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「あの……そろそろ3日経つ気がするんですけど、脱がせてもらえませんか」

「まだおむつがいっぱいになっていないのでダメです」

 彼女からは見えにくいが、尻尾の腹側が透明になっていて中に詰まった吸収体が覗ける。それは湿気を吸って膨らむだけでなく、水色に変色する吸水ポリマーでできている。尻尾の先までしっかり水色に変わったら、十分に使い切ったとしておむつスーツを脱がせてもらえる契約だ。

 ここに入る前、しっかり5本の指が使えた最後の時間に彼女は書類に名前を残した。五枚つづりのそれを、彼女はよく読み込むべきだっただろう。新型のシャチおむつスーツのテスト期間中、かなりの範囲で私権を制限されている。

 まだ脱げないと知った彼女はやや憤慨したようにそっぽを向いた。その動きにいくらか遅れて、先端で二股に分かれた尻尾が揺れる。

 だが、不意に彼女の歩みが止まる。ほぼ同時に水を切る音が聞こえた。遮音性の高い壁に囲まれて、環境音が小さい中でよく響く。

 赤面した様子から、おそらく不本意だったのだろう。トイレに悩まされない生活が始まって、およそ3歳頃に身についた学習が解けはじめている。

 もちろん固形物が少なく味気ない毎日の食事の中に含まれる、特定の筋肉の緊張をほぐす成分の影響も十二分にある。当然、彼女は知る由もない。

 水分を受けて薄い青色のナワバリが広がる。この調子だと彼女はもう1週間ほどはスーツに閉じ込められるだろう。

 今のスーツを脱げたとして、必ずしも彼女がここから解放されることを意味していない。

元になった絵は↓です。

性癖には刺さったけど構図がどうしても合わなくて泣く泣く不採用にしたサムネ。


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