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「ったく、邪魔なんだよチビが!」


その一言が、彼、容(ひろし)の終わりの始まりだった。テストで悪い点を取ったせいか、はたまた授業で怒られたせいか。とにかく機嫌が悪かった容は、自分が少し遠慮すれば避けて通れた通行人の少年に突っかかった。


「へぇ、チビ、か。フフッ」


しかしその少年は、怖がるでもなく、怒るでもなく、不敵な笑みを浮かべた。そして、その場を通り過ぎようとする容の前に立ちはだかった。


「な、なんだよてめぇ……」


あまりに不可解な行動をとる少年にたじろぐ容だが、少年はそれを気にすることなく話し始めた。


「君、ボクのおもちゃになってくれない?」


少年は、ゆっくりと落ち着いた声で、しかし楽しそうに言った。「おもちゃ」という言葉が理解できず、開いた口がふさがらなくなった容だが、数秒たってやっと言葉を発した。


「お、おもちゃ……?なんなんだよお前」

「ボク?そうだね、色欲の悪魔、とでも言おうか。この姿は仮のもの、だからチビと呼ばれることじたいは別にいいのさ」


あまりに馬鹿げた話に、鼻であしらおうとした容。だが、その少年の頭部にはいつの間にか巨大な羊の角が生えていた。


「ボクの獲物が小さい男の子が好きだったからね。しかし、フフッ、君を見ていい遊び方を思いついたんだよ」


少年、いや悪魔のシルエットが大きくなっていく。その変化が終わったとき、悪魔の姿は容そのものになっていた。容は、あまりの驚きに口をあんぐりと開けてしまった。


「いいね、いいね!いい顔だねぇ!じゃあ今度は君の番だ」容の姿をした悪魔は、ニヤリと笑った。そして、低い声で言った。


「潰れろ」


容は本能的な恐怖から、走って逃げ出そうとした。しかし、体が動かない。さらに、頭の上をなにか大きいもので押さえつけられている感覚がした。


「ひぃっ!?潰されるぅっ!おい、助けてくれぇっ!」


近くに通りがかった通行人に大声を上げて助けを求めるが、容の言葉はまるでその人には聞こえていないようだ。


「ムダムダ。結界を張ったんだよ。こんな楽しみ、ボクだけのものにしたいじゃないか。じゃあ、行くよッ!」


悪魔が声を張り上げると、容の頭を下に押し付ける力が、強烈なものとなった。そして彼の体が、メキメキと音を立てて、潰されていく。というより、どんどん身長が低くなっていく。どこかの骨が折れたり、頭が破裂するということなく、これまで伸びてきた身長が、どんどん失われていくのだ。


「ん、ぐぐぅっ!」


ただ、容はただただ下がっていく自分の視線だけでなく、体の中に何かが凝縮されていく感覚に圧倒されていた。ひとたびバランスを失えば、体の表面に飛び出して、破裂してしまいそうなものすごい圧力だ。


「フフッ、このあたりにしておこうか」


悪魔の声が聞こえて、頭の上から力が取り除かれても、その感覚は続いていた。小学生くらいの身長になってしまった容の中で、何かが皮膚の中に無理やり押し込められているのだ。


「く、苦しい……っ」

「だろうね、じゃあ……」


悪魔は、容の頭をなでた。すると、頭皮からその圧力が抜けていく。安堵した容は、自分の視界が何かカーテンのようなもので覆われていくのに気づいた。


「おぉ、きれいな長い髪だね」

「はっ!?」髪を確認しようとした容だが、悪魔の指は、今度は胸をツンッと突っついた。


「んひぃっ!!!」


容の中の「もの」が、今度は胸へと流れ込む。それは、すぐに容の胸の上に盛り上がりを作り、急速に膨らみを形成していく。ワイシャツのボタンがプチプチと飛んでいき、中に着ていたシャツがどんどん横に伸びていく。


「はれつ、破裂するぅっ!!」


パァンッ!と音を立てて破れたのは、容の胸……ではなく、その身を包んでいたシャツだった。ブルンブルンと揺れながら、さらに際限なく巨大化していくその膨らみは、女性の乳房に他ならなかった。


「ふむ……ボクの好みにしては少し大きすぎるか……」

「な、なんなんだよ、これっ!」




悪魔に叫んだ容。ニヤリと笑った悪魔は、したり顔のまま容に宣告した。


「分からない?君にはチビの女の子になってもらったのさ」


「そんな!?まさかっ!」股間をまさぐっても、彼が生まれてからのパートナーは影も形もなかった。直接見ようとすると、巨大すぎる胸が邪魔でにっちもさっちもいかない。


手足の肌は柔らかいものとなったが、足にも尻にもムッチリと脂肪が付いているところは、容の体は子供と違うものになっていた。


そして、遥か上から、元の容の姿をした悪魔は、大笑いした。


「さぁ!今は誰がチビなのかなぁ!!ねぇ、君!!」

「う、うぅっ……!元に、戻せっ……!」


悔しさからか、涙が出てしまう容。それを見て悪魔の笑いはもっと激しくなった。


「楽しいっ!なんて楽しいんだっ!君に巡り会えてよかったよ!!ねぇっ!」

「元に、元に戻してぇ……」


もはや抱腹絶倒。悪魔は地面をバンバンと叩いて爆笑している。


「はぁ、はぁ……この数年で一番笑ったかもしれないね!普段ならそのままにするんだけど、お礼に、一日後に戻るようにしておくよ」

「ほ、ほんとか……?」


悪魔は、大きくうなずいた。そして、ニヤニヤとした顔でもう一言付け加えた。


「戻るまでの間、自分のカラダに、興奮しなければね」

「え……?」


困惑する容を置いてきぼりに悪魔が高笑いは上げる。すると、周りの空間がグニャグニャと歪んで、容の視界は真っ暗になっていった。


「ま、待てっ!!」


気づくと、容は自分の部屋に居た。頭から伸びる、とても長い髪が、それまでの出来事が夢でないことを物語っていた。


「……これからどうしよ……。ん……」


下を見ると、見たことのないほどの爆乳が、容の目の前でタプンタプンと揺れた。


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