AIでラフを線画化、オート影付け!「AI-AssistantV2」でグリザイユ体験 (Pixiv Fanbox)
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こんにちは、スタジオ真榊です。今日はとりにく@tori29umaiさん謹製の作画補助AIツール「AI-Assistant」を使ったAIイラスト作例紹介です。AI-Assistantは、AnimagineXL3.1ベースで「ラフ画のAI線画化」や「線画へのオート影付け」といった作画の手助けをしてくれるローカル用ツール。今回最新版の「V2」にアップデートされたことで、さらに実用度がアップしています。
まずはこちらのタイムラプスをご覧ください。
このように、初心者感の残るラフ画を入力しても、被写体が何であるか自動で判定してAIクォリティの線画に整えてくれる上、光源を指示すると自動でアニメ調の影まで付けてくれる、非常に便利な作画補助ツールに仕上がっています。雑なラフから数分で線画レイヤーと影レイヤーを得られるので、あっという間に漫画のようなグレイスケールのイラストを作ることができますし、上記の例のように自分でグリザイユ塗りをすれば、簡単に明暗のついたイラストを作ることもできてしまいます!
このツールが特に優れているのが、操作できるパラメータを絞って、画像生成AIの知識がさほどない人でも直感的に操作できる点。イラストから自動で要素を読み取ってタグを提案してくれるので、プロンプトに関する知識も必要なく、初めて画像生成AIを触る方にも非常に扱いやすいツールだと感じます。
▲ラフを「AI線画化」し、さらに自動で立体情報を付与した画面
この記事では、AI-AssistantV2のインストール方法から具体的な線画修正・オート影つけの方法、さらにそれをClipstudioを使ってグレイスケール(白黒とグレーで描かれたもの)のイラストにし、素人にもできる「なんちゃってグリザイユ画法」で仕上げる方法について解説します。
※SDXLが動く程度のPCスペック(主にGPU)が求められる点にご注意ください。VRAM12GB以上推奨とされています。
目次
1.AI-Assistantの入手先とバージョン
2.インストール方法
3.AI-Assistantにできること
4.具体的な使い方
▼画像をAIが描きなおす「img2img」
「mask画像」欄でインペイントもできる
▼写真やラフをAIで「線画化」
線画抽出のコツ
▼「線画入り抜き」機能の役立て方
▼線画に「オート影付け」をしてもらおう
【1】ノーマルマップタブから始めよう
【2】ライティングタブで光源指定
【3】アニメ影を出力しよう
▼クリスタで「線画+アニメ影」を作る
5.「なんちゃってグリザイユ画法」with AI
6.ClipStudioオススメアセット
7.リサイズ(V2のみ)
8.終わりに
1.AI-Assistantの入手先とバージョン
AI-Assistantはとりにくさんのnoteで配布されています。最新版の「V2」も、3日間のFANBOX支援者向けアーリーアクセスを経て、2024年5月27日以降は誰でも無料でDLできるようになりました。(下記URLにDLリンクあり)
「V1」との違いは次の4点。
①線画への忠実性がアップ
…AI線画化した後、オート影付けをして二つを重ねたときに、かなりぴったり重なるようになった
②影の種類が増加
…オートでアニメ影付けをするときに、2種類の影から選べるようになった
③「線画入り抜きタブ」を実装
…線画を「いい感じ」に入り抜きのある線画に整えてくれる新機能。手描き線画だけでなく、AI絵を雑に線画化したものでもちゃんとした線画っぽく整えてくれる。
④「AIスケールアップ」の実装
…線をできるだけ動かさず、手書き風にアップスケールしてくれる新機能。
このように、V2はV1の機能追加版なので、基本的にV2を選べば問題ありません。個人的には、①の線画忠実性のアップが特に顕著に感じられ、このツールを実用レベルに押し上げている感覚がありました。インストールにはやや時間がかかりますが、非常に簡単なので、さくっと見ていきましょう。
2.インストール方法
①zipファイルを適当な場所にDL・解凍
とりにくさんのnote「お絵描き補助AIアプリ『AI-AssistantV2』公開!」から、zipファイルをDLしてきます。zipファイルは3.1GBほどですが、最終的にモデル等がインストールされると計15.6GBになりますので、インストール先のストレージに余裕があるかチェックしておきましょう。
zipファイルを解凍すると、このようなフォルダ構成になっています。まだ必要な学習済みモデルがDLされていないので、AI_Assistant.exeは起動しないでください。
②必要なモデルを一括ダウンロード
画像生成に必要な各種モデル、Controlnet、LoRAなどを一括ダウンロードします。解凍したフォルダ内にある「AI_Assistant_model_DL.cmd」を右クリックして「管理者として実行」して下さい。コマンドプロンプト画面(黒い画面)が起動し、必要なモデルがDLされます。
10GB以上のファイルが順次DLされますので、しばらく放っておきましょう。DLが全て終わると、コマンドプロンプト画面は自動で閉じます。これでインストールは完了。
③起動
あとは「AI_Assistant.exe」をダブルクリックして実行するだけです(今度は"管理者として実行"をしないように)。インストールに問題がなければこのような画面が表示されたのち…
AI-Assistantのメイン画面に遷移します。タブに「線画入り抜き」や「リサイズ」があるのがV2(なければV1)です。
3.AI-Assistantにできること
AI-AssistantV2の機能は次の7つで、それぞれがタブとして独立しています。
①img2img
…Animagine3.1で単純なi2iができるタブ。雑なイラストを整えてもらうときに使用。
②線画化
…ラフを線画化してくれるタブ。ラフへの忠実度と線の太さが選べる。
③線画入り抜き(V2のみ)
…線画に「入り抜き」を加えてくれるタブ。
④ノーマルマップ
…線画を自動で立体データ化してくれる、AI-Assistantの心臓部。できたら⑤へ
⑤ライティング
…ノーマルマップを基に光源を指定するタブ。できたら⑥へ
⑥アニメ影
…線画とライティングのデータを基に、アニメ影を計算してくれるタブ。
⑦リサイズ(V2のみ)
…モノクロ画に特化したスケールアップ機能。細部を整えてAIっぽさを抜いてくれる
グレイスケールイラストを作りたいときは、②or③で線画を得た後、④→⑤→⑥とタブを渡り歩いていく(データを渡らせる)ことになりますが、さほど難しい操作は必要ありません。
4.具体的な使い方
どのタブも、はじめに左上の「入力画像」をドラッグ&ドロップするところから始めるのは共通しています。いわずもがなですが、他人のイラストをi2iしたり、勝手に線画化したりしないようにしましょう。
▼画像をAIが描きなおす「img2img」
AnimagineXL3.1を使ったimg2imgが簡易的に使えるタブ。「キャンバス全体のカラー配置」をおおむね引き継ぐのが特徴で、「画像再現度」を調整すれば、自分のイラストに寄せることも、大きく描き変えてもらうこともできます。適当に描いたカラーラフをAIクォリティに仕上げてもらったり、「お手本」をAIに描いてもらうのに適しています。
まず「入力画像」欄に自分のイラストを入力し、「prompt分析」ボタンを押すとプロンプト(イラストの要素を説明するタグ群・後述)が自動抽出されます。プロンプト知識のある方は適宜差し替えて、「生成」ボタンを押せば、右側にAI生成されたイラストが表示されます。(ちなみに、どのタブも生成ボタンを押すたびに生成結果は変わりますので、気に入った結果が出るまで何度もやりなおすことができます)
このように「画像再現度」を0.5にすると、AIと私のイラストの要素が半々になったイラストが生成されます。これより下げるとAIが自由にイラストを描けるので、クオリティが上がる代わりに、私のイラストにある要素や「手癖」のようなものは薄れていきます。
最大値の0.9に向けて強めていくほど、入力したのと変わらないイラストが生成されます。こちらは0.7ですが、ほとんど元イラストと印象が変わりません。
◆「mask画像」欄でインペイントもできる
「mask画像」欄を使用しない場合、このようにキャンバス全体が変更されますが、詳しい人は黒背景を部分的に白く塗りつぶしたマスク画像で一部分だけを変更することもできます。例えば、自分のイラストの顔部分は残しておきながら、残りをAIに描き直してもらう…といったことも可能です。
ただ、AI-assistantにはマスクのインペイント機能(ツール上でマスクをペイントする機能)がありませんので、狙った場所をマスクするには、自分で同じサイズの黒背景キャンパスを編集ソフト等で開き、変更したい場所を白で塗りつぶして読み込ませる必要があります。これはややハードルが高いので、狙った一部分だけを改変したい場合はNovelAIやSDwebUIのインペイント機能を使った方がより楽かもしれません。
▼写真やラフをAIで「線画化」
「線画化」は、その名の通り写真やラフから線画を作ることができるタブ。まず線画化したい画像を「入力画像」欄にドラッグアンドドロップし、次に「canny作成」をクリックすると、このように画像から主線を抽出したものが表示されます。
この線にできるだけ忠実に、AIは線画を描こうとします。基本的にはデフォルトの20/120で良いのですが、より線を薄くしたいときは150/240のように数値を上げると調整できます。
Cannyが抽出できたら、「prompt分析」もクリックしましょう。すぐ下の「prompt」欄に、入力画像に描かれているであろう被写体の情報がパッと書き出されます。
抽出されるタグはdanbooruタグ(danbooru.usというwebイラストをタグ付けする海外サイトで使用されているタグ)に準拠して表記されています。御覧の通り、私の下手な絵でも「miorine rembran(ミオリネ・レンブラン)」と認識しているように、かなりの抽出精度なので、このままでもOKですし、足りないものがあれば自分で書き入れることも可能です。 (自分の描いたヘタな絵がそのキャラクターとしてAI認識されるのめちゃくちゃ嬉しい)
プロンプト抽出とCanny検出ができたら、あとは「線画忠実度」と「線画の太さ」を調整して「生成」ボタンを押すだけです。このように、画面右側に線画が出力されます。(※入力画像から被写体がうまく認識できなかったものは、よく似た全く違うものに置き換わることもあります。細かな背景が書き込まれたものより、被写体が単体や2人程度で大きく描かれているものの方がうまくいきやすいです)
右下の「出力先」ボタンで、保存先のフォルダを開いたり、「クリップボード」ボタンでクリップボードにコピーしたりすることもできます。この線画から立体情報を抽出したい場合は、「Normalmapタブ転送」をクリックしましょう。画面上変化が起きませんが、「ノーマルマップ」タブの入力画像欄にこの出力画像を飛ばすことができます。この操作はどのタブでも共通なので、覚えておきましょう。
◆線画抽出のコツ◆
思ったようにAIが線画化してくれない場合は、プロンプトを見直してみましょう。こちらの線画化の例をご覧ください。
出力結果を見ると、ラフにはなかった服が生成され、髪ではなくほほに触れている感じに解釈されています。自動抽出では服装に関するタグがなく、「hand on own face(顔に手を当てている)」と認識されていますが、できれば「nude」状態で「hand in own hair(髪をかきあげている)」ラフだと描き直しておくと、より正確に線画化してもらえるでしょう。
プロンプト順序を整理し、「nude」「hand in own hair」「wind(風になびく髪)」「glaring(睨んでいる)」「upper body(上半身)」「clopped shoulders(肩までで途切れたイラスト)」「looking away(向こうを見ている)」「floating hair(浮いて広がる髪)」などを加えると…
このように、よりラフの意図に近い線画を生成することができました。ポーズだけではなく、自分の画力のせいで表現しきれなかった不機嫌そうな表情も盛り込めています。
・色に関するタグは避けよう
注意したいポイントは、線画化したい場合は「green eyes」や「red hair」といった、色に関するタグを入れないこと。AI-AssistantV2は自動でカラー系のタグを弾く機能が含まれていますが、このようなタグが混入すると線画に部分部分で色がついてしまうので注意しましょう。
▲「green eyes」を除去しなかった例
・避けてほしい要素はnegative prompt欄に
「cloth(服)」や「looking at viewer(カメラ視線)」といった、線画化する際に避けてほしい要素はnegative prompt欄に記入します。こうしたタグは画像生成AIに慣れた方なら直感的に書けると思いますが、初めての方はプロンプトの基礎をこちらにまとめてあります。
プロンプトが理解る!基本から上達法まで、1万5000字で徹底解説
こんにちは、スタジオ真榊です。こちらの記事では、画像生成(text2image)の基本であるプロンプト作成術について、熟達するまでに必要な知識をまとめたいと思います。プロンプトから画像が生成される仕組みやネガティブプロンプトの使い方といった基本部分から、特殊なプロンプト記法、有用なオススメ拡張機能まで、プ...
また、Animagine3.1に準拠した「プロンプト超辞典」も参考になると思います。
画像生成AI「プロンプト超辞典」2024年版 【AnimagineXL、NovelAIv3準拠】
【更新情報】2024.02.24:【5-1-8】男性向けの髪型を追加 2024.04.08:「glaring(睨む)」「gesugao(ゲス顔)」「arms at sides(手を下ろす)」「standing at attention(直立不動)」「hands at sides」「arms at sides」(両手を自然に下ろす)「emotionless sex」(平然挿入)等を追加。 ◆はじめに -この辞典の使...
▼「線画入り抜き」機能の役立て方
既に手元にある線画を、「入り抜き」のあるこなれた線画にしてもらう機能がV2で追加されました。
▲お絵描き補助AIアプリ『AI-AssistantV2』公開!より引用
マウス線画だけでなく、さきほど線画タブで作ったAI線画をさらに線画っぽくしてもらうこともできます。このように黒ベタ部分も除いてくれるので、この線画を基に着彩していく場合に役立つかと思います。
こちらは左側の線画を「線画忠実度1.0」「太さ0.5」で入り抜き線画化してもらったものです。よりこなれ感が出ているかなと思います。特に、上まつ毛部分は黒ベタになっていない方が着色していくのには好都合なので、個人的にありがたい機能。場合によっては、入り抜きがない方がアニメ塗りしやすいということもありますので、それぞれの画風や好みで使い分けましょう。
▼線画に「オート影付け」をしてもらおう
ここからはAI-Assistantのメイン機能と言える、Line2normalmap機能の解説に入っていきます。具体的には、線画を基に立体構造をAIに推測させて、アニメ風の影を自動で付けてもらえる機能です。
【1】ノーマルマップタブから始めよう
オート影付けは、「ノーマルマップ」「ライティング」「アニメ影」の三つのタブを渡り歩くような形で進行していきます。まずはノーマルマップタブの「入力画像」に白背景の線画データをドラッグアンドドロップ(もしくは線画系タブから"normalmapタブに転送")し、「prompt分析」。適宜タグを書き換えて線画忠実度を選ぶと、このようにnormalmapと呼ばれる立体データが得られます。
影データをあとで線画と重ねたい場合は、線画忠実度をデフォルトの1.25くらい高めに設定しておく必要があります。その代わり、こちらの画像のように、後頭部の解釈がミスする(背景になるはずの部分がぷっくりふくらんでいる)こともある点は理解しておきましょう。
これは、線画部分の毛先が誤ってつながってしまっているせいでもあります。
ここを加筆で整えてあげる(線画のつながっている部分を塗りつぶして入力し直す)と、このように間違いを修正することができます。
AIは基本的にミスや認識違いをするものですが、「だいたい」を素晴らしい速度で代わりにやってくれる道具と割り切るのがポイント。いったんAI線画化したら、人力で変なところをちょちょいと描き直してあげると、よりその後の生成結果がよくなっていきます。
【2】ライティングタブで光源指定
そうしたら、出力できた画像の右下にある「ライティングタブ転送」をクリックしておき、ライティングタブを開きます。
このタブでは立体化データにどのように光を当ててアニメ影を作るか設定できます。が、左側のパラメータをいじるのはなかなか難しいので、右上の「光源:真上」となっているところから規定の光源パターンを選ぶだけでもOK。このように、光源の方向を決めて一発で影の位置を特定できます。
どうしても自分でいじりたい場合は、「light_yaw」「light_pitch」をいじることで、光源の上下左右を調整し、「TotalGain」で全体の明るさを調整することもできます。「Specularなんちゃら」はそれぞれ反射光関連の設定なので、やりすぎるとメタルマリオみたいになります。
納得のいく光源に設定できたら、「アニメ影タブ転送」しましょう。
【3】アニメ影を出力しよう
あとはもう簡単ですね。アニメ影タブに陰影画像が転送されているのを確認したら、線画を入力し、プロンプト欄を書き込みます(もう何度もやっているので、ノーマルマップタブなどからのコピペで構いません)
左下の「anime01」影か「anime02」影から影のパターンを選んで、生成。
左がanime01、右が「V2」から追加された新しい影です。こちらも生成ごとに結果は変わるので、ある程度ガチャしてもよいでしょう。さて、これで線画とアニメ影のデータがそれぞれできました。
▼クリスタで「線画+アニメ影」を作る
今度は、線画とアニメ影でグレイスケールイラストを作りましょう。Clipstudioでそれぞれの画像を開き、レイヤーで重ねます。線画レイヤーが上に来るように並べましょう。
こんな感じになります(便宜上二つの影を並べましたが、実際はどちらか一つでいいです)。そうしたら、線画レイヤーを選択した状態で、「編集▶輝度を透明度に変換」。白い部分が透過され、線画部分だけが残ります。すると…
このように、アニメ影情報の上に線画が重ねられて、グレイスケールのイラスト調になるというわけです。ただ、よく見ると頬の左下のラインや、髪の毛先がわずかにずれているのが分かるでしょうか?
このようにわずかな差が出ることはあるので、手で修正するか、「線画忠実度」を上げて何度かやり直すとうまくいくはずです。
影の濃さは、アニメ影のレイヤーを「ラスタライズ」した後、「編集▶色調補正」から各種調整機能を使って整えることができます。「レベル補正」や「トーンカーブ」で濃い部分をより濃く、白い部分をより白くするなどの調整が可能です。
アニメ影の上にレイヤーを作り、合成モードを「オーバーレイ」にした状態で色を全体に塗ることで…
このように、疑似的にカラーリングを施すこともできます。
これを応用すると、アニメ影タブで得られた明暗情報を保持したまま、カラーイラストに着彩していくことが可能。それが次の項目で説明する「なんちゃってグリザイユ画法」です。
(ご承知の通り私は絵の素人なので、「なんちゃって」グリザイユになります。正しいグリザイユ塗りのやり方はウェブ上にも書籍にもたくさん解説記事がありますので、そちらをご覧ください)
5.「なんちゃってグリザイユ画法」with AI
「グリザイユ画法」というのは本来、フランス語で「グレー」を意味する「gris」から派生した言葉で、色を使用せずに、光と影のコントラストを強調して立体感や質感を表現するグレースケールの絵画技法です。ただ、イラスト界隈ではこのことではなく、「先にグレースケールでイラストを描いてから、オーバーレイで色を載せていく」手法を指して「グリザイユ塗り」と言われることが多いようです。
普通の厚塗りはベースカラーを塗って、その上にハイライトのカラーや影のカラーを載せていくのですが、今回のようにグレースケール画像がAIのおかげで既にできている場合は、上に色を載せていくだけで簡単にカラーイラスト化することができるようになります。基本的な操作は次の通り。
【1】レイヤー構成を作る
まず線画とアニメ影のレイヤーのほかに、レイヤーを複数作って「髪」「服」「目」「肌」といった名前を付けましょう。モチーフによって、アクセサリや武器、背景などがある場合はそれらのレイヤーも作っておきます。ここのポイントは、どちらが上層のレイヤーに来ると塗りやすいか考えること。例えば髪や服は肌より上に位置しているので、できるだけ下に配置した方が塗りやすいことが分かります。線画レイヤーは色に埋もれてほしくないので、一番上にしておきます。
次に、線画レイヤーを参照して色を流し込みたいので、線画レイヤーを選択した状態で「参照レイヤーに設定」ボタンを押します。
そうしたら、あとは塗りつぶしツール(バケツツール)でそれぞれのレイヤーに色を流し込んでいくだけです。「他レイヤーを参照」ツールを選び、「複数参照」のメニューにある灯台マークの「参照レイヤー」を選択すれば、線画レイヤーに従って塗りつぶせるようになります。「色の誤差」は10前後、領域拡縮を「1」、「アンチエイリアス」をONにしておくと、塗り残しが減らせます。
クリスタにおけるグリザイユ塗りは通常、グレースケールのレイヤー(今回はアニメ影レイヤー)の上に「オーバーレイ」や「カラー」などの合成モードで色を載せていくのですが、私は逆に、アニメ影レイヤーをオーバーレイモードにして、ベタ塗りの上に重ねてしまった方が楽でした。お絵描き指南のFANBOXではないので詳しくは専門サイトや書籍に譲りますが、アニメ影と線画が既に得られていると、さほど手間を掛けずにこのようなカラーイラストを作ることができるようになります。
色合いが思い通りにならない場合は「編集▶色調補正」や「レイヤー▶新規色調補正レイヤー」を使って調整すると良い感じになります。
こちらは最初のタイムラプスで紹介したミオリネさんイラスト。この影も「アニメ影」由来のものです。私はまだクリスタ理解が浅いので、色がややくすんでしまう嫌いがあるのですが、私のような初心者でもこのような塗りが楽しめるのはAI-Assistantとクリスタさまさまだなと感激しています。
6.ClipStudioオススメアセット
というわけで、AI-Assistantはとんでもなく楽しいので、ぜひイラストを全然描かないという方も挑戦してみてはいかがでしょうか。特に色塗りはペンを動かす技術があまり関係なく、有能アセットと知識を集めるだけでそれなりに塗れるようになるので、イラストレーター気分を味わうことができます。
なんちゃってグリザイユ塗りをやるにあたって役立ったアセットをいくつか紹介します。
・質感ぼかしブラシセット
ミオリネさんイラストの背景を塗ったもの。ざかざかっとキャラ背景をこれで塗るだけで見栄えする。背景に情報量を足したいときなどにすごく重宝する。
ミオリネさんの肌の上に、やや赤みを足すのに使用。ただ色を流し込んだだけのぺたっとしたアニメ塗りでもよいが、透明度を上げた焼き込みカラーレイヤーをクリッピングしてささっと塗るだけで肌感が増す。やりすぎるとぶつぶつして気持ち悪い感じになってしまうので注意。露出している肌全体に塗るより、暗いところだけに塗った方がよいようだ(今回得られた教訓)
・やわ肌ブラシ
肌にニュアンスをちょい足ししたいときに、このブラシで影色やハイライトを載せるとかわいらしい感じになる。パキッとしたアニメ絵だとちょっと浮くかもしれない。
・「27pt」さんの各種プリズム・空気感ブラシ
空気感や光の拡散を安易に表現できて助かる各種ツール。「人気順」にソートすると有名どころがずらりと並ぶ。瞳に加算発光モードでプリズムを入れてみたり、髪に虹色ハイライトを入れてみたり、なんとなく逆光イラストにプリズムを散らしてみたりすると楽しい。
7.リサイズ(V2のみ)
最後に残ったタブが、モノクロ画に特化したスケールアップ機能の「リサイズ」タブです。AI画像はどうしてもアップにすると細部がおかしくなっていることが多いのですが、そうした不自然なけば立ちや線切れをある程度整えてくれる機能です。線画を出力した際などにいったんこれを噛ませると、細部のクォリティがアップします。
「長辺の長さ」が大きいほど、生成時間も伸びますが、大きいほど必ずしも最適の結果になるわけでもないようです。2048pxくらいが良い結果になるように感じました。
これは左側が「線画化」タブで出したそのままのもの、右側が「リサイズ」で長辺2880pxにアップスケールしたものです。
拡大してみると、詳細がザカザカ感のある鉛筆タッチで補われているのが分かるかと思います。2880pxにすると、サイズだけが大きくなってこのザカザカ感は出なかったので、ちょうどよいサイズ指定があるようです。
8.終わりに
AI-Assistantの実用性に感動して大急ぎで書き上げたので、駆け足の部分もあったかもしれませんが、このツールの使いやすさ、面白さが伝われば嬉しいです。
このツールはとりにくさんが常々発信されている、「自分にとって、また絵を描く人にとって役に立つようなアプリを作りたい」そして「画像生成AIは(少なくとも現時点では)魔法の杖ではないことを分かってもらいたい」という気持ちが形になったものだと感じます。
このツールと(このツールで、ではなく)朝まで遊んでいて感じたのは、「AIが出してきたものをそのまま完成品とするのではなく、返してきたものを私が手を入れてまた差し戻すと、人間とAIのラリーによって最終成果物がどんどん良くなっていく」ということです。
例えばこれ。左の私の線画をAIが直してくれたのが右なのですが、肩の位置がおかしかったり、ヘアバンドに斑点があったり、私の好きな丸っこいまつげが直されたりしています。
これをそのままnormalmapに送るのではなく、私がさらに手を入れてからもう一度「入り抜き線画化」してから工程を進めることで、最終結果もこのように、より人間の意図が乗ったイラストになるわけです。
優れているが完璧ではないAIとの共同作業を意識して、互いに手助けしていくことで、より人間の望んだとおりの成果物が得られるということが、非常に実感できるツールに仕上がっていると感じます。何より、私のような全くの初心者でも、心に思い描いた通りの理想的なイラストが作れるということは本当に得難いことです。もちろんこの記事で公開した各種イラストを「私の描いた絵だ」とは言えないわけですが、「AIと私のふたりで描いたものだ」と胸を張って言えますし、私はイラストレーターになりたいわけではないので、それでよいと思っています。
何より、初心者がひとりでイラストを描いていて、完成までたどり着けない虚しさや、できたものが思ったものと全然違うガッカリ感が全くなく、お絵描きの楽しいところだけ存分に味わえるのは素晴らしいことです。こうした便利で楽しいツールがどんどん増えて、画像生成への忌避感が少しでも薄まればよいなと思う次第です。
それでは今日はこの辺で。「V3」のアップデートを楽しみにしています!