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キャプション書いたら全体公開します。

えらく大切そうにテディベアを両腕に抱えて、彼女はただ広い屋敷を歩く。一定のペースでギュッと身に寄せては、また腕を弛緩させる。

 昔は彼女もクマのぬいぐるみが好きだった。だけど今はいくらか違う。

「こんなところにいたのか」

 男から声をかけられる。彼がこの屋敷の主で、彼女がここにいる理由だ。

「探したよ」

 彼の一言一言で彼女は身が竦む思いだ。なんせ彼女の横隔膜を取ったのは彼だった。

 テディベアの頭と足先からは金色に輝くチューブが伸びていた。テディベアの腹には弾力性のある袋が仕込んであって、それを手で潰すと彼女の胸元に開いた穴から空気が吹き込まれる。

 横隔膜が全くなくなって胸郭を動かせなくなった彼女は、手を止めれば窒息する。頬袋を空気袋にするだなんて小賢しいことができないようにゴム製の異物で塞がれた。

 起きている間はずっとテディベアに意識を向け続けなければいけない。睡眠時は流石に人工呼吸器に繋いでもらえるが、そうしてもらえなければ意識を手放したあと二度と目を覚ませない。三日間の断眠でも、彼女には深い傷跡を残した。

 任期付きのはずだった。だけどこんな体にされては、彼女は次の契約更改を受諾する他に無かった。こんな体で放り出されたら生きていけない。テディベアだって剥奪されるだろう。

「じゃあ、ここでシてもらおうかな」

 男は彼女の口元に手を伸ばす。栓があって、それを引き抜けば赤い粘膜が露出する。風は通らなかった。

 命と同じくらい大切なぬいぐるみもこの時ばかりは首輪からぶら下がるばかりだ。

 彼女の手が伸びた先には男が穿くスラックスのジッパーがあった。

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