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「ね、ねえ……っ」


少年の前にたたずむ女性。その輝くような金色の髪と、胸についたスイカのように巨大な二つの肌色の塊に、少年は魅了されそうになる。


「お、お前……どうしたんだよ」

「ぼ、ボク……」


彼女は少し前まで、彼の無二の親友の、同い年の男だった。それが、今はその面影すら残っていない。


「なんだよ……?」

「ボク、彼女が……彼女が、欲しいって願ったんだ」


話は、その半時間前ほどにさかのぼる。


---


彼らにとって、その日はついていなかったというしかない。

その日、一人の少年――名前はタケルだったが――彼は親友であるカズマと共に近くのゲームセンターへと遊びに行き、帰る途中だった。

通りかかった祠に、興味本位で立ち寄ったのが運の尽きだった。祀られている神体の『機嫌』がすこぶる悪いなど、彼らには知る由もなかったのだ。


「願い事していこうぜ」と、カズマは、いつものようにタケルの手を引っ張って、祠の前に連れていく。体つきもよく、好奇心旺盛なカズマに比べ、どちらかというと中性的で、小柄なタケルは、それに従うしかなかった。しかし、それは嫌なことというわけでもなく、抗うこともしなかった。


「えっと、今度のテストで勉強しなくても成績が良くなりますように!」

カズマは早速手を合わせて、現世ご利益もいいところの願い事を祠に向かって叫ぶように言った。タケルは苦笑いした。


「カズマ、そんな願い事じゃ神様も困っちゃうよ」

「なんだよ、いいじゃねーか、お願いするくらいさぁ。ほら、タケルもなんか願い事しろよ」

「願い事、かぁ」


成績はいいし、いじめもないし、生活上で困っていることはなかった。せめて言えば、新作のゲームがほしいくらいか。タケルは悩みに悩んだ。


「願い事、ねーのかよ」

「うーん、そうだな……」


その時、ふと脳裏にある少女の顔が浮かぶ。この近所に住む同級生の少女だ。その少女は、タケルとは幼稚園からの同級生だった。昔から仲がよく、一緒に遊んでいたが、最近は疎遠になっていた。


「あと十秒で決めろよ、じゅーう、きゅーう」

「え、え、ちょっと!仕方ないなあ」

「はーち、なーな……」


タケルは、あわてて手を合わせて、とっさに思い浮かんだ願い事を叫んだ。それが、彼の日常を根底からひっくり返すことになるとも知らずに。


「かわいい彼女ができますよーに!」


タケルは、カズマから強いツッコミがくると考えて、目をつぶって身構えた。しかし、一向にその時は訪れなかった。

というより、周辺から音という音が消え去っていた。


「え、なんだ、これ?」


おそるおそる目を開けるとタケルが、いや全てが色を失い、そして動きを止めていた。上を見上げると、夕やけで赤く染まっていた空は濃い灰色となり、飛びかかっていた小鳥が、空中で翼を広げたまま静止していた。


「えっ……え?」


その無音の世界で、祠からささやき声が聞こえてきた。


『……ずて……んな……』

「ひっ!?」


腰が抜けてしまい、逃げようにも逃げられないタケルは、祠を見つめた。すると、ゴゴゴゴと地響きがした後、その扉がバァン!と開いた。


「聞き捨てならんなぁ、貴様!!」

「えええっ!?」


中から飛び出してきたのは、小さな金髪の少女だった。頭の上から飛び出している狐のような耳と、きらびやかな振袖を見て、タケルは直感的に、その少女が祠の神体であると考えた。


「か、かみさ……」

「わらわが想い人に裏切られたこの日に!彼女がほしい!じゃと!?しかもかわいい!?」

「ぐえっ!」


訳の分からない理由で激昂している幼女は、タケルの襟をつかんで叫び散らした。


「どうせ貴様も、このわらべも、豊満な体の方が好きなのだろう!?ああどいつもこいつも!」


女の妖艶さなど微塵も感じさせない少女は、信じられない力でタケルの体をブンブンと揺らした。


「は、放して……っ」

「くっ」


少し落ち着いたらしい狐耳の少女は、タケルをギッと睨んだあと、彼を放した。そして、深呼吸をすると、少し表情をやわらげた。


「成績を上げろ、くらいはヤケクソで叶えてやってもいいのじゃ。供え物がない以上、代償つきでな」

「そ、そうなんだ……」


タケルは、神様が困ると思っていたカズマの願い事が、むしろ叶えられるものだと言われて拍子抜けした。


「しかし貴様はなあ、時をわきまえず、そんな願いを……!やはり許せぬ、許せぬわ」

「そ、そんな、ボクは神様が振られたなんて……」

「振られたじゃと!?そんな安いものではないわ!」


少女は激怒の表情のまま、口をニヤリとゆがめた。


「く、くくっ、そうじゃ。これは面白い……!」

「え……?」

「貴様には良い教訓となろうし、豊満な女に痛い目も見せられるぞっ、くくくっ」


その恐ろしい笑いに、タケルは身の毛がよだつ思いがした。その目の前に、少女の顔が急接近した。


「えっ」

「ふふっ」


少女は、その唇をタケルのものに合わせた。それは甘い口づけ……ではなかった。つなぎ合わせられたその口の間を、くどいほどの甘い空気が伝わってきたのだ。それにむせそうになって少女を引きはがそうとするタケルだが、腕に力が入らない。その間にも、甘い空気はタケルの肺を、そして体中を満たしていった。


「ぷはぁ……くく、くくくっ!」

「はぁ、はぁ……なにを、したの……?」


少女はさらに顔を歪ませ、ニィッと嫌な笑みをタケルに向けた。


「すぐにわかることじゃ。せいぜい楽しませてもらうからのう!」


そして後ろにバッとジャンプすると、そのまま祠の中に飛び込んでいった。直後、祠の扉は、開いたときと同じ勢いでバァン!と閉まった。


「なんだったんだ……」

「ろーく、ごー、よーんっ」


あっけにとられたままのタケルの横から、聞きなれたカズマの声が発せられた。どうやら、時間の進みが元に戻ったらしい。


「ま、まって、もう、願いごと言ったから……」


ドクンッ!!


「うぅっ!?」

「さー……んっ!?どうしたんだよ、タケル!?」


タケルの心臓が、とんでもない大きさで脈を打った。その衝撃で意識が飛びそうになるが、体が燃え上がるように熱くなって、無理やり引き戻される。


「か、体が熱くてっ……!」

「おい、大丈夫かよ!?」


タケルは、体の中がかき混ぜられるような感覚に襲われ、その場に膝をつく。それは、まるで自分の中にいる別のものが暴れまわっているかのようだった。


「う、ぐぁっ」


全身の皮膚がボコボコ沸騰するような痛みと、内臓がねじれるような苦しみがタケルを襲う。

「タケル!」

「ううううううっ!!」


タケルが叫んだ瞬間、ぐぐぐっ!と彼の胸が大きく膨らんだ。それは、女の子のように柔らかな乳房だった。カズマは、何かがおかしくなったことに気づいたが、タケルがその胸を隠したせいで、胸が膨らんだのは分からなかった。


(え、どうして、ボクの胸が……!?おっぱい……!?)


だが、変化はそれで終わるはずもなかった。

「うっ!?」

今度は、タケルの太ももがグッと太くなっていく。筋肉質なはずの足が、女性の柔らかいラインに変わっていく。同時に、股間のものが小さくなっていき、代わりに尻がどんどん大きくなっていった。

「どうしたんだって!」

カズマがタケルの肩に触れると、その位置がグイグイと伸び始めた。

「う、うそだろ……」

「いやだぁっ!触らないでぇっ」

タケルは悲鳴を上げるが、その声も、だんだんと高くなっていた。


「お、女の声っ!?タケル、どうなってんだよっ」

「あ、あああっ」


今度は、短い黒髪がバサァッと伸び、同時に根元から金色に染まっていく。それと同時に、顔つきも変わり始め、肌の色も白くなり始めていた。


「ううっ、怖いよ、怖いよカズマぁっ」

タケルは、自分が得体のしれない何かに作り変えられていく恐怖に、カズマに抱き着いた。しかし、すでに身長差は逆転どころか、タケルの方がカズマより頭一つ大きくなっていた。

「む、むねぇっ!?」

そのカズマの顔には、タケルの成長途中の乳房が押し当てられる。足にもさらにムッチリとした皮下脂肪がついて、それが増幅されていく。


「んあああっ」

高校生でも大きいと思えるほどのおっぱいが、さらにミチミチと音を立てて急激に大きくなる。カズマはその説明しがたい柔らかさに否応なく包み込まれ、しかもタケルの身長が伸びたせいで股間の部分にムチムチした太ももを押し付けられる形になった。


「こ、こんなの……ダメだっ」


男の本能に抗えそうもなくなったカズマは、何とかタケルの拘束を振りほどいた。その視界には、兄が隠し持っていたグラビア雑誌に出ていた女性など足元にも及ばない、胸も尻も過剰なまでに発達した、金髪の女性が出来上がっていた。しかも、その頭には狐のような耳が生え、ピクピクと動いている。


「た、助けて、ね、ねえ……っ」


カズマは、タケルのその輝くような金色の髪と、胸についたスイカのように巨大な二つの肌色の塊に、魅了されそうになる。


「お、お前……どうしたんだよ」

「ぼ、ボク……」


タケルのその震える声は完全に女性のものとなっていた。


「なんだよ……?」

「ボク、彼女が……彼女が、欲しいって願ったんだ……そしたら、神様がすごく怒って、こんなことにっ」


その時、いつの間にか暗くなっていた彼らの周りが、一段と暗くなった。月明かりが、雲に隠されたようだった。すると、カズマの前でタケルはしゅるしゅると元に戻っていった。


「お前、元に戻って……」

「か、カズマ、怖かったよぉっ……」


びりびりに破れた服で、再度抱き着く元に戻ったタケル。その背中をポンポンと叩きながらカズマは内心、一瞬前まで目の前でたゆんたゆんと揺れていたおっぱいを、一度でも揉めなかったことを悔やんでいた。


しかし、その機会はすぐに訪れることになったのだった。


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