ルペルとクレイ (Pixiv Fanbox)
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巨メスケモ
ふんどし
バレンタイン
土の壁越しに歓声が響く。待合室で待機していたクレイにとってはその目で目の当たりにするまで吉報か凶報か分からなかった。
彼は部屋を飛び出して、彼の身分で近づける限界で闘技場の出入り口に立った。その先は長く緩やかなスロープになっていて砂が敷き詰められている。
やがて光の中から人影が現れる。一人は堂々と、もう一人は係員に両脇を抱えられて引きずられるように陽の当たりが悪い半地下に帰ってきた。
その跡には血が残った。それは勝利の証であるが、傷付いた相手がいると思うとクレイは素直に喜べなかった。
「おかえりなさい」
彼は声をかける。相手は背丈が二倍もあろうかという牝の獣人だ。この国のヒトではなく遠くの国の、人外が集うところの出身である。名前は、それが本当の名であるか分からないがルペルと呼ばれている。
「今日も勝てたね。おめでとう」
「ああ」
彼女の返事は素っ気ないものだ。相手が盟を同じとする同族とあっては無理もない。少し前まで互いに取り合っていたはずなのに、今は刃を交えている。
対戦相手は血だらけだがそれでも手加減はした方だ。頭部の切り傷は見た目の割に案外大したことない。剣奴としての生命が絶たれることなく、傷が癒えれば戦線復帰できる。
相手が人間だったら大変だ。基本的に命を奪うところまではルール上推奨されていない。しかし彼女は人間だと殺そうとする。その身に起きたことを考えれば妥当であり、観客だってそれを望んで見に来ている。
だからクレイは気をもんでばかりだ。いつ、その刃がこちらを向くか分からない。彼が出自のわりに高給取りなのはそれが理由だった。彼の雇い主はそれなりに理解がある側だった。
ルペルの戦歴は悪くない。飼い主も高名な貴族だから闘技場に専用のコンディショニングルームが用意されている。
彼女を連れて部屋に入ると真っ先に半裸の彼女にブランケットを渡す。闘技場では男女を問わず、身につけられる衣類は局部を隠す布きれだけと定められてる。獣の彼女らに乳房を隠すものは不要とされているが、クレイは彼女達にも恥じらいというものがあると知っていた。
「どこか痛む場所はある?」
「ない」
目視でも確認はするが、怪我の有無は重要だ。勝者の彼女はこの後も試合が続く。もしも見逃してコンディション不良なんてことがあれば怒られるのはクレイだ。
貴族の賭博になっているから、しくじればその身で償えない負債が発生しうる。
見た限りでいえば問題なかった。そしてクレイは薄汚れ黄みを帯びた腰蓑を解く。その下からは金属のまわしが現れた。それは衝撃を吸収する防具というだけでなく、自分で自分を慰めることを防いでいた。
獣人には定期的に発情期が訪れる。その間の彼女らはとにかく気が立っている。解消するのは簡単だが、あえてさせないことで戦士としての質を高める。そのフラストレーションが試合での力になる。
洗浄を目的として貞操帯が外されるのは最低でも一週間おきだ。そしてその鍵はクレイが持っている。今日がその解錠日だ。
性器の封印を解く鍵の所在は明らかにしない。もし露呈したなら、彼女は力尽くで奪い取ってくるだろう。
現に、部屋に備え付けられた浴室に入るとクレイは壁に追い込まれて、ルペルがその上に覆い被さった。荒い鼻息が彼の頬を撫でる。
「……待って。まだダメだよ」
凜とした顔で敵と対峙し、軽やかに剣で切り伏せる。戦場でそんな顔をしていてもこのバックステージでは惚けたメスの顔を抑えられない。
発情期があるといっても、人間と違って常時気分によって現れるものではない。だけど、それを人と変わらず継続させる方法がある。クレイが在学中に編み出した技法だった。
「離れろ」
指示通りに彼女はクレイから距離を置いた。彼は懐から小さな銀色の鍵を取り出した。彼女の下腹部のところにある鍵穴に差し込んで回すとカチリと音がして彼女の身から金物が落ちる。
「気をつけ」
クレイがそう言うとルペルは背筋を伸ばして手を頭の後ろで組む。それが洗浄を受ける時の基本姿勢だ。
汗と垢にまみれた野性的な臭いが広がる。女性器からは紐が垂れている。それこそクレイが開発した器具である。紐を掴んで引きずり出すと繋がった石ころ二つが出てきた。多孔質のそれは今でこそ彼女の愛液にまみれている。
クレイは両手に石鹸を泡立てて彼女の局部に触れる。絶頂させる気は全くないが、汚れを落とすと共に彼女を際限なく高ぶらせようとした。
洗い終えるとクレイは彼女の陰核を口に含んで舌先で転がす。汗と垢の塩気とえぐみがクレイの口に広がる。
嬌声が上がって、彼女が達しようというときにスイッチを落とすように放した。上気しきった表情で彼女はクレイを見下ろす。期待する目をしても無駄だった。
「我慢だよ……」
クレイは小瓶を取り出した。その中には彼女の中から出てきた石ころ二つと同じものが入っている。瓶を満たす液体の正体は様々な植物から抽出した薬液だ。どれも女を狂わせる効果を持っていて、石に薬液を吸着させると徐々に放出されることで継続的な効果を発揮する。
「なあ」
ルペルが声を掛ける。クレイは手を止めた。
「どうしたの」
「もっと、奥をかき混ぜてくれ」
彼女はぶっきらぼうな口ぶりだった。それがせめての抵抗だ。
「……欲しい?」
彼女は頷いた。
「ちゃんとおねだりして」
彼女は腰を落とし、股を広げた蹲踞の姿勢をする。そして自分で自分の秘所を押し広げて粘膜を露出させる。媚びるように腰を揺らせば粘り気のある体液が垂れた。
「これで満足か?」
彼女はクレイを睨んだ。
「ん~素直じゃないけど……いっか、いいよ」
爪を丁寧に詰めている指先に愛液を塗りたくって割れ目に差し込む。溜めた息が漏れた。もっと求めるかのように、彼の指を絞める。
ここまでくると興奮しているのはルペルだけではない。クレイも股間の肉茎を怒張させていた。しかし支配する側という立場が彼に正気を保たせていた。人に形が似ているからというが、それでも獣人は動物と同じだ。犬や猫相手に興奮することがあってはならない。
散々、指でかき回して彼は指を抜いた。これ以上したらあっさりイってしまう。それでは面白くなかった。
ルペルは彼の足元に跪いた。身長が高い分いくらか窮屈そうだったが、彼の股間に鼻を押しつけて息をした。動物として、様々な感覚が優れている。だからそれは強烈で、彼女の脳を蕩けさせた。
劇的な効き目だった。切れ長の目尻が垂れてきた。ピリピリした雰囲気も和らいできた。
性的欲求を溜めさせている、というのは一部間違っている。表向き、世間に認められた方法だと一切の性感を許さない。興行として目の前でエサを吊らされて狂ったように争う動物を求められている。
ルペルは違う。冷静に立ち回って相手を撃退している。相手方がたいてい正気を失っている側だから、その対比を面白がって求められていた。
とはいえクレイはルールを定めていた。絶頂は彼のペニスによってのみ与えられる。それが長く続くと、ルペルの頭に変化をもたらした。
臭いを取り込もうと息が荒くなる。彼の体臭、特に陰部の臭いは彼女にとって小石に染み込ませた汁より効く媚毒に成り果てていた。
「もう、もういいか? 今日は良い日だよな?」
上目遣いでルペルは尋ねる。ドキリと胸に刺さる気持ちを、クレイは抑えるのに必死だった。
「よし――」
言い切るよりはやく、食い気味にルペルは彼のズボンを下ろした。ガチガチになった陰茎を目の当たりにすると彼女は息を飲んだ。
そして一気に、口いっぱいに頬張った。鋭い牙で傷付けないように気を配りながらも、いくらか乱暴さは残る。骨格の構造からして喉奥を蹴られるほどではない。それでも舌いっぱいに男の味を味わった彼女は、それだけで甘くイった。
それはクレイにも分かった。黄金色の液体が床にぶちまけられたからだ。彼女にはそういう癖がある。浴室で良かったと彼は思った。
しばらくそうしていたが、今度はルペルの方が焦らしてきた。外で射精させるのは、曰くもったいないらしい。彼女は彼を床に打ち倒した。こうなると制御が利かずクレイには止められない。
それでも彼はルペルを信じていた。だから食い殺される不安を抱えつつも身を委ねる。
クレイの方だって限界だった。昂ぶった一物が揺れて、先端から粘液の糸を引く。ルペルは組み伏せたまま、肉の割れ目に差し込んだ。
一気に奥まで捻じ入れて、しばらくその余韻に浸る。それからゆっくりと腰を動かす。上下に、左右に、捻りを加える。
クレイのペニスは年相応に、そう胸を張って大きいと言える代物ではない。だけどその固さと形状は彼女の淫壺のかゆいところに届く。指先や石ころでは叩けない、降りてきた子宮が形作る膣の歪みを亀頭が刮ぎ落とす。
最初に動いていたのはルペルだけだったのに、クレイも拘束されながら腰を浮かせようとする。それを抵抗だと勘違いしたルペルは意志を吸い出すかのように口づけをした。
長い舌を無理に押し込んで、やたら唾液を流し込む。喉が詰まりかけて窒息しそうになると、それに反応するみたいに彼の肉棒が固くなる。
鍛えているルペルと違ってクレイは息が上がるのも早かった。苦しくなるほどに腰から抜ける快感が強くなっていく。
そして一段と跳ねて、白濁液をルペルの胎内に吐き出した。拍動して、子を育むための種を仕込む。ただ、人間と獣人の間では子ができにくいとは分かっていた。
それでもナカに出したことに変わりない。射精をしていくらか冷静になると、人でなしに夫婦の育みと似た行為をしてしまったと恥を覚えた。
「もう、だめだよ、また」
しなびて、ペニスが引き抜かれる。自然と、白濁液がクレイの体の上に垂れてきた。
「そうだな」
いくらか気まずかった。ルペルも思うところがあるようで、ことを済ませた後でよそよそしい態度を取り戻す。
クレイは余計にできた汚れを洗い流して、膣に小石を入れ直す。そうすると、精液を閉じ込める格好になる。作業に夢中になっていて、優しく微笑んだルペルには気付かなかった。
いつまでも彼女らが剣闘奴隷の身分に留まっていることはない。勝ち続けて表彰を受け、人間の身請け人を見つけたら解放される。
しかし実際、顕彰を受けるほど強い猛獣の彼女らを牙を残したまま好き好んで手元に置く者は少ない。だがいない訳でもない。
「もうすぐだ、クレイ」
「そうだね、ルペル」
順当にいけば、ルペルが身分を得るのは数ヶ月以内だ。ちょうど、その日はお祭りでルペルは華々しく引退することになる。
昔、ある神父がいた。彼はどんな二人にも神の名をもって婚姻の許しを出していた。当然、彼は教会本部に咎められて処刑された。だが彼が道を開いた自由な恋愛、結婚を讃えたお祭りが開かれる。
二人が結ばれるのはそんな日だった。