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校長スパルティは悩んでいた。

計画は順調に進んでいたが、資金繰りが難航していたのである。

クーデターのために嵐の国の傭兵を雇ったり、にゃいんぶっく社に多額の投資をしてアプリ開発をしたり、〈秘蔵の子〉を手に入れたり、何かと裏工作に金を使いすぎた。

しかし、まだ資金は回収できていない。この計画が完遂した暁には、国家予算ほどの資金を得るのも容易いはずだが、そのまえに運転資金が尽きてしまう。それだけはなんとか避けなければ……。

「ねえ、お金がほしいかい?」

悪魔の囁きが、かけられた。

「誰だ……っ!」

「お金が、ほしいかい?僕はナーペル。ちょっとしたビジネスをやっているのさ。」

どこから侵入したのか、見た目は幼い少年のような子供が、校長室の片隅に立っていた。

〈子攫いナーペル〉の異名を持つ少年。裏の世界に与している者ならその名前を聞いた事があった。

裏で人身売買を行っている、闇の世界の住人。

***


「なるほど、これはなかなかのいい"商品"だね。」

ナーペルはにやりと笑った。

「価値がありそうな生徒を選んでみたんだが……売れるだろうか」

地下牢には、捕縛されたソフィ、エクセリア、ルカの姿があった。服を全て脱がされて全裸で鎖に繋がれている。腕の自由を奪われているため、局部を隠すことすら許されていない。

牢の鉄格子ごしに、強い非難の目を向けていた。

「もちろんさ!きっと高値がつくよ。さっそくオークションにかけてこよう。」

「オークション?ここでやるのか?」

「今は"これ"があるのさ」

ナーペルが取り出したのは〈すにゃほ〉だ。それでパシャパシャと"商品"達の裸の写真を撮影していく。

「ほーら、もっと笑って。そんな怖い顔してたら、高い値がつかないよ~?もっと奴隷らしく、忠実なポーズをとってごらん~」

「奴隷…!?私達がですか…?」

「こんのーーー!離しやがれーー!」

「……。」

ルカ達が激しく抵抗する。しかし拘束は解けない。物理的な手枷だけでなく、〈支配〉の力でも抵抗を弱めているのだ。エクセリアは諦めの表情でうつむいていた。

***




彼女たちは無事出品されたようで、ナーペルの持つすにゃほからは、次々と入札件数が増えていく様子が見える。スパルティがそれをやや不安げに見つめていた。。

「おい……これって足がついたらまずいんじゃないか?」

「大丈夫。このオークションは、普通の手段ではアクセスすることの出来ないダークウェブの中にあるのさ。ごく一部の会員しかアクセスできない。

大富豪、政治家、裏世界の支配者、王国貴族や特権階級を持つ人達。彼らは使い切れないほどのお金を持っている。そういう人たちの中から好事家を集めて会員制にしたのがこのオークションサイトさ。」

ナーペルは誇らしげにそう言った。なるほど〈ナーペル商会〉と書いてある。おおかた、ここでの取引の一部を手数料として取る仕組みなのだろう。

「ほら、もう1000万トライドルの値がついたよ!この先もどんどん上がっていくだろうね!」

ナーペルが嬉しそうに叫んだ。これ見よがしに"自分"の商品ページを彼女たちに見せてやる。次々と増えていく入札件数を、彼女たちはただじっと見つめていた。

「やっぱり王族のブランドは強いなぁ。政治的利用価値もあるからだろうね。さらに処女なら価値は2倍以上さ。性奴隷の調教をするなら、やっぱり処女からスタートしたいよね。」

とんでもない事に手を出してしまったな、とスパルティは冷や汗をかいていた。つい昨日までは普通の学生として生活していた生徒たちを、性奴隷として売りに出してしまったのだ。明日から一体どんな扱いを受けることになるのだろうか。自分の一存で三人の少女達の未来をめちゃくちゃにしてしまったのだ。

もはや後戻りはできない。と強く実感する。

この計画は、なんとしてでも成功させなければ……。そのためには多少の犠牲もやむをえまい。

***

最終的に、ルカは2億、エクセリアは3億、ソフィには5億で落札された。

わずか1日のうちに、10億$$$もの莫大な資金を手にしてしまい、彼女たちへの申し訳無さよりも、興奮のほうが上回った。

(これは儲かるぞ……。もっと生徒を売りに出せば、簡単に資金が手に入るじゃないか。)

次は誰を商品にするべきか、生徒名簿を引っ張り出してきて目星をつけていく。

(光焔の御子、贖罪の聖女。まずこの二人はそこそこ高く売れるだろう。あとは暁闇の元魔王か。うまく宣伝すれば、売れるかもしれない。

しかし……他にいまいちめぼしい生徒が見つからないな。

帝国海軍の少尉…。うーん、悪くはないが、インパクトはあまり強くないな。)

このあたりを全部あわせて5億~7億ってところだろうか。

残りのメンバーはいまいち社会的地位もなく、普通の少女の価格でしか売れそうにない。

(くそ、もっと高値で売れる生徒はいないのか!)

「いるじゃないかー!」

ナーペルが一人の生徒名簿を指さした。それはティナのページだった。

「プレシャス・チルドレン。ひょっとすると、前の3人よりも高値で売れるかもね」

「そんなにすごいのか?そのプレシャスってのは」

「ははははは!君は人間の価値がわからない男だね!この女はボクが買い取っちゃおうかな~」

ナーペルがニヤリと笑った。

まるで、はじめからそれが狙いであるかのようだった。

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