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こんにちは、スタジオ真榊です。今回は全体公開記事なので、簡単に自己紹介しますと、1年前から100本以上ずーっと画像生成AIの技術検証記事を書いてる変な人です。自己紹介終わり。


さて、今日は先日X(Twitter)上で行った「画像生成AIユーザー向けアンケート」の結果発表と、その考察を記事にしました。AIを使って特定の絵師さんとそっくりなイラストを生成することの是非や、「AIイラストを著作権保護してほしいか?」「生成した画像を何に使っているのか?」「そもそも画像生成AIを使っているのはどんな人なのか?」といったことを7つの設問で尋ね、その結果分かった意外な実態について考察しています。



アンケートのきっかけ

アンケートをやってみよう!と思ったきっかけは、今から三日前の2023年11月20日、AIと著作権について有識者で話し合いを続けている文化庁の「文化審議会著作権分科会法制度小委員会」第4回会合の資料が公表されたことでした。この公表資料の中にある「骨子案」がとても興味深い内容で、これにからめてAIユーザーさんたちの認識を聞いてみたい!と思い、思い切ってアンケートを作ってみたわけです。



▲文化庁HP(https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/chosakuken/hoseido/r05_04/)より




この小委員会は「現行法の適切な周知啓発を目的」として、AIと著作権の関係について「委員会としての考え方を示すもの」。要するに「最後の判断は裁判所だけど、みんなの参考になるように、国としても考え方を公表しとこうぜ!」というものです。この骨子案がなかなか示唆にとんでいて、時間のある方はぜひ読んで頂きたいのですが、話し合うべき論点として例えばこんなことが紹介されています。


【狙い撃ちLoRAの法的扱い】

キャラクターの容姿や絵師さんの画風を再現する「狙い撃ちLoRA」を作るため、イラスト等を複製(ダウンロード等)する行為は、法律上どう整理するべき?

【i2iパクリの法的扱い】

AI 利用者がi2iで既存著作物を生成 AI に入力し、これと創作的表現が共通したものを生成させた場合、その依拠性はどう考えるべき?

【類似性の判断は手描きとAIで違うか】

パクリ紛争が生じたときに、依拠性と類似性の有無によって著作権侵害かどうか判断することになるが、パクリ側が手描きだったかAI生成物だったかで「類似性ジャッジ」の考え方は変化するだろうか?


この三つのほかにも、「画像生成AIで作ったイラストは著作権保護されるかどうか」とか「必ずしも侵害物に当たらないものが大量に出回ることで、自らの著作物の市場が圧迫されることによる著作権者への不利益が生じることは、著作権30条の4の"利益を不当に害する場合"に該当し得るか」といった面白い論点が目白押しの内容となっています。


アンケートでは、こうした様々な論点について、画像生成AIユーザーの皆さんはどんなふうに考えているのか、次のような設問で尋ねています。


①一番使っている画像生成AIサービスは?

②狙い撃ちLoRA、合法と思う?違法と思う?

③ポン出し画像や加筆あり画像、著作権保護してほしいのは?

④「特定絵師さんの画風再現AI絵」どう思う?

⑤「版権キャラ」「絵師の画風」再現できると嬉しい?嬉しくない?

⑥AIイラスト、何のために生成してる?

⑦あなたはクリエイター?AI使用を公言できる?


こうしたちゃんとしたアンケートを作るのは初めてでしたが、できるだけ「あなたは内心どう思っているか」という"感想"が読み取れるよう工夫したつもりです。24時間の投票期間の間、だいたい1設問あたり900人~1600人が回答してくださいました。なにぶんX上で無作為に行った投票ですので、本当に全員が画像生成AIユーザーかどうかの確認はできず、正確性はある程度差し引いて考える必要がある点はご容赦ください。


前置きが長くなりましたが、さっそく投票結果を見ていきましょう。



①一番使っている画像生成AIサービスは?

ご覧の通り、「ローカル生成」が3分の2を占め、圧倒的多数という結果になりました。これは個人的には意外で、ローカル生成をするには高価なグラボや最低限のPC知識が必要なため、もう少し拮抗するかと思っていました。また、最新モデル「v3」が大きな話題になったとはいえ、長らく雌伏の時を過ごしていたNovelAIがここまで善戦(2位)したのも意外でした。それなりに高価で扱いも難しいNAIが、ChatGPTに搭載されBing経由なら無料生成もできるDALL-E3を超えるとは…。


X上で行った調査のため、私とつながりのある人によく表示されるバイアスがかかり、一般的なユーザーとかけ離れた結果が出た可能性もあります。ただ、10月に行われた別のアンケート調査では、StableDiffusion ローカル環境で生成していると答えた人が61.3%と近い数字が出ていますので、そう突飛な結果でもないのかなと受け止めています。



設問⑥と併せて想像できるのは、SNSにイラストを日々投稿している「AI絵師」的なイメージのユーザーは実はそこまで多くなく、創作に活かしたり、プライベート目的で利用する人もかなりいるんだということ。この点は後述します。



②狙い撃ちLoRA、合法と思う?違法と思う?

「合法か、違法か」ではなく、あくまで「あなたはどう思っているか」という質問です。当初は「分からない」が半数を超えていたのですが、じわじわと拮抗し、このような結果となりました。


これは確かに難しいポイントで、設問としてもいじわるだったかもしれません。例えば、もし法廷で「狙い撃ちLoRAのための画像複製行為の違法性」が今後争点となり、司法判断が下されたとしても、その判断があらゆるケースにあてはまるかどうかはまた別の話だからです。


一方で、回答者の約3割が「違法の可能性がある」と回答したことも注目すべきポイントと思います。「30条の4によってAI学習は合法だ」ということがSNSではよく言われますが、そうした考えは本当にあらゆる状況にあてはまるのか、慎重に考えているユーザーも少なからずいるということかと思います。


画像生成ユーザーの中には、トラブルに巻き込まれないよう文化庁資料などで著作権についてよく勉強している人も多いと思いますが、そんな中でも意見が割れ、多くの人が答えかねたこの問題。今後、有識者によって一定の考え方が導き出されることを期待しています。



③ポン出し画像や加筆あり画像、著作権保護してほしいのは?

AI生成画像を「あなたの著作物」として保護してほしいか?という設問です。

このように「がっつり加筆したら著作権保護対象にしてほしい」と考える人が最も多く、2位に「分からない、どちらでもよい」が続くという結果になりました。


個人的な考えを言うと、FANBOX記事のサムネイルなどのAI絵を素材に使った画像や、100本を超える解説記事は間違いなく私の著作物と認められるであろう、と思う一方で、簡単にt2i指示でポン出ししたものが無断転載されてもさほど問題ないので、私も「がっつり~」が一番近いかなと思っていました。ただ、Xで「ローカル生成のチューニングのゴールは『自分の求めるものがまさしくポン出し出来るようになる』ことなので、それが『ポン出し画像なので著作権保護されない』と言われると違和感がある」(賢木の意訳)という大変鋭いご意見を頂いて、考えが大いに変わりました。


前にCLIP STUDIO関連の記事を書いていて、AIで全て仕上げようとせず、AI生成7:加筆3くらいで修正できるようになるとすごく楽になると思ったことがあるのですが、逆にAIのコントロールを極めていけば、加筆する必要もないほどすみずみまで思い通りのAI生成物を出すことは理論上できるはずで、そうした「珠玉の作品」が著作権保護されない・・・というのは確かに強い違和感を感じます。


専門家からも「AI生成物でも、長大なプロンプトを組むなど人間の創作的寄与が認められれば著作権が認められる可能性があるのではないか」という意見は1年ほど前からずっと言われていたことですが、確かに未加工の生成物そのものでも、人間の創作的寄与のこもった作品となることはありえます。考え方が変わった、一番やってよかったと感じた設問でした。


【ちょっと脱線】

・このアンケートのリプライを見ていて、「ポン出し」という言葉を「未加工のAIイラスト全て」という意味で使っている人と、「その場で考えた間に合わせのプロンプトであっさり生成したものに限る」と考える人がいることに気づきました。私も、時と場合によってどちらの意味でも使うことがあり、今後気をつけないと誤解を生じるな、と気付かされました。

「著作権は一切欲しくない」という回答がなかった、というご指摘を頂きました。そのとおりです!回答④に含有されたかなと想像しますが、考えが未熟でした。失礼しました。


④「特定絵師さんの画風再現AI絵」どう思う?

今回最も印象的だったのがこの設問。このように、「合法だが自分は投稿しない」が圧倒的多数を占め、「分からない」はすべての設問で最少という結果になりました。


私も「合法でもやってはいけないことはあるよね」という考えなので、これはある種ほっとするアンケート結果になりました。よくこの議論で言われるのが、「表現の自由のラインを勝手に後退させるな」論です。つまり、「はっきり合法なものを、敵対相手のお気持ちに屈して禁止行為にするな」というような主張で、それなりにうなずけるのですが、一方で「合法だけど極めて自らの評判を落とす行為」とか「合法だけど他人を極めて不快にさせる行為」というのも厳然と存在するわけです。「公衆の面前で鼻くそをほじって食べるようなことは、合法だけどワイはしないな」「でもそれをしたい人もいるから、価値観を押し付けないようにしよう」くらいの考えがちょうどいいんじゃないかな、と個人的には思っています。


この記事を書いたアンケート3日後の11月23日、Xで「絵柄割れ厨」という言葉がトレンド入りしました。画像生成AI利用者は他人の絵柄を割って(盗んで・無断使用して)いる厨房(迷惑ユーザー)であるという意味の蔑称かと思われますが、結果としては回答者の83%が「違法だ」もしくは「自分は投稿しない」と認識しているということも、ぜひ知って頂きたい事実です。


⑤「版権キャラ」「絵師の画風」再現できると嬉しい?嬉しくない?

率直に言って、みなさんの正直な気持ちが結果に出たのかな、という結果になりました。


設問1でNovelAIが善戦したのは、この設問で尋ねた「版権・画風再現OK」なところがニーズとして現れたのではないかと想像しています。(詳しくない方に簡単に説明しますと、DALL-E3は版権キャラもNSFW表現も禁止で、注文しても自動的に弾かれるルール。Niji journeyではNSFWが禁止で、NovelAIはなんでもOK、版権キャラも特定絵師さんの絵柄もものによっては本物レベルで再現できる…という違いがあります)


この結果は設問④の内容と矛盾するようですが、要するに私的利用の範囲においては「なんでもできるツール」のほうが単純に使いやすく高性能であり、「やってよいこと・悪いこと」のラインは出力されたものを見て自分で決めたい、と思っているユーザーが多いのではないか、というのがまず思いつくところです。これは設問⑥とも深く関わってくるので、きちんと考察する前に次の結果を見てみましょう。



⑥AIイラスト、何のために生成してる?

これは意外な結果でした。SNSなどで眺めている限り、1つめの「AIイラスト投稿者」的な人物像が一番多いのかと思っていたのですが、自分が取り組んでいる創作活動に画像生成AIを活かすために触っている人が最多で、なんと3分の1を超えています。さらに、2位は「生成した画像を投稿せず、自分だけで、もしくは仲間内だけで楽しんでいる人」で、世間が「AI絵師」と呼ぶような投稿者は4人に1人以下という結果になりました。


設問④、⑤から読み取れる「絵柄パクリは違法、もしくは合法でも投稿しない」「やってよいことと悪いことは自分で判断したい」というニーズと、この結果を合わせて考えると、何が浮かんでくるでしょうか。つまり、SNSなどで可視化されている画像生成ユーザーの実態と、実際に画像生成AIを使っている人々の属性はかなり異なるということです。


いま画像生成AIを触っている人の中では、自作品に活かしたいクリエイターが最も多く、その次にSNSでは見えない「純粋な私的用途としてAI生成物を愛でている層」が相当数おり、いいね!やリプライが嬉しいAIイラスト投稿者、残りをエンジニアさんやプログラマさんなど研究・知的体験目的の方が占めるーという、画像生成AIユーザーの分布がだんだん見えてきたような気がします。


しかし、ユーザーの3分の1を超えるほどクリエイターさんが多いというのは本当でしょうか?それはなぜ、SNSからは読み取れないのでしょうか?短い設問ですので、これを選んだ回答者の属性をもう少し聞いてみたいところです。そこで、急遽7問目の設問を追加しました。


⑦あなたはクリエイターさん?AI使用を公言できる?

画像生成AIとは関係なく「自分はクリエイター」と自認している層が、回答者のうちどれくらいを占めているのか調べるため、このような設問にしてみました。また、ただ属性を尋ねるのではなく、クリエイターとは「AIを使わずに画像を使ったクリエイターとして活動できている人」という設定で、ふだんAIを使っていることを公言できるのかどうかを尋ねてみました。


こうした設問にしたのは、設問⑥で一般的に想像される画像生成ユーザーの人物像とはかけ離れた結果が出たため、もしかすると「AIユーザーであることを公言できないクリエイター」が多数いるのではないか、と想像したためです


結果を見ると、なんと画像生成AI利用者の55%が、自分を「AI不要で活動できるクリエイター」だと自認していることが分かりました。設問⑥では「創作活動に利用」と答えた人が35%でしたので、素直に読み取るのであれば、この20%の差は「自身の創作活動には利用していないが、別の理由で画像生成AIを触っているクリエイターさん」がいるということでしょうか。例えば、これから創作に活かすための研究目的や、投稿しないまでもごく私的に楽しむような用途で触っている人が多数いるということかもしれません。


もちろん、一つ前の設問に比べて「クリエイターではない」と思っている人がこちらには回答しなかったため、数字が偏った可能性もありますが、設問⑥と組み合わせると、画像生成AIを自身の創作活動に活かし始めている(または、活かせるかどうか実験している)クリエイターさんがかなりの数いることは間違いないかと思います。


その上で、クリエイター自認の人の中でAI使用を公言している人、していない人はほぼ半分半分という結果になりました。文化庁資料を見ると、生成AIユーザーからは著作権侵害に当たらないケースでも著作権侵害だと言われて「炎上」するリスクを懸念する声が上がっているということですが、実際に炎上を恐れてAIを使っているとはとても言えないクリエイターさんも少なくないことが見て取れます。


まとめ

最後に、アンケート結果とその考察をかんたんにまとめます。


・画像生成に一番使われていたのはローカル生成(66%)で、2位はNAI(12.7%)


・狙い撃ちLoRAについてはユーザー内でも合法か違法か意見が分かれている。一番多いのは「(合法か違法か)分からない」


・AI生成物は全て著作権保護してほしいと考える人は意外に少なく、22.1%。生成物全体ではなく「加筆したもの」を保護してほしいと考える人が51%を占めた。


・過去作品とは似ていないが、ある絵師さんの画風そっくりに見えるAI画像について、83%が「違法だ」もしくは「自分は投稿しない」と考えている。


・その一方で、「版権キャラや絵師さんの画風を再現できるAI」を42%が求めている。


・AIイラストを公開して反応や交流を楽しんでいる、いわゆる「AI絵師」的なイメージの人は、画像生成AIユーザーの4人に1人以下。AIイラストを投稿しないで密かに楽しんでいる人の方がむしろ多く、最も多いのは創作活動に活かす目的の人。


・画像生成AIを使っているクリエイター(AIを使わないで絵の活動ができる人)の半数近くが、ユーザーであることを公言していない。このことが、SNSなどで観測される「AIユーザー像」との乖離に繋がっている可能性がある。




いかがでしたでしょうか?(100本以上記事書いてきて始めて使いました、これ)


私のXアカウントを通じて行ったアンケート結果ですので、大規模かつ正確な統計とは乖離があるかもしれませんが、なかなか示唆深い結果が出たのではないかと思っています。せっかく皆様にご協力いただきましたので、もしよろしければ、こちらのアンケート記事のX投稿を引用などしていただいて、拡散にもご協力いただければ嬉しいです。




終わりに

最後に汚い汚い宣伝です。スタジオ真榊では、AIイラストを全く知識のない状態からでも理解できる「AIイラストが理解る!StableDiffusion超入門」(無料)をはじめ、日々画像生成AIの活用法や最新技術などについておもしろ楽しくわかりやすい記事を連載しています。

【全体公開】AIイラストが理解る!StableDiffusion超入門

こんにちは!2022年10月からAIイラストの技術解説記事を連載してます、サークル「スタジオ真榊」の賢木イオです。この記事は、これまで投稿してきた100本(約40万文字)を超えるAIイラスト術のFANBOX記事をもとに、画像生成AIを最短距離で学ぶための必要情報をまとめたメインコンテンツです。画像生成AIにもいろいろあり...


アンケート内でも話題になったNovelAI V3の始め方、生成の基本についても全体公開で解説しています。このように、FANBOXとはいえ全体公開で無料で読める記事も多いので、初めていらした方はぜひ一度読んでみてくださいね。

【全体公開】NovelAI「V3」が理解る!プラン選びと基本設定を徹底解説

こんにちは、スタジオ真榊です。2023年11月16日、国内での画像生成AIブームの元祖となったNovelAIが最新モデル「NAIDiffusionV3」を公開し、多くの方がその「ヤバさ」を体験しているところと思います。私も昨年10月にNAIを触って画像生成AIの世界に入りましたが、久々に味わう「版権キャラ生成可 / nsfw生成可」という遠...





アンケートにご協力くださった皆様、記事を読んでくださった皆様、ありがとうございました。人をむやみに傷つけたり、対立を煽ったりするような厳しい言葉をSNSで散見する毎日ですが、建設的な議論が行われることを願ってこの記事を書きました。


結論がどうであろうと、現在行われている有識者の皆様方の議論によって、こうした混乱や誹謗中傷がおさまるような報告書が出ることを願っています。


2023年11月23日 スタジオ真榊 賢木イオ




【※調査アンケートのツリーはこちらからご確認いただけます】








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