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とある高校のプール。水泳部室の脇に、小さく、窓がない小さな部屋があった。その中では、ほの暗い空間の中で、一人の男子が、尻をついて、女性用の競泳水着に両脚を通そうとしていた。


「また、泳げる、また、大きくなる……」


低身長の彼には合わないサイズの、かつ女子用の服を恍惚とした表情で着ようとする彼。

そして、膝の高さまで左脚を水着に通す。


「き……きたぁ……!」


メキメキッ!と、水着を通り抜けた左脛の長さが伸び、その上に伸びていた毛が毛穴に吸い込まれるように短くなる。肌がきめ細やかになって、その水着を着るべき女性のようなすねが出来上がった。右脚も水着を通すと、左半分と同じように女性的なものになる。


両側の水着を上側から膝の高さまでめくり、そしてヘソの高さまで引き上げる。すると、細かった彼の脚がムチムチッと膨らみ、股間に少し見えていた突起がグイッと体の中に引きずり込まれたかと思うと、骨盤がメキメキと広がっていく。


「あ、ひゃんっっ!」


尻の位置が持ち上がるのと同時に、ミチミチと膨らんでいく。ムッチリと大きくなったそれは、水着を引き伸ばしていく。


「なんで、こんなに、きもち、いいのぉ……?」


彼の下腹部が男性のものから女性のものに作り変えられ、グニグニと臓器の位置が動く。普通なら痛みを発するその変化が、快感に書き換えられていた。

さらに、水着を引き上げていくと、ウエストが絞られていく。背骨が湾曲していき、胸がのけぞっていく。


「あはぁっ、つぎは、おっぱい大きくしちゃう……っ!」


すこしオーバーサイズな肩紐に腕を通すと、腕が伸び、筋肉と皮下脂肪がバランスよくついてスラッとしたものになる。だが、彼の意識はぶかぶかな布がかぶさった胸に集中していた。


「ひゃぁっ、きたぁっ……!」


胸骨がゴキッ、ゴキッと狭まり、少し筋肉質だった胸部が変形を始める。


「ぴりぴりするっ!」


乳腺が急速に発達して、乳首が膨れ上がっていく。その下で、プクーッと皮膚が盛り上がって、2つの丘を作り上げる。その成長は、どんどん加速して、水着の中をできたての乳房が埋め尽くしていく。


「ああ、まだまだ、膨らんでっ」

一気に巨乳の域に達したそれは、さらにスピードを上げて水着を押し上げる。


「大きくなるの、止まらないぃっ!」


彼が呼吸するたびにたゆんたゆんと揺れつつ、徐々に水着の生地を引き伸ばし始める二つの巨大な肌色の塊。


いつの間にか長く伸びた髪が、その上にかかるころには、一つ一つが頭ほどのサイズがあるおっぱいができあがっていた。


「はぁっ、はぁっ、気持ち、よかったぁ……」


のどぼとけがなくなり、声も完全にアルトの女声となり、彼は、彼女へと変わった。


「ふぅ……泳ぎに、行かなくちゃ……」


彼女がこのような変身をするようになった顛末は、2カ月ほどまえに遡る。


—-


同じプールのプールサイド。水泳部員たちが真剣な眼差しで泳ぎの練習を続ける傍ら、一人の女子部員の前で、男子部員がうなだれていた。

背が高く、グラマラスで恵まれたスタイルの女子は水泳部の部長である木高(きだか)さとり、もう一人の背が低く体もほっそりとした男子は、入部して半年ほどになる佐藤 公介(さとう こうすけ)という名前だった。


「50mバタフライが40秒、ね……平均以下じゃない」

「はい……」公介は、爆乳でムッチリとした太ももの部長の前で、目のやり場に困りつつ、がっかりしていた。


「あのね、悪いことは言わないから……」

「いえ、なんとか、がんばります!!」

同じく、といっても真面目な理由で困り顔の木高部長の言葉を遮り、頭を下げる公介。彼は、水泳好きの母親を喜ばせようと、伸びないタイムに心を痛めつつ、これまでがむしゃらに努力してきたのだ。


「わ、分かったわ……うーん……」

何かを考え込む部長にもう一度頭を下げ、プールに戻る公介。深さがかなり深めで、足がまったく着かない自分の低い身長を呪いながら、練習を続けるのだった。


—-


「ねえ、きみ」

「え?」


公介が後ろから呼び止められたのは、その日のプール練習時間が終わり、帰宅する直前だった。


「佐藤君、っていうんだよね?俺、ここの三年でさ」と、公介を呼び止めた声の主は、確かにその高校の制服を着ている。公介ほどではないが、身長は、160cmほどだろうか、結構な低身長の生徒だった。


「何ですか?この時間まで、なにを?」

公介が帰る時間は、かなり遅い。他の部員が(ヘタな泳ぎを続ける公介をせせら笑いながら)帰っても、部長が帰る指示を出すまで、帰ろうとしないのだ。辺りはもう真っ暗で、用務員と激務の先生たちしか高校には残っていないはずだった。


「君を見てたんだよ」


公介の背筋が寒くなった。ストーカーだろうか。しかも同性の。公介にはまったくありがたくない話だった。


「君、泳ぎたいんだろう?部長に認められたいんだろう?」

「え?そ、そうですけど。先輩に関係ありますか?」


できるだけ距離をおきながら、公介は恐る恐る返事をする。


「本当?部長のためだけにやってる、というわけではないよね?」

「そ、それはうちの母さんを喜ばせたいって言うのも……」


その先輩は、少し驚いた表情をしていたようだった。そして、少し考えこむ。公介は、その表情に見覚えがあるような気がした。


「俺、高木っていうんだ。水泳部長……木高のことよく知っててさ。少し相談してやるよ」

「高木、先輩?」

「そう、悟(さとる)っていうんだ。明日も水泳、がんばって!」


高木は、公介の肩をポンッと叩いて、立ち去って行った。


「あ、ハイ!」


公介は、不思議な出会いにぎこちなく感じつつも、高木に返事をするのだった。



次の日の放課後。公介が一人でプールで準備体操をしていると、部長が近づいてきた。高身長で豊満な彼女に、いつもながらドギマギしてしまう公介。


「佐藤君、今日も最後まで残っていくよね?」

「あ、はい、部長」


部長は少しだけ考えこみ、そして、深呼吸をして、やっと次の言葉を口にした。


「うん、わかった。またあとで、ね」

「は、はぁ」


その日の部長の泳ぎや、トレーニング内容の説明は少しだけぎこちなかった。部長ほどの人が、そこまで悩み事があるのか、そしてそれが公介自身に起因しているらしい。

公介自身も気になって、いつも以上にタイムがでなかった。


そして、そんな悶々とした練習時間の最後、部長が一人で残っていた公介に近づいてきた。


「おつかれさまです、木高部長」

「おつかれさま」と言う彼女の声は、少し震えているようだった。「ちょっと、私の部屋……部室の隣の部屋まで来てくれる?」


「へっ!?」聞いたことがないようなお願いをされ、大声を出してしまう公介。考えてみれば、その部屋に競泳水着で部長が出入りするのを見たことがあるが、それ以外では気にもしなかったその部屋に、招き入れられるのだ。いわば、部長のプライベートスペースだ。


「ふふ、いい反応だね。で、来るの、来ないの?君の泳ぎを速くするおまじないをしてあげるよ」

「え?泳ぎが速く?」

「さあ、ついてきて」


部屋の方に歩きだす彼女に、公介は慌ててプールから上がり、彼女の後をついていく。

不思議なことに、部屋の扉に近づけば近づくほど、その隣にある部室に入りたくなっていく。しかし、部長の願いを無視するわけにもいかず、なんとか部屋の前まで足を進めた。


「これからこの部屋の中で話すことは、絶対に他の人には教えないでね」

「は、はい……」


木高部長は、小さくうなずいて、取手をひねり、扉を開ける。

中は、ロッカーただの部屋だった。


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