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とある山奥の、落ちぶれた神社の境内に、一つの稲荷像があった。石でできたただの狐の像だが、寂れ、落ち葉が溜まった、手入れの行き届いていない神社の割に、その像だけはピカピカに光沢を放っているという不思議なものだった。


そこに現れたのは一人の少年。神社の参拝に来たと言うより、山奥の探検に来て偶然この神社を見つけたらしく、あたりをキョロキョロ見回している。


「こんな所に神社があるんだな……ん?」


境内にぽつんと佇む稲荷像に、興味津々で近づく少年。


「お稲荷さん……にしては、何もくわえてないのか」


巻物やら宝玉やらくわえている、しかも二体いるのが普通な稲荷像だが、この神社の稲荷像はただ一体、前をぼーっと眺めているように設置されていた。


「かわいそうなやつだな、おいおい」


少年はそれを面白がって、胸のあたりをツンツンと指で突いた。御神体である稲荷像を突くなど、普通は許されないことだ。だが、それでも石像はただの石像であって、誰も見ていない所で子供がそんなことをしても、何も起きないはずだった……


『……貴様、身の程を知れ……』

「え?」


稲荷像から、太い声が聞こえてきたのだ。よく見ると、その目がゆっくりと開き、中から赤い宝石のような瞳が出てきた。


『貴様には、罰を与える!』


その瞳が、ピカッと光ると、少年は体の中に膨大なエネルギーが入り込んでくるのを感じた。そして、そのエネルギーが全身を無理やり押し広げるような、不思議な感覚がする。胸が苦しくなり、腰がギュッと締められる。髪が引っ張られ、頭の形が変わっていく。通常感じないような、体を作り変えられていく感覚に、少年はただひたすらに目をつぶっていた。


「ん、ん?」


その感覚は1分ほどでやんだ。少年は恐る恐る目を開ける。最初に見えるのは金色に光る何か、だったが、自分の視界の下半分を遮る別の何かに、彼の気は逸らされた。


「肌色の何かが……胸に……えっ!!??」




それはどう見ても女性の乳房。しかも少年が見たことのないほどの特大サイズだった。それが、全然サイズが合わない服を引きちぎり、ところどころ露出している。


「ふふ、かわいくなったのう」

「だ、だれ!?あれ、お稲荷様は……?」


少年……だった少女の目の前にあったはずの稲荷像がなかった。その代わりに、白い和服のような服装の、黒髪の女性が立っていた。その頭には、狐のような大きい三角の耳が生えている。


「わらわは、この神社の主じゃ。人の気配を感じ、石像に化けてやりすごそうと思ったが……まあよかろう、この姿見をみてみい」

「え?」


急に出現した大きな鏡で、自分の姿を確かめる少女。そこには、服くらいしか元の面影を残していない、黒髪の女性と同じく狐耳の、金髪爆乳美少女がいた。年齢も6歳くらい上がって、背丈も元より頭一つ分高い。


「な、なななな、なんだこれ!?」

「驚いたか?元に戻してもらいたくば、わらわの罰を受けるのじゃ」


黒髪の女性は、ニヤニヤしながら少女に近づいた。少女は、その女性のすごみに、ゴクリとつばを飲み込んだ。

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