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「これから琴音さんには、このヒトイヌ専用の装身具を着てもらいます。あなたがもしもヒトイヌじゃないなら、こんなものを着せられたとしても気持ち良くなったり、悦んだりしないわよね?」


「わ、わかりました。それを着て証明すればいいんですね」


「わかったなら、早く服を脱ぎなさい」


「——ッ」


 先生に強要されて、仕方なく制服を脱いでいく。

 学校で全裸になるなんて思ってなかったから、恥ずかしくて心臓がドキドキしてしまう。


「脱ぎ終えたら、このスーツを着なさい」


 下着も全て脱いで裸になった私が先生から手渡されたのは、テカテカと光を反射する黒いスーツ。

 繊維はどういうものでできているのかよくわからない。

 触った感じはゴムに似てるけれど、どこにも繋ぎ目はなくて、首の部分から足を入れて着るものらしい。


「うわ……っ」


 先生の説明どおり、ゴムの塊みたいなそのスーツを手繰り寄せ、タイツを履くように足を入れると内側はヌメヌメとした粘液に満たされていて、それが嫌な冷たさを肌にひとひとと与えてくる。


 ギュチ、ギュチ。

 ギチチッ。


 それでもなんとか両足の上まで通して、腰の辺りまでそのスーツを引き上げる。

 そのときすでに、両足は完全にゴムのようなぴっちりした感触に包まれていた。


「――ッ」


 どうして私はこんなおかしなスーツを着ているのだろう。

 たしかに私はヒトイヌみたいに扱われてみたいな。と思ったりもした。

 でも、普通ならこれはヒトイヌが着るためのスーツで、人間である私が着るためのものじゃない。

 私は別にヒトイヌになりたいわけではなくて、ちょっとだけ興味があっただけなのだ。


「何をしているの? 次の授業があるんだから早くしなさい!」


「は、はい……ッ!」


 手を止めたのがいけなかったのか、横から叱りつけてくる先生に急かされて、驚いた私は急いでスーツに袖を通し、一気に首元までそのスーツを迫り上げる。


 ギギ、ギチチチッ!


「——ひッ!? や……ッ、なに……!?」


 すると、スーツが突然に収縮し始めて、身体の隅々がものすごい力で締めつけられる。

 まるで、全身を真空パックにされてしまったかのような感覚に、息をするのも浅くなってくる。


「スーツに内蔵された筋肉繊維があなたの身体に合わさるように収縮と伸縮を繰り返しながら、サイズを調整してるのよ。そのスーツを身につけている間は、そうやって定期的なマッサージも行われるから、今のうちに慣れておきなさい」


「うぅ……っ」


 スーツの黒い繊維で素肌を隠せるから恥ずかしさが和らぐと思っていたけれど、甘かった。

 テカテカと歪に光る繊維が私のおっぱいの形から腰のくびれの至るすべてを隙間なくギッチリ締めつけてくるから、逆に身体のラインが強調されて裸でいるときよりも艶めかしさが増していた。

 そのあまりの密着感に思わずスーツを指で摘んで肌から引き離そうとするけれど、スーツの表面をいくら掴んでも私の肌と一体化してしまったみたいに素肌にピッチリへばりついて離れてくれない。

 ヌメヌメしてたはずの粘液がなにかしらの接着効果をもっていたのか、スーツそのものが私の身体に癒着してしまったみたいだった。


「残りの装身具は先生が着せていくから言うとおりにすること。いい?」


「わ、わかりました」


「まずは、コルセットから」


 先生は、困惑する私に構うことなく、無防備な私の胴体にコルセットを巻きつけてくる。


「息を吐いて、じっとしてるのよ」


「あ、あぐ……ッ」


 言われた通り息を吐くと先生は、ウエストを過剰なまでに締めつけるようにコルセットの編み上げ紐を限界まで引き絞る。

 それだけで、私の怠けた姿勢は反りかえるように矯正されていく。

 でも、コルセットの装着はまだ終わりじゃない。

 先生はコルセットの正面から伸びるベルトを二つの膨らみが並ぶ胸の谷間に這わして、鎖骨のあたりでY字に分かれたベルトを肩の上に通し、そこから、後ろで待ち構えているベルトと繋げ、コルセットがズレないように固定してしまう。


「次は、コレを履かせるから、イスに座りなさい」


 その後に足もとに用意されていたのは、あちこちにベルトが取り付けられた黒いロングブーツ。

 足の甲から下腿の側面を通って、太ももの付け根までズラリと並ぶ編み上げ紐が特徴的だった。

 それに、私は嫌々ながら足を通していく。

 太ももの付け根にまで届く長さに、履けなさそうと思ったけれど、そんなことはなく、不思議なほどスルスルと滑り込むように爪先まで入っていった。

 それを反対側の足にも履くと、先生がブーツにある編み上げ紐を一つ一つ丁寧に締め上げてしまう。

 履いてから気づいたけれど、このブーツはかかとのところにあるはずのヒールがなくて、それでいて足首は真っすぐ伸ばすように矯正される形をしていた。

 これでは、立位を保つのは難しいだろう。

 

「今度は、腕を前に出しなさい」


 次に用意されていたのは、腕を根元まで飲み込んでしまうであろう黒いロンググローブ。

 見た目は先ほどのロングブーツにそっくりだけど、足のほうと違うのは、手首から先の部分がミトン状の袋になっており、そこからベルトが飛び出しているということだろうか。

 色々と思うことはあるけれど、まずは利き手からそのグローブの中へ腕を通していく。

 案の定というべきか、ロンググローブのときと同じように私の腕はスルスルと奥へ奥へと入っていってしまう。


「うぁ……っ」


「ほら、反対の腕もよ」


 底なし沼に片手を差し込んでしまったような感覚に陥るけど、先生は間を置かずに、反対の腕にもそのロンググローブを履かせてくる。

 ミトン状になったグローブのところに入り込んだ手は指先を真っすぐにそろえたまま、すっぽりと硬いものの中に納められてしまい、先生が編み上げ紐を締め上げると、もう、私の両手はただの棒切れに成り果てていた。


「残ってるベルトを締めるから、今度は腕を折り曲げなさい」


 先生は、そんな私の腕を半分に折り曲げさせ、黒いロンググローブの各所にあるベルトをギチギチに締め上げていく。

 そのとき、ミトン状のグローブの先端にあったベルトが先ほど背中のほうに通したコルセットから伸びているベルトと連結されてしまい、手首のわずかな動きさえも許さないように拘束されてしまった。

 

「足もやるから、床に座って」


 両腕が終われば、今度は両足。

 腕のほうよりも頑丈な質感のあるロングブーツを半ば無理やりに折り曲げられ、それから各所のベルトが無理やり締め上げられていく。


「あ、あの……まだ終わらないんですか?」


「えぇ、今度は手足にこの袋を被せるわ」


 もうすでに、私の手足は折り曲げられた状態で拘束されてしまったから、自力でこの拘束から逃れることは不可能に近い。

 だというのに、先生はそれらの折り曲げられた手足の上に逆三角形の分厚い革袋を被せて、ずり落ちないようにベルトで口を留めると、わずかな隙間さえ残さないようにそれぞれにある編み上げ紐を締め上げていく。

 そこからさらに各革袋から伸びているベルトを脇や肩。鼠蹊部や股関節などに這わせてバックルで固定してしまうのだから、容赦ない。


「さぁ、次はこのヒトイヌマスクを顔につけてもらうわ」


 そして、犬耳の被り物とベルトの束が一緒くたになった開口器付きのマスクを私の顔に近づけてくる。

 その黒革のマスクの中心には銀色の排水溝のような穴が空いているから、その部分を口に咥えるのは、とても硬そうに見えた。けど、内側を見てみるとそう単純な作りでもないらしく。

 マスクの開口器部分の内側には、入れ歯を縁取ったような透明のマウスピースが喉の奥に向かって備え付けられており、先生がいうには、このマウスピースが私の歯を常に保護してくれて、洗浄、抗菌のうえ、虫歯からも守ってくれるとのことだった。

 

「口を開けなさい」


「んあ……あっ」


 先生にそう言われて、恐る恐る口を開ける。

 

「それじゃ入らないから、もっと、大きく開けなさい!」


「あ、ああ〜〜ッ!」


 でも、それでは開きが足りなかったらしく、叱られた私は一思いに顎が外れるほど大きく口を開けた。

 その隙を逃すまいと私の口腔内に開口器が入り込み、革のマスクが頬に触れる。


「上手く入ったわ。そのまましっかりマウスピースを噛み締めるのよ」


「あ、あぐッ……うぐッ……ッ」


 先生の言うとおり、それを噛み締めるとヌルっと吸い込まれるように、マウスピースに全ての歯が収まってしまい、私の口は顎を大きく開いたまま閉じれなくなっていた。

 それを確認した先生は、マスクに付属したベルトの束を一つずつ順番に留めていく。

 一つ目は首の後ろのうなじ。

 その次にカチューシャみたいに顔の横から頭頂部までを繋ぐ犬耳付きのベルトを顎の下で留める。

 最後のベルトは左右の頬から逆Y字になって鼻筋を通り、そこからおでこや頭頂部のベルトを抑えつつ最初に留めたうなじにあるベルトに連結された。


「だいぶ、ヒトイヌらしくなってきたわね」


「あぅう!? うぅッ! ンうぅッ!」


 先生にヒトイヌと言われて、咄嗟に否定するけど、顔の輪郭を締めつけるベルトのせいで完全に固定されてしまった私の口からこぼれてくる音は、あー、とか、うー、とか、そんなのばっかりで人間の言葉じゃなかった。

 顎を開いたまま固定されるだけで、こんなにも獣みたいな声しか上げられなくなるなんて知らなかった。

 それが恥ずかしくて、顔をブンブン振って開口器を外そうとするけれど、やっぱりダメで。


「あうッ!? うぐ……ッ、うぅ……っ!?」


 開けっぱなしの私の口からは、虚しく唾液が滴るだけだった。


「そうやってだらしなく涎を垂らすのもヒトイヌそっくりね」


「うぅ……ッ」


 自分の口からダラダラと唾液が溢れ出してくるのが恥ずかしくて何も言えなくなる。


「首が痛くならないようにこれも着けちゃうわよ」


 先生はそんな私の首もとに幅広な装具を取り付けてきた。

 それは、ただでさえ窮屈な私の顎を前に突き出すように固定し、首に残されていた柔軟性を奪っていった。

 昨日のヒトイヌもつけていたネックコルセットだ。

 

「それとあなたにはコレも着けておこうかしら」


 ネックコルセットに続いて首に巻かれたのは、酷く重厚な見た目の首輪だった。

 

「本来は登録されたご主人様のものを着けてもらうものだけれど、今のあなたにご主人様はいないし、かと言って、なければないで誰のヒトイヌなのか、って取り合いになってしまうかもしれないから、やむなしね。未登録の首輪だけど我慢しなさい」

 

「うぅ……ッ」


 我慢しなさい。と言われても、首に巻きつけられてしまうのなら、そんなことどうだっていい。

 ネックコルセットの上から、喉が締めつけられるくらいギチギチに嵌められる首輪をどうにかする権利は、私にはないのだ。


「さぁ、あとはヒトイヌ用の貞操帯をつけてあげるから四つん這いになりなさい」


 首輪の装着が終わり、両膝を広げて床にペタンと座っていた私の背中が後ろから押され、強制的に四つん這いになるように姿勢を変えられる。


「あぅ……ッ!」


 その僅かな動きだけでも、身体中がヒトイヌ専用の装身具に締め付けられ、口から勝手に唾液が溢れ出す。

 先生はその間に、3つの突起が生えている尻尾付きの貞操帯を手に取ってヌメヌメの液体を大、小、中、それぞれの突起に馴染ませていた。


「この3つの突起は、ヒトイヌの身体に溜まる老廃物を処理してくれる大切な生命維持装置よ。あなたがヒトイヌじゃないと証明するまでは絶対に外すことはないから、自分の身体の一部だと思って大事に咥えこむことね」


「あうッ!? うぅッ!?」


 先生は黒いスーツの上から私の股間と肛門のところを弄って、穴の場所を確認する。

 スーツを着るとき、股間のところには穴が空いていなかった。

 貞操帯の三つの突起を差し込む場所はスーツの膜で覆われてる。

 なのに――


「ここね。入れるわよ?」


「あ、あぅぁあ——ッ!?」


 先生は、スーツの膜をものともせず、三つそれぞれの穴に突起を勢いよく挿入してしまう。

 

「あ、あぅうう……ッ!? んうぅッ! うぐぅ!」


 スーツの膜を貫通して、外からお腹の中に物が入ってくる感覚に半ばパニックになり、私の身体は拒絶反応を示すように大きく震えていた。けど、先生はその貞操帯を私の股間の形に合わさるように押しつけ、しっかり密着させるとウエストを締め上げているコルセットと連結してしまう。


「う、うぅ……ッ、ぅぅ……ッ」


 とんでもないものを挿入されてしまった現実に、涙が溢れてくる。

 もう、何でもいいから、ヒトイヌじゃないことを早く証明して、この装身具を脱ぎさりたい。

 なのに先生は、私の身体を拘束する各所のベルトを調整するように一段階キツく締め上げて、わずかな綻びも消し去っていき、最後に私の首輪にぶら下がるリングへヒトイヌ用のリードを取りつけた。


 そこで一限目の授業終了のチャイムがなる。


「さぁ、教室に戻りましょう」


「あ、あぅ!? うぅっ!?」

 

 戻る。と言われて私は咄嗟に拒んだ。

 こんな、恥ずかしい姿をクラスメイトに見られたくなかったのだ。


「次の授業があるって言ったでしょ? いいから、早く歩きなさい!」


「うぅ……ッ!?」


 でも、先生は私の意思など関係なく、無理やりリードを引っ張ってくる。

 ネックコルセットに固定された首が前に引かれるから、仕方なく折り曲げられた手足を動かして前に進むけど、全然進まない。

 おまけに身を捩るたびに、お腹の中に挿入された三つの異物がゴロゴロと動くような感覚がして、気持ち悪かった。

 それでもリードは引かれ続けるから、頑張って先生のあとをついていく。

 

 幸い空き教室は、同じ階のものを使用していたから、階段の上り下りはなく、長い廊下の床を這うように歩くだけだった。

 でも――


「うわ、本当にヒトイヌの格好してるよ」


「柊木さん、マジでヒトイヌになっちゃったの……?」


「ヒトイヌやべぇ」


 教室に到着するとクラスメイトみんなの視線が私に集まってきて、あーだこうだと言葉が飛び交う。

 それが無性に恥ずかしくて、視線を逸らすと教室の隅っこに見慣れないものが設置されていた。

 それは、高さ1メートルに対し、幅と奥行きが2メートルほどの四角い箱のような物体。

 10センチ間隔で分厚い鉄格子が並ぶその姿は、何かを閉じ込めるための檻であるのは、一目見てわかった。


「ヒトイヌじゃないと証明するまでは、ここがあなたの居場所よ。わかったなら入りなさい」


 その檻の正面まで先生に無理やり歩かされ、私の首につけられていたリードが外される。

 自由になった私をぼーっと見下ろしていたクラスの男子がいそいそと檻を開けて、私が中に入るのを待っていた。


「ほら、早くしなさい」


「あぅッ!?」


 足を止めていた私のお尻を先生が張り手で叩く。

 びっくりした私は、手足を動かして前に進み、恐る恐る頭から檻の中へと入っていった。

 

「自分から檻の中に入れるなんて、やっぱりヒトイヌかもしれないわね」


「うぅ……?」


 その言葉が言い終わると同時に、檻が閉められ、カチャカチャと鍵が施錠される。


「あぅうッ……!? うぅッ! う、うぅッ!?」


 ヒトイヌの恰好のまま、狭い檻の中へ閉じ込められてしまったことに焦って声を上げるけど、もう遅い。


「いいですか、みなさん? 柊木琴音さんは、ヒトイヌの疑いがあるので、今日一日は本当のヒトイヌとして扱います。授業が終わった放課後に彼女がヒトイヌかどうかクラスメイトのみなさんにアンケートを取り、全員一致で彼女をヒトイヌだと判断した場合は、ご両親と相談のうえ、然るべき行政処置をもって彼女を正式なヒトイヌとします。ですので、これからしっかりと彼女の様子を観察してあげてください。ただし、許可なく関わることは禁止です。わかりましたか?」


「あぅうッ!? うぅッ! あうううッ!!」


 先生の説明にクラスのみんなが黙ってうなずくから、檻の中に閉じ込められた私は必死に声を上げて、自分がヒトイヌでないことを否定する。

 

「ではみなさん、席についてください。二限目の授業を始めます」


 なのに、檻の中で騒ぎ立てる私のことは完全に放置で、目を合わせてくれる人はいなかった。


「うぅ……ッ」


 ――こんなの、絶対おかしい。


 いったい、どうすれば私がヒトイヌじゃないことを証明することができるんだろう。


「〇〇さん、次のページの一行目から読んでください」


「はい」


「――ッ」


 檻の外はいつも通りの授業が行われているのに、なぜか私だけ違う世界にやってきてしまった気分になる。

 それもそうだ。

 だって、今の私は昨日のヒトイヌと同じように手足を折り曲げた状態で拘束されて、お尻からはヒトイヌの尻尾を生やしてる。

 あとは、昨日のヒトイヌみたいにぷりぷりに張ったお尻を腰と一緒に大きく振れば――


 ヴッ、ヴヴッ――ヴヴヴヴヴヴヴヴッ。


「あ、あぅッ!? うぅッ、う!? あぅうッ!?」


 突然の刺激にビックリして声を上げる。

 お腹の中に収まっている三つの突起が急に動き出したのだ。

 

「あ、あぁ、あぅ……ッ! うぅ、うッ、あっ……んあぁッ!?」


 それは、ものすごい力で三つの穴ともども内臓を掻きまわしてくる。

 あまりの刺激に腰が勝手に浮かんで、お尻がぷりぷりと揺れてしまう。


「あうぅ~~ッ、うぅッ、ぅぅ……ッ!?」


 それは、昨日のヒトイヌが大きく腰を振って、プリプリに張り出したお尻を嬉しそうに震わせていたときと同じ動きだった。

 あのヒトイヌも、この刺激を味わっていたのだ。

 

「あ、あぁ……っ、あぅ、うぅ~~ッ、あ、ぁはぁ、はぁ……んぅッ!」


 たゆまなく続く振動。

 その刺激に紛れながら、膀胱にわずかに溜まっていた尿意が霧散していく。

 尿道を塞いでいる異物が、膀胱に溜まっていたおしっこを吸上げているみたいだった。


「お、おぉ……ッ!? おあ、あ、あうぅ~~ッ、あぁ……、あ、あはぁっ、んふぁ……ッ!?」


 すると、他の穴を埋め尽くしている突起がみるみる膨れ上がって、内臓を圧迫してきた。

 私は反射的に、おまんこをぎゅっと締め上げちゃうけど、突起はそれでも大きくなりながら、私のおまんこを満たしていく。

 それは、お尻の穴のほうも同じで、尻尾を咥えこんでる私の肛門は、うんこを踏ん張るときみたいに大きく広がっちゃってた。

 そのあまりの異物感に、お腹の筋肉に力を入れて、耐えるけど、苦しくて辛い刺激はお腹の中で激しく蠢き続けて、なんとも言えない感覚をず~~っと与えてくる。


「あう、うぅ~~ッ、うぅっ、う、う!? ――ッ!?」


 そして、その苦しさが徐々に甘い感覚へと変貌して、それが爆発しそうになったとき――


「――――ッ」


 三つの突起が動きを止める。


「あ、あぅ……ッ、うぅ……ッ」


 思考が散り散りになりながらも、私は乱れた呼吸をあぅー、あぅー、と整える。

 ただ、私のお腹の中で膨張した異物は成りを潜めることなく顕在で、ずっと前と後ろの穴を埋め尽くしながら内臓を圧迫してた。

 いつになったら、この圧迫感が消えてくれるのだろう。とジッとしてると。


 ヴッ、ヴヴッ――ヴヴヴヴヴヴヴヴッ。


「あぅうッ!? うぅッ! あうううッ!!」


 三つの突起が再び動き出し、ものすごい刺激がまたも内蔵を揺らしてくる。


「うぅ……ッ、ぅぅ……ッ!」


 それは、二限目の授業が終わって、三限目の授業が終わっても、繰り返すように延々と続き、四限目の授業が終わった昼休みにやっと止まった。

 けど、お腹の中を掻きまわしていた異物感は相変わらず膨張したままで、成りを潜めることはない。

 まるで、今の状態がデフォルトであるように、私のお腹を満たし続けてる。

 おかげさまで私の身体は、すっかりその刺激の虜になって、振動が止まったあとも腰をグネグネと動かしていた。


「あ、あぁ……っ、あぅ、うぅ……うぅ~……ッ」


 口を開けっ放しにする開口器から浅く呼吸を繰り返し、唾液と一緒に舌を垂れ流して、次の刺激がいつやってくるか待ち続ける。

 檻の中に放置されてる私には、頭をぼーっとさせながらそうすることしかできなかったのだ。


「琴音……大丈夫?」


 すると、ふいに檻の外から誰かに名前を呼ばれる。


「うぅ……?」


 俯いていた顔を上げると檻の傍に、スカートを整えながらかがみこむ友だちの柚葉ちゃんがいた。


「なんかよくわかんないけど、これがヒトイヌ用の餌だから琴音に食べさせるようにって、先生に言われたの。琴音もお腹空いてるでしょ?」




 動かずジッとしている私にニコっと微笑みかけてから、柚葉ちゃんは包装された袋からステック状の物体を取り出して、鉄格子の間から私のほうへ差し出してくる。

 見た目は10円で売ってるスナックの駄菓子に似ているけれど、それでいてゼリーの塊っぽい透明な色をしていた。


「だから、はい。食べて」


「うぅ……」


 食べて。と言われても、私の口は開口器のせいで閉じることができず、咀嚼できない。

 柚葉ちゃんから差し出されたスティックを口にしたら喉を詰まらせて死んでしまう。


「もしかして、食べ方がわからない? んーと、先生が言うには……これは舐めると溶ける成分で出来てるから、舌の上で転がすように舐めるといいんだって、えっと、こんな風に……れろれろ――って。琴音ならできるでしょ? やってみて」


 柚葉ちゃんは私の様子を伺って、ヒトイヌの餌の食べ方まで丁寧に教えてくれる。

 その様子は私の知ってる優しい柚葉ちゃんと何一つ変わりはなかった。

 あとはもう、私がその餌を口にするかどうかの問題だ。

 でも、本当にその餌を口にしていいのか迷ってしまう。

 だって、私の目の前に差し出されているコレはヒトイヌ用の餌なのだ。

 人間が食べるために用意されたご飯じゃない。


「うぅ……ッ」


 けど、柚葉ちゃんの優しさを蔑ろにしちゃったら、友だちとしてどう思われちゃうか不安だった。


「はやく食べないとお昼休み終わっちゃうよ?」


「……ッ」


 柚葉ちゃんの言葉に急かされ、私は意を決して鉄格子の近くまで歩み寄る。

 そこで、真っ赤な舌をだらしなく垂れ流しながら、柚葉ちゃんから差し出されている透明のステックを口の中に受け容れる。


「んぶっ、んぁ、あ……ぇお、んふッ……はぁっ、あ……ッ」


 舌に触れる感触は、ゼリーのように柔らかくて、でも、ソーセージみたいに弾力がある。

 ただ、風味は一切感じず、ただただ甘い味がする飴玉みたいな食べ物だった。

 これなら、お菓子感覚で食べられそう。

 というか、あり得ないくらい美味しく感じる。

 ヒトイヌって、いつもこんなに美味しいもの食べてたんだ。


「そう、そうだよ。その調子。うん、いいよ。すごいすごい。上手に食べれてえらいよ琴音」


「あ、あぅ……っ、んぅ……ん、んはぁ、あ……ッ!」


 柚葉ちゃんに教えられたとおりに、口の中のステックを舌で転がすように舐めると、それに合わせて柚葉ちゃんがステックを上手に動かして、私の舌に絡めてくれる。

 おまけにめちゃくちゃ褒められるから、嬉しくてもっと舌を動かす。


「ン、んぶッ……んはぁ……ッ、あぅ、うぅ……ッ、ん、んむ……ッ!」


 スティックを舐めれば舐めるほど甘いのが口の中いっぱいに広がって、なんだか頭がふわふわしてきた。

 周囲で起きてることも、何もかもどうでもよくなってきて、口の中に広がる甘さだけに意識が集中して、スティックの味に夢中になっていく。


「えへへ、餌を食べる琴音ってば、本当にヒトイヌみたいですっごく幸せそうだよ? 自分が昨日のヒトイヌと同じように腰振ってるの、気づいてる?」


「んぅ~ッ……ん、あぅ、うッ……んぶッ……ッ!」


「あはは、餌を舐めるのに夢中で聞こえてないみたい。じゃあ、あとで琴音も観れるように記念に動画撮っておくね?」


「んぅ~~~~ッ!」


 柚葉ちゃんに、何か話しかけられていた気がしたけど、いつの間にかお昼休みは終わってて、柚葉ちゃんは教室から姿を消していた。

 今日の五限目と六限目の授業は体育だったから、みんな教室から移動してるのだ。

 柚葉ちゃんも、それで私を置いて行ったのだろう。

 何も言われずに置いて行かれたことに、寂しいと思っていると再びあの刺激が私に襲いかかってくる。


 ヴッ、ヴヴッ――ヴヴヴヴヴヴヴヴッ。


「あう、うぅ~~ッ、うぅっ、う、う!? んう~~ッ!?」


 けど、午前中と違って、教室には誰もいない。

 近くに誰もいないから、好きなだけ声を漏らしても、誰かに迷惑をかけることはない。

 どうせ、私は一人寂しく教室にある檻の中に留守番させられているのだから、今くらい大声を上げたっていいだろう。 

 午前中からずっと、お腹の中を延々と責められ続けてしまって身体が火照って仕方がないのだ。

 だから、誰も見てない間に身体に溜まった鬱憤を発散してしまいたいのだけど。


 ヴッ、ヴヴッ――ヴヴヴヴヴヴヴヴッ。


「あうぅ~~ッ、うぅッ、ぅぅ……ッ!?」


 私のお腹の中で稼働するこの装置は一度たりとも私に高みを見せてくれることはなかった。

 私がどんなに腰を大きく振って、ぷりぷりに張ったお尻を震わせながら、だらしなく唾液を口から溢れ出そうとも、お腹の奥で蠢く刺激が最高潮に募る前に、必ず動きを止めてしまう。

 それが酷くもどかしく感じて、どうにかしようと腰を大きく振り続けるけど、やっぱりだめで。


 ヴッ、ヴヴッ――ヴヴヴヴヴヴヴヴッ。


「あ、あぅッ!? うぅッ、う!? あぅうッ!?」


 ずっと、ず~~っと、おんなじ刺激をぐるぐると繰り返すだけ。


 先生が言っていたとおり、この装置はヒトイヌが自慰行為をしないための貞操帯で、あくまでも、私の体内から作られる老廃物を処理するためだけのものなのだろう。

 数時間にも及ぶ理不尽な責めを受けて、それくらいのことは私にも理解できた。

 けど、理解できたからと言って、この地獄が終わるわけじゃない。


「お、おぉ……ッ!? おあ、あ、あうぅ~~ッ!? あぁ……、あ、あはぁ……ッ!? ――ッ」


 みんなが体育の授業を終えて、教室に戻ってくるまでずっと、私は絶え間なく穴を犯され続け。

 六限目が終わるころ。ついに体力の限界がやってきたのか、私の視界はブラックアウトしていた。


「琴音。起きて、琴音ってば……!」


「あぅ……ッ?」


 何度も名前を呼ばれ、ぼんやりとしたまま目を覚ますと柚葉ちゃんが心配そうな顔で私を見下ろしていた。

 私は咄嗟に起き上がろうとしたけど、手足を折り曲げながら、全身がギチギチに締めつけられるように拘束されていて、上手く起き上がれない。ただ、不思議と身体に疲労感はない。

 柚葉ちゃんはそんな私の身体を持ち上げて、床に四つん這いにさせると、ネックコルセットの上にある首輪のリングにリードをつけてから言った。

 

「ほら、琴音が寝てる間にHR終わったから家に帰るよ?」


「あぅ……ッ!? うぅ……ッ!?」


「なに、どうしたの?」


「あうぅッ! うぅ、うう~ッ!?」


 私は自分がヒトイヌ専用の装身具を身につけたままであることに、混乱していた。

 学校が終わったということは、放課後に私についてのアンケートが行われたはずなのだ。

 なのに、私はそんな大事なときに気を失っていた。

 私の知らないところで、アンケートの結果がどうなったのか知りたくて、柚葉ちゃんに何度も何度もそのことを問いかける。


「そんなに喚かれても、琴音が何言ってるのかわかんないから、とりあえず帰ろうよ。ここに居ても掃除の邪魔になっちゃうから、ね? 言うこと聞いて」


「うぅ……ッ」


 柚葉ちゃんに諭され、周囲を見てみると、私の涎でびちゃびちゃになった檻の中を雑巾で清掃してるクラスメイトの女子と目が合った。

 でも、すぐに目を反らされる。

 それは、昨日の特別授業のヒトイヌに向けられていたものと同じものに感じた。

 

「ほら、行こう?」


「あぅ……ッ」


 そこに横やりを入れるように柚葉ちゃんにグイっと引かれたリードに沿って、私は折り曲げられた手足をよちよちと動かし、柚葉ちゃんのあとをついていかされた。

 教室を出て、長い廊下を歩き、他の生徒とすれ違いながら、玄関がある階段のほうへ柚葉ちゃんは向かってる。

 さっき柚葉ちゃんが言ってたとおり、本当に学校から帰るつもりらしい。

 

「段差あるから転ばないように気を付けてね」

 

「あぅ……うぅ……ッ、うぅ……ッ!」

 

 そして、玄関に向かうための階段に差し掛かり私は足を止めた。

 いつもなら、何気なく上り下りしてる階段なのに、今はそれを目の当たりにするだけで、ものすごく怖かった。

 一つ一つの段が異様なプレッシャーを私に与えてくるのだ。


「琴音が落ちないように支えてあげるから、がんばって」


「あ、あぅ……ッ、んふぅ……ッ!」


 正直、下りたくはなかったけれど、私の首輪と繋がるリードは柚葉ちゃんが握ってるから、逆らえなかった。


「あッ、うぅ~ッ……!?」


 一つずつ段差を降りるたび、お腹がねじれて、貞操帯の突起が内臓を擦り上げてくる。

 それが、何とも言えない刺激を身体に与えてきて、足腰から力が抜けてしまう。


「ほら、がんばって琴音。あと少しだよ」


 でも、私が姿勢を崩しそうになると柚葉ちゃんがしっかり身体を支えてくれるから、数分かけてなんとか階段を下りきることに成功した。


「よくできたね。えらいよ琴音」


 階段を下りただけなのに、柚葉ちゃんは私の頭をぽんぽんと撫でて褒めてくる。

 いつもだったら、適当な話しをしながらあっさり下りるだけの階段だったのに、変な扱いをされてるから不思議でたまらない。

 はやく、このヒトイヌ専用の装身具を脱がしてもらって、いつもの関係に戻りたい。


「あぅ、うぅ……ッ」


 なのに、私は柚葉ちゃんにリードを引かれながら学校をあとにして、ヒトイヌみたいに市中を歩かされていた。

 向かってるのは、私と柚葉ちゃんが暮らしてる住宅街だろう。

 学校から15分くらい歩いたところにあるはずだけど、私の歩きが遅いからいつもより時間がかかっているみたいだった。

 それでも、柚葉ちゃんは私のペースに合わせてリードを引っ張ってくれるから、なんとかついていけてる。

 もしも、私が本当にヒトイヌだったとしたら、こんな風に毎日散歩させられちゃうんだろうか。なんて、変なことを考える。

 だとしたら、私のご主人様は柚葉ちゃんみたいに優しい人がいいな。


「そういえば、この辺りだったっけ……? 琴音がヒトイヌみたいになりたいって言ってたの」


「うぅ……ッ?」


 ふいに柚葉ちゃんは住宅街のすぐ近くのところで足を止める。

 周囲を見回してみるとたしかに昨日の帰り道。私はこの場所で、柚葉ちゃんにヒトイヌについて興味があることを話した。

 

「琴音は普通の人間なのに……まさか、本当にヒトイヌになっちゃうなんて、すごいよね。――ねぇ、あこがれのヒトイヌになれた琴音は今何を感じてるの? 願いが叶って嬉しい? それとも、思ってたのと違って後悔してる? ヒトイヌになった琴音が胸の中に抱いてる気持ちを教えて欲しいなぁ~」


「あ、あぅ……ッ?」


 次々と語りかけられる内容の意味がわからなくて、先ほどまで優しく見えていた柚葉ちゃんに狂気じみた何かを感じる。


「あ~、そっか。琴音は知らないから、ちゃんと私が教えてあげないとわからないよね」


 柚葉ちゃんは、怖気づく私の傍にスカートを整えながらかがみこむと、様子を伺うように私の頭をぽんぽんと撫でながら言った。


「実は昨日ね。琴音がヒトイヌの話しをはぐらかしたから、何も言わずに黙ってたんだけど……あのとき、私も琴音と同じようにヒトイヌについて考えてたんだ――こんな風に飼ってみたいなぁ。って」


「――うぅッ!?」


 その言葉に、全身の装身具がギチギチと鳴いた。


「だから、琴音がヒトイヌになりたがってることを昨日すぐ先生に報告したの。そうしたら、今日の朝には琴音がヒトイヌみたいに……っていうか。まんまヒトイヌにされちゃっててさ、うわ~、やばいことしちゃったな。ってちょっと引け目を感じてたんだけど――でも、お昼休みに先生に申し出て、檻に閉じ込められてる琴音に餌をあげたとき。琴音がすっごく嬉しそうにヒトイヌの餌を食べてくれて、気づいたんだ。琴音は私に飼われるためにヒトイヌになったんだ。って」


「あぅ……ッ! うぅ……ッ!?」


 柚葉ちゃんの手を振りほどくように頭を振りながら、全身を縛めている装身具に抗うように手足に力を込める。

 でも、私の身体に装着されたヒトイヌ専用の装身具はその程度では外れない。

 それは、先生の手によって一つずつ装着されたときに理解してる。

 だってこれは、人間だった私をヒトイヌにするための装身具なのだ。

 柚葉ちゃんもそれをわかってて、私が遠くに行かないようにリードを短く握ってる。


「でも、琴音をヒトイヌにするためにはクラスのみんなの同意が必要だったでしょ? それでね? お昼休みのときに琴音が嬉しそうに尻尾振りながら、餌を食べてる動画をみんなに見せたの! そしたら、みんなして、琴音はヒトイヌになりたがってる変態だから、こんなやつを人間に戻したくないって、怒りだしてね? クラスのみんな全員一致で、琴音をヒトイヌ認定することに決定しちゃった! どう? すごいでしょ!? おまけに学校に呼び出されてた琴音のお母さんとお父さんも、先生から説明を受けたあと、仲の良かった私がご主人様になるんならって、琴音がヒトイヌであること全部了承して書類にサインしてくれたから、琴音はもう完全にヒトイヌとして私の所有物になっちゃったんだよ! ね? 琴音が望んでたことぜ~んぶ私が叶えて上げちゃったの!」


「あううううッ!? うぅうううッ!?」


「だから、これからも琴音はずっと、ヒトイヌのままでいられるよ? よかったね」


「あ、あうぅッ……ッ、うぅッ、ううッ……ッ!? ――あッ、あぁ……ッ!? あぅ~~ッ……ッ!」


 柚葉ちゃんの言葉を聞いた途端、募り募っていた感情が爆発するように、私のお腹の中で何かが弾け飛んだ。

 それは一瞬で私の頭の中を真っ白に掻きまわして、全身の筋肉を弛緩させていく。


「あはは、すごいすごい! 琴音はヒトイヌになれたのがそんなに嬉しいんだ? そこまで悦んじゃうなんて、思ってなかったから私も嬉しいなぁ~」


「あう、うぅ~ッ……、うぅ……ッ」


「大丈夫。何も心配ないよ? ヒトイヌになった琴音のことは、私が最後まで面倒見てあげるから。だから、安心して」


 唾液と一緒に口からだらしなく舌を垂れ流しながら、浅く呼吸を整える私を柚葉ちゃんは抱きしめてくる。


「これからは、ずっと一緒だよ」


「うぅ……ッ」


 柚葉ちゃんの話しが本当なら、私はもう、人間じゃない。


 ――ヒトイヌだ。


 それはつまり、もう二度とこのヒトイヌ専用の装身具を脱げないということになる。

 これから先、私は一生を終えるまでヒトイヌとして生きなきゃいけない。

 今日も、明日も、その次の日も、私はずっとヒトイヌで、人間には二度と戻れないのだ。


 ——そんなの、ありえない。


「じゃ、帰ろっか」


 そう言って、柚葉ちゃんがリードをグイっと引っ張る。


「あ、あう……ッ!」


 けど、ヒトイヌの私は、リードに抵抗することもできず、柚葉ちゃんのあとをついていくしかなかった。

 向かうのは、自分の家じゃなく、柚葉ちゃんのお家。

 そこには、私専用の小さな檻が用意されていて、柚葉ちゃんの許可がない限り、私はずっとその檻に閉じ込められながら、一生を管理されることになった。


「うぅ……ッ、うぅ……ッ」


 自分がヒトイヌから人間に戻れないことを知った私はショックを受けていて、しばらくの間、餌を食べられないくらい元気がなかった。

 けれど、


 ヴッ、ヴヴッ――ヴヴヴヴヴヴヴヴッ。


「あ、あぅッ!? あうぅッ……!? うぅ〜〜っ!? う、う、あうぅッ!?」


 私の身体に溜まる老廃物を処理するためのお腹の中の装置は構わず動き続けるから、柚葉ちゃんのお家でも、いっぱい獣みたいな声を上げて鳴いていた。


 そして、次の日。

 私は柚葉ちゃんの家のなかにある檻の中で、ヒトイヌとして朝を迎えた。


「ほら、琴音。ちゃんと、ご飯食べないと死んじゃうよ?」


「あ、あぅ……ん、ふぁッ……あッ……うぅッ……ん」


 柚葉ちゃんにそう言われて、私は渋々と柚葉ちゃんに差し出されたヒトイヌ専用の餌を口に含んで舐め回す。

 昨日のお昼から何も口にしてなかったから、学校で食べたときよりも美味しく感じた。

 

「じゃあ、私は学校行ってくるから琴音はお留守番しててね。餌はちゃんとセットしておくから、お昼になったら食べるんだよ?」


「うぅ……ッ」


 制服に着替えた柚葉ちゃんは私を置いて家を出ていってしまう。

 檻の中に一人ぼっちで取り残された私にできることは何もない。

 そう思ってるとお腹の中の装置が動き出す。

 だから、私は「あうあう」と声を漏らしてその刺激に腰を振って時間を潰した。


 でも、結局最後までは気持ちよくなれないから、数時間経ったころには、自分で自分のアソコを掻き回したい衝動に駆られるようになっていった。

 けど、私はヒトイヌ専用の装身具を身につけているから、自分で自分の身体を慰めることもできない。

 だから、学校から帰ってきた柚葉ちゃんにいっぱい、いっぱい、おねだりして、私の身体を気持ち良くしてって、何度も、何度も、腰を振ってお願いした。

 そしたら、柚葉ちゃんはそんな私にこう言った。


「ごめんね。ヒトイヌ専用の貞操帯は一度でも身体に挿入しちゃうと中で装置が膨らんじゃって二度と外せないものなんだって、それと、ヒトイヌに対して性的な行為が許されてるのは男性のご主人様だけで、女性のご主人様である私が琴音を気持ちよくさせてあげることは禁止されてるの」


 それは、国で定められている法律で、破ってしまうと大変なことになってしまうらしい。


「あうぅ~ッ! うぅ~~ッ! うぅッ、うぅ~~ッ!」


 その話しを聞いた私は、全身を縛めている装身具を外すために、折り曲げられた手足を暴れさせた。

 だって、私がヒトイヌになりたかったのは、性の悦びを貪っているヒトイヌが羨ましく見えたからで、まさか、その歪んだ悦びを管理するための存在がヒトイヌだったとは思ってなかったのだ。

 私がヒトイヌとしてヒトイヌ専用の装身具を身につけている限り、私の絶頂は国から支給された装身具によって管理され続ける。


 そんなのは、嫌だった。


 だから、必死になって装身具の縛めに抗う。

 抗って、藻がいて、それで——

 数ヶ月経っても何一つ変わらない現実に私は——


「はい、琴音。ご飯だよ」


「あぅッ! あぅんっ!」


「はいはい、今あげるから、そんなにがっつかないで」


 自分がただのヒトイヌであることを受け入れていた。

 なぜなら私は、ヒトイヌだから。

 もう、何かを考える必要はない。

 ありのまま、ヒトイヌにできることだけを受け入れる。

 それが、ヒトイヌである私に許された唯一の悦び。


「あぅッ! うぅッ! うぅ〜〜ッ!」


 そんな私の楽しみは、柚葉ちゃんが毎日のように与えてくれる私専用の餌だった。

 コレだけは何度食べても美味しくて、口の中に膨みながら、舌の上で転がすように舐めまわすと胸の奥が穏やかな気分になるのだ。

 食べれば食べるほど、幸せな気分がず~~っと私を包み込んでくれて、頭がふわふわっとして、柚葉ちゃんのことしか考えられなくなる。

 けど、ついうっかり夢中になって食べちゃうから、食べ終わるのはあっという間で。


「あうっ! あぅんッ! んぅう~ッ!」


「ダーメ、今日はもうおしまい!」


「あううッ! うぅ~~ッ!」


 本当は、もっと、もっと、い~~っぱい食べたいけど、柚葉ちゃんに食べすぎは良くないよ。って叱られるから、いっつも我慢する。

 

 そんな感じで、柚葉ちゃんが高校を卒業してからも、何日も、何日も、私は柚葉ちゃんとの日々を繰り返し、柚葉ちゃんのヒトイヌとして生きることが悦びと感じるようになっていった。

 それは、柚葉ちゃんが大学を卒業して、社会人になった今も変わらない。

 柚葉ちゃんはヒトイヌである私のことを、ずっとずっと大切に飼い続けてくれるから、ヒトイヌの私は最高に幸せです。




 END

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