【映画】トイストーリー4 感想・考察 (Pixiv Fanbox)
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トイストーリー4を観てきました。
ネタバレを喰らう前に観たかったので初日に行きました。
なんだかんだ言われてますが僕は楽しい映画だったと思います。
個人的にはシリーズ内でもかなり好きな部類です。
ただ酷評される理由も理解できます。
せっかくなので、なぜ世間で酷評されているのか、何が悪かったのか、
逆に良い点はどこだったのかを僕なりに考えてみたいと思います。
先に言ってしまうとトイストーリー4は、
「欠点は多いが魅力もたくさん詰まっている映画」です。
その理由を解説しますので、映画を観た人はぜひ読んでみてください。
!!!ここから先ネタバレ注意!!!
■もくじ
ファンから反感を買う理由(1)
ファンから反感を買う理由(2)
ファンから反感を買う理由(3)
ファンから反感を買う理由(4)
脚本の欠点(1)
脚本の欠点(2)
トイストーリー4の良いところ(1)
トイストーリー4の良いところ(2)
トイストーリー4の良いところ(3)
トイストーリー4の良いところ(4)
トイストーリー4の良いところ(5)
■
今回のトイストーリー、「シリーズファン向け」という点で見ると確かに結構酷いです。
まずは酷いと思う理由から考えてみます。
■
ファンから反感を買う理由(1)
「ウッディとバズの性格が過去作をまったく踏襲していない」
バズは今作で「内なる声」という名の、
自分の体のスイッチを押すと出てくるオモチャ音声をひたすら妄信して動き続けます。
バズは「1」で使命から解放され、自分自身の意思で生きることを選択したはずです。
それが今になってまた急に思考放棄しだしたのはファンとしてはガッカリ要素でしょう。
フォーキーを取り戻すことに固執して仲間を巻き込もうとして呆れられ、
独りぼっちになったウッディに力を貸す展開になるかと思いきや、
バズはオモチャ音声に「やめておけ」「帰れ」と言われてウッディの元を去ります。
いやいや、君たち相棒じゃなかったん?と、ここは僕も正直ガッカリしました。
他の誰に嫌われても、バズだけは最後までウッディの味方でいてほしかったです。
何か主義主張の食い違いで衝突するのならばいいのですが、
オモチャの音声に判断を委ねて離反というのは薄っぺらくて好きじゃありません。
シリーズを通して重ねてきたウッディとバズの絆を否定されたようで、
観ていて悲しかったです。
ウッディに関しても同様に、
最後の選択で今までの仲間と離れてボーの元に行くことを決意するのですが、
それまでの思考過程がよく分かりませんでした。
ウッディはとにかく仲間思いで、持ち主思いで、
オモチャとして人間に遊ばれることに強くこだわるキャラクターでしたが、
持ち主や仲間と離別するにはちょっと根拠や描写が足りなかったと思います。
確かにボニーからは要らないオモチャ扱いされていたかもしれませんが、
「それでも俺はボニーと仲間たちの元に戻る」
と言った方がウッディらしかったと思います。
だって他の誰でもない、あのアンディがボニーにウッディを託したわけですから。
そこの出来事を覆すのならば、
何かウッディの信念を決定的に変えるイベントがもっと必要だったと感じました。
ファンから反感を買う理由(2)
「前作のラストを否定するような脚本」
前作「3」のラストで、アンディは次の持ち主・ボニーに自分のオモチャを託します。
ところが「4」でボニーはウッディをクローゼットにしまい込んであまり遊びません。
これに関しては「3」のラストに泥を塗りやがって……と、
ファンから反感を買うのも仕方ないと思います。
アンディがウッディの足の裏に書いた名前を、ボニーは自分の名前で上書きしました。
「持ち主とオモチャの関係」をボニーが継承した証です。
アンディの元を離れるのは凄く悲しいけど、ボニーに大切にしてもらえるなら……と、
「3」のラストで涙を流した人は多かったと思います。僕も泣きました。
それなのにボニーは……という感情は非常によく理解できます。
ファンから反感を買う理由(3)
「過去作のキャラが何も干渉してこない」
レックス、スリンキー、ハム、ポテトヘッド、アーミーなど、
今までの作品のキャラクターたちはただ出てくるだけでほぼ物語に干渉しません。
バズとジェシーだけはかろうじて物語に絡んできていましたが、
個人的にはこれも「ほぼ干渉していない」レベルだと思っています。
ファンにとってはガッカリ要素でしょう。
出すなら出すでもう少し活躍してほしかったですね。
例えばラストでジェシーが独断で釘を使ってタイヤをパンクさせるシーン、
もっとオモチャみんなで協力して何とかならなかったのかなと思います。
実際、今までのシリーズならそうしていたでしょう。
ほぼ全てのキャラクターが何のために出てきていたのか分からない状態でした。
ファンから反感を買う理由(4)
「オモチャが人間に接触しすぎてトイストーリーの世界観が一部壊れた」
ラストのシーンで、オモチャがカーナビの声を真似して車を誘導するシーンがあります。
「えっ、オモチャの声って人間に聞こえるの!?」と僕はかなりびっくりしました。
「オモチャとしての音」が聞こえるのは分かりますが、
「右に曲がってください」など完全に声が聞こえていたのは、
ちょっとやりすぎなのでは?と思いました。
そういう機能を持ったオモチャだったのかな?分かりませんが……。
それと今回、オモチャが何の罪もない善良なボニーの家族に迷惑をかけすぎていたのも、
過去作で暗黙の了解だった「人間になるべく迷惑をかけない」
というスタンスを破りすぎでは?と感じました。
ボニーの両親はいい人達なのに、逮捕させようとしたりタイヤをパンクさせたりなど、
観ていて違和感を覚えた人は多いと思います。
アンディの家族はあんな酷い目に遭わされたことは一度もないはずです。
■
ただ僕はリアルタイムで劇場で1~3まで観てきましたが、
ファンとしてこれらの件にそれほど嫌な思いをすることはありませんでした。
シリーズ作品として良いものと、一つの映画として良いものは違います。
シリーズとしてのタブーを侵していても、映画として面白ければ僕は評価したいです。
ただそういう意味でも、
今作は脚本的に抜けているところが多かったのが気になりました。
次は脚本の欠点に関して考えてみます。
脚本の欠点(1)
「フォーキーの存在意義」
この映画、フォーキーという新キャラが主軸になるように宣伝されていたので、
僕はてっきりフォーキーが中心の話だと思っていました。
序盤でフォーキーが「僕はゴミだ!」と叫んでひたすらゴミ箱に直行する展開を見て、
「ああ、フォーキーがオモチャとしての自我を得るまでの物語なんだな」と思いました。
ところが、冒頭15分くらいでウッディと会話するだけで、
「僕はボニーにとって大事なものなんだ!」と、
あまりにもあっさりと自分の存在価値を認めてしまいます。
そのせいでフォーキーはこれ以後、特に精神的に成長することはありませんでした。
後はひたすら「ただ人質として救出されるだけの存在」という印象を受けました。
フォーキーのこの映画における役割は、
ただただ「物語を回すために利用されるだけのキャラクター」だったと思います。
極端に言えばピーチ姫です。
別にそういうキャラの存在を否定はしません。時には必要な役割だと思います。
しかし「ゴミから生まれたオモチャ」という最高に面白いテーマを与えておいて、
それを全く活かさない位置に置いたのはかなり拍子抜けしました。
極端な話、別にこの役はフォーキーでなくてもボニーに気に入られてさえいれば、
バービーとか普通のオモチャでも何でも良かったじゃんという感じです。
例えば「ゴミにはできないこと」「オモチャだからできること」
を明確に区別・提示して、フォーキーが「オモチャとして」活躍し、
オモチャとしての存在意義を自分自身で獲得する展開にした方が良かったと思います。
ウッディに諭されただけで簡単にアイデンティティを得られてしまうと、
冒頭であんなにも「ただのゴミ」であることを強調していたのは何だったのかと……。
脚本の欠点(2)
「キャラクターに対して視聴者が抱く感情を考えていない」
視聴者が抱く感情を考えていないとはどういうことかというと、
キャラクターの行動に関して視聴者にマイナスの感情を与えたまま、
それを挽回する機会を与えないことです。
「AとくればB」とするべき展開の、Bがひたすら欠け続けた印象でした。
これは残念なことに今作では本当に沢山見かけられました。
まずは前述したフォーキー。
ひたすら仲間に迷惑をかけて足手まといになり続けた彼は、
物語の後半で名誉を挽回する機会を与えられるべきでした。
自分を守ってくれたウッディや、自分を作ってくれたボニーを身を挺して守る、
くらいの働きは与えられてしかるべきでした。
その結果オモチャとしての自覚が芽生えたら最高でしたね。
そしてこれも前述したバズ。
「内なる声」という思考放棄に蝕まれた彼もまた、
物語の後半で自分自身の意思で何らかの選択を決意するべきだったと思います。
自我を持つオモチャとして、長年連れ添ったウッディの相棒として、
「内なる声」に打ち克つべきでした。
今作ではひたすら「内なる声」に支配されていて、主体性がなく印象が悪いです。
また今回、女性キャラであるボーが大活躍をするのですが、
ウッディがその活躍の邪魔をしたまま、
名誉挽回の機会を最後まで与えられなかったのも気になりました。
「あなたは何もせずただ突っ立っているだけでいいの!」
とまで言われて尊厳を傷つけられたまま、
それ以後特にそのイメージを払拭する活躍もなかったのはかなり唖然としました。
ピンチになったボーを助けるなりして、
「ウッディだってやる時はやるんだぜ」というシーンは必ず必要だったと思います。
何もなかったせいでウッディが単なるヘタレに見えてしまいました。
このあたりに関してはポリコレ的な面倒さもあるので仕方ないのかもしれません。
ただ男女の問題は抜きにして、
ヘマをしたキャラに挽回のチャンスを与えないのは脚本として不完全だと思います。
■
ボロクソに言ってしまいましたが、実際トイストーリー4は駄作なのかというと、
実は僕はこの映画をかなり気に入っています。
何故かというと、「ギャビー・ギャビー」「ダッキー&バニー」という新キャラと、
久しぶりに登場した「ボー」の活躍が、
シリーズ合わせても過去最高レベルに良かったからです。
トイストーリー4の良いところ(1)
「ギャビー・ギャビーという神キャラクター」
ギャビー・ギャビーは、初期不良でボイスボックス(お喋り機能)が壊れており、
ウッディのボイスボックスを奪おうとしてくる敵キャラです。
ところが実際はお喋りできるようになって持ち主と一緒に遊びたいという、
オモチャとしての幸せをただ願っているだけの人形だと後に判明し、
ウッディは納得したうえで自らボイスボックスを渡します。
ウッディにとってもアンディとの思い出の一つであり、
非常に大事な物であるはずのボイスボックスを。
この展開、僕はものすごく心にきました。
トイストーリーシリーズ屈指の名シーンだと思います。
その後ギャビーがボイスボックスを手に入れてお喋りできるようになっても、
持ち主に「要らない」と言われて絶望してしまうところまで大好きです。
「ボイスボックスは返すわ……」とウッディに言うところも大好きです。
さらにそのあと迷子の子の希望になってあげるのも大好きです。
ギャビー・ギャビーに関する全ての話の流れが、僕は本当に大好きです。
トイストーリー4はギャビーのための物語だったと個人的には思います。
悪役だけど痛い目に遭って、改心して主人公と和解して、自分の生き方を見つける。
そういう話が僕は心底好きなんだなと思います。
トイストーリー4の良いところ(2)
「ダッキー&バニーという神キャラクター」
ダッキー&バニーは、特にこれといってメインエピソードがあるわけではないのですが、
見た目や仕草に関して言えばシリーズ史上最も可愛いキャラだと思いました。
まず手が繋がっているのがかわいい。見た目もフワフワで目つきが悪くてかわいい。
お互い仲が良いのもかわいい。妄想世界で暴れがちなのもかわいい。
バニーが死んだと勘違いして泣くダッキーを、
「よしよし」と慰めるバニーが可愛すぎて悶えました。本当にかわいい。
彼らがずっとウッディと一緒に冒険してくれたおかげで、
トイストーリー4はかなり救われていると感じます。
重ねて言いますがシリーズで最もかわいいキャラだと思います。
彼らを見るだけでも映画館に行く価値はあります。
声も可愛かったのですが後で調べたら芸人が声を当ててたんですね。
トイストーリー4の良いところ(3)
「ボーの痛快なアクションシーン」
3でいなくなったボーと再会したら、野良オモチャとしてたくましく生きていた。
この設定だけで超面白い。ボー幸せそうで良かったなぁとホッとしました。
そして杖を使ってアクション女優ばりの活躍を見せてくれるので観ていて爽快です。
「持ち主の元で生きることだけがオモチャとしての幸せじゃない」
という新しい価値観を提示できたのはとても良かったと思います。
今までは「持ち主に捨てられる」イコール「オモチャとしての終わり」だったので。
オモチャにも色々な人生があり生き方がある。
捨てられたからって必ずしも不幸になるわけじゃない。
その辺の設定はかなり好きです。
トイストーリー4の良いところ(4)
「遊園地という最高の舞台」
賑やかで楽しい舞台だったと思います。アクションもダイナミックでした。
ただせっかくの遊園地なのに話のほとんどが狭いアンティークショップで完結したのは、
ちょっともったいなかったかな。舞台を活かしきれてなかった感はあります。
もっとコーヒーカップとかお化け屋敷とか色々あると良かったですね。
移動遊園地だったのでジェットコースターは無理かな?
移動遊園地にしたのは「5」を作るためでしょうね。ここは仕方ないですね。
トイストーリー4の良いところ(5)
「意外性のあるストーリー」
前半で批判的に言ったことと矛盾しますが、
「普通ならこうするだろう」という展開をことごとく外してきているため、
逆に物語の展開が読めなくて面白い部分はありました。
確かに観ていてモヤッとはするのですが、これはこれでアリだと思います。
ラストのウッディの選択も「え!?」という感じで意表を突かれました。
正直言うと劇場でかなり泣きました。
もしすべての欠点を補完し、完璧に作っていたとすると、
型にはまったつまらない作品になっていたかもしれません。
欠点だらけだからこそ輝く魅力が出てきた可能性は否定できません。
僕はそういう作品が大好きだったりします。
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僕のトイストーリー4に関する感想・考察はこんな感じです。
キャラが特に良いので、個人的には1と匹敵するくらい好きです、4。
色々と考えさせてくれる良い映画でした。劇場で観れて良かったと思います。