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大昔に考えていた話が急に息を吹き返した感じです。吹き返します。

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 夜の王といえば夢を操れるサキュバスか、夜に限って恐ろしい力を振るう吸血鬼のどちらかだろう。執事として彼が仕えているのは吸血鬼の方だ。しかも始祖の直系の娘にあたる。

 彼女の寝室を開けると、薄暗がりでもはっきり分かるブロンドの髪と胸を貫くような赫い眼光が瞬く。それは床の上に転がっていた。

「ベッドから落ちたなら呼んでください、お嬢様」

 しかし吸血鬼というのは正しくない。彼女は人間と吸血鬼の間にできたダンピールという種だ。日光が致命的にならないが、代わりに1人で立てないほど力を失う。血液を摂取せずとも生きていけるが、吸血鬼ほどの力は持たない。

 ただ彼女はそもそも立てない。全力でも自力でできるのはせいぜい、その場でのたうち回る程度だ。

「こら。もうお嬢様の時間じゃないだろ」

 彼女の手足はそれぞれ肘と膝が残らないように切除されていた。純正な吸血鬼なら再生できただろうが彼女はダンピールで、更に切断面を純銀のコテで灼かれていた。

 かつて彼女は母親の不在時にヴァンパイア・ハンターに襲われた。母が戻ってくるまでの七日七晩を拷問されて過ごした。その傷痕はこびり付いているが、今はいやに光沢がある黒いスーツで隠されている。

 体はぐちゃぐちゃだが顔は全くの無傷だった。彼女はヴァンパイア・ハンターに2択を迫られて、体をめちゃくちゃにされる方を選んだ。

 彼はそっと彼女の体を抱え上げる。背中に手を滑り込ませると彼女の体が強ばった。

「すまん」

 背中はほとんど全面が火傷跡だ。ケロイドになり肥厚したそこは触覚が変容していて、独特な感覚が彼女のトラウマを惹起する。

「大丈夫ですよ」

 そのヴァンパイア・ハンターは彼が死なせていた。荒くれ者の多い界隈だから、不必要に仕事で競い合って『不慮の事故』が起きてしまった。

 彼はヴァンパイア・ハンターを生業としていた。別に何かしらの教義があってしていた訳ではない。単純にその仕事ができて稼げただけだ。

 だから同士撃ちだったり負傷だったりで割に合わなくなれば、趣味のチェロが怪我で数ヶ月に渡って弾けなくなったのがトドメだったが、後腐れなく辞めて吸血鬼の館で執事になることができた。いつかは安定した仕事で身を落ち着かせたいという考えもあった。

 そっとベッドに寝かせると彼は毛布をかけてそそくさと出ようとする。

「ん、ションベンさせて」

「こら、言葉遣い」

 踵を返して彼はおまるを持ち出す。ベッドに仰向けで横たわる彼女の股ぐらをまさぐると銀色の細い棒を抜去する。その途端に黄金色の液体がいやに耳障りな音を立てながら陶器の器に注がれる。

「大きい方はいいですか?」

「また前みたいにしてほしいな……」

「ダメです」

 流れが止まると汚れを拭き取って、再び尿道に栓してスーツを閉じる。彼女の排泄機構は殆ど喪われている。尿と同じように便も体に異物を埋めてせき止めている。前までおむつだったが、いろいろあってこんな管理になった。

 彼女自身では栓を外すことができない。それは彼の仕事だ。求めを断ることはないが、排泄を彼に支配されていることになる。

 全身のスーツも同じだ。そうそうなことで彼女はスーツを脱ぐことはない。体にぴっちり吸い付くようで拘束感もあるだろうに、彼女は逃れられない。傷痕の治療になっているのは確かだが浄化魔法を使ってまで1ヶ月も着続ける必要は全くない。

 背中や腹にファスナーのないそれは首の開口部から体を滑り込ませるように著る。彼女を絞める首輪は着けた者にしか外せないように錠つきのものだ。

 そんな首輪をつけたのは彼だが実ところ外させてもらいたかった。スカーフとドレスで隠しているが、吸血鬼の集まりの度に露呈しないかヒヤヒヤしている。ゴムのつなぎ服は言い訳が効くが首輪は言い逃れできない。

「もー! 甲斐性無し! 私の旦那様でしょ!? しっかりしてよ!」

 ジタバタと彼女はベッドの上で短い手足を振り回す。波打ったマットレスでおまるがひっくり返りそうになって、慌てて彼は拾い上げるように尿を回収し、安定した床に置く。

「いやいやいや甲斐甲斐しくお世話してるでしょう!?」

 ヴァンパイア・ハンターによって壊されたダンピールの娘が、元とはいえ腕が立ち名が知れているヴァンパイア・ハンターの男に求婚して婚姻関係にあるというのは公言しにくい。世間では彼が屈服させられた体で通っている。

 実生活はかなり逆だ。もともと吸血鬼はマゾっ気が強いと、彼女の母から彼に告げ口されている。体が頑丈で色々と受け入れられたり、高貴な身分だからそれを毀損されるカタルシスが強いのだという。

 吸血鬼はその呪いのような殖え方から性欲がかなり低く、マゾヒズムが顕現することは少ないが彼女には人の血が混ざっている。人間には発情期がない。

「はあ……明日は休みよね?」

「僕は違いますけど」

「従者気取りなら私を満足させなさいよ。おしっこのとき気付いてたでしょ」

 尿ではない別の体液が垂れていたことに彼は気付いていながら言及しなかった。

「いいんですか?」

「はいはい……たくさんかわいがってください、旦那様」

 このモードでも彼の気分はあんまり変わらない。なんせ彼女は結構わがままだ。偶然にも今日だけは違った。

「覚悟してくださいね」

 彼は遠縁に狼男がいる。血は薄いが、そのせいか気分にムラがある。今日は十六夜でいちばん昂ぶりがちな時期だ。しかもここ2週間程ご無沙汰で、忙しさにかまけて自分でも慰めていない。

「うん、旦那様のすきにしてください」

 パンツが脱ぎ捨てられる。そこから露わになったのは彼女の失った腕ほどもある彼の陰茎だ。これでまだ萎えた状態なのだから、なお大きく固くなる。

 股を開かせて彼は彼女に覆い被さる。彼女は膣内をかき回される衝撃に備えようとした。

 だけどいつまで経っても来ない。もうとっくに勃ち上がって、互いに臨戦態勢にある。

 何も言わず彼女をひっくり返すと半ば押し潰すように怒張をねじ込んだ。背中は彼女のトラウマスイッチだが、そこを彼の鍛え上げられた硬い胸板が圧迫する。

「ちょっ、待って! 好きにしていいって言ったけど犬みたいなのは!」

「イヤなら抵抗しろよ」

 吐き捨てるように彼は言った。背中をベッドに預けられる正常位以外の体位はあまり取らない。まして後背位は今夜が初めてだ。

 行為を止めるセーフワードは決めてある。2文字の短い単語なのに彼女はそれを言わなかった。

 四つ足で立ってしまうと6日目に最後まで残っていた左腕を落とされて、犬のように引きずり回された記憶が蘇ってくる。ないはずの部分が蘇ったようにズキズキと痛みを発する。あの7日で彼女の色々な部分がねじ曲がってしまった。

 悲鳴とも嬌声ともとれる声はベッドに埋まってこもって聞えた。息が苦しくなって頭に血が上る感じがしてもがいているのに彼はお構いなしで叩きつけるみたいにピストンを加える。

「ぎぃッい゛ッぐぅぅぅ、い゛だい゛、い゛だい゛ぃよおぉおぉぉゔあ゛ぁ゛ぁがッ」

 それなのに彼女を支配したのは振り切れるような多幸感だった。許容を超えた恐怖で安全機構が働いたのか、しばらくご無沙汰だったからか、慣れない体位で普段は当たらないところに刺激が入ったからか、そんなことを内省する思考は彼女から消し飛んだ。

 乱暴のなかに、腹側に這わされた彼の腕はいやに温かくて包みこむようだ。胎の中を蹂躙する肉棒は彼の手にも位置を主張した。

「……ナタリア」

 耳元で囁くように呟いた。快感に振り回されているだけなら楽だったのに、彼は繋ぎ止めようとする。慣性が働いて、色々な感情が胸に去来した。

「ばかぁっ、だめなのっ。こ、こんなときにっなみゃえ呼ぶなぁ!」

「その口の効き方はなんだ」

 立ち膝になりながら彼は彼女の太ももを掴んで持ち上げる。今度は深い部分を抉るようで心臓の辺りまで貫かれたかと錯覚してしまう。

「はひゅっ、ごめんなしゃいっ! ごめんなしゃいぃぃぃ!」

 じっとりした動きから徐々にペースを上げていく。もう何度も絶頂を迎えている彼女に対して彼はまだだ。

 遂に彼女の体が持ち上がる。彼は脇を支えて物のようにして自分の一物を扱く。そろそろ彼も限界だった。

 彼は手を離した。重力に従って彼女の体に沈み込む。トプッと最後の肉の輪を貫通した途端に爆ぜた。

「しきゅ、ナカ、あ、だめ、これ」

 

 注ぎきった後で彼は胸糞悪さを覚えた。引き抜くと自分でも引き笑いしてしまうほどの白濁が溢れ出る。シーツの洗濯は彼だ。

「あ、えっと、ナタリアさん」

「……もうしないで」

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初期t2i出力。


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