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その次の日。自然と目が覚めた少年は、いつものように背伸びをしてあくびをかく。そして、少しぼーっとしたあと、思い出した。 「あ、元に戻ってる……」自分の体を見ると、服が破れている以外は普段どおりのものに戻っていた。ただ、手足がやけに細く、肌も色白になっている。股間を確認すると、そこだけは元に戻っていないことがはっきり分かった。 薬の副作用で、少年は少女になり、男に戻れなくなっていた。しかも、『オトナになる薬』のハズが、元と同じ年頃の、子供の体で安定していた。 それよりも、少女には緊急の、文字通り課題があった。目覚まし時計を見ると、いつも起きている時間を50分過ぎていた。 「遅刻しちゃう!」少女は飛び起き、パジャマを脱ぎ捨てて学校に行くための服に着替える。学校は電車通勤が必要なほど遠いところにあったが、電車の本数は少ない。通勤ラッシュでも、30分に1本しか来ない。少しの遅れが、致命的な遅刻につながるのだった。 「うぅっ」だが、そんな彼女を、また胸の痛みが襲った。内側から無理に押し広げられるような、痛烈なものだ。見ると、思ったとおり、ぷっくりと胸が膨らんでいる。それと同時に、心臓が少し強めに脈をうっていることにも気づいた。 「もしかして、激しい運動とかすると、成長しちゃうの……?」手指も少し長くなるのを見て、仕方なく遅刻することにした彼女だった。思ったとおり、少し落ち着かせると、その長さは元に戻り、胸の膨らみも消えていた。 「よかった……って、そんな場合じゃないんだって……」少女は、カバンに授業に必要なものを詰め込み、先にでかけていた親が作った弁当を回収すると、学校に向けて出発した。 道をトボトボと歩く彼女は、時計を見ないようにしていた。走れば確実に電車には間に合うだろうが、走った後になにが起こるかなど考えたくもなかった。 「走ったらまたあんなに大きくなっちゃう……」最初に変身した時、胸の重みだけで体を動かすのが大変なくらい、今の幼児体型とは全く別物の体型になっていた。それを再度、それも外で体験するなど、まっぴらごめんだ。 だが駅に近づくと、そんな考えが吹っ飛ぶようなことが起きてしまった。もうとっくのとうに行ってしまっているはずの電車が、遠くから近づいてきていたのだ。彼女は、反射的に走った。入り口から続く階段を駆け上り、改札を駆け抜け、ホームにちょうど到着した電車のドアに飛び込んだ。そして、彼女の後ろで、ドアがプシューッとしまった。 「はぁ、はぁ……っ、間に合ったぁ……」時計を見ると、発車時刻を20分過ぎている。事故で遅れたのか、と考えて胸をなでおろそうとしたその時だった。 「ぐ、ぎゅっ……」走った後でドクンッ、ドクンッと強く打たれる鼓動と共に、胸に何かが詰め込まれていく感覚に襲われ、声にできない喘ぎをする彼女。恐る恐る下を見ると、すでにリンゴサイズに膨らんだ二つの膨らみが、服を押し上げていた。しかも、それは見ている間にもギュッ、ギュッと一回り、また一回りと大きくなっていく。 「だ、だめ、こんなところで、大きくなりたくないよぉ……っ」胸を隠そうとする彼女。しかし電車が揺れ、反射的につり革を掴む。彼女は、逆の腕でなんとか膨らんでいく乳房を押さえた。しかし、そのサイズはさらに速度を上げて大きくなり、段々と服が限界に近づいていく。 周りを見回すと、スマホをいじくっている人ばかりで、彼女のことは気づかれていない。だが、それも彼女の身長がグイッ、グイッと伸び始めるまでだった。手押しのポンプで空気を送り込まれるがごとく、小学生だった体全体が、体積を増やし始めたのだ。服がずり上がり、外にさらけ出されたおなかが人目を引いた。 彼女の羞恥心は高まる一方で、鼓動もどんどん強くなっていた。尻がギューッときつくなり、後を振り返る。すると、ズボンを引き裂きながら、張りを保ったままヒップが成長するところだった。 「い、やぁっ……」こちらも胸に引っ張られ、ビリビリに破けているシャツを引っ張りおろし、彼女はなんとか露出を避けようとした。 身長はかなり高くなり、車内にいるどの人もが下に見える。胸はメロンサイズを超えてなおギュッ!ギュッ!と地響きのような音を立てて膨張し、太もももズボンをビリッ、ビリッと少しずつ破きながら太くなっていた。おまけに電車の揺れのせいで豊かに育った胸は大きく振動し、その巨大さを主張している。 このような異常事態になっても、乗客は単に少女を見つめるだけ、もしくは見てもいない人もいた。それは無関心と言うより、信じられない事柄から自分の精神を守るための自衛機能から来るものだった。 「……!」そんな周りの反応をみて、少女の方も心を落ち着ける余裕が少しできた。完全なパニックを脱した彼女は、大きく膨らんだ胸に手を優しく当て、深呼吸する。これで、元に戻る。 そのはずだった。だが、成長は収まったものの、体は縮むことがなかった。 「え……」呆気にとられる彼女。考えを真っ向から否定され、呆然とした少女は、電車の大きな揺れに対処できなかった。 《ガツンッ!!》 成長した体でバランスを崩して手すりに強く頭を打ち、そして気絶した。

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