付け腋のくぼみを舌で舐め取ってみると塩辛さが後を引く。筋肉を豊富に実らせた男でなくては出せぬ、汗の味。

 

「クソッ❤変態❤❤エロガキの、変態めぇ❤おれのくっせぇ腋なんかぁ❤」

「うん、臭い。おれが獣人だったら濃厚すぎて失神してそうだ」

「ぐぞぉ❤❤だったら、早くやめりょぉ❤」

「良い意味で臭いってことだって。コッチだけじゃなくて、下の匂いも好きだけどな」

「あ゛あっ❤❤❤」


 指先が伸びるのはもう一つのフェロモンの発生源、陰毛だ。正確に言えば陰毛を包む褌を指でまさぐる。

 褌は上半身の責め苦にすっかりグショグショになっていた。身体にへばりついて、スリットの形がすっかり浮き出るぐらいに。割れ目を指でなぞって汁をすくい、口の中に含んでみる。

 

「ばっ……❤❤バカ野郎❤そんなモン舐めるんじゃねェ❤」

「いやー感じてくれてるみたいで何より。ちんぽブチこめるように慣らすからさ、股開いてくれよ」


 リンドウはびくりと身体を硬くしたが、すぐに肥えすぎた太ももを抱えてくれた。汗と股間から流れた汁で艶やかに濡れ照かる太ももは、リンドウの雄臭さを主張する部位だ。しかし両手で抱えて股を開くといやらしさを助長することしかできない。それはまるで、蛙の轢死体のような無様な姿だった。

 

「ぐ、ぞぉ❤見るんじゃねェよォ❤❤❤てめェみたいなガキなんかに❤ああぁ❤」


 身体からおり、龍マンコを改めて眺めてみる。

 褌の布地は真っ赤なスリットを透かし、尻の谷間への食い込みからはケツ毛が顔を出していた。そして、両脚を抱えているせいでリンドウの表情も隠し通せなくなった。

 恥辱と屈辱で歪み、牙を剥き出しにしながらもまなじりは柔らかく垂れさがっている。諦めと期待、相反する感情を混ぜ込んだ雌の顔。

 

「いい顔すんじゃん。初々しくってアガるぜ」

「お、おれは数えきれねェぐらいの男とヤってきたんだ❤❤馬鹿にすんじゃねェ❤」

「だから馬鹿にしてねえって。マンコは使い込んでんのに、スレてねえのすげえ興奮するわ」


 汁をたっぷり吸った褌をずらしてみれば、剛毛と一緒に雌の匂いが溢れ出す。腋が放つ臭いは自分が雄であると示すための刺激臭だが、下半身から湧き出るのは雄を欲情させるためのどこか甘さを含んだ臭い。

 食虫植物のように獲物を誘い込むのは、恥知らずに陰部を覆う剛毛とあでやかに咲き誇る雌の花。ドス黒く淫水焼けし、緩んだ入り口をしたスリットマンコとこんもりと入り口を盛り上げたケツマンコがセットを誘っていた。

 

「爺とか言ってるけどマンコは現役じゃん。すっげぇひくひくしてやがる」

「ぐうぅ❤❤うっせェ❤てめェのせいだ❤エロいだの、可愛いだの言いやがるからだァ❤❤」

「それで濡れちまったのかぁ。やっぱ可愛いぜ、リンドウさん」

「おおぉおおぉ❤❤❤」


 恥じらいを淫液に変えて噴きこぼすマンコへと、セットの唇が触れた。淫液を吸って藻のようにへたれた陰毛を一本一本丁寧に口に含んで、汁を吸い上げる。吸い付いたまま陰毛を引っ張るとマンコが嫌がるように震えた。

 老いているとは思えない瑞々しいマンコから溢れる甘い匂いに頭を痺れさせ、ピチャピチャと水音を鳴らす。

 

「あ゛っおぉおぉお❤❤❤ンな、汚ねぇとこ舐めねェでくれ❤❤おぉおおぉん❤」


 真っ赤な肉を覗かせる割れ目の上端から会陰部へと、セットは鼻息を吹きかけながら何度も何度も舌先を往復させた。愛液をあまさず飲み干そうとすすり上げ、割れ目の中に舌を突っ込んでグチャグチャにかき回す。リンドウにマンコが愛される音を聞かせるように、いやらしくわざとらしく。


「お゛ぉおぉ❤ん゛ひぃ❤❤」


 そのまま、尻の割れ目に指を差し込んで押し広げるとケツマンコからも愛液が垂れ落ちた。スリットマンコも性器として開発されていたが、肛門はさらに酷い。入り口を尖らせて、愛液を噴きこぼしてちんぽを咥えこむ機関に変容している。ケツ穴の入り口に濡れた陰毛がへばりつき、凄惨な様相を呈していた。

 

「どんだけ汁噴いてんだか。ちんぽ欲しくてたまんなくなってんのか?」

「はァあ゛あぁあぁ❤へお゛っ❤❤て、てめェみたいなクソガキのちんぽなんぞォ❤」


 リンドウの言葉よりも、マンコの方が雄弁だった。尖る肛門を突き回してみれば悦びで打ち震える。もうちんぽを迎え入れる準備はできているのだと、愛液を噴き散らかして開閉する。

 でかい尻肉がくねるのは指先から逃れようとしているからか。しかし、セットの唇はスリットマンコの肉を咥えて離さない。結果、マンコは指先で撫でまわされ、くすぐられ続け、ますます充血して火照っていく。汁と汗で卑猥な輝きを増していく。

 

「んん、スリットマンコの汁も増えてきてんなぁ。ちんぽ欲しいって素直に言えって」

「ん゛ぐぅうぅ❤❤ぐぎいぃいぃ❤❤❤」


 牙を食いしばって嬌声を抑えているくせに、太ももを抱えたままのがなんとも可愛らしかった。手慣れた情夫ならばもっと巧く雄を煽るのだろうが、この老獪な龍は快楽と意地の狭間で翻弄されている。

 愛液で濡れる肛門を指で繰り返し撫でまわし、ゆっくりと押し込むと一瞬すぼまったものの、たやすく指を受け入れた。

 

「ああっぁ~~~❤❤来る、おれのケツマンコにぃいぃ❤❤❤」


 胸や腹の肉に波のような呼吸を打たせ巨漢が悶える。突っ込んだ指を回転させたり前後させたりと芋虫の這いまわりを味あわせれば、直腸はすぐさま迎合して指先を締め付ける。もう一本指を押し付けても美味そうに飲み込んで、出し入れに合わせて断続的に収縮する。

 セットの指先は器用のマンコ肉を泳ぎ、見つけた弱点を撫で回す。普通ならば探し当てるのが困難だが、軽く触れるだけでも腹の肉が跳ねるものだからすぐに見つかった。


「しょ、しょこはやべえぇ❤❤❤あ゛あっ❤マンコ、ぞくってぎぢまううぅ❤❤」

「弱点分かりやすいなぁ。こんな弱いマンコで客の相手よく務まったな」

「んあああぁあぁ❤❤❤」


 量を増したスリットの汁をすすり、唾液と混ぜ合わせてから肛門へ垂らし潤滑油とする。淫乱オイルで塗れた指に対してマンコは何の抵抗もできずに犯されるままであり、屈服の証明たる愛液でマンコを装飾する。前戯に過ぎない段階で既に陶酔とし、指がぐにぐにと動くとつま先がきゅっとくるまり、見悶える。

 

「もうそろそろマンコほぐれてきたか?ちんぽブチこんじまうけど、いいよな?」

「ふお゛おぉおぉ❤❤んおぉお❤あ゛っ❤あ゛っ❤あああぁっ❤❤❤」


 雌膣をかき混ぜる指は同意も拒否も求めていない。二つのマンコからは粘性の高い愛液が吐き出され、マンコ肉の内部だけにとどまらず布団にまで糸を引いていた。でかい尻が動くと間に幾本も柱をかける。

 ただでさえいやらしい尻がてらてらと光り、快楽にくねるさまはたまらなく煽情的だった。

 

「おれは我慢できねえからさ、勝手に始めさせてもらうぜ」

「お゛っ❤ほおおぉ❤❤」


 返事を待たずに指をマンコから引き抜くと、とろりとしたマンコ汁が未練たらしく指に追いすがった。雌としての自分を思い出した肉の蕾が妖しく蠢き、雄を求めて卑しくも口を開閉させている。垂れ落ちる愛液は涎のごとしで、雄臭い下半身は食われるだけの被捕食者へと堕ちる。

 

「挿れるぞ、いいな」

「……っ❤❤❤」


 亀頭と肛門でキスをすると龍の目が見開かれた。その瞳に宿るのは戸惑いと恐怖。それを上回る期待だ。震える舌はちんぽが欲しいと口にしたいのに、誇りが邪魔をしてしまう。そんな顔だ。

 望みを叶えてやってもいいのだが、強気な男を可愛がりたくなるのがセットという男の性分だった。マンコ肉の入り口を竿で擦り立てながら、龍の顔を覗き込む。

 

「な、嫌なのか?嫌だって言えたらやめてやるぜ?年寄りには優しくしないとだしな?」

「ぐ、ぐぞぉ❤」


 悔しそうに噛み締める口にキスを落とした。唇と鈴口で口づけを繰り返し、誇りを捨て去るまで挑発し続ける。下腹部やちんぽに噴きかかるものはスリットから吹きこぼれる潮だ。

 

「なあ、どうなんだよ?リンドウさんに無理言ってして貰ってんだし、無理強いはしねえよ」

「あ、ああぁ❤❤❤」


 リンドウは眉根を寄せて、答えない。代わりに緩んだ口元へ舌を差し込んで、唾液を流し込む。

 

「リンドウさんに種付けしてえんだけどなぁ。スリットにもケツ穴にも、前から犯したら次はでっけぇケツに跨って交尾してえ」


 はらはらと、龍の瞳からしずくが流れ落ちた。けれどそれは悔しさや苦しみ故ではなく。

 

「抱いてやってる間、ずっとリンドウさんのどこがエロくて可愛いか言ってやるよ。喘ぎ声もメスイキしてる時の顔も、全部な」


 耳元で、囁きかける。

 

「リンドウさんとベロチューして、指も絡ませながらセックスしてえんだけどな。駄目かな~~」


 揺れる、揺れる。

 龍の双眼が理性と性欲で揺れ動く。

 

「筋肉が、みっちり詰まって風船みてえなのに柔らかくってさ。ああ、リンドウさんの身体って全部最高だなぁ。抱きついて、腰振りてえなぁ」


 そこで、リンドウの顔を見下ろして微笑みかける。侮蔑ととられてもおかしくはない淫らな言葉を受けて、龍はねっとりした息を吐いていた。嫌悪や意地は瞳から消え失せて、代わりに情欲で潤んでいる。

 老いている、干上がっているなどと自分を貶めようとも雌として扱われる悦びは忘れていなかったようだ。自分を孕ませようとする男へ敬愛と感謝が溢れている。

 

「あ、あんまり」


 こくり、と喉が鳴る。

 

「あんま乱暴に、腰振るんじゃねェ、ぞ❤❤❤」


 ゆっくりと、セットの腰が進む。

 

「お゛、お゛お゛ぉおああぁああぁ~~~❤❤」


 リンドウの雌孔は柔らかくほぐれているくせに、入り口だけはちんぽをきつく締め付けてくる。他人の雄を受け入れるのが久しぶり過ぎて、身体が反射的に拒んでしまうのだろうとセットは判断した。

 無理やりに突き入れないで、入れては引いて、また突き入れて、ゆっくりと自分を直腸の中へ突き進める。

 

「太い゛ぃいいぃ❤❤こりぇ太い❤ふどいぃいぃ❤❤❤抜いでぐでえぇえぇ❤❤」

「あーそりゃ無理だわ。ケツ穴が咥えこんで離しそうにないし」


 一度受け入れた肛門はちんぽにすがりついて離そうとしない。加えてマンコ肉は熟した果実のように蕩けてちんぽが食い込む。もはやマンコ肉の中から逃げるのは不可能だ。

 代わりに腰を推し進めて、ぐりぐりとかき回す。押し出された愛液が溢れ出し、布団を濡らした。リンドウはちんぽの太さに悲鳴を上げるが、マンコはぬめった腸壁で歓迎する。

 

「んぐぅう゛ぅうぅ❤❤来るぅ❤ちんぽクルッ❤おれの、中に、どんどんきちまうよぉおぉぉ❤❤❤」


 ゆっくりと直腸を押し広げるうちにリンドウの悲鳴も甘ったるいものへと変わり始める。鼻にかかった雌の声を漏らしながら、逞しい四肢をセットへと回して来た。子が親にすがりつくように抱き着いて、鼻先を押し付けて甘える。唾液が身体を濡らすが、それも悪い気がしない。

 瞳を覗き込むと快楽によって陶酔として、セットを見つめていた。自分の全てを預け切っている顔だ。

 

「ずっげえぇ❤❤そうだ、ちんぽぉ❤ちんぽって、こんな気持ちいいんだったなァ❤❤❤腹の中、溶けておがじぐなりそうだぁ❤❤」


 リンドウの知性がちんぽが奥に進むほどに蒸発していく。

 太鼓腹や雄っぱいを自ら押し付けてちんぽをもっと奥へと誘い込もうとするさまは、実に手慣れた情夫のそれだ。とても現役を離れて久しい老人には思えない。

 龍マンコの中を軽く擦り上げてみると。筋肉が付いた背中が暴れ出して身体が持ち上がる。嬌声と一緒に粘液をかき回す音が、雄臭い部屋の中で反響する。

 

「坊主ゥ❤すげぇ、ちんぽが❤ちんぽぉ❤❤んむ゛っ❤」


 ちんぽちんぽと繰り返し始めた口を強引に塞ぐ。

 今度のキスは口の中を舐め回すような生易しいものではなく、自分の舌によって口内を犯す激しいものだ。

 唾液を流し込むと同時に舌肉を限界まで突っ込んで、口蓋から歯列からあらゆる場所に自分を擦り付ける。リンドウの舌が快楽に震えるとすぐに舌を巻きつかせ抱きしめ合う。

 

「ん゛ん゛ん゛っ❤❤❤んぅうぅん❤」


 リンドウの舌肉は恥じらいを捨ててセットへと媚びていた。自ら舌を差し出して、セットの歯や口内で愛撫されるがままになる。その顔があまりにも可愛らしく、腰つきが激しくなってしまう。

 

「ん゛ぼぉお゛ぉおぉぉおぉ❤❤❤❤」


 奥を目指して掘り進めていたちんぽが突然後退し、かと思えばマンコ肉を抉り取るように突き上げた。指で探し当てた弱点を押しつぶすように突き上げられてリンドウの目がまぶたに隠れかける。同時にどちゅどちゅと粘液がかき混ぜられる音が鳴り、情事をいやらしく彩った。

 

「む゛ぉおお゛ぉおぉお❤❤んぶぉお゛おぉ❤❤❤お゛お゛ぉお゛ぉおぉーーっ❤❤」


 突然の激しい突き上げにリンドウは耐えきれず、舌を絡め合う口内で嬌声を反響させていた。腰の使い方を変えると喘ぎ声も甘くなったり馬鹿でかくなったりと変わるのを楽しんだあと、ようやく口を離してやった。

 

「あ゛あがあぁあぁっ❤❤❤いぐいぐいぐぅ❤ちんぽでいぐぅぅ❤❤❤❤」

「お、ザーメン漏らしてんじゃん。まだまだ現役行けるんじゃねえ」


 いつの間にかスリットからはちんぽが飛び出して、精液をどぷどぷと漏らしていた。精液の量や粘度もすさまじいが、ちんぽ自体も立派なものだった。発達した筋肉のごとき屈強さを放ち、たくましい曲線を描きながら天を突いている。雄臭さの漲るちんぽだ。


「出るでるぅぅぅ❤❤❤おれのちんぽからザーメン漏れてるぅうぅ❤❤」


 対してリンドウの顔は酷いものだった鋭い牙が並んだ口は間抜けに開いて涎を垂らし、セットへ媚びていた舌は快楽で麻痺しているのか、口からはみ出している。

 瞳だって雄としての誇りを失ってしまっていた。快楽によってどうしようもなく濁っており、ぼんやりとセットを見つめるだけだ。

 

「イイ顔になってきたなぁ。リンドウさんが自分で見られねえのが残念だ」

「あっ❤ぉっほぉおぉ❤❤んあうぅ❤」


 快楽によっていまだに波打っている直腸は、収縮に合わせてセットのちんぽを引き込もうとしていた。きっと、無意識なのだろう。豊満な尻肉も擦りつけ、ちんぽを貪欲に咥えこもうとする。

 身体はこんなにも淫乱に熟れているくせに、心と頭は付いていっていない。自分の下半身がちんぽをしゃぶってしまうたびに可愛らしく喘いでいた。

 

「ああぁ❤動ぐな゛あぁ❤マンコよすぎで、だべだこれぇ❤❤❤」

「いや動いてねえって。リンドウさんのドスケベマンコが勝手にちんぽしゃぶってんだ」

「ふざげんなぁあぁ❤❤そんなことあるわけねえ❤おっほおぉおぉ❤❤❤」


 微動だにしなくても、でかい尻が動いてちんぽをしゃぶってくれている。リンドウは必死にセットへとすがりつき、背中に爪を立てていた。

 

「ほんっとうに、可愛いよなぁリンドウさん」


 快楽に屈し、自分に甘えてすがりつく老練にして雄渾な巨龍。それを可愛いと評さずにいられようか。どうして、腰を動かすのを止められようか。

 

「んっはああぁあぁ❤❤動くな、やべろお゛ぉおおぉ❤❤❤❤」

「無理だって、リンドウさん可愛いしエロいし限界だわもう」


 可愛いと囁きながら腰の動きを速めて行く。我慢汁と称賛の言葉をマンコ肉になすりつけるようにして。

 

「か、可愛い可愛いうるせえんだよお゛おぉ❤❤お゛ぉぉ❤なかえぐれるぅうぅぅ❤❤❤」

「だって本当に可愛いしなぁ。ちんぽ大好きってスケベ顔最高だ」


 可愛いと囁くほどにマンコの締りが、良くなってマンコ襞が反応を良くする。実に素直なマンコに気を良くして突き上げていると、またもやリンドウは絶頂へと向かう。

 

「ん゛っぐぅうう゛ぅうぅうぅ❤❤❤あ゛っ❤またぐるぐるぅううぅ❤❤」


 全身から濃い雌の匂いが放たれたと思うと、太い首が仰け反った。マンコがぎちぎちに締まり、ちんぽが大きく跳ねる。尿道に残っていたザーメンと一緒に透明な汁をぶちまけた。

 何が干上がった年寄りだ、こんなにも汁を零しやがって。頭が割れそうな興奮に任せてリンドウの足首を掴み上げると股を拡げ、荒々しく腰を叩き付け始めた。金玉がでかい尻を打つ音が鳴る。

 

「お゛っ❤❤お゛っ❤お゛っ❤お゛っほおぉおぉおぉ❤❤❤」


 巨尻が打ち鳴らされる音の合間に醜いダミ声が響く。マンコの愛液がかきまぜられる音と、二人の荒い息が協奏する。布団では激しい交尾を受け止めきれず、床がミシミシと鳴る。茶を飲んだ陶器製のコップが音を立てて倒れた。

 リンドウの全身から湯気が噴き出していた。何十年、下手をしたら何百年と溜め込んでいた性欲を解放するように。

 

「おぉおぉ❤❤坊主ぅ❤❤❤ん゛ぉおぉ❤お゛おおおーーっ❤❤」


 セットを求めるように呼んで、マンコが締め付けを強くした。肛門ではなく、雄の子宮がある奥底から順繰りにちんぽをかたどる絡みつきを見せる。精液を搾り取ろうするような締め付けに涎を垂らしそうになるが、リンドウの方はもっと酷い。舌を伸ばしたまま痙攣し、今にも意識を失いそうだった。

 

「リンドウさん、待ってろ。今助けてやるからよ」

「んぼぉお゛ぉおぉ❤❤❤」


 助けるなどといいながらセットが行うのは突き出た舌へと吸い付いた。普段ならもう少し優しさを保てるのだが、今は自分を抑えられなかった。しかもリンドウの舌も震えながら絡んでくるものだからたまらない。

 

「んん゛んぅ❤ん゛ーーっ❤❤❤」


 胸板がふいごのように膨張と収縮を繰り返すうちに、リンドウの呼吸は安定し巧みに舌を使うようになる。情熱的に舌を貪り、快楽を注ごうと舌が踊る。セットに食われるだけではない淫猥な舌の蠢きは、リンドウが熟練の情夫であったと思い知らされて、たまらなかった。

 

「ん、ちゅ❤ぅぅぅうぅん❤❤」

「はふ、んんんっ!」

 

 もっと、舌を絡め合っていたかった。蕩けながら自分を見上げる龍の顔をもっと見ていたい。そう思っていても断続的に締めあげる直腸はちんぽを絶頂という終わりへと導くのだ。

 

「あーったまんねぇ!メス顔もマンコもすっげぇ!イけ!だらしねェメス顔になりながら、イキやがれっ!」

「はははああ゛ぁ❤❤❤激しすぎずるう゛ぅうぅ❤❤いがざれるっ❤ああぉ❤こんな、ガキにマンコ孕まされて雌になるぅうぅうぅ❤❤」」


 リンドウは太ももを抱え上げることをやめ、上気した顔を腕で隠そうとする。喘ぎ、わめきちらす痴態を隠すなんてできはしないのに。

 セットの亀頭が腸壁を抉り続ける。リンドウの雌膣が快楽を逃すまいといちだんと強く収縮し、締め上げるせいで二人の快楽は天井知らずに上がり続けて行く。

 

「ん゛お゛っ❤❤しょこ、弱い゛ぃいぃ❤❤❤そこ突かれるど、雌になっぢまう゛っ❤❤ガキちんぽで負けちまうぅぅ❤❤❤❤」


 自分で弱点を宣言していることすら理解できていない。雄でも店を纏める番頭でもなく、ただの雌となった龍はマンコの行き止まりを突き上げられて、大きく痙攣した。

 

「お゛お゛おおっ❤❤いぐ、いぐうぅうぅ❤❤❤」


 リンドウは涙や鼻水で顔面をぐしゃぐしゃにしながら吠える。弱々しく、知性の欠片も無く、雄としての誇りを全て失った、どうしようもなく可愛いらしい雌の顔で。

 

「たまんねえな!リンドウさんの可愛い顔見てたら、ザーメン昇ってきちまった!」

「言う゛、な゛ああぁあぁ❤❤❤お゛ひぃ❤見るな❤❤やべろ❤か、がわいぐなんがぁ❤❤」


 可愛いと囁けばマンコが悦ぶことを知っているから、セットは腰を叩きつけることも耳元で囁いてやることも止められない。

 最高にいやらしい雌に、最高の射精をしてやることしか頭にはなかった。

 

「よーしイくぞぉ!さいっこうに下品なアクメ面見せてくれよ!」

 

 バチン!と腰と結合部がぶつかる音がしたその刹那だった。

 セットのちんぽが硬直し、リンドウの眼球が完全にひっくり返る。ついに意識すらも手放して、雄渾な龍は種付けをされるだけの肉袋へと成り下がった。

 

 そして、リンドウは忘れ去ってしまっていた感覚を取り戻す。脳が跳ねて、全身で快楽が駆け巡る、アクメと呼ぶあの幸福感を。


「ぉ――お゛ぉお゛お゛お゛おおおぉッ❤❤❤❤」


 スリットから透明な淫乱汁が噴き上がり、小便と見紛う量でセットを濡らす。一方でちんぽから飛び出した白濁液はリンドウの頭を飛び越して、床や壁へと降りかかり、濃度を見せつけるようにへばりつく。

 

「おおっ!すげぇエロい面になってんじゃねえか!すげぇな、こんなトロ顔めったにお目にかかれねえぜ」

「ん゛ぉお゛ぉお゛ぉおおぉ❤❤❤お゛ぉぉおおぉおぉ~~~~~❤❤❤❤❤」


 射精の間もセットの亀頭は結腸を小突き回し、淫らな賛美を繰り返していた。絶頂の最中に快楽を助長され、尽きることなくザーメンが巨根から漏れ続ける。

 リンドウは、その間もアクメ面で吠え続けていた。凄惨で見るに堪えないケダモノのそのものの相貌。けれどもセットには欲情と同時に愛おしさが湧き上がる。

 

「くうぅぅ!もう無理だ!おれもイかせて、もらうぞぉ!」


 どうしようもない愛おしさが引鉄となって、金玉が限界を迎えた。

 最奥まで突き上げる勢いでちんぽを押し込むと、雄臭い喚声が反響した。ぴったりと雄膣に吸い付かれる亀頭から、煮えたぎったザーメンがぶちまけられる。

 

「う゛ぅううぅ!いく、いくうぅううぅ!」

「の゛お゛ぉおおぉっおっおっおっ❤❤❤ザーメンザーメンぎでるぅうぅぅうぅぅぅん❤❤❤❤❤」


 行き止まりにザーメンを吐きかけられている間、リンドウは意識を失って筋肉を震わせていた。ちんぽからザーメンを吐き出して、マンコからもザーメンを逆流させて、錆ついていた赤銅色の鱗は黄ばみがかった白濁で上書きされていく。

 

 リンドウの顔もまた、ザーメンによって真っ白い花が咲き乱れていた。いかつかった雄の顔は、自分を萎びた老人だと笑っていた顔は、雌の悦びで恍惚と笑んだまま、白濁に塗れていた。

 

 ***

 

「はぁ、あ゛……クソ、ケツがいてェ」


 何回目か分からない種付けをされた肛門を擦り、リンドウが顔をしかめた。と言ってもついさきほどまで歓喜に喘ぎ、尻を振っておねだりをしていたのだ。本気で怒っているわけでないのはセットにも分かっている。

 ちんぽで乱れてしまった自分が照れ臭く、誤魔化したいのだろう。今更取り繕っても手遅れだろうに、そんな意地っ張りな部分が微笑ましかった。

 

「何笑ってんだよ。反省してねェな」

「いやー、リンドウさんが可愛すぎるんで、にやけちまった」

「ぐ。だから、可愛いとか言うんじゃねェよバカ野郎」


 ちらりとセットを向いた後、またそっぽを向いてしまう。そうしないと、顔の鱗がもっと真っ赤になっているのがばれてしまうからだ。出会って数刻しか経っていないが、実に分かりやすいなとセットの口元が緩んだ。

 

 今も丸太のような腕を枕代わりに使わせてくれている。柔らかいとはお世辞にも言えないが、汗の匂いと間近にある腋毛の芳香を堪能できるのは最高の寝具と言っても良い。心地が良すぎて、リンドウにぎゅっと抱きついてしまう。

 

「あー幸せぇ……リンドウさんを抱けて本当良かったぁ」

「うるせえ離れろ。腐った匂いのプンプンする爺を抱いて何が良いってんだ」

「だって可愛いし。また店に来れたら指名するよ」

「てめェなんか出禁だ出禁。相手してたら寿命が縮んじまう」


 罵倒しながらも片眉を持ち上げていた。情交の後も生々しい顔は見ているとまたちんぽが硬くなりそうだった。雄々しいたてがみが汗でへたって、涙を流しすぎて赤い目元が恐ろしく煽情的だ。

 こんなにいやらしい生物が自分の魅力を自覚できないなんて許せなかった。今度と言わずに体力が回復したらすぐさま抱こう。そう決意して胸板に頬を寄せる。

 

「リンドウさんは腐ってなんかないって。鱗もすべすべで柔らけぇし、マジエロくって、良い匂いするし」

「だから、テメェは狂って……いや、ヒトってのはそういうもンなのか」


 やりにくいったらねェな。そうこぼすがまんざらでもなさそうな顔だった。セットの枕を務めてくれていた腕が頭をゆっくりと撫で始める。

 暖かい身体とあやすような指の動きは情事で疲労した身体に心地よく、油断すると寝てしまいそうだ。

 

「そのまま寝ちまえよ。朝までは隣にいてやるからよ」

「ん……でも、もうちょっとだけ」

「年寄りの言うことは聞きやがれ。ったく、手間のかかるガキだ」


 侵略してくる微睡みには抗えず、肉の布団に埋もれたまま視界を閉ざす。もっとリンドウを愛せなかったこと、可愛いと言ってやれないことが悔しかった。

 

「もうさんざん自分がエロ爺だって思い知らされたよ。マナが腐ってようがカビくせェ身体だろうと構わずちんぽ勃たせちまうエロ坊主のせいでな」


 意識が落ちて行く間もずっとリンドウの声が聞こえていた。子守歌のように優しく落ち着いていた声色は普段の威厳に満ちた声とも嬌声とも違うもの。もっと聞いていたかったが、眠気がそれを許してくれない。

 

「てめェみてェなエロガキが相手なら――も幸せになれたのかもなァ。勇者なんか選んだ――も悪いが、それでも――で――――」


 声が途切れ途切れに聞こえるうちに、自分の意識が断続的に失われているのだと気づいた。ついに意識を失いセットは安穏とした夢の中へと堕ちる。匂いも、身体のぬくもりも、何もかもを感じ取れなくなって。


「また来いよ、セット。それまでは長生きしといてやるからよ」


 その声だけは、はっきりと耳に残ったままだった。

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