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「アッ♥ アッ♥ みないで……ください……♥ ンアッ♥ ンアーッ♥」

「見ます、どんどん見ますよ奥の方」


 ──ネオサイタマ龍256地区のサイバー楼閣『老舗の味』にて、花魁のミルチャは“脳外科医”であると名乗り、往診を騙って乗り込んできた緑色の髪の白衣の女に、後頭部を優しく指で弄り回されていた。

 実際、脳外科医はニンジャ……恐るべきネオサイタマのおける食物連鎖の頂点に位置している存在である。

 闇の世界で恐れられ、暗黒メガコーポの生み出した生物兵器だとも、一般人が突如として超人に変貌するのだとも言われているが、少なくとも裏の世界の住人にとっては実在するところまでは常識となっている。

 脳外科医の用いるニューロハック・ジツは、相手の脳に自らの内なる魂が呼び起こす力を集中して突き刺し、そこに自らの神経系を繋ぐことで記憶を読み取ることが可能だ。

 クチクチ、チュクチュク、チキチキと。

 ミルチャのニューロンを蹂躙し、必要とする情報を全て抜き出した脳外科医は、左腕でミルチャをしっかりと固定したまま、右の指を「はい、おつかれさまでした」と引き抜こうとして──しかし、それをふと止めてまじまじとミルチャの容姿を確認する。

 ミルチャは若く、美しい。その体はサイバネ増設されたものを含めて四本腕であり、まるで江戸戦争において活躍した伝説のバトル花魁・秋名聖子のようであった。

 脳外科医は、彼女の探している少年……老元千葉を、ミルチャが三時間もかけて布団の中で楽しませたことを既に知っている。

 ネオサイタマでは珍しい、豊満なコーカソイド女に異様なほど執着する千葉が、珍しく関係を持った相手。千葉の異母兄弟である老元夜路に雇われている脳外科医は、彼の相手をしてやったことがあり、奇しくも今は亡きソーカイ・シンジケート首領、聖ラオモトの遺児と前後した者同士ということになる。

 それを面白がった脳外科医は、ミルチャの体を堪能することに決めた。最初から、千葉を警戒させない為に殺すのを控えようとしていたので、都合が良いと言える。


「アッ♥ アッ♥ もう、許し……にげ、て、火蛇……♥」

「ハイ、ハイ、そういうのはいいから」

「ンアァーッ♥」


 右腕の指でミルチャのニューロンを優しく撫でながら、脳外科医は平坦な体を押し付けて、まるで万力で押しつぶすようにミルチャの動きを完全に封じると、増設されたサイバネ腕の方の腋下をチロチロと舐めてやる。

 左腕の指は、ニューロンを支配され掌握される根源的快楽によって、既に濡れているミルチャのオマミへと伸ばされ、クチュクチュという淫ら水音を響かせる。

 これまで花魁として数多の男と交わってきたというのに、それらの快楽を累計しても敵わないほどの快楽を与えてくれる愛撫を前にして、ミルチャは本来の用途とは大きく異なるが、足元に転がした海抹茶色の傘の上に愛液を零し、それが弾かれて周囲に飛び散る。


「ンアーッ♥ アーッ♥」

「百合前後は初めて? もう、男相手に濡れなくなるかも。ごめんなさいね」


 まったく誠意のない口調で謝罪しながら、ヤスリをかけてギザギザに尖らせた歯で、血が出ない程度に“増設された”腋下を甘噛みする脳外科医。

 ネオサイタマに生きる男たちは、性を売り物にすることが当然めいたこの街で暮らしておきながら、大抵は性行為に淡白だ。

 棒を穴に入れて、前後の腰を振るだけ。後は種を出し、女の蜜に注ぐ。

 ヨロシサン製薬のズバリ・ドリンクでもキメていれば、それだけでも男女を問わず十分な快楽は得られる。

 脳外科医のニューロハック・ジツがもたらす快楽は、そういった外部から取り込んだ薬物的刺激とは比べ物にならない快感であるというのに、その状態で丁寧で倒錯的な愛撫を受けてしまえば、下手に性感が開発された花魁だからこそ容易く堕ちる。

 脳外科医に従うようにとか、脳外科医に惚れ込めと支持を出してやる必要すらないままに、ミルチャはよだれをとろとろと流して己の着物を濡らしながら「もっと……してください……♥」と先までとは真逆の懇願をしていた。


「頭の奥の方はもう見せてもらいましたから、体のもっと奥の方も回診しますね?」

「ンアーッ♥ ンアーッ♥ イイッ♥ はるかにいいですぅ……♥」


 ニューロハック・ジツを用いたままのレズセックスは、相手が自分の行いでどれほど感じているのか、陶酔しているのか、惚れこんでいるのかが手に取るように……いや、手に取って理解できる。

 しかも、感覚がリンクしている訳では無いので、大きすぎる快感などを感知しても、こちらのニューロンに被害が及ぼされることはない。ペケロッパカルトやサイバーゴスが聞けば、垂涎の前後であると言える。

 このまま脳外科医が少しでも気まぐれを起こして指を押し込めば、あるいは逆に興味を失った勢いよく指を引き抜いたら、あるいは脳外科医の与えてくる利害の快感に体を無理にでも動かしてしまえば。

 どれでも簡単に頭の中を破壊されてしまう状況なのに、ミルチャの頬は千葉の健康的な体を見た時よりも頬を赤らめ、脳外科医をまるで親しい相手のように扱い始める。


「アッ♥ アッ♥ 脳外科医=サン……♥ そこ、すごいですっ♥ お尻♥ 後ろ、いじるの初めて♥」

「嘘でしょう? 簡単に私の指を飲み込んでしまうのに。いえ、いえ、本当の事なのは分かってますよ。ニューロンが教えてくれますから。本当にカワイイ」


 脳外科医の指は、今はミルチャの後ろの穴を弄っており、前からこぼれた愛液を潤滑油として挿入しているが、締め付けは極めて強かった。

 脳外科医は夜路の相手こそ乞われてシてやったが、監視の無い場所では義弟抹殺に執念を燃やす彼をサイコ野郎扱いしており、本来の性嗜好である可憐な少女相手の前後に飢えていた。

 まさか任務中にこのような僥倖が舞い込んでこようとは。脳外科医も、ミルチャを多少は特別扱いしてやってもよいと考え始めている。

 多くのニンジャは邪悪な内なる魂と意識が混濁する過程で、本来の善性や倫理観を失い、全能感に酔うことになる。こうなってしまえば、より強大なニンジャに叩きのめされ、現実を思い知らされた後も性根は変わらず、非ニンジャを屑扱いして殺戮を問題解決の手段とするようになる。

 脳外科医は少し違う。控えめで邪悪でない方などとは言えない程度には極悪人のサイコ殺人者であるが、しかし自身のカラテが対ニンジャにおいては不足だと冷静に考えられるリスクヘッジが彼女にはあり、それが結果として非ニンジャ相手にも一定の価値を見出す奥ゆかしさにも似た精神性を培っていた。


「ミルチャ=サン。あなた、私のモノになりません? このまま仕事は続けてもらうことになるけれど、今よりもずっと早く六本腕になれますよ。勿論、もっともっと気持ちよくもしてあげる。女同士の快楽を、体の隅々にまで──ニューロンの奥にまで教え込んであげる……」

「アーッ♥ アーッ♥ 脳外科医=サン♥ 脳外科医=サン、好き♥ はい、愛していますっ♥ して、してくださいっ♥ 私の頭、いじってください♥ 脳外科医=サンだけのモノにしてくださいっ♥ 飽きたらいつでも、ニューロン焼き切って捨ててくださって結構です♥」

「そんな野蛮なことはしない。少しだけシュレッダーをかけさせてもらうだけです。でも、本当にカワイイ子。さあ、この回診で生まれ変わりましょうね」


 回診と改心をかけた、禅問答めいた物言いと共に、脳外科医はミルチャのニューロンを都合の良いように弄り回し、完璧に脳外科医だけを女神のように崇拝し、彼女の愛撫だけではなく、言葉・体臭・吐息、心音……すべてにエクスタシーを感じるように徹底的に洗脳を施す。

 それ自体が堪らなく快感で、幼馴染として過ごしてきた火蛇に対する、淡い感情もニューロンへと流し込まれる情報で押しつぶされ、圧殺されて消え去る。それすらも気持ちがよく、ミルチャの精神は完全に邪悪なるニンジャを賛美する狂信者へと変わり果てた。


「あれ、ミルチャ=サン。そちらの方はどちらですか?」


 夜間迷彩用の軍事技術の転用で、今やシブヤで日帰り処置が可能なサイバネとなった、紫肌の改造花魁ナスビが出勤してきて、同僚であるミルチャがまるで小娘のように甘えている白衣の女を訝しむ。

 はぁ……と何処か扇情的な吐息と共に、ミルチャは脳外科医の胸に顔を埋めていた顔をあげて、うっとりと恍惚の表情で以て答える。既に右手は、後頭部から抜き取られていた。


「あー、いい……わたし、いま体温何度あるんだろう……♥ ナスビ=サン、今日もお肌の色絢爛ね。こちら、私の良い人。脳外科医=サンなの♥」

「へへへ、そうでしょう。維持薬を新しいのに変えて……って、アイエッ!? ミルチャ=サンのチンカモ相手! しかも、ニューロサージ(脳外科)のお医者様!?」


 ナスビはミルチャの“脳外科医”という紹介を言葉通りに解釈したらしく、殊更優しく先までミルチャのニューロンを掌握していた右手で背中を撫でている白衣の女を、本物の勝ち組医師だと考えたらしい。

 美人というよりは不気味な雰囲気の方が強いが、それも激務のせいなのだと思うと魅力に見えてくる。ナスビは羨ましそうにミルチャを見つめ、しかし二人があまりにもお似合いな空気を放っているので、頬を赤紫に染めて祝福した。

 脳外科医が、待たせていたターボ・リンカーンを一旦戻らせる。

 それもまた成金ではない金持ちであるというアトモスフィアを漂わせており、ナスビは「これからも、お友達で居て下さいね?」と不安半分、打算半分で言う。

 すっかりと邪悪なレズビアンと化しているミルチャにとって、ナスビは魅力的な獲物かつ恋人を繋ぎとめる為に捧げる相手としても適当なので、笑みを浮かべて「勿論です、ナスビ=サン。ユウジョウ!」と欺瞞の言葉を吐き出していた。



「アー……♥ 私、脳外科医=サンにご奉仕してます……♥ それだけでマンイキ止まらない♥ 好き好き止まりません♥ 気持ちいいですか、脳外科医=サン♥」


 布団の上で本格的に身を重ねる脳外科医とミルチャ。

 ミルチャは四本腕であること活かして、二本のサイバネ腕で白衣だけを纏った脳外科医の平坦な胸を優しく弄り、自前の腕でまるで別の生き物が食いちぎろうとしているように締め付けてくる秘所を弄り、残った最後の右腕でその背中を抱いて撫でていた。

 オイランドロイドや、軽微なサイバネ花魁相手では経験できない複数個所の愛撫奉仕に、脳外科医も小娘のように喘いだりはしないが満足げであり、壊さなくて良かったと改めて自分の処置を賛美していた。


「はるかにいいわ、ミルチャ=サン♥ このまま店は続けて、老元千葉が現れたらすぐに私へと連絡して……」

「ウー……そういうの、いいですから♥ 今は私だけ見てください♥ いっぱい気持ちよくしますから♥ 尽くしますから、お願いします♥」


 脳外科医の口癖の一つを意図せず真似ながら、その若く豊かで瑞々しい体で、懸命に脳外科医に気持ちよくなって欲しい奉仕を続けるミルチャ。

 これで三下ニンジャが相手なら、口答えだけで激昂してオタッシャさせてしまうこともありえるが、脳外科医はミルチャが見せた嫉妬へむしろ楽しそうな表情を浮かべており、その唇をミルチャのそれに近づける。


「キスしましょう、ミルチャ=サン♥ 私のモノになった証です」

「ハイ♥ 私、ミルチャは脳外科医=サンの信奉者です♥ 賛美者です♥ あなたの為に生きて、あなたの為に死にます♥ 次は六本腕でご奉仕しますから、好きなようにこの体を消費してください♥ アー……幸せ……ンー……♥」


 唇が重なり、ニンジャ特有の超絶的な舌技で以て、ミルチャの体が何度も何度も快楽で跳ねる。

 前後は一晩中続き、眠らぬネオサイタマの片隅に、腐臭にも似た芳香を放つ百合が咲いていた……。

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