怪力の話 (Pixiv Fanbox)
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怪力の話をします。
皆さんは怪力ってお好きですか?私は好きです。ざっくり言えば普通の人より大幅に強い力を持っていることなんですが、筋肉、体格差と共に大好きな要素です。
細身の男が怪力!みたいなのもいいですが(ギャップとかでそれはそれで好きです)やっぱりでかい体、すごい筋肉に凄まじい怪力ってのがよいです。筋肉にいっぱい躍動してほしい。いっぱい行使してほしいし見せつけてほしい。そう、怪力は、人に対して行使するのとモノに対して行使して見せつけるのがあるんですよね。ちょっと好きな展開を羅列します。
・スチール缶を片手で握りつぶす。普通の人ならへこませるのも大変なスチール缶を、片手で、簡単にべこべこにしてしまう。スマホもある。でかい手ですっぽり覆ってバッキバキにしてしまう。石もよい。握りこぶしぐらいのその辺の石を、バキャって握り砕く。これは人外レベルなんですけど、これで唖然とした人間の頭を掴んでやるのがとてもいい。石を砕いた手が自分の頭を掴んでいる恐怖と言ったら。
・車も怪力を行使する相手としてとてもいいです。車で逃げようとする相手に対して、前輪を浮かせて空回りさせたりとか、フロントガラスになんなく手を突っ込んで運転席の人間を引っ張り出したりとか。ドアを力ずくでぶっ壊して外すのもいいですね。基本「車の中は安全」というイメージがあるので、そのパワーの前ではまったくもって安全ではないってところが示せるのがすごいよい。持ち上げてひっくり返してもよい。
・同じところで、家の玄関ドア。スチール製のドアを鍵なんか無視して無理やりひん曲げて開けちゃう。ドアノブ引っこ抜いてその隙間からメリメリ手を入れていって鍵ぶっ壊してドア歪めながら開けてドアガード吹っ飛ばして、「こんなんで大丈夫だと思ったの?」とか言われたらもう最高ですよね家ですら安全ではない。壁とかもぶち抜いちゃいそう。
・後は色々ですが、ロッカーとか。怪力男から逃げてる最中にロッカーの中に隠れてやり過ごそうとしてたら、ロッカーごと抱きしめられて、その時にはもうそのパワーで扉は開けられず、スチール製のロッカーがべこべこと潰されていって中の人間の空間はどんどん狭く……って感じの。じっくり脅していける。
・金属小物もいいね。鍵とかを指先でくちゃって曲げたりして「これで帰れないな」とか。
・あとは服。服ってなんか破けるイメージあるけど実際に普通の人間が破こうとするとなかなか破けない。それを紙のように引き裂いてしまう。人間の抵抗とか意にも介さずそいつのデニムを無理やり引き裂いちゃうとことか。
・拘束の破壊もいいよね。手錠かけられて大人しくしてるんだけど、拘束されてるのをいいことに調子に乗る人間に対して笑って「こんなんで俺をどうにかできると思ってるのか?」って簡単に手錠引きちぎっちゃう。そのあと青ざめる人間の顔色は趣深い。後はロープで縛られてるのをロープぶっちぎっちゃうとか、檻に入れられてるけど気まぐれで入ってただけで、飽きたからって簡単に鉄格子ひん曲げて出てきたりさ。「拘束されてあげている」みたいな余裕が素晴らしい。
・色々と面倒だから体力測定とかでは力をセーブしてる、みたいなのも好きです。握力計とか普通にやったら壊しちゃうとか、ハンドボール投げ100m余裕だけど40mぐらいに加減してるとかそういうの。
・後は脚力系? 回し蹴りで樹をへし折ったりとか、震脚でアスファルト砕いたりとか。ただのキックで洗濯機吹っ飛ばしたりするのもいいな。あと怪力とは若干離れるけど、脚力を存分の使ったダッシュとか、ジャンプして直接二階に飛んできちゃうとか、脚系はそういうのもよいですね。
……モノ系だけでもすごいいっぱい出てきました。多分まだまだある。人系の怪力はまた今度の機会にお話ししようと思います。あとは怪力に対して大体はそれを誇ってるタイプが多いと思うんですが、それを疎ましく思ってるのもいいな~と思ったりします。力が強すぎて何でもぶち壊してしまう……好きなやつにもうかつに触れない……系の男。そういうのもいいなと思ってちょっと書いてみた文章があるので、下で公開してみます。頑張ったのはスチール缶をつぶす描写。
修一。身長は185cmくらいで着やせするけど筋肉はついているタイプ。
遼。平均身長ぐらいで普通の男。
なんか互いが好きになってキスとかハグとかはして、遼から「そろそろやりたい」って言われてでも修一が乗り気ではないところから始まります。
「……だ、ダメですか?」
「いや、ダメというか……俺は、人より…………力が強いから……」
ちから? と遼が首をかしげると、修一は視線を泳がせながら口を開いて、また閉じる。それをしばらく繰り返した後、「……見てもらった方が早いか」と、手に持っていた缶コーヒーを煽った。修一は空になったコーヒー缶を遼に見せる。もともとそう大きくはないコーヒー缶だが、修一の大きな手と比べると一層小さく見える。修一は缶の上の部分を親指と人差し指で摘まみ、二、三度中身が入っていないことを確認するかのように傾ける。
「見てて」
そういうので遼はコーヒー缶を見つめていたが、次の瞬間目を疑った。一瞬、たった一瞬で金属がへし折れるような音とともに、修一の親指と人差し指がくっついたのだ。むろん、その間にあったコーヒー缶の円形の飲み口は、真ん中が修一の指によって押しつぶされ、いびつな八の字を横にしたような形に潰れてしまっている。
(……え?)
遼は目の前の事象が信じられなかった。修一の持っていたコーヒー缶はスチール製だ。普通はそれを凹ませることすら難しく、パワー自慢の人が握りつぶすにも、両手を使ったり思いっきり力を入れたりしてようやく、という強度だ。それを修一は缶の部位でも強度が高い飲み口の部分を、たった指二本で、それがまるで折り紙でできた筒かのような涼しい顔で潰したのだ。
「……マジック……?」
「手品じゃないよ」
修一がいびつにつぶれたコーヒー缶を手に乗せて遼に差し出す。遼はそれを手に取った。飲み口は修一の指の跡が残っており、凄まじい力で潰されたのがわかる。遼は両手で缶に力を込めてみたが少し周囲がへこんだだけで、修一みたいに簡単に潰すことはできなかった。
(……ちゃんとスチール缶だ……)
「貸して」
修一は遼に手を差し出す。修一は涼しい顔のままで、遼はしばらく修一とその手を見つめていたが、やがてその手のひらにコーヒー缶を乗せた。遼の手が静かに引っ込められると修一は缶を持ち直して胸の高さまで持ち上げる。修一の手が大きいので缶の上部分を残して、残りはすっぽりと修一の手に包まれている。飲み口さえ潰れていなければただコーヒーを飲んでいるのと変わらない姿勢。その姿勢のままぐしゃりという音を立てて缶が握りつぶされた。菓子の包み紙のように潰れたスチール缶に、遼の脳内は混乱する。修一はそのまま片手で何度か缶を持ち直しながら握って小さくしていく。まるで紙くずを丸めているかのようなのに、聞こえてくるのは重々しい金属の音だ。最後に親指と人差し指でこねるようにまとめられたその指の間にあるのは、ピンポン玉ぐらいのサイズの金属の塊。それはついさっきまで確かにコーヒーの缶だったのだ。遼はごくりとつばを飲み込む。
「…………す、すごい、ね……」
出てきたのは、まるで声の出し方を忘れてしまったかのようなかすれた小さな声だった。それを聞いて修一は苦笑する。指先で弄ばれているコーヒー缶だったものから、ギチギチと押しつぶされていく金属の悲鳴が聞こえる。
「こんなの全然本気じゃないんだ。多分遼がノートの切れ端を丸める感じ。そのぐらいの力しか使ってない。それでこれ」
修一が弄んでいた金属の球を、指で宙にはじき飛ばす。鋭い金属音と空気を引き裂く音がはじけるように鳴る。遼の目では、金属の球がどこに飛んだのか追えなかった。少なくとも、修一の指の先に広がる公園の敷地内に落ちたような気配はしなかった。ただ今目の前で起きていることが、人間の域を軽く越えているということは遼にも分かった。
「石を握って粉々にしたり、鉄板に指で穴を開けてぼこぼこにしたり……家のドアや銀行の金庫だって、多分簡単にこじ開けられる」
「で、でも……いままで……」
「そんなことはなかった、か?」
そんなことなかった、と続けようとした遼の言葉がさえぎられる。遼は口をつぐんだ。修一は手を膝に置いて静かに笑っている。
「加減してるんだよ。そうしないと何でもかんでも壊しちまうから。物を持つのもドアを開けるのも……歩くのだって。……もちろん、遼に触れるのもだよ」
修一の声色が優しいものになる。遼の思い返す限り、修一が派手に何かを壊したりしたという記憶はなかった。修一とはじゃれたりすることもあるし、手を握ったこともキスしたこともある。でもそれで遼が怪我したことは一度もなかった。それでも
「……一回、修一に肩叩かれてわざと痛がったら、すげー心配してたのって……」
「あれはマジで心臓止まるかと思った。力加減ミスったのかと」
そのあとネタバラしをしたら修一に本気で怒られたのを、遼はよく覚えている。怒気に溢れた「二度とやるなよ」という低い声に、腰が抜けて立てなくなったほどだ。
「でも、そんだけ怒ったのもわかるだろ?」
「うん……」
「…………怖いか?」
遼が修一の方を見る。修一は穏やかに笑いを浮かべていた。薄く雲がかかった空のような、細々とした笑顔だった。
「……で、でも、力の調節はできるんでしょ……?」
「普通はな。でも、それができないときがある」
「…………」
「すげー怒ったときとか、悲しいときとか……興奮したときとか。感情がすごい昂ってるときに力を抑えるのはすごい気力がいる」
「遼と手をつないだ時はめちゃくちゃ気ぃ使ってたし、遼が抱きついてときも思いっきり抱きしめ返したい気持ちを必死で抑えてた」
こんな感じ!ま、怪力はいいよねって話でした!そのうちまた話します!