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「じゃあ風呂場いこっか」

「えっ?」


 ぬっ、とまーくんの太い腕が俺に伸びてくる。まだ状況を全部把握しきれたわけじゃないけど、その手が――その手がなんだかとても怖くて、反射的に手をはじいて飛びのいた。


「やめろっ!」

「っ……!!」


 実際には筋肉がみっしりとついたまーくんの腕はほとんどはじけなかったが、それでもまーくんは驚いたようで、目を見開いてこっちを見つめている。


「……なんで?」

「なんでって……お、おかしいだろ!? た、たしかに子供のころはチンコ見せ合ったりしたけど! お、俺たちもう大人だし、と、友達でも抜くとか、しねえよ!!」


 不安や恐怖が言葉になって、堰を切ったように流れ出る。言いすぎかと思ったけれども止まらない。それを聞いたまーくんの顔はみるみる哀しいような、裏切られたような表情に変わっていく。


「……けーくんは、俺のこと……嫌いなんだ?」

「嫌い、と……」

「そっか」


 嫌いとかそうじゃなくて、と続けようとした言葉は、続かなかった。まーくんは一瞬で俺に一歩詰め寄ると、その太い腕で俺の首をがしりと掴んだ。


「ぐぅっ……!」

「そうか……」


 まーくんはそのまま俺を片手でふわりと宙に持ち上げた。俺60kgぐらいあるのに……じたばたするもまーくんの筋肉がみっしりついた腕はびくともしない。手を何とかはがそうとしても、力が強すぎて指一本外せない。


「まー……く……!!」

「そっか……けーくんは俺のこと嫌いか……」


 違う、と言いたいけど苦しくてそんなことすら言えない。まーくんの分厚い手がぎりぎりと俺の首を締める。涙が出て視界がぼやけてきた。その時ぱっとマー君の手が離れて俺は床へと崩れ落ちる。


「げほっ、ごほ……ま、まーくん……ち……」

「じゃあ仕方ないよね」

「ぐぶっ!」


 まーくんが俺の腹を踏みつける。まーくんの足は俺の腹どころか胸まで覆ってしまうでかさだ。そのうえあの身長と筋肉からすれば体重は軽く100kgを超えているはずで、その凄まじい重みに俺の内臓や骨が潰れそうになる。いや、本気で踏みつけたのなら俺の体は潰れているだろうから、これでもまーくんは手加減してくれているのだろう。


「まー……や……」


 必死にまーくんの素足を押し退けようとするが、一ミリも動かせる気がしない。それどころかまーくんはぐりぐりとその巨大な足で俺の身体に体重をかけていく。


「……けーくんは俺の事嫌いでも、俺はけーくんのこと好きだからさ」

「た、たす……」

「――けーくんがいない人生とか、考えられない」

(……!?)


 押し付けられる痛みに耐えていると、突如変な感じがした。気持ち悪いような冷たいような感覚が、全身を駆け巡っていく。頭がぐるぐるする中、ほんの少しまーくんの足の圧力が弱くなった気がした。


(た、たすか……?)


 だがそれと同時に足で押さえつけられている感覚が、どんどん増えている。いや、俺もよくわからないが、さっきまで胸の真ん中位を押さえつけていた足先が、だんだんと鎖骨の方まで迫ってきているのだ。足を動かしたなら腹の方は楽になるはずなのに、腹の方も逆に押し付けられる感覚が増えている。


「な、なに……!?」


 何もかもがわからないがやばいことが起きているのはわかった。足の感触がどんどんでかく――そうだ、まーくんの足がどんどんでかくなっている!! 腹を覆いつくした踵はもう膝辺りまで来ており、横幅はもう俺の体を完全に覆ってしまった。つま先も鎖骨を越えて顎を触りだして、ツンとした汗の臭いが鼻に届く。


「まーくん……! まーくん!!」


 もう押さえつけられる感覚はだいぶ弱くなっていた。相変わらず足に覆われていて身一つ動かせはしないけど息はできる。さっきよりまーくんの顔も随分遠くなってしまった。まーくんが大きくなっているのか……?


「まーくん、やめ……んぐ……」


 ついにまーくんのつま先が俺の口をふさいだ。その後すぐに鼻まで足に覆われ、目はマー君の足裏しか見えなくなった。


(うそ、だろ……)


 俺の身体は、まーくんの足にすっぽりと覆われてしまったのだ。隙間があってまだ息はできているけれど、身じろぎ一つできない。まーくんが少し体重をかければ俺の体はペチャンコに押しつぶされてしまうだろう。恐怖でぼろぼろと涙が出てくる。


「うう……」

「もういいかなー……」


 体中にかかっていた重さがふっと軽くなった。それと同時に真っ暗だった視界に光が戻ってくる。まーくんの足が離れたのだ。涙を拭いて仰向けのまま上を見上げる。すると……


「はは、けーくん、小さくなったね」

「――――――っ」


 叫ぶこともできなかった。声が出てこない。見上げた、見上げた先には……とてつもなくでかい、まるでビルのような大きさのまーくんが、まるでほほえましいものを見るような眼で俺を見下ろしていたのだ。


「あ……あ……」


 ずしん、と俺の横にまーくんの足が踏み下ろされた。たったそれだけで地面が揺れて俺が転がりそうな暴風が吹く。横を見ると、トラックよりもでかいまーくんの足が真横にある。そんな巨大な足が存在するはずないのに、裸足独特の据えたような臭いがこれが現実だと知らしめてくる。


(逃げ、逃げ……!)

「お、動けるんだ」


 上からはまーくんの声が爆発のような大音量で降ってくる。俺はなんとか身体を起こして立ち上がり、ふらつく足で、何とかまーくんから離れようと歩くような速度で逃げる。――そこで、家のようにでかいお菓子の箱が目に入って、周りのものも全部でかくて、ようやく俺は気づいた。


(……俺が、小さくなってる!?)

「逃げたら駄目だよ」


 急に強烈な向かい風が吹いた。何だと思って走りながら後ろを見ると、まーくんのあの巨大な足が俺の背よりずっと高いところに持ち上がっていた。向かい風は足が持ち上がったことで起きた巻き込み風だ。その足はあっという間に俺の頭上を通過すると、俺の目の前に踏み下ろされた。押し出された空気が暴風となって俺を襲い、俺は床にごろごろと転がってしまう。


「うわあああああ!!」

「というか、逃がすわけないしね」

「うう……」


 まーくんが足を動かすたびに地面が揺れて風が吹き荒れて転がってしまう。揺れが治まった瞬間に四つん這いになってなんとか体を起こそうとするものの、膝が震えてうまく立ち上がれない。そのとき、上から押し付けるように風が吹いて、周りが急に薄暗くなった。


「けーくん」

「……ひっ……!!」


 声のする真上を向いて俺は固まってしまった。上にはまーくんしか見えなかった。まーくんは俺の近くでしゃがみ込んで、床の上で腰を抜かす俺を見下ろしていたのだ。見上げた視界の左右には、折りたたまれたまーくんの両膝がまるで大型バスを2台並べたかのように突き出している。足は俺の前、膝の先端は俺の後ろにあるので、俺は多分その真ん中にいるんだろう。その膝の根元には、今の俺の身長よりも確実にでっかいチンコがぼっこぼこの腹筋にその身を打ち付けながらそそり立っており、その上から広がる張り出すような胸板はまるでドームのように俺を覆っている。そしてその上にあるのが……俺なんか比べ物にならないぐらい、巨大なまーくんの顔。どんなにイケメンだろうと自分よりでかい顔がはるか上から見下ろしているのはもう怖い以外の何物でもない。


「ふっ……けーくん、かわいい」


 そのつぶやいたような笑い声でさえも、今の俺には強い風となって吹き下ろされる。そしてぬっとまーくんの手が俺に向かって降りてくる。俺の全身を簡単に覆ってしまえるほどでかい手。腰の抜けた俺はそれから逃げることもできずに、反射的に腕で顔を覆った。


「んー……20㎝ないぐらい……十分の一ぐらいか」


 もう少し小さくてもよかったかな、という声が聞こえて恐る恐る腕の隙間から外を見ると、俺の腕よりもずっと太い指が見える。どうやら親指と人差し指で俺の体の大きさを測っているようだった。それで測れるぐらい、今の俺は小さいのだ。


「いつまでそうしてるの?」

「うわっ! あっ、やっ……!!!」


 まーくんの手がぐわっと開いたかと思うとあっさりと俺の胴を掴んでまるで人形のように持ち上げられる。胸より上と膝より下は出ているけれど、胴のほとんどはまーくんの手に握られてしまった。腕は動かせるけれど俺の力でまーくんの指をどうにかできるとは思えない。


(もし、このままぎゅっと握られたら……)


 自分の体が潰される想像をしてカタカタと震えてしまう。あっという間にまーくんの顔の前まで持ち上げられる。俺を足蹴にして、縮めた張本人は、それでも会った時と同じように柔らかい表情で笑う。


「もう逃げられないね」

「……んで」

「ん?」

「なんで、こんなこと、する、んだ? な、んで、おれ、ちいさく……」


 口から勝手に言葉が出てくる。もう、何もかもわからなかった。俺が小さくなったのも、なんでまーくんが俺を小さくしたのかも、なんでそんなことできるのかも。そんな疑問が口から自然と出ていた。俺の十倍もでかいまーくんからすれば蚊の鳴くような声だったろうが、どうやら聞き取れていたらしくまーくんは目を細める。


「そうだね……何から話そっか……まず、俺にはモノを小さくする力があるみたいなんだよね。……中学生ぐらいの時かな、路上駐車されてた車を邪魔だなと思ってたら目の前で縮んだのが最初。そのあと色々試して、結構なんでも小さくできるってわかった」


 普通ならありえないと言うところだけど、今俺が小さくなっているのだから信じないわけにはいかない。まーくんは俺をつかんだまま立ち上がると、部屋の隅にある俺のシングルベッドに腰かけた。安いパイプベッドがまーくんの体重でギシギシときしむ。


「まあめったに使わなかったけどね。使わなくても普通に生きていけるし。……でもさ、けーくんは違うんだよ。小さいころから俺のあこがれだったけーくん。引っ越した後もずっとずっと好きで。大学入ってようやく再会できて。……なのにあんなふうに拒否されて……それでまた離れるとか、考えられなかった。けーくんがいないと生きていけない」


 心なしかまーくんの手の締め付けがきつくなっていく。肺から空気が押し出されて内臓が潰されていくような感触。苦しみに暴れるもまーくんの手は一向に動く気配がない。


「まー……くん……」

「だからさ、けーくんを小さくしたんだ。……こうすれば、けーくんも俺がいないと生きていけないもんね」


 まーくんの言葉はわかったが、何を言っているかはわからなかった。俺は、このままなのか?


「も……もとにもど、して、よ」

「ん~……?」


 まーくんは俺の言葉に答えない。答えないまま、俺を握った拳をゆっくりと下に降ろしていく。樽のように張り出た大胸筋とボッコボコに割れた腹筋の下にあるのは――いまだガチガチに勃起し続けているまーくんの巨大なチンコだ。


「見てよ、ほら。けーくんが抜いてくれないからずっとこのまま」

「うわっ!」


 亀頭に俺の手が届くほどに近づけられる。俺の頭よりはるかにでかい亀頭は全身で何とか抱えられるかというサイズだ。赤黒く光る表面に腕ぐらいなら簡単に飲み込んでしまいそうな先っぽの穴。汗とも違う、むせかえるような臭いが目の前の巨大なチンコから漂ってくる。


「イかせてよ? 約束だったでしょ?」


 その声に顔を上げると、はるか上から俺を見下ろすマー君と目があう。


「な、何言って……」

「じゃないとさ」

「うあっ! あっ、ちょっ……何をっ!」


 俺を握りしめていたまーくんの手が開いてそのまま勃起したままのチンコに押し付けられる。まるで大木に抱きつくような形だが、俺が抱き着いているのはまぎれもないマー君のチンコだ。腕の回らない太さに、頭は亀頭にも届かず足も根元に触れられないとんでもない長さ。熱いぐらいの体温とドクドクという鼓動が全身から伝わってくる。もがこうとしてもまーくんの手が後ろから押さえつけているので動けない。熱気と臭いで頭がくらくらとしてくる。


「まー……くん……!!」

「こうやって、けーくんごと握ってオナろうかな。絶対気持ちいいだろうな~」


 そういいながらまーくんが握る力を強めたり弱めたりする。そんなことされたら俺は無事じゃいられない。なんてったってこの大きさの差なのだ。まーくんの握力で握りつぶされるか、それともチンコにすり潰されるか。最低でも大怪我は間違いない。チンコと手に挟まれてる中で必死に叫ぶ。


「や、やる!!!! やるから!!!!」

「……そう? じゃあ……」


 俺がそう言うしかないのをわかっているくせに、意外そうな声でまーくんは俺を摘まみ上げ、その亀頭に乗せた。といっても抱え込むように抱き着いてなんとか落ちないようにするのが精いっぱいだ。それを見かねたのかまーくんの指が足元から近づいて俺の支えになってくれた。


「そこで亀頭舐めてよ。いまのけーくんだと竿じゃ何にも感じないだろうからさ。亀頭ならちょっとは敏感だし」

「な、なめ……!?」


 イかせるだけなら手だけでもいいはず、とまーくんを見上げるが、こちらを見下ろす目を見て言葉が詰まってしまう。有無を言わさない、いやもし言うことを聞かなかったらどうなるか、というような迫力があった。


「ん?」

「い、いや……なん、でもない……」

「早くしてよ」


 まーくんの指が俺の背中に添えられる。今は支えているだけだが、まーくんは指一本で俺をチンコに押し付けることもできるのだ。……覚悟を決めて、今俺が抱き付いている亀頭に顔をうずめ、舌で表面をなぞっていく。しょっぱいような苦いような味がするが、我慢して舐め続けていく。


「おっ……ふふっ、いいな……」


 こんなのまーくんからすればほんのちょっとの刺激にしかならないだろうが、それでも声からすると多少は感じているらしい。ついでに両手も使って擦っていくと、胸のあたりの穴から透明な液が吹き出てくる。


「うわっ……が、まん、じるか……」


 ローション代わりにちょうどいいと思って塗り広げていくが、我慢汁はあとからあとからどんどん出てあふれてくる。俺の身体は全身汁まみれになり、滑って身体が落ちそうになる。


「ほらほら……頑張って……」


 まーくんの指の押し付けが強くなる。もうろくに身動きもできないが、俺が鬼頭の上でバタバタしているのがいい刺激になっているのかまーくんの息が荒くなっていく。


「あ~……もう我慢できねえ……」

「うあっ!」


 まーくんが反対の手で自分のチンコを握った。その衝撃はまるで地震が起きたようだったが指で固定されている俺は亀頭から振り落とされることはなかった。ただ地獄はそこからだった。


「あ~~~……俺のチンコより小さいけーくんが、俺のチンコに奉仕してる……」

「ちょ、ま……!!」


 まーくんはそのままガシガシと自分の竿を扱き始めた。俺に直接触れてはいないが、チンコから伝わる衝撃はかなりのものだ。箱に入れて振り回されているみたいだ。俺を固定している指に強く押さえつけられ潰れそうになる。


「ぐぅっ……ぎっ……!!」

「あ~~やばい、もうイきそう……!!!」


 潰れないようにひたすら耐えていたが、まーくんのその言葉でさっと血の気が引く。射精するところ、つまりチンコの穴は今俺の胸の前にあるのだ。この状態で出したらマー君の精液が俺の体を直撃する。まーくんの射精がどのぐらいの勢いかは知らないが、このサイズだ。少なくとも消防車の放水ぐらいはあるんじゃないか。そんなもの受けたら……


(マジで死んじゃう……!!)


 必死になって穴から離れようとするが、背中を固定しているまーくんの指が強すぎて動けない。これはマジでやばい。


「お、い! まー、く、ん!!」

「ふっ……ふっ……」


 俺の言葉にまーくんは気づかない。どうしようと考えている間に亀頭が一層膨らんできて圧迫が強くなり、息すらまともにできなくなる。


(おれ……死んだな……)

「あ~~~イクイク、イクッ!!!!!」


 射精の直前、全ての揺れがとまる。その瞬間指の力の向きがズレたのか、俺はさんざん出ていた我慢汁で身体が滑り亀頭から転がり落ちた。


「うわあああああ!」


 今までしがみついていた亀頭を見上げる形になりながら落下していく。次の瞬間、まーくんがイった。


 ずどん!!!!!


 まるで爆発のような音がなった。消防車のホースどころじゃなかった。ビリビリとした衝撃がこっちに届くほどの威力。間欠泉とかそっちの方が近いかもしれない。落下する中、天井にまーくんの精液が着弾したのが見えた。


(どんだけだよ……)


 ずっと落下してたように思っていたが、実際には一秒にも満たなかっただろう。そのあと俺はごわごわした弾力のあるものの上に落ちた。何かと思ったらまーくんのチン毛だ。ちょっとした毛糸ほどの太さがあるそれに受け止められて俺は助かったらしい。真上にはチンコを握ったままのまーくんの手が見え、その先にとてつもない量の射精を続けているチンコがある。その精液は多分部屋中にまき散らされており、まーくんの身体にもかなりの量がかかっている。こんな精液が俺に直撃したら確実に死ぬが、灯台下暗しというかなんというか、チンコの根元でかつまーくんの手の陰になって、奇跡的に俺に直接精液が降ってくることはなかった。


(部屋の掃除どうしよ……)


 そんなことを考えて、そもそも小さくなったこの状態じゃ普通に暮らすのも無理だということに気づいた。


「は、ははっ……」


 なんだかちょっとおかしくなって笑ってしまう。放心しながら見ていたまーくんの射精は一分ぐらい続いただろうか。なんともダイナミックだ。俺はもう疲れて何もできる気がせずチン毛に絡まれたまま流れてきた精液に身体のほとんどが埋もれている。射精を終えたまーくんが、ようやく俺が亀頭にいないことに気づいたらしい。


「え、あ、けーくん!? やばい飛んでった……!?」


 奇跡的に免れました、と思いながら周りを見渡すまーくんを見上げていると、ほどなくして俺を見つけてまーくんと目が合った。すぐに摘まみ上げられて精液の海から引っ張り出され、手のひらの上に乗せられる。俺がおぼれていないか心配してたみたいだが、ちゃんと息をしているのがわかるとほっとしたように息を吐いた。


「いや~よかった……ごめん、気持ちよくてつい……」

「あ……うん……」


 俺はぼうっとして適当な返事しかできなかった。しばらくまーくんは俺を見つめていたが、一度ぺろりと舌なめずりをすると、俺の乗る手を口元に近づけていく。俺ぐらい軽く入ってしまえそうな、大きな口が、目の前にある。


(………まさか……)


 一つの可能性に思い至るが、もう暴れるような気力もない。その口が大きく開くと、中からぬるりと畳のようなでかい舌が飛び出してきた。


「…むぐっ、んぐ……!」


 まーくんのざらざらとした舌が俺の顔と言わず身体と言わず全身をべろべろと嘗め尽くしていく。足の先まで丁寧になめ切るとまーくんの舌はすっと引いていった。


(……食われなかった……?)

「ふふ、けーくん可愛い……」


 マー君の巨大な指が俺の頭を撫でる。ちょっと力を込めれば俺の首をぽきんと折ってしまえそうな太い指がべとべとの俺の髪を優しく触る。


「けーくん……これからずっと一緒だよ……ずっと俺が守ってあげるからね……」


 ああもう俺は元には戻れないんだな、とわかって、俺はようやくゆっくりと意識を手放した。


END

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