①180センチ高身長空手女子に惚れられたあなたが、彼女とぐっちゃぐちゃになるまでラブラブレ○プする話 (Pixiv Fanbox)
Content
「ふぅ……ふぅ……んん……っ♡
やはり慣れないものだな……男子更衣室というのは……
学校の女子更衣室は、あれはあれで苦しいんだぞ?制汗剤の匂い……合成された多種多様な花の香り……ああ、私は鼻が敏感だからな……一種類ならまあ、問題ないんだが、各々が好きな匂いをミックスすると……あれはあれでキツいものがあり……
……それに比べて、ふふっ♡
男子更衣室というのは単純だな……
ああっ、悪臭はたった一種類……
”雄臭さ”……だけだろう?
勘違いしないで欲しいが、否定しているわけではないぞ?……武術を学ぶ者が、自らの体臭や清潔を疎かにしていること……それは空手に強く打ち込めている、という証拠だからな……っ♪
……んっ?どうした?
……ふむっ♪」
”すんすん……っ♡すぅ~……っ♡すはすは……っ♡”
「……お前も……確かに、まあ、汗臭いな……♪
気になるんだろう?優しすぎる人間は、どれほどに汗臭くても、それを告げてはくれないからな。時には、相手が傷付く言葉をかけてやるのも優しさだ……と、私は父から学んだんだが……ふふっ♪
そうだな、お前の前で父の話をするのはやめておこう
お前は……私の父が嫌いだからな……♪
いや、いいんだ。人間同士、馬が合う合わないはあるし……何より、そうした敵対心は人を強くするからな♪あいつより強くなりたい、見返してやりたい、復讐してやりたい……動機の善悪を語れるほど、私だって完璧な女ではないし……ん?
……ああっ、話が逸れたが……っ♡」
”すんすん……っ♡すぅ~……っ♡すはすはっ♡ふがふが♡すんすん……っ♡”
「お前の汗の匂い……
私は、大好きだぞ……っ♪」
あなたは今――
美少女と共に、道場の男子更衣室を清掃しているのだ。
空手を学ぶ道場であり、当然のように門下生達は、皆”男臭さ”を漂わせている。貴重な青春の時間を、自らが強くなることに使っている――狂人の集まりであるのだ。「後で掃除をする人のために、制汗剤を使って、換気も良くしておこう」などという発想は――彼らの中には、一つとして存在していない。
あなたも掃除をする立場であるから、不満を抱いているだけ。利用者側の立場に回れば、同様の発想を抱き「まあ、掃除の人が拾ってくれるからいいか」と、ポケットから落ちたゴミをスルーするような人種であるのだ。
だから、口に出して文句を言うことはないが――
「んっ、レシート……?
ふむ……おい、これを見ろ……っ♡
……コンドームを買っているようだ……
いやはや……うちの門下生でまさか、恋人がいる男がいるとはな……
あんなに汗臭くて、雄臭くて、浮いた話なんてなさそうな奴らだというのに……意外もいいところだ……」
彼女が――
それを拾ってしまえば、話は別であるのだ。
最初は、それが遠回しのセクハラだと思っていた。
空手を学ぶ道場は、駅から近い距離にある、運動不足を解消する「スポーツ」とはまるで違う。仕事帰りのサラリーマンが週に二日、ジムに通う代わりに空手を学ぶような軽い代物ではなく――「人生を空手に捧げたい」と思っている、狂人だけが通う道場であるのだ。
近所には、空手部で有名な高校と大学がある。
そこの顧問が、この空手道場の出身であるのだ。その系譜を受け継いでいる以上、彼らにとって、法律というのは役に立たない。「道場の一人娘へのセクハラ」というそれが、どれほどに軽いものであり、法的には不起訴になるようなものでも――
師匠が一言「破門」と言ってしまえば、それで終わりになるのだ。
だから――
直接、コンドームの空箱を落としていれば、それはアウトだったのだろうが――
コンドームを購入したレシート、というのは――判断が難しいものだ。
コンドームの空箱には悪意があるが、レシートというのは偶然の事故だ。「え?……そ、その程度でセクハラなんですか……?(笑)」と、批判をした人間がむしろ馬鹿にされる空気が――少なくとも、体育会系の頂点であるこの道場には存在する。あなたはどうするべきかを思案する。幸い、彼女はそこに衝撃を受けている様子はなく――むしろ、面白がっている雰囲気すらあるのだ。だから、そのまま放置して、再発防止に目を光らせるべきかと考えるのだが――
「……なあ?
お前も……私と、こういうことがしたいのか?」
彼女は――
掟破りの”逆セクハラ”を、あなたに仕掛けてくるのだ。
これが逆の立場であり、男が女に「キミも俺とヤりたいんじゃないの~?」と言い出せば、問答無用の一発アウトだ。だが――逆ではないし、あなたと彼女の関係は特別なものだ。
否定をするわけにもいかず、しかし肯定することも出来ずに――
あなたは、沈黙を以て返答とする。
「……ふふっ♪
気にしなくていいからな?
お前のそういうところ……私は嫌いじゃないぞ?
目の前にいるのが、お前の婚約者で……っ♡お前の好き放題に出来る存在であっても……っ♡
手を出せない……優しさを通り越して臆病すぎる部分……っ♡
それがお前の良いところだからな♪」
彼女は、あなたの情けない返答に上機嫌を見せる。
あなたが彼女を、本能のままに押し倒すケダモノであれば――彼女は解放されることはなかったのだ。だから、雄として弱っちいそれすらも、彼女にとっては愛おしさとなるのだろう。
彼女は――
「ん……?どうした……?」
今、床を拭いている。
親に厳しく躾けられている彼女は、ゴミ箱を持ち上げて、その下を綺麗に拭き取っているのだ。教室の清掃の際に、ロッカーの天板まで拭こうとする彼女は、当初こそ「ポイント稼ぎのいい子ちゃん」と煙たがられていたが――それが、彼女にとっての”普通”であるのだ。
見目麗しく、人間離れした雰囲気を醸し出している彼女にとっては――そうした”ズレ”すらも魅力になっていく。女子達もそうだが――男子達は特に、そうした気配りに興奮をするのだろう。
空手着を着用した格好であり、当然のように下半身の形はくっきりと浮かび上がっている。
合気道のように、足の運びを隠すために袴を着用するのとは違い――空手着というのは、技の出しやすさが優先されているのだ。
大きな臀部の形に、布地が引っ張られている。男の子が本能的に視線を向けてしまうそれは――繁殖欲求が故のものだ。人間という生き物は、股間をギンギンに滾らせて、性欲を丸出しにして、良い女を見れば力尽くで手籠めにする――というそれを繰り返して、繁栄を続けてきた。衣服を身に纏い、勉学に触れたところで、そこにいるのは「木から降りた、二足歩行の猿」に過ぎないのだ。合意のない性行為をしない――目の前にあるデカケツに襲いかかったりはしない――というそれだけで、教育の役目は果たされている。デカケツを前にしたとき――しかも、相手がそれに気が付いていなければ、凝視してしまうのは本能であるのだ。
「……なあ
さっきから見過ぎじゃないか?」
彼女は――
あなたに視線を向けずに、それを呟いてくる。
当てずっぽうの山勘ではない――のは、あなたが男の子だからだ。
彼女が普段どれだけ、雌っぽさを表に出していないとしても――やはりそれは、美少女の宿命であるのだ。男達の視線がどこにあるのかを、容易く理解してしまうらしい。
生まれついての、雌としての才能もあるが――彼女の強靱な下半身は、親からの厳しい教育によって育まれたもの。空手――というより、殆ど全ての運動において「下半身の安定」というものは重要視されている。強豪野球部の男子が、下半身をいじめ抜いて、尻だけ大きくなってデニムを履けなくなるのと意味合いは同じだ。
”ちんちんを入れたら――絶対に気持ちいいだろうな”と本能で理解をしてしまう。
背の高い彼女は、”女子にしては”ではなく”男子と比べても”であるのだ。180センチの長身というそれは、男であっても「背が高い」と呼ばれる代物。彼女があるいは、もう少し容姿に劣っていれば話はマシだったのだろう。
だが――
そこに存在するのは、絶世の美少女であるのだ。
母親が日本人ではなく、また、肌の色素も生まれつき弱いのだ。透き通るように真っ白な肌であり、髪の毛もまた、色素を失った銀髪。「結果的に、美少女に仕上がっている」というだけで、彼女の白さは”病気”と呼ばれるものなのだろう。
だが――
それは男の子達にとっては、強い興奮材料となるのだ。
肌と髪の色が違うというだけで、日常生活に不便はない。強いて言うならば「すぐに日焼けをしてしまうので、日傘が手放せない」くらいの実害だ。肉棒に素直に従って生きている男の子達にとっては、「あの柔らかな肌を鷲掴みにして、真っ白な身体をベロベロと舐め回しても問題はない」とあらば、それで十分なのだ。180センチの高身長であっても、男子からの人気は高い。男の子には、「隣を歩く女の子が、自分よりも背が高いとみっともない」というちっぽけなプライドと同時に――「うっお……自分より背が高い女子に甘やかされて、ちんぽシゴかれて、立ちバックしたときに『あっ、ごめんね……これじゃ届かないね(笑)』と小馬鹿にされてぇ~♡」という欲望が共存しているのだ。
「なあ、あんまり見られると困るんだが……
……私はな?お前に押し倒されるなら、いつでもいいんだぞ?
ああっ、流石に……トイレの直後とか、生理中は困るが……それ以外なら、いつでもいいぞ?
……例えば、今、ここで……とかな♪」
彼女の言葉に――
あなたの理性は、ギリギリまで脅かされている。
表面張力でパンパンに張り詰めた、コップの水のようなもの。コインを後一枚投入すれば、それは容易く決壊するだろうが――
あなたは、十年以上も――その土俵際で粘り続けてきたのだ。
コップの底に穴を空けて、水をちょろちょろと漏らして、水位を下げることは容易いのだ。彼女もそれを理解しているから、自分を襲ってこないあなたを、煽ってきたりはしないのだろうが――
「ふぅ……こんなもんか……っ♡」
掃除を終えて、立ち上がると――
それだけで、あなたの理性はグズグズになってしまうのだ。
「うん……っ♡身体は少し、熱いな……っ♡
……ここは、雄の匂いが強すぎるから……っ♡
クラスの男子達は、気を使っているだろう?すぐそばに、女の子がいるんだからな♪モテる為に努力を欠かさず、匂いのケアを怠らないそれは立派なものだと思うが……っ♡
……屈強な男の汗が染みこんだ、更衣室の匂い……っ♡
流石に、ちょっと、刺激が強すぎるんだ……っ♡
私の身体が熱く火照って……っ♡はぁ♡はぁ……っ♡今日は、少し、昂ぶってしまうかもしれないな……っ♡
……ところで、お前は……♡
私を押し倒さなくてもいいのか?」
彼女は、あなたに挑発をしてくる。
180センチの高身長の彼女は、普段、”王子様”としての役割を求められることが多い。
クラスの中でも、彼女の身長は男女合わせて二番目に高い。それでいて、中性的な容姿をした極上の美少女。更には空手の実力もあるとなれば――男子生徒以上に、女子生徒からの人気が強くなるのは当然の話。
男の子にとっては「どんなに口説いても、絶対にヤれない女」というのは、羨望の対象に過ぎないのだが――女子生徒にとっては「将来はモデルか、女優か、わからないが――まず間違いなく、自らの容姿を活かした仕事に就くのだろう」と確信を抱ける”未来の芸能人”は、親友になりたい存在であるのだ。 あるいは可能性がゼロの男子生徒よりも「ワンチャン、王子様がレズだったら」という可能性に賭ける女子生徒の方が、告白してくる可能性の高い――そういう少女であり――
普通の男子は、見下ろされるだけで、おしまいだ。
時代がどれだけ進んでも「男の子は強くなくてはならない」「女の子を守らなくてはならない」という固定観念から逃れることは出来ない。「勧善懲悪」や「自己犠牲」と同様に、人間の根底でそれが必要とされるのだ。あるいはそれを裏切る人間がいるとしても「男は女を守らなくてはいけない――が、それよりも自分の命が大事だ」という、理解した上での反逆が前提であり――
彼女は――
180センチで、空手家である彼女は、男の子に敗北を味わわせてくれるのだ。
男同士による敗北というのは惨めなものだが、女性を相手に敗北するというのは――甘美な興奮が存在する。サドとマゾ、どちらか一つしか性癖を持っていない特殊な人間は、そうそういない。「朝は和食派だけど、たまに食べると、食パンもこれはこれでいいよね」という感情と同じ。普段はマゾヒズムに浸って女王様に苛められるものを主食としていても――たまには、男の足を舐めながら、膣を濡らす女性でシコりたいときもあるのだ。
そういう意味では、彼女のような女性というのは――男子にとってはたまらない”オナペット”なのだろう。
あのすまし顔を快楽でドロドロにしたい。長い脚をベロベロと唾液まみれにしたい。自分のような雄が本来、生涯、縁がないはずの極上美女を好き放題に貪りたい――という欲求も。
あの極上の美女に踏み潰されたい。長い脚で首を絞められて、酸欠でブラックアウトになりたい。自分のような雄が本来、生涯、縁がないはずの極上美女に貪られたい――という欲求も。
どちらも等しく、満たしてくれるのが彼女であるのだ。
だから、彼女に見下ろされるだけで”おしまい”と形容をしたのだが――
「……ふふっ♡
相変わらず……お前は大きいな……っ♡」
あなただけは――
クラスで一番目に背の高い、あなただけは――
速崎飯綱から、”見上げられる立場”であるのだ。
――――
幼い頃、あなたの身長はとても低かった。
自身が感情の起伏に欠けると思ったことはないが――それを、アウトプットするのは苦手だなとは自覚していた。怒りを覚えても「でもまあ、声を荒げるほどではないよな」となるし――悲しみを覚えても「でもまあ、泣くほどではないよな」と達観をしていた少年時代。いじめをしても、面白い反応を返すことはないので、いじめられることはないが――”いいように使われていた”というのは事実。
「おい……
お前達、恥ずかしいと思わないのか……っ!!」
そんなあなたを救ってくれたのが――
幼馴染の、速崎飯綱であったのだ。
空手道場の一人娘として産まれてきた彼女は、幼い頃から父親に空手を習っていた。
純日本人であるのに、真っ白な肌に、銀髪に、琥珀色の瞳というのは”からかい”の対象になるが――
彼女は強く、また、父親が非常に狂っていたのだ。
戦後――どころか、バブル時代の生まれのくせに、自身のことを”武士”と勘違いしていた狂人だ。150年前の幕末の時代に、日本人は剣を捨てている。あの時代の最前線で生きて、時代の変革を目の前にしてきた最後のサムライ達が「剣をどれだけ鍛えても、生身じゃ銃には勝てねえ」と現実的な決断を下したのにもかかわらず――サムライ気取りで、五体を神格化している異常者だ。
速崎飯綱のことを、強く育ててくれたことは感謝している。
ひ弱な教育であれば、目立つ容姿の彼女は、からかいの的になっていたことだろう。それでも――飯綱は強く育ったことで、男達にどれだけいじめられても、やり返すことが出来た。時には「女子との喧嘩に負けることを、恥だと思わない」というタイプの親に怒鳴り込まれるが――
結局のところ、「速崎父の方がキチガイ」であるのだ。
モンスターペアレントよりも、話の通じないキチガイの方が圧倒的に強い。子供同士の喧嘩では、基本的に警察が動くことはないのだ。気弱な親であれば、ペコペコと頭を下げて――そうすると、モンスター側は調子に乗る。だが――速崎父は違う。どれほどに血相を変えて怒鳴り込まれたところで――空手の師範代の、キチガイパパに勝てる親というのはいないのだ。
速崎飯綱が受けた教育は、時代錯誤もいいところ。今の時代は「いじめられている奴がいても、関わって自分がいじめられたら損だから、見て見ぬ振りをすべきだ」というものだ。
そうして――
あなたは、そんな速崎飯綱に救われてしまったのだ。
彼女の父親の功罪は、きっと罪の方が大きいのだろうが――
少なくともあなただけは、その狂った教育方針に救われてしまったのだ。
それから、飯綱とは仲良くなっていった。
彼女は自分の父親のことを、とても強く尊敬をしている。高校生になった今でこそ「幼い頃から洗脳教育を受けてきて、子供一人の力で離脱できるはずはない」と冷静になれるのだが――幼かった頃のあなたは違う。「飯綱ちゃんは僕を助けてくれる、とても優しい子のに――どうして、あのヤベえ父親を絶対視しているのだ」と徹底的に悩んでしまったのだ。
「ああ、そうだな
私はいずれ、顔も知らない男に嫁がされるのだろう
速崎家にとっては、強さこそが正義だからな。いやなに、それ自体は構わないんだ。私は恋愛には興味がないし……何より、強い男の子供を孕めること。それは誇らしいんだが……
問題は……
あの父のお眼鏡に敵う男が、いるかどうか、なんだが……」
速崎飯綱は、将来、強い雄に嫁がされる運命が決まっていた。
あなた自身は、政略結婚を否定する気はない。
「産まれたときから妾の娘で、貧乏に育ってきたのに――大きくなった途端に都合良く、頭首の血を引く娘として、顔も知らない御曹司と政略結婚させられる」という――少女漫画の導入のような話ならば同情はする。だが、基本的には政略結婚というのは、それが成される時点で十分すぎる家柄が存在するのだ。例えば貧乏な家に産まれた学生が、大学に進めないように――犯罪者の子に産まれた人間が、婚約を破断にさせられたりするのと同じ話。激しく強い同情はするが――所詮は他人事に過ぎないのだ。金持ちの家に生まれた娘が、自由恋愛の権利を奪われて、強制的に結婚相手を決められるそれに――本気の義憤を燃やすほどに、あなたは暇人ではないのだ。
だが――
相手が、あなたの恩人である速崎飯綱であれば話は別だ。
せめて彼女が嫌がっていれば、強引に潰すことは出来ただろう。
現代の日本において「強い雄とまぐわえば、強い子が産まれる」という概念は到底許容されるものではない。週刊誌やテレビを動かせば「名門空手道場の師範が、自分の娘に時代錯誤な価値観を強要して虐待していた」と話題になることは間違いない。マスコミが動けば行政も動く。親権を剥奪させることは容易であるのだろうが――
「父のことを悪く言わないでくれ……
私は感謝しているんだ。父の娘として産まれたことに……♪
ふふっ、私自身が嫌がっていないんだぞ?……強い雄の子供を孕むこと、それは女にとって最大の幸せだからな♡……勿論、中身が最悪な人間はいないぞ?中身が伴わない強さなんて存在しない♪父がそう言っていたのだからな♪」
肝心の被害者である、速崎飯綱はそれを望んでいなかった。
洗脳を受けている人間に「それは洗脳ですよ」と言って、解けた試しはない。高校生になれば、選択肢も多々あるのだろうが――当時のあなたは小学四年生。親に訴えかけても「でもねえ、よそにはよその教育方針があるんだから」「本人が嫌がっていないんだから、周りが口出すことじゃないんじゃないの?」と言われて終わりだ。
速崎父も、速崎飯綱も、その教育を拒んではいないのだ。
三日三晩、考えに考え続けた結果――
「……ん?
お前も格闘技を始めるのか!?
……ああっ!それなら父に言えば入門を……えっ?
……総合?あの……見世物のやつか?」
あなたは――
自分が最強の雄になる――という決意を固めたのだ。
速崎家で空手を学ばなかったのは――彼女の父親の薫陶を受けてしまえば、越えられなくなるのを危惧したのと――
「手段を選ばない」という選択肢に出てしまうそれが、不安であったのだ。
あなたが悪者になって、後ろからナイフで速崎父を刺して殺せば。速崎飯綱の洗脳は解けるのだろう。そこには多大な犠牲が伴うし、あなたは彼女に生涯許されない。選択肢としては、最後の最後。どうしようもなくなってからの話であるのだ。
総合格闘技を選んだのには、深い理由はない。その当時、テレビで一番流行っていたから――というだけの話。バーリ・トゥードのジムがあれば良かったのだが――生憎と、あなたが通える範囲には一つもなかったのだ。
速崎飯綱はあなたが空手を選ばなかったことを不満に思い、ことあるごとに文句を言ってきたのだが――あなたにも時間は残されていなかった。流石に、どれほどの異常者であっても、中学生の娘を嫁がせて子供を作らせることはないだろう。だが――キチガイパパが相手なのだ。高校生になって、子供が作れる身体になれば、いつ、速崎飯綱の全てが差し出されてもおかしくはない。
幸いなことに――
「おお……っ
お前、随分とデカくなったな……」
あなたの身長は、中学を境に急成長を始めたのだ。
総合格闘技の練習に励みながら――あなたは自分の中で焔を燃やしていた。
「悪の大魔王から、お姫様を助けるのだ」という痛々しい勘違いを――しかし、敢えて積極的にしていく。ヒロイックに”酔う”という表現をした人間は、上手だなと感心をする。それはアルコールと同様に、身体に熱を滾らせて、苦痛を麻痺させることが出来るのだ。人間の身体が、意思によって大きくなるのならば、小柄なバスケ選手は存在しない――と理解してもなお、あなたは自分の身体の急成長を「自分の意思の力」と信じ込む。速崎飯綱を、狂人の魔の手から助け出そうとしているのだ。こちらとて、狂わなければ話にならない。
飯綱は中学三年生の時点で、170センチの高身長であったが――
あなたは既に、190センチもあったのだ。
バスケ部やバレー部から徹底的に誘われたのは、当然の話。普通の公立校に、普通ではない図体の奴が現れたのだ。実際、押し切られてベンチに座っていた日もある。総合格闘技のジムに通うには月謝が必要であったし――「ベンチに座って、相手校に『な、なんだ!?すげえデカい奴がいる!秘密兵器に違いない……っ!』って萎縮させてくれ」と言われれば、拒む理由もない。話が逸れたが――
そこであなたは、速崎飯綱の父親に勝負を挑んだのだ。
飯綱が嫁ぐことになる、「最強の雄」という表現はあまりにも曖昧なもの。
例えば互いの全てをかけて殺し合うならば、「最強の武道家」よりも「め~っちゃ金持ちな男」の方が圧倒的に強いだろう。
勝負の形式が「互いに向かい合って、よーいドンで、ステゴロで殴り合う」と決めるのは一方的な都合だ。数万円のはした金の為に、人を殺す人間だっている。国家権力を動かすことが出来て、殺人の罪すらも消せる相手が、銃火器を持った反社会勢力を動かせるのならば――たった一人の達人が、勝てるはずもないのだ。
だからと言って――金持ちが、アタッシュケース一杯の大金を詰め込んで「じゃあこれで、俺が最強ってことで」と言われて納得するわけがない。これは議論やディベートではない。「キチガイパパが納得する落としどころはどこか」という問題であるのだ。
それが――
「なあ、やめたほうがいいぞ?
お前が頑張っているのは知っているが……私の父は、強いんだぞ?最強なんだぞ?それは確かに、お前がマシンガンを持って寝込みを襲えば制圧できるかもしれないが……面と向かってなら、拳銃を持っていたって勝てないぞ?」
キチガイパパを、正面から叩きのめすこと――であったのだ
飯綱の父は、あなたを前に圧倒的な油断をしている。
獅子搏兎の精神は大事だが、だからと言って、素人の子供を相手に全力を出す空手家はいない。この国で生まれ育った以上は、そこに法律があり、それを破れば大変なことになると理解しているのだ。稽古の一環としてボコボコにする程度ならばともかく、生涯背負うことになる障害を負わせたり、あるいは絶命に到らせた場合に――どれだけ損をするのか、頭の片隅では理解が出来てしまう。
その油断が――あなたの狙い目であった。
170センチ前半の速崎父との果たし合い。当然、彼の方が圧倒的に技量に優れている。毎日毎日、仕事もせずに、空手に人生をつぎ込んでいるのだ。曾祖父の代――戦後のどさくさ紛れで不動産を大量に取得して、その家賃収入で不労所得を得ていると速崎飯綱は語っていたが――それはまるで、ニートが一日中対戦ゲームをしているようなものだ。eスポーツのプロとしてやっていく為に、対外試合を繰り返し、対戦結果の検討をして、技量を上げていくそれとは違う。向上心を持たず毎日毎日、同じようにプレイしているだけだが――「それはそうと、ゲーム自体はかなり上手くなってしまう」というようなものであり――
彼の空手も、それと同じであるのだ。
MMAを習わずに、体格差だけで戦えば――あなたは一発の正拳突きで、容易くメンタルがへし折れたのだろうが――
如何せん――
体格差というのは、残酷であるのだ。
人と人が殴り合うだけの野蛮な暴力を、”スポーツ”にしているのは「階級制」が存在するからだ。数ポンドごとに厳密に体重を管理して、一グラムでもオーバーすれば、その試合が正式な記録として認定されることはない。
あなたの身体は、試合を目的として作られるものではない。
筋肉量を必要最低限に収めて、技術を徹底的に高めることで、同階級の相手に有利になることを目的としてはいない。”そうする”と決めた夜から、あなたの目的は「速崎パパをぶちのめす」という一点に注がれているのだ。ジムの関係者からは勿体ないと言われて、心変わりするように説得されているが――
彼らは、あなたをいじめから助けてくれることはない人たちで――
速崎飯綱は、あなたをいじめから助けてくれた人であるのだ。
どちらを優先するかは、既に決まっている。190センチの体格があれば、腕をぶんぶんと振り回すだけでも脅威になる。彼があるいは、同じように総合格闘技に精通していれば。無造作に振り回した腕を掴んで関節技に入れたのだろうが――速崎の空手には、そうした卑劣な柔は存在しないし――
何よりキチガイパパは、そういうシチュエーションが大好きであるらしい。
「最近流行の、チャラチャラしたお遊戯に耽っている190センチの、娘に惚れている男が――自分の空手でボコボコにのされて、改心して、門下生にさせる」というシチュエーションだ。
あなたの心変わりを誘うのに、不意を突いた一撃で勝負を決めてはいけない。「あーあ、あの一発さえなければなぁ」「あれさえ喰らわなければ勝てたのに」「次ヤったらぜってえ勝てるわ」という勘違いをさせるのではなく――「一億回ヤっても、今のままでは絶対に勝てない」という無力感を刻み込む必要があるのだ。そういう意味では、油断ではあるのだろう。獅子は兎を狩るのにも全力を尽くすというが――獅子だって、動物園で育てば飼い猫になる。速崎父というのは、狂気の沙汰の武道家ではなく――「そうでありたい」と思っている、サイコパステストの”正解”を狙いにいくタイプのファッションキチガイであるのだ。
彼がみぞおちを狙った前蹴りは――本来の威力には、きっと、程遠いのだろう。
あなたは――
”ぐぐ……っ!”と前に出て、それを受け止める。
全力で蹴り飛ばされていれば、骨が折れて、内臓が破裂して、それどころではないのだろうが――如何なる理由があっても、”正当な果たし合い”と主張をしても、中学生男子を殺せば彼の負けだ。刑務所の中で極められる空手は存在しない。”紫色の痣が腹部に広がり、血尿が数日続く”程度の威力であれば――
速崎飯綱を想えば、決して耐えられないものではないのだ。
彼が足を退くよりも早く、あなたはその右足を抱え込む。
速崎父は、あなたに「完膚なきまでの勝利をする」ということを条件にしているが――あなたからすれば、話は別。そもそもがあなたは、格下の中学生男子なのだ。「油断したから負けちったわ~、かーっwもっかいやれば勝てるんだけどな~w」はあなたが言えても――速崎父には、口が裂けても言えないこと。どんなにまぐれでも、勝ってしまえば、彼のプライドが「いや、彼は将来怪物になる男であり、だから私が負けても仕方がないのだ」と言う屁理屈を口にさせるに違いない。
右足を抱きかかえて、あなたは怯まない。
片足立ちになった彼は、その状態から有効な一打を放つことが出来ない。眼球を潰したり、鼓膜を破ったり、口に指を引っかけて転がしたり――というそれは、同格の相手と、命を掛けた果たし合いをするときに使える技。格下のあなたに繰り出せるはずがないし――
最悪――
”片目くらいなら、くれてやる”という覚悟の下で――
”ぎぎぎぎぎ……っ!”と、右足をねじって行くのだ。
目的としているのは膝関節。手羽先を食べる際に、骨の両端を掴んで”ぱかっ”と開くそれをイメージしながら――あなたは、速崎父の足を”破壊”していく。彼はすぐに気が付いて抵抗をするのだが、当然、それが届くはずはない。この段階で彼も、あなたの目を潰してでも逃れようとするのだが――あなたは、上体を思いっきり背後にのけぞらせてやるのだ。
190センチの長身が幸いしてか、彼の手が届かない位置にあなたの頭がある。腕の中に広がる、人間が破壊されていく感触。ぎちぎち、ぶちぶち、ばぎばぎ――全部の感触を忘れないようにしよう、と強く決意をする。
最後に、力一杯それをねじ切って――
彼の脚が、本来とは別方向に曲がったところで――
”がば……っ!”
あなたは、とどめを刺すために彼を押し倒す。
一対一の果たし合いに、レフェリーというものは存在しない。速崎飯綱が道場の隅で、正座をしながら見守っているが――それだけだ。
速崎父は――自分の脚が破壊されて、それで”終わり”だと想ったのだろうが――
その態度が――あなたの怒りを、更に滾らせていくのだ。
自身の娘を洗脳して、虐待して、育てていったキチガイパパが――
まさかそんな、「まともなスポーツマン」のような覚悟を持っていることが許せなかった。
自らの脚が破壊されながらも、あなたのことを殺しにかかってくるほどに狂っていれば「彼もまた、この世界に産み落とされた被害者なんだよ」と同情出来ても――
自分に降りかかった不利益だけ、都合よく常識人振るそれが――あなたの逆鱗に触れた。
どれほどの空手家であっても、油断しているところを押し倒すことは容易だ。彼を押し倒して、あなたはマウントポジションを取る。190センチの高身長のおかげで、その状態から反撃を喰らうことはない。右足が”ねじり折れて”いる状態では、逃れることも出来ないだろう。
あなたは――
そのまま、何度も、何度も、速崎父の顔面をぶん殴っていく。
焦りに身を任せて、衝動に身を委ねて、隙を作るような真似はしない。一発一発を、慈しむように振り落としていくのだ。速崎飯綱という少女を狂わせたことの責任を、自覚してもらう必要がある。最悪――殺してしまったとしても”それはそれで”だ。果たし合いの最中で、空手家が中学生男子を殺せばそれは殺人だ。だが――中学生男子が空手家を殺せば、それは”事故”だ。少年法に感謝をしながら、あなたは丁寧に、愛を注ぎ込むように、速崎父の顔面を殴っていき――
「――お、おいっ!やめろ!やめろ!!もう終わりだ!」
速崎飯綱に背後から、羽交い締めにされるまでそれは続いたのだ。
――――
掃除の最後は、道場だと決まっていた。
大きめの道場は板張りの床であり、基本的にはモップだけでことが足りる。畳張りでない分だけ掃除は楽であるのだが――
広い道場に、速崎飯綱と二人きりというのは――強い緊張があるのだ。
以前のあなたならば、そんな感情はなかった。
美少女に恋い焦がれて、オナペットにして、脳内でぐちゃぐちゃに汚しながら自慰行為に耽る――というそれ自体は、男の子における”たしなみ”のようなものだ。実際に二人きりになりレイプチャンスがあったからと言って、そこで押し倒すほどに、あなたは野蛮ではない。「押し倒すこともなく、しかし勢い余って告白することもない、ノーチャンスの美少女との二人きり」というのは――平均的童貞男子として「うっわ~、超緊張する~」程度のものでしかなかったのだが――
「そんなに緊張するな♪……というか、普通は逆じゃないのか?
密室に二人きり……男が欲情して、女が緊張をするというのが道理だが……ふふっ♪
お前の方が緊張をするとはな、全く……
……んっ?どうした?
私は……お前のものだぞ?」
今――
速崎飯綱は、あなたの”モノ”であるのだ。
あなたは、速崎父をボコボコにぶちのめすことで――病院のベッドの上に横たわる彼から、忌々しげに”婚約”を許可されたが――
『…………な、何故だ?
わからん……全くわからんぞ、お前の考えが……
私に惚れて、私のことを妻として娶りたくて、父に立ち向かったんだろう?それなのに……
婚約を破棄するとは……どういうことだ……?』
あなたの目的は、婚約の破棄であったのだ。
速崎飯綱の真の幸福を考えたときに、隣にいる男があなたでないことだけは確かだ。
人よりも少し背が高くて、少し暴力に長けている――というのが、あなたの価値であるのだ。速崎飯綱というのは絶世の美少女。「美しさだけで、国を傾かせることが出来る存在」を傾国と呼ぶが――飯綱は、まさしく傾国の美女だ。彼女が仮にその容姿を徹底的に使い、雄に媚びたとすれば。世界を支配する大富豪の寵愛を一身に浴びる程度、容易いに違いない。この世の全ての権力を手に入れた男であっても、”天然の美少女”には敵わない。顔にメスを入れて、胸にシリコンを挿入して、造り上げられた極上の身体でも――”天然物”の素晴らしさに敵うことは絶対にないのだ。
そういう美少女と、あなたは果たして不釣り合いな存在だ。
「自分の幸福」の為ならば、あなたは血反吐を吐くような苦しみとは向き合ってこなかった。自分を救ってくれた「速崎飯綱」を救うためだから、あなたは命を張れたのだ。例えは悪いが、狂信者が輪廻を心底から信じているからこそ、自らの死すらも厭わないのと同じだ。速崎飯綱を、キチガイパパの洗脳と支配から救い出すそれを”使命”だと自己陶酔に浸ることで――あなたは、数多の困難を乗り越えてきたので――
だから、速崎父に――
「飯綱は好きな人と結婚しなさい」と言わせたときに、あなたの人生は役目を終えたと確信をしたのだが――
「……ふむっ、そうだな……
いや、動揺はしているんだ。お前が何を考えて、その結論に到ったのか私にはわからないが……ううむ……っ
そう、だな……
要するに、好きな人と結婚をすればいいんだな?」
と、飯綱はあなたに告げて――
”むぎゅ……っ♡”
「それなら……
私の好きな人はお前だ……それでいいだろう?」
あなたの腕を掴みながら、その言葉を宣言してくるのだ。
ああ――
そこで容易く受け入れられれば、話は早かったのだろう。
今でこそ、飯綱が抱いた好意が間違いではなかったと、あなたは理解している。
彼女は自分が可哀想だとは思っていなかったのだろうが――自分のことを可哀想だと思い、人生を掛けて救いだそうとしてくれる人がいるのだ。父親から特異な洗脳を受けて育ったが――”それはそう”と、飯綱は変わり者であるのだ。人間の価値を容姿や財産ではなく”生き様”で測っている彼女にとって――
あなたに惚れるというのは、至極当然な理屈の話であるのだ。
それでも、当時のあなたには「畜生、まだ洗脳が解けていねえ」以外の感想はなかった。彼女からの愛を頑なに拒むが――あなた以上に、飯綱の方が頑固者であるのだ。彼女はあなたに一方的に愛を送り続けてくる。高校生にもなれば――もう、カップル同士がセックスをしても「普通の話」になってしまう。速崎飯綱という極上美少女を、好き放題に貪る権利が与えられるそれは、自制心だけでは抑え込めない。彼女を解放することに命をかけられても――解放された彼女の自由恋愛を阻むために、命はかけられないのだ。
だから――
「お前はいつも私を、カゴの中の鳥だと思っていたのだろう?
いやなに、それ自体は間違いではないさ。実際、いつか父が連れてきた見知らぬ男と結婚をして、子供を作り、その子を最強に育てることが運命だと思っていたのだ
……だがな、ふふっ♪
そのカゴを壊して……
私を助け出すために、人生まで捧げてくれた王子様がいるんだぞ……っ?
カゴの中に留まりたい……と思える程度にはな、私も乙女なんだぞ……?」
速崎飯綱は――
今日、勝負を仕掛けてきたらしい。
夜の道場は人気がない。一等地には不釣り合いなほど、潤沢に土地を使っているのだ。普段、彼らがどれほどに大声を上げながらドタバタと稽古をしたところで――周囲から苦情が漏れることはない。
だから――
仮にこの場で、大声で助けを求めても、誰も来てはくれないのだろう。
勿論、本来であればそこに不安を抱くのは飯綱のはずだ。
彼女がどれほどに強くても、その肉体が女性的機能を持ち、あなたの身長が198センチ(あれから、更に伸びた)もあれば抵抗をすることは出来ない。この場において、レイプされる危険性を抱くのならば、それは飯綱一人なのだが――
ここで、飯綱をレイプしても――
”それが許される”と――あなたは気が付いてしまうのだ。
飯綱を襲う気がなくても、「襲ってもセーフ」という状況自体がマズいのだ。あなたという雄には、しっかりと性欲が存在する。速崎飯綱を信仰すると同時に、やはり男の子として、自慰行為のオカズに使ったことも多々ある。彼女の身体におちんちんを入れて、腰を振れば、天上に到るほどの快楽が約束されていると――本能的に理解をしてしまうのだ。
あなたのことが好きな美少女と二人きり。強引に押し倒しても、彼女はそれを許容してくれるだろう。飯綱を襲わない理由というのは――あなたという男の子の、ちっぽけな矜持に過ぎない。少なくとも合理的に考えた際に、あなたが飯綱とセックスをしない理由というのはないのだ。それはまるで、幼子が駄々をこねて、意地を張っているのと同じ。いずれはその意地が決壊するとわかっていながらにして――あなたは、手元にあるチップをオールインする他にないのだ。
「……ふふっ♡
こうしていると……あの日のことを思い出すな……っ♡
私にとってはな?父がこの世の全てだったんだぞ?父の言うことには全て間違いがなく……父の言うことに従うのが幸福である……とな♪
いやはや、何も洗脳というわけではないぞ?自分の判断でそうしたんだ……と言うと、お前は『その判断も洗脳だろう』と言うのだろうが……しかしな?私としては本心なんだぞ?
親の言うことに従うのも……親の言うことに逆らうのも……大小はあれど”洗脳”に違いないわけでな……
……だが
あの日……私の父をボコボコにしているお前を見たとき……っ♡
この胸が高鳴り……全身に鳥肌が立ち……
子宮が疼いてしまった……その事実を、なかったことには出来ないんだぞ……?」
速崎飯綱は――
あなたの手を掴み、上目遣いであなたを見つめてくる。
速崎家の掃除や炊事といった家事は、彼女が行っている。冬の寒い朝に、冷水で食器を洗うのも彼女の仕事だ。それでも――現役女子高生というピチピチの代謝が、彼女の掌にすべすべを与えてくれるのだろう。あなたのゴツゴツの、人を殴ることに特化した掌とはまるで違う代物。
自分がどれだけ、紳士的な騎士様を気取ったところで――
そこにいるのが、女体を知らない童貞男子高校生である事実は変わらない。
普段は周囲の女子から王子様扱いされて、ハートが浮かんだ視線で見上げられている女子が――今は、あなたを見上げながら雌猫を丸出しにしているのだ。
空手着の胸元には、しっかりと膨らみがある。
バストサイズというのは、乳房の頂点と、胸板の差によって決まるものだ。180センチの長身で肩幅もしっかりとしているため――速崎飯綱は、バスト86センチでありながらCカップであるのだ。
グラビアアイドルや巨乳AV女優で、男の子は感覚が麻痺しているが――
目の前にあるのは、「あなたが揉んでもいいCカップ」であるのだ。
バストサイズが大きいために、彼女の乳房には圧倒的な存在感がある。服装によってはしっかりと谷間が作られて――あなたはそれを、上から見下ろすことが出来る数少ない男の一人なのだ。『ふむ……この谷間を拝めるのは、お前だけの権利というわけか♪』と彼女が嬉しそうに囁くだけで、あなたが前屈みになることを、彼女は知らない。
86センチのCカップを目の前にして――
「……揉みたいのか?」
飯綱は、嬉しそうにニヤニヤと笑みを浮かべるのだ。
それはまるで――モテない男が、高嶺の花の美少女に何度もアプローチをかけて、ようやく初夜を迎えられたときに浮かべるような――捕食者である蜘蛛の表情。本来であれば、可憐な蝶々である彼女は向けられる側であるのだが――
あなたの理性がグズグズに、蕩けていることを察したのだろう。
飯綱は空手着を脱ぐ。内側には黒のインナーを着用している。ノースリーブのそれは、肌の裂傷を防ぐためだ。生まれつき彼女の肌は弱く、太陽光線にすら容易く敗北をして、真っ赤になってしまうのだ。稽古の最中、空手着の内側が肌と擦れる――というそれだけでも、彼女の柔肌は傷付いて、赤く腫れてしまうのだ。
だから、手首まで隠れる長袖のインナーを着用しているのだが――
「……んっ?どうした?
……これは、お前だけのものだぞ?」
黒のインナーによって――
彼女の身体のラインが、くっきりと浮かび上がってしまうのだ。
「全裸よりもエロい格好がある」というその常識を、きっと飯綱は知らないのだろう。
86センチのCカップのラインが浮かび上がり――童貞男子はきっと、それだけで射精をしてしまうに違いない。女子更衣室で無防備に着替える彼女を、望遠レンズで盗撮する男がいたとしても――あなたはその欲望を否定出来ない。強引に襲うのならばいざ知らず――”盗撮写真で、こっそりと、シコシコオナニーをしたい”という欲求が否定出来ないほどには、速崎飯綱というのは極上の美少女であるのだ。
「触っても、揉んでも……♡挟んでも、吸っても、舐めても……っ♡
お前が妄想しうる限りの全てを……っ♡私の86センチCカップにぶちまけてもいいわけだ……っ♡
……ふふっ♡私の肌の色素が少ないのは知っているだろう?
真っ白な肌……お前達、男はエロい目で見るが……私にとっては死活問題なんだぞ?……ただ普通に生きている、というだけで、大勢の男達が私に欲情してしまうんだ……っ♡満員電車に乗って尻を撫でられれば、性犯罪をした男ではなく、被害者の私が責められるんだぞ?……そんないやらしい身体で、無防備でいるのが悪い……となっ♪
……ああっ♡
当然だが……胸も真っ白だぞ?
どんなエロ動画でも拝むことが出来ない……っ♡お前だけが見ることの許されるおっぱいが……っ♡目の前にあるんだ……っ♡ほらほら♡どうした?男は、こういうのが好きなんだろう……?
……目の前のおっぱい……揉んでもいいぞ~と許可されることが……ふふっ♡」
速崎飯綱の誘惑に――
”ぐぐぐ~~~っ”
あなたは、太腿を力強く抓って――必死に耐える。
どうやらあなたは――
自分が思っていた以上に、速崎飯綱のことを愛していたらしい。
性欲混じりの”好き”であれば、あなたは「据え膳食わぬは武士の恥」と都合のよい言い訳を引っ張りだしただろう。「女の子にこんなことをさせて、恥ずかしいと思わないのか」「飯綱のことを思うのならば、抱いてやるのが優しさだ」と自らを騙したことだろう。
だが――
速崎飯綱のことを、心の底から愛しているからこそ――
彼女の柔肌に触れていいのが、自分ではないと確信をしているのだ。
だが――
「……ふふっ♡
そうだよな……お前は、この程度では屈しないよな……?」
あなたが、速崎飯綱のために距離を置こうとすればするほど――
彼女は力強く地面を踏みしめて、あなたとの距離を縮めてくるのだ。
「なあ?
……私はな、今、告白されているんだぞ?
私の容姿も、身体も、男を惹き付けるには十分すぎるものだからな……ふふっ♪勿論、断ってきたんだぞ?父に言われていたからな、お前の身体はお前のものではなく、いずれ嫁ぐ雄のもの……っ♡いずれ産む、強い息子の為のもの……っ♡安売りしてはならないと言われていたから、まあ、処女なんだが……っ♡
……お前が
他ならぬお前が、私を取り巻くカゴを破壊してくれたわけだ……♪
私にアプローチを掛けるならば、お前に最優先の権利があるんだが……っ♡肝心のお前は、その権利をむざむざ放り捨てたわけだ……っ♡
他の男達が口説いてきても……っ♡それを否定する権利は、お前にはないんだよな?」
いつの間にか、あなたは後ずさりしていたらしく――
”どんっ!”
と、壁ドンをされて、自分が追い詰められていることに気が付いた。
「ああ……っ♪
生徒会長のあの男……ほらっ、知ってるだろ?
背が高く、文武両道……実家は金持ちで……ふふっ♪ああっ♡とても男前だなぁ♪お前とは比べものにならないほどだ……っ♡
……これはな?本音なんだが……っ♡
雌……というのは、顔がいい男を前にすると……問答無用で発情してしまうんだ……♡
本音だぞ?嘘じゃないぞ?……ああっ♡お前達、男だってそうだろう?胸が大きくて、安産型の、顔がいい女が目の前にいれば……っ♡ちんぽが勃起してしまうよな?『付き合いたい』とは思わなくても『ヤりたい』とは思ってしまうよな?
あれはな……女も同じなんだぞ?
私が……速崎飯綱という女が……っ♡
あいつを前にすると……一匹の雌になってしまうわけだ……っ♪
勿論、私はお前が好きだぞ?他の男に口説かれても、それで靡くほど阿呆じゃないぞ?……つがいとなる雄はな、生涯、たった一人にすると決めているんだ♪そいつに振られたり、あるいは死別すれば、私は一人で生きていくと決めていて……ふふっ♡
……だが♡
その一人が……お前でなくてもいい……とは思わないか?
お前が私を求めるのならば……っ♡その腕の中にいつでも飛び込むつもりでいたぞ?だが、お前は私をいらないと言うし……っ♡
私のことを……好きで好きでたまらないと言う男もいるんだ……っ♡
なあ、どうする?この身体が……この雌が……っ♡他の男に好き放題に貪られてしまうんだぞ?世界中の雄で、たった一人……っ♡お前だけが味わえる全ての至福が、奪われてしまうんだぞ?
……ふふっ♡
顔がいい男というのは……卑怯だよなぁ……っ♡
私はな、今、会長にも惹かれているわけだ……っ♪
彼は真剣に交際を求めてくれているんだぞ?私の父がおかしな人間であることを知った上で、私を求めてくれているんだ……っ♪
……それに、な?
お前が私を頑なに拒んで……っ♡私に相応しい男と付き合うべきだと言ってくれる、その言葉……っ♡
即ち……♡
生徒会長のような男と結ばれろ……という意味なんだろ?」
180センチある速崎飯綱は、普段、大勢の人間を見下ろす立場にいる。
日本人成人男性の平均身長は、約170センチ。当然平均である以上は、上振れをしている生徒もいる。バスケ部やバレー部には、飯綱よりも背が高い男子はいるが――
速崎飯綱は、幼い頃から武道を学びながら育ってきたのだ。
彼女は常に背筋をピンと伸ばしている。体育の後、眠気が襲ってくる授業であっても――彼女が猫背になることはない。毎日九時間以上の睡眠を取っているからこそ、その身体はすくすくと、健康に成長したのだろう。彼女の脚の長さは、そこらのモデルが裸足で逃げ出すもの。飯綱より背が高い男子であっても、彼女がまとうオーラが――常に、「あれ?速崎の方がデカくない?」という空気を醸し出すのだ。
そんな彼女が――
唯一、見上げながら壁ドンをする相手が――あなたであるのだ。
飯綱の視線には、「これで勝負を決める」という覚悟が宿っている。
実戦形式のスパーリングをする中で、相手からよく、その視線を向けられることがある。
198センチもあって、しかも筋肉を落として体重を絞ることのないあなたは――基本的に、スパーリングでは格上扱いだ。実際に試合が組まれて、階級が釣り合うまで体重を削れば――あなたはもう、運動どころではなく、生命の維持すら困難になるだろう。試合をすることがないからこそ、練習では無双が出来るという歪な状況であり――話が逸れた。
とにかく、”格下”の彼らがあなたに何かを仕掛けて勝負を決めようとするとき――今の飯綱と同じ視線を浮かべるわけであり――
「……ふふっ♪私は今、揺れているわけだ……っ♡
……お前は違うだろうが、な?
普通の雄というのは……ヤれそうなら、ヤっちゃうんだろう?
……そうだな♡……彼がな?私を押し倒そうとしている予感はあったんだ……っ♪これが、生理的嫌悪を催す悪漢であれば、手首を掴んで捻ってやるんだが……っ♡
目の前にあるのは……っ♡
女の子ならみ~んな濡れちゃうような……イケメン様のお顔だ……っ♡
私の肩をゆっくりと掴んでくるんだぞ?
普段なら、十発はぶん殴れる時間だが……っ♡そうだな……私がどれだけ強くても、抵抗をする気がなければ話が別だ……っ♡
奴の顔が、ゆっくりと近づいてくるんだ……っ♡
かっこいいな、本当にイケメンだな……っ♡本能がな、疼いてしまうんだよ♪……私の顔を見る男達が抱く、あの感情だろうな……っ♡お前達男は、私の顔を快楽でぐちゃぐちゃにしてやりたいと思うんだろうが……っ♡私は逆だ……っ♡
ぐちゃぐちゃにして欲しい……と思ってしまうんだ……っ♡
そのまま唇を突き出してきてんだ……ふふっ♪あいつも蛸のように口を窄めていてな?……ああっ、それで、互いに初めてだと気がついたんだ♪顔の良さを活かして、片っ端から女を食い散らかすようなやつじゃなくて……っ♡
私のことを……本気で、好きだと思ってくれる男にな……っ♡
……かわいそうだな、と同情してしまってな?
……そのまま、ちゅっと――――きゃあっ!?」
あなたは――
”ぐぐぐ……っ!”と、飯綱の両肩に手をかける。
普段から、あなたの理性は限界ギリギリまで追い詰められていた。
健全な男の子として、速崎飯綱という高身長美少女を好きに出来るチャンスが多々あったのだ。あなた自身もデカブツではあるが――だからこそと言うべきか、「背の高い女の子」というのは憧れのような存在。普通の女性が高身長男子を好むように――あなただって「キスをしたときに、丁度いい身長差になる女の子」が大好物であるのだ。速崎飯綱の長い脚にむしゃぶりついて、彼女の下半身に顔を埋めて、長い両足で首を絞めて落としてもらえるならば――それに勝る幸福はないと考えていたのだ。
それでも――あなたは”信仰”を言い訳に、飯綱の好意から逃げ続けていた。
「飯綱が自分のことを大好きである」「自分以外の男には絶対靡くはずがない」「だったら――結論を先延ばしして、保留しても問題はないだろう」というそれは、さながら寝取られ漫画の主人公のような愚かな判断。全てを失ってから事態の深刻さに気がつき、細胞が破壊された脳味噌で、狂ったように鬱シコするしか出来なくなるのだろう。健全な男の子として、寝取られ物も通常通りに味わっていた。「どうしてヒロインを寝取られる主人公は、こんなに愚かなのだろう」と思いつつも「でもまあ、じゃないとヒロインが寝取られないしな」と納得はしていたのだが――
実際に、それが眼前に迫ると――
「……んっ?どうした?
私のファーストキス……そんなに欲しかったのか……?」
どうしようもなく――寝取られ主人公の気持ちがわかってしまうのだ。
「大切なものはいつも、失ってから気が付く」というJPOPの歌詞のようなそれが目の前にある。速崎飯綱は相変わらず、ニヤニヤと笑みを浮かべて挑発をするばかり。
あなたの中には――
激しい、獣欲が滾っている。
「……ふふっ♡
勃起、してるな……っ♡」
人間は命の危機を感じると、子孫を残すために肉棒が滾るらしいが――
今のあなたは、まさしくその状況であるのだ。
速崎飯綱という美少女を孕ませる権利を手にしながら――それを活かすことが出来ずに、喪失するという状況。”雄”という存在にとって、それは死に匹敵する絶望であるのだ。
飯綱を孕ませたいと思って――
あなたの股間で、肉棒はギンギンに勃起している。
あなたは今まで、彼女を神聖視していたので手を出せずにいたが――飯綱は自ら”他の男にキスをした”とあなたに告げてくれたのだ。ピカピカに光っているそれを、臆病な雄が汚すことは出来ない。だが――もう既に汚れていれば、話は別だ。
飯綱のファーストキスを奪うことは出来なくても――
「…………なあ?どうした?
……私と……接吻がしたいのか?」
飯綱の”セカンドキス”ならば奪える程度に――あなたは、彼女のことが大好きなのだ。
心臓がバクバクと弾んでいる。目の前には飯綱の美少女過ぎる顔面。琥珀色の瞳が、凛とあなたを見つめている。切れ長のお目々に、ぷっくりとした肉厚の唇に、小さなお鼻。大勢の女性が、顔にメスやヒアルロン酸を注入して手に入れたい”極上”を――速崎飯綱は、生まれ持っての才能で手に入れているのだ。
「……なあ?
……してもいいぞ?
他の男に汚された唇でよければ……なっ♡」
飯綱の言葉に――
”むちゅ……っ♡”
「ん…………っ♡」
あなたは、我慢できずに唇を重ねてしまうのだ。
速崎飯綱を妻として娶り、幸福な家族生活を築くことは、あなたという矮小な雄には出来ない。しかし――速崎飯綱が他の男と結ばれるのであれば。「飯綱の肉体を使って、おちんぽを気持ち良くする浮気セックス」ならば出来てしまうのだ。
「……ふ、ふふ……っ♪
ずっと……この瞬間を待ち望んでいたんだ……っ♡
私のことをな?女として見ていないならば、わかるんだぞ?ゴリラ女とセックスなんてしたくないけど、恩はあるから……私を解放して、それっきりにしたいという気持ちだったならば……寂しいけれど、納得しようと思っていたんだが……
私のことが、好きで好きでたまらないから……
私とセックスが出来ない……なんて、まるで意味がわからなかったんだ……くくっ♪」
あなたは――
そこでようやく、自分が、飯綱にハメられていたことに気が付く。
「……ああっ♪当然だが……っ♡
……キスなんて、してないぞ?
当たり前だろう♪……ふふっ♡生徒会長がかっこいいのは事実だ♡女として、顔を見ているだけで発情してしまうのも……っ♡キスをされそうになったのも事実だが……っ♡
それを拒んで、私は今、この場にいるんだ……っ♡
……ふむっ♡何故、と聞かれると困るんだが……っ
……お前は、こういうのが好きなんだろう?
級友から恋愛のアドバイスをもらったんだ……っ♪お前に怒っていたぞ?女の子の好意を何年も無視し続けるなんてサイテーだとなっ♪お前なんかより、生徒会長に乗り換えればいいと言われたんだが……まあ、そっちは無視してだな……ふふっ♡
……お前は、どうやら私を勘違いしているようだな♡
私は、狂った父親に、歪んだ洗脳教育を受けた可哀想な被害者……ではないんだぞ?
……お前のことを好きな、普通の女の子なんだ……っ♡
どんな手段を使ってでも、お前の愛情を手に入れることが出来れば……っ♡それが私の勝利だ♡空手において卑怯な真似は許されないが……まあ、恋愛にはそんなルールはないし……ふふっ♡
どうした?
私のファーストキスを奪っておいて、何を呆けている……っ♡」
飯綱は――
先ほどまでとは違い、心底、嬉しそうな笑顔を浮かべている。
「言っておくがな……っ♡
私にだって、性欲はあるんだぞ……?
人並みに……いや、あるいはそれ以上かもな……っ♡エロいことを妄想するし、スマホでエロ動画も見るし……っ♡
お前に犯される妄想をしながら……♡夜な夜な、自分を慰めているんだ……っ♡」
速崎飯綱に――そうした感情は、存在しないと思っていた。
180センチの、銀髪の美少女。生命としての格が遥かに上である彼女が――まさか夜な夜な、ベッドの上で脚の爪先をピンと伸ばしながら無様な絶頂に耽っているなんて――想像すらもしたことがなかったのだ。
だが――
「ほら、どうした……?
私が他の男と交尾をする前に……っ♡しておきたいことがあるんだろう……?
……ふふっ♪頭の悪い女が、恋愛経験豊富なヤリチン男子に口説かれて、落とされてしまう……っ♡それが今、お前の身に降りかかっていることだぞ……っ?
……まさか♡
私のファーストキスを奪っておきながら……っ♡
責任を取らない、なんて……真面目なお前には出来ないものなぁ……っ♡」
彼女は――
しっかりと策略を練って、あなたを堕としにかかってきたのだ。
もう、あなたの理性は決壊してしまっている。
速崎飯綱が”メスガキ”の如く嘘を吐いて、あなたを挑発して――そうして、あなた自身のファーストキスすらも奪ってきたのだ。飯綱はあなたの首に両腕を回して、抱きしめてくる。198センチという高身長である以上、あなたは、「普通の女の子と、普通の体格差えっち」など出来ないと思っていた。世の中にいる大多数の女の子は、自分よりも30センチ以上背の低い女子ばかり。マイナー格闘技のヘビー級は、対戦相手にすら苦慮するそれと似ているのかもしれない。
学校中の男子も女子も虜にしていて――あなたも夢中になっている極上の美少女。
それが今、あなたの首に両腕を回してくるのだ。
胸元で乳房が”むにゅっ♡”と形を歪める。黒のインナー越しの乳房は、ブラジャーがあるはずなのに――あなたには、柔らかさしか伝わってこない。股間に激しく熱が滾り――歯を食いしばり、必死に耐えようとする。”だめだ、だめだ――理由なんて関係ない。だめなものはだめだ”と、飯綱を襲わない為にあなたは我慢をする。”ヤりたい””犯したい””レイプしたい”という、今にも暴れ出しそうな本能を、どうにか理性で縛り付けて我慢していたのだが――
”ぺろ……っ♡”
飯綱が、あなたの下顎を舐めてくれば――それでおしまいで――
”びゅるるるるる~っ♡びゅるるるっ♡どびゅどびゅ♡びゅるびゅる♡びゅるる~っ♡”
”びゅぐびゅぐ♡ぶびゅるるるっ♡びゅるるるる~っ♡びゅ~っ♡ぶびゅっ♡”
”…………っ♡”
「――なっ、ちょ、ちょっと……
……お、おい……
まさか、射精したのか……?」
あなたは――
いとも容易く、パンツの中で暴発射精をしてしまうのだ。
百年の恋も――、一瞬で冷めるような、無様な姿だ。
速崎飯綱があなたのことを、それだけで嫌いになったとしても――あなたは責めることが出来ない。恋愛感情というのは、そもそもが幻想に寄るもの。飯綱があなたを好きになったという感情は、「実家が金持ちだから」とか「容姿が優秀だから」とか、そうした類いの打算ではない。殉教者が如きあなたの覚悟に惚れてしまったわけであり――
抱きつきながら、汗だくのCカップを押しつけるだけで――
情けなく暴発射精をすれば、間違いなく幻滅するはずなのに――
「……ははっ、驚いたな……っ♡
そんなに……溜まっていたのか……っ♪
一日二日の熱ではないな……んっ?
ああっ、自慰行為をしなかった期間、という意味ではないぞ?
……私と初めて出会ってから……どれ、十年ほどか……?
……その間……ず~っと我慢していたんだろう……?
日に日に美しくなっていく私を……っ♡日を増すごとに”雌”の身体になっていく私を……っ♡犯したくて、それでも必死に我慢して……ふふ……っ♡
……ああっ♡
もう、我慢する必要なんてないんだぞ……っ♡
お前の思うがままに、私のことを犯していいんだからな、ふふ……っ♡」
速崎飯綱は――
あなたの情けなさすらも、容易く受け入れてくれるのだ。
胴着のズボン越しに、彼女は股間を撫でてくる。股間を覆っている熱は、まるで寝小便でもしたようなもの。布地にも精液が染みこんでいき――そこには、激しい悪臭が漂っているはずだ。それなのに――飯綱は、掌に染みこんだ雄の匂いを嗅ぎながら、あなたを誘惑してくる。もう、今のあなたは、一切の抵抗が出来ない。「速崎飯綱を、自分のような矮小な雄が犯してはいけない」と理解しているのに――あなたは飯綱を押し倒していき、その間、ほんの少しとして止まる気は存在していなかった。