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「たっだいま~っ♪全力でぶっ飛ばしてきたから、早めに委託任務から帰ってき――うわっ!?


 し、指揮官、大丈夫!?死んでる!?」


 あなたは今――


 途方もない激務に追われていた。


 重桜の指揮官というその立場は本来、エリート中のエリートでなければ務まらない仕事である。だが――、一方で、KAN-SENを率いることが出来る指揮官は、特別な才能を持った人間でないといけない。ユニオンやロイヤルと言った他陣営は、優秀な人間をヘッドハンティングして母港に連れてきて、事なきを得ているのだが――


 重桜は、どうしようもないほどの人材不足であるのだ。


 KAN-SEN達の上に立てるというその立場は、多くの男が涎を垂らしながら求めている特権だ。

 普通の人間とは、根本から造形が違う――”上位存在”とでも呼ぶべきものがKAN-SENであるのだ。セイレーンが侵略してきている状況であるから、KAN-SENは人間達を保護しているが――いつかそれがなくなったら。「力を持て余したKAN-SEN達が、人間を支配し出したら、それを止める勢力は存在しないぞ」というのが、賢い学者達の共通懸念事項であるのだ。

 大勢の男達がその座を欲しても――適した才能があるかは、話が別であり――


「指揮官、とりあえず休みなよ~!死んじゃうよぉ……


 あたし指揮官死んだら悲しいよ?指揮官の後追っちゃうよ?


 ……ねっ、ねっ、他の娘達に心配掛けないためにさぁ、ちょっと休みなってば~っ」


 重桜で指揮官としての才能を持っていたのは――


 幼い少年である、あなただけであったのだ。


「天才少年」「神童」と世間に呼ばれる程度には、精神的には早熟であった。大人達のことを愚かだと見下したことは、数え切れないほどある。特別な才能を持った自分は、神様に選ばれた存在であり――世界は自分を中心に回っていると思っていたのだが――


『は~い、指揮官、おつかれさま♪タオルがいい?飲み物がいい?それとも……あ・た・し?』


 重桜に着任すると同時に、そのちっぽけなプライドは木っ端微塵に叩き潰されたのだ。

 KAN-SENというのは――

 繰り返すが、人間を圧倒的に凌駕した存在であるのだ。

 ギフテッドであるあなたが、生涯をかけて何か一つの分野を追究したところで――彼女達の”一夜漬け”には敵わないのだ。

 勿論、頭脳面ではあなたが勝る存在もいるが――そういう彼女達は、腕力と暴力において圧倒的な才能がある。例えばあなたは、敵の砲弾が数百メートル先に着弾すれば、その衝撃波だけで吹き飛ばされるだろう。その余波で飛んだ木片が突き刺されば、容易く命を落とすのだ。

 それに比べて、彼女達は顔面に砲弾が直撃しても――まるで平気であるのだ。

 あなたが護身用に携帯している拳銃。子供の身体でも扱いやすいように、口径は小さいが――それにしたって、オモチャのエアガンではないのだ。人間であれば絶命を免れないその弾丸は――彼女達にとっては、BB弾も同然であるのだ。あなたが発狂して、KAN-SEN達に銃弾をぶちまけても――「ちょっと指揮官~、痛いよ~、いたずらしないでよ~」程度の、”ガキの遊び”に貶められてしまうのだ。

 天才児としての頭脳で敗北して、男の子としての腕力でも太刀打ちできず――

 あなたの天狗の鼻は”ぽきっ”とへし折られてしまうのだ。


「……指揮官?聞いてないっしょ~……


 もぉ~、あたし怒るよ?指揮官がそんなんならぁ……あたしにだって考えはあるんだけど~?お~いっ」


 だからあなたは、勝利の条件を変えた。

「重桜の指揮官」という肩書きは、セイレーンとの戦いにおいて最も重要な立場。

 比較対象を優秀なKAN-SENにするのではなく――「他陣営の指揮官」にするのだ。彼らがどれほどに優秀な人間であっても――所詮は、9mm弾で死んでしまう、か弱い存在に過ぎない。KAN-SENをランキング外にした「人間内での有能ランキング」で上位に立つことが、あなたのプライドを支える唯一の手段であり――


 そのためには、身の丈に合わない激務は避けられないのだ。


 机の上には大量のエナジードリンク。コーヒーはまだ苦いので、砂糖とミルクを大量に入れないと飲めない。缶に書かれている「○○歳以下のお子様は、飲用をお控えください」という説明書きは――見て見ぬ振りをする。糖分とカフェインによって脳味噌をブーストさせないと、あなたの小さな身体は、大人達には到底太刀打ち出来ない。大人だって、エナジードリンクを飲みながら働いているのだ。

 勿論、それらの全ては、KAN-SENには見せてはいけないものだ。

 彼女達は、あなたを指揮官として尊敬してくれている。

 素直に受け取ればいいのだが――元々は、神童として育った過去があるのだ。彼女達のそれが「動物園で、猿が芸をしたときに『すご~い、かしこ~い』と褒め讃えるもの」だと勘ぐってしまうのだ。だからこそ、あなたの苦労は隠さなければいけない。どれほどに目に隈を作っても、頭痛で吐き気がしても、平然と表情を繕って「まあ、この程度は余裕だけど」とアピールをしなくてはいけないわけであり――

 KAN-SENの委託の時間を完全に把握して、エナドリの缶を処理していたのだが――


「――え~いっ!無視するなぁ~っ!」


”ぎゅ~~~~~っ♡♡♡♡”


「――――っ!?」


 彼女は――

 どうやら、速攻で任務を終えたらしい。

 重桜のKAN-SENは大別して二種類。「武士型」と「花魁型」に別れる。自身の仕事を全うすることに誇りを抱く”武士”と、惚れた男を喜ばせるために仕事を全うする”花魁”の2パターンだ。

 彼女達があなたの部屋を、時間外に訪れることは滅多にない。何しろ、あなたは思春期の少年であるのだ。使える武器は全て使う必要がある。「健全な男の子は、ノックをしてから扉を開けないと怒っちゃう」と彼女達が認識しているそれを逆手に取り、不測の事態でも缶を隠せるようにしていたのだが――


「もぉ~、指揮官ったらぁ~……っ♪


 このままじゃヤバすぎるよ~?仕事しすぎて頭おかしくなっちゃうよ~?ほらほら、お姉さんがギュ~ってしてあげるから、ねっ?ちょっと休みな~?」


”あなたに会いたくて”で、委託任務をさっさと切り上げて――


 しかもノックもせずに、部屋に入ってくる”ギャルタイプ”というのは、今までにいなかった存在であるのだ。


 あなたは今、彼女に力強く抱きしめられている。


「ふふっ♪指揮官ってほんとちっちゃいよね~っ♪弟みたいな感じで可愛い~……っ♡ほらほら、お姉ちゃんに甘えていいんだよ~っ♡指揮官の仕事……まあ、あたしは書類仕事は役に立たないけどぉ……


 みんなね?指揮官のこと大事に思ってるんだから……


 無理なんかしないで……甘えてくれていいから、ね?」


 彼女は――


 あなたが絶対に勝てない、圧倒的な”上位存在”であるのだ。

 280センチの身長は、人間では絶対にありえない高身長だ。 

 脳のホルモン分泌異常によって、そうした体型になっても――手足が極端に長くて、骨はスカスカになり、背が高いことを間違っても「羨ましい」とは言えなくなるものだが――目の前の彼女は違う。愚かで矮小な人間の道理を、KAN-SENに押しつけてはならない。彼女の身体は――

 280センチという超高身長の”それ”を前提として作られているのだ。

 雄を誘惑するように、胸元には圧倒的な肉塊がぶら下がっている。重桜において、子供の身体のあなたの顔よりも大きな乳房は珍しいものではないが――あるいは、あなたの胴体よりも、その爆乳は大きいのかもしれない。今、彼女に抱きしめられているあなたは――ヘソから上が、その爆乳によって覆われているのだ。人間同士ならば、やれ80センチあれば巨乳だ、90センチあれば爆乳だ、なぞと語っているのだろうが――彼女のそれは、おそらくバスト2メートルはあるに違いない。アルファベット26個目の「Zカップ」を超えた乳は、果たしてどのように表記するのか――あなたには理解が出来ないのだ。

 胸元には”馬鹿みたいにデッカいおっぱい”がぶらさがっているのに――そのウエストは、余りにも細く、くびれている。一部のKAN-SENというのは――普通の人間と比べて、肋骨が一本少ないのだ。人間の臓器を大切に守るための骨であり、それが無くなれば影響は大きいが――

 繰り返すが、KAN-SENというのは元々”そのような設計”で神様に生み出されているのだ。

 人間に六本の腕があれば違和感があるし――逆にまた、昆虫の腕が二本であれば違和感がある。目の前にいる彼女は、280センチの身長も、2メートル越えのバストも、肋骨が一本足りない身体も――それが”正常”として生み出されているのだ。そのくせ下半身はムチムチであり――ぶっとくて長い太腿は、黒の網タイツから肉を溢れさせている。互いに”気をつけ”をして並んだら――あなたは「彼女の脚よりも背が低い存在」になってしまうのだ。

 雄としての劣等感に苛まれないのは――彼女が、あまりにも特別すぎるからだ。

「自分でも頑張れば出来そうだな」と思う何かで、誰かが栄光を浴びているのは妬ましいもの。その感情自体は悪いものではない。嫉妬というのは、人間が何かをするための強いエネルギーであるのだ。矛先の向け方を間違えなければ、妬み、嫉み、「だから自分もやってやるんだ……っ!」となるそれは、むしろ好ましいまでもあるのだが――

 それが「いや、自分には天地がひっくり返っても無理だろうな」であれば、「嫉妬をすることすら出来ない」となってしまうのだ。

 金髪に近いクリーム色の髪を、彼女は両サイドで三つ編みにして結んでいるが――あまりにも、髪が長すぎるのだ。280センチの長身の膝元まで結ばれているそれは――ほどいた際には、自らの身の丈すらも越えるのだろう。人間であれば「産まれてから、一度も髪を切ったことがない、特殊な風習の村で育った巫女」でないと実現出来ないものであり――それだって、彼女の髪には一切の欠陥はなく、艶々でピカピカなキューティクルが満ちあふれているのだ。

 側頭部から生えている二本の角は、長く大きく、黒光りをしているものだ。野生動物のそれのように、威嚇を目的としているのだろうか。先端は鋭く尖っていて、人間の身体を突き刺せる程度の力はあるのかもしれない。

 そうして――

 なんと言っても、特筆すべきは彼女の容姿だ。

 ああ――ここに到るまでの全てが、普通の女ならば「特筆すべき」であるのだろうが――

 実際にあなたがそう感じているのだから、仕方が無い。

 重桜にいる多くのKAN-SENは美少女ではあるが――それは飽くまで「超絶ウルトラハイパー美少女」というだけだ。

 街中ですれ違えば確実に二度見をして、同級生になればそれだけで「生涯で最も大きな衝撃を受けたのは、彼女と同級生になったことだ」と男達に言わしめてしまうだろう。その容姿を盗撮したプロマイドは、巷では高値で取引されている。馬鹿馬鹿しい話ではあるが――「男共は、その盗撮写真で狂ったようにシコってしまい、出生率が下がるから法律で規制しなければならない」という議論まで沸き上がっているほど。大鳳や赤城は、自らの価値を高めて「重桜中の男達が抱きたくて仕方ない身体を、指揮官様だけが独占できる悦び」を教えるために、わざと自分達で写真をばら撒いているのが判明して、いざこざがあったのだが――閑話休題。

 その中でも、彼女の容姿は特別であるのだ。

 凜々しく美しい顔立ちを、快楽に歪めてやりたい――という、高雄や加賀のような美女への欲望は理解が出来る。あの蕩けた雌顔を、更に淫らに落としてやりたい――という、愛宕や赤城のような美女への獣欲も賛同できる。だが――

 彼女の容姿は、あまりにも”捕食者”のそれであるのだ。

 大きな瞳はまつげが長く、しかしいつも、眠たそうに半開きになっている。前髪が右目を隠すので、彼女の顔つきは左右非対称であり――それがまた、怪しく蠱惑的な雰囲気を醸し出している。口元にある小さなホクロは――ああ、もうそれだけで、男の子が絶対に勝つことが出来ない――”優秀な雌”の証であり――

 琥珀色の瞳に見つめられると、それだけで、あなたは蛇に睨まれた蛙のように――身動きが取れなくなるのだ。


「ね~え、指揮官?……あたしさぁ、ご褒美の権利あるでしょ?そう、この前頑張ったやつ……っ♡指揮官のこと一日貸し切り券……っ♡


 ほんとはね?パない戦場乗り切ったときのご褒美にぃ、指揮官とサ店巡りしたくて~……っ♡取っといたんだけど……っ♡


 ねっ、指揮官……♡


 めーれー……っ♡


 今日は休んでぇ……明日は、あたしに一日付き合うこと……んふふ~っ♡」


 あなたは――


 紀伊型戦艦・二番艦「尾張」に命令をされて――まさか、それを拒めるはずもないのだ。



――――



「ひゃっほ~っ♪いやぁ~、テン上げだね~っ♡広くて人が一杯いて……っ♡んふふぅ~っ♡


 え~?ワンちゃんみたいってどういうこと~?ワンワン♪尾張はワンちゃんじゃないワ~ンッ♡えへへ~っ♡」


 あなたは今――


 尾張に連れられて、レジャープールへとやって来ている。


 元々は重桜の保養地であったのだが、それを昼日中は、一般市民にも解放しているのだ。大勢の人々で賑わっているプールは、あなたには少し、息苦しいもの。

 昨夜は、尾張によって仕事を強制的に取り上げられてしまった。

 優秀なKAN-SEN達は大勢いるのだ。彼女達の手にかかれば、あなたが残している山積みの書類は、今日一日遊び呆けている間に処理してもらえるのだろう。「さあ、後ははんこを押すだけよ♪」と秘書艦の愛宕が、ニコニコと笑みを浮かべる姿が容易く想像出来るほど。

 仕事が嫌で、逃避したくて遊びに来たのならそれでもいいのだが――あなたは半ば、強制的に拉致されてこの場へと来ているのだ。「自分一人では仕事がろくに出来ずに、KAN-SEN達に尻拭いをしてもらう」というのは――あなたのプライドをズタボロに傷つけるもの。今すぐにでもその場を離れて、執務室に戻るべきだと、理性ではわかっているのだが――


”ど……ったぷん……っ♡”


「ほらほら~っ♪指揮官、どうする?流れるプールもあるしぃ、ウォータースライダーもあるし♡今日はぁ、あたし達の頼れる指揮官じゃなくて、一人の子供に戻っていいんだよ~っ♪」


 あなたの隣には――

 水着姿の尾張が立っているのだ。

 280センチの美女というだけでも、周囲の視線を圧倒的に引き寄せるのに――

 彼女の極上の肢体というのは、あまりにも”男ウケ”するものであるのだ。

 通常、男の子は背が高い女の子をあまり好まない。「隣に立っているときに、自分が小さく見えるから」というちっぽけなプライドは、しかし、男心を理解する上では大事なもの。「銭湯に入るときは、見栄を張ってちんちんの皮を剥く」というそれは、女性であるKAN-SENの理解は得られないが――同じ男の子であるあなたには、悔しいほどに理解できる、ちっぽけな自尊心であるのだ。

 性的興奮とは別に、「隣に立つなら、背が高い女性は嫌だな」と思うのは大勢の男に共通するもの。虚栄心が強ければ強いほど、その傾向は濃いと言っていいだろう。温水プールへと、わざわざナンパに来るような男達に限れば、100%と言ってもいいのかもしれないが――

 

 280センチあると、もう、その常識は通用しないのだ。

 

 180センチの筋骨隆々のスポーツマンであっても、尾張を前にすれば子供も同然の体格差であるのだ。隣に尾張が立っているとき、その男を意識する人間はほとんどいない。いたとすれば、その男と自分を比べて「あの程度の男でもチャンスがあるなら、オレなら余裕だろう」と悦に浸るタイプの、ヤリチン男子だろう。彼らにとっては、女性というのは狩りの獲物と同然であるのだ。雌を寝取ることの罪悪感を一切抱かないそれは、ある意味では、優秀な雄と言えるのだろうが――


”~~~~~っ!!!”


”~~~~っ!!~~~~っ!!”


”~~っ!~~っ!~~~~~っ!!”


「あはは……っ♪もぉ~、みんないっぺんに喋らないでよ~っ!


 そんなにまくしたてられても、わかんないってばぁ~っ!」


 彼らは――


 尾張の隣にあなたがいても、まるでお構いなしなのだ。


 あの手この手で、尾張にナンパを仕掛けてくる彼ら。やれ自分の父親の職業は~だとか、やれ自分の保有している財産は~だとか、やれ自分が今までに抱いた女の数は~だとか、彼らは鼻の下を伸ばして必死にアピールをしてくる。隣に息子らしきあなたがいても――それはまるで「経産婦との禁断の恋」は余計に興奮するという背徳感に過ぎないのだ。

 あなたがそれに激怒できないのは――

 同じ男として、彼らの気持ちがわかるからだ。

 普段から生業として、顔の良さで女を騙して転がり込み、ヒモ稼業をしている男達ばかりではないのだろう。尾張という極上の美女を目の前にして――彼らの雄としての本能は、ぶっちぎってしまっている。尾張を手に入れることが出来ないのは、結果論だとしても――手に入れるための行動を起こさなければ、それは、彼らにとっては生涯の汚点になることであるのだ。

 普段からヤリモクナンパをしている男が、さながら誘蛾灯に惹かれるように、当然の行動をしているのではない。「常日頃から真面目に、勤勉に生きてきた人間」を「ヤリモクナンパ男子」に変えてしまうのが、尾張の圧倒的な存在感であるのだ。小麦色の日に焼けた、超高身長のギャル系美少女。大きく豊満な臀部は、あるいは挿入した肉棒が、子宮口に届かないかもしれない。普通の女相手であれば、自身の粗チンには屈辱しか抱かないが――相手が尾張であれば「女泣かせのご自慢な逸物ですら――彼女にとっては粗チンでしかない」という事実に、激しい興奮をもたらされてしまうのだ。


「だ~か~ら~っ!ナンパしても無駄だってば~っ!あたし、彼氏いんだから~っ!も~っ!ガチ恋しちゃっててぇ、マジで大好きで!恋はモウモクって言うでしょ!どんだけナンパされても、あたしが彼氏裏切るとかマジでないから~っ!」


 尾張は大勢の男達にナンパをされて、困惑している様子。

 自身の容姿を理解していれば、通常、温水プールに脚を運ぶことはない。あったとしても、それは赤城や大鳳のように「指揮官様は、大勢の男達が欲しくてたまらないこの身体を独占し放題なのですよ?」という挑発のためだ。

 だが、尾張はまさしく――

 自分の価値というものを、理解していなかったようだ。

「指揮官が最近疲れている」「だったら休ませてあげよう」「せっかくなら温水プールで遊ぼう」――よりも深い考えを、彼女は持っていないのだろう。通常の女性であれば、思慮が浅くて頭が悪いことはマイナスに働く。男の子のちっぽけなプライドは、賢すぎる女性を好まないが――しかし、頭が悪すぎるそれはそれで困るものであり――

 その欠点は、尾張ほどの極上の美女であれば、どうしようもないほどに”プラス”に働くのだ。

 自分よりも遥かに背が高く、膂力があり、本来は到底釣り合わない極上の美女が――しかし「頭が悪いから、俺様が頭脳になってやらなきゃな」という理屈で、自分の下に傅いてくることを正当化してくるのだ。どれほどに賢い大型犬であっても、人間よりも頭が良いということはない。極上の美女が、自分の命令で”お手””おかわり”と芸を見せて、更にはご褒美として”なでなで”まで要求してきて――そうして頭を撫でられると、嬉しそうにはしゃぎながら、飼い主の顔面をベロベロと舐めてくるそれは――

 ああ――

 どうしようもないほどに、男の子のプライドを満たしてくれるのだ。

 だからこそ――


 あなたは、絶対に尾張に溺れてはならないのだ。


 尾張に嫌われれば――拒絶されれば――あなたはおそらく、生命活動を維持することは出来ない。彼女があなたを大型犬のように慕い、彼女があなたを抱きしめて押し倒すことは許されても――そんな彼女に欲情を抱いてはいけないのだ。尾張を押し倒した際に、はねのけられて「あ、あはは……ごめんね、指揮官……あたし、マジで指揮官のこと、男としては見てないから……」と言われたときに、耐えられる覚悟は微塵もないからこその決意であったのだが――


「――――はっ?」


 ナンパ男の誰かが――


『そっちの彼は、弟さん?』と尋ねてきたのだ。


 逆の立場であれば――あなたはそう思うだろう。

「男として舐められている」という段階の話ではない。これが仮に、同級生の、140センチの可愛らしい女の子と一緒に遊びに来ていれば話は別だが――その倍、280センチの美女の隣に並ぶ少年を、色恋沙汰の関係であると考える方が異常であるのだ。

 だが――


「これ……あたしの彼氏なんだけど……?」

 

 尾張は――

 一目でわかるほど、一瞬で不機嫌になるのだ。

 唇を窄めた”不快”の態度は、男の子が本能的に絶対に抗がえないもの。尾張を恋人にした後で「やっぱりエッチしてあげな~い」と言われれば――男の子は彼女の機嫌を取るために、誇張抜きで、殺人程度は容易く行えるのだろう。

 そこで彼らも止まって、謝罪をすればよかったのだが――


 空気の読めない誰かが、『いやいや、冗談でしょw』と言い出して――


 そしてまた、空気の読めないあなたも、反射的に”いや、彼氏ではない”と否定して――


「ふぅ~~~~ん……っ」


 尾張は、つまらなさそうな顔を浮かべて――


 刹那――


「こいつ……あたしのしゅきピだから……っ♡」


”ぶっちゅ~~~~~~っ♡♡♡♡♡”


 あなたのことを抱きしめて――

 あなたの唇に、強引に唇を重ねてくるのだ。


 最初は、何が起きたのかわからなかった。

 あなたよりも遥かに大きな、尾張に抱きしめられるというのは――お布団の中に包み込まれるようなものだ。全身には柔らかさが満たされるが――それはまるで、音が吸い込まれる無音室にいるようなもの。硬い身体の一部に、柔らかさが触れるから、人間の触感はそれを感じ取ることが出来るのだ。つむじから脚の爪先まで、尾張の柔らかさに包み込まれてしまえば――あなたはまるで、無重力で宇宙を浮遊しているような錯覚に捕らわれる。

 巨体の尾張が、あなたの全身を飲み込むそれは――捕食の体位にも似ている。

 周囲の男達は、ただのそれだけで――「ああ、自分達がこの雌を食うのではなく――この雌は淫魔のように、自分達を食う側の存在なのだ」と理解させられてしまうのだろう。

 最初、尾張は唇を重ねるだけであった。

 性知識の薄い彼女にとっては「唇と唇を重ねて、キスをする」というそれだけでも――きっと、心臓が張り裂けんばかりの勇気を必要としたのだろう。それでも――極上の雌の本能が、彼女にその先を理解させてしまう。スポーツ漫画の第一話で、天性の才能を持った素人主人公が、本能のままに超絶技巧を見せて周囲の度肝を抜かせるものがあるが――

 尾張のキスは、まさしくそれであり――


「んんんん~……っ♡」


”にゅるん……っ♡”


 あなたの唇を割って、舌をねじ込んでくるのだ。

 尾張にキスをされるだけでも、あなたの脳味噌はトロトロに蕩けていきそうなのに――彼女は舌をねじ込んで、あなたの口腔を陵辱してくるのだ。下手くそでべちゃべちゃと、水音が甲高いキスではない。ねっとりと、ねっぷりと、超高級娼婦が王様に捧げるようなキスに――


 我慢、出来るはずもなく――


”びゅるるるるる~~~っ♡びゅるるるっ♡どびゅどびゅ♡びゅるるる~っ♡”


「――――んんっ!?」


”びゅぐびゅぐ♡びゅるるる♡ぶびゅるるる~っ♡びゅくんっ♡どぴゅんっ♡”


 あなたは――


 海パンの中で、精液を吐き出してしまうのだ。

 激しく強い性欲は、当然持っている。

 極上の美女達に囲まれて――しかも、それに手を出す権利すら与えられているのだ。それでもあなたは、自分の中の善性が強すぎた。「彼女達が仮に、あなたに抱かれるとしても――それはKAN-SENとしての”仕事”でしかない」となれば――手を出してしまえば、それは悪者に過ぎない。今でも十二分に幼いのだが――それよりも遥かに小さな頃、あなたが好んでいた児童文学のヒーローは、ヒロインには絶対に手を出さなかった。ただそれだけの理由で、あなたは我慢していたのだが――


 尾張が、あなたを襲ってしまえば、話は終わりだ。


 海パンの中が一瞬で、パンパンになるまで熱を帯びていく。赤城と大鳳が、あなたの食事に日々、強壮剤を混ぜているのも原因の一つなのだろう。明石が仕入れた怪しげな強壮剤は――あなたの元々の、少年の性欲も相まって効果覿面。身長280センチ、バスト2メートル越えの爆乳美少女に抱き潰されながらの射精は、命が削れてしまうものだ。尾張はそのまま、ベロチューに没頭してしまい、あなたの尿道に残った精液も最後の一滴まで搾り取られて――そこでようやく、彼女は事態に気が付いたのだろう。「指揮官!指揮官!死なないで~っ!」と射精直後のあなたに爆乳を押しつけながら、身体を揺さぶってくるので――その衝撃に耐えられるはずもなく、あなたはもう一度果てた。

Comments

谷澤晴夫

今回の尾張の素晴らしい描写とキスだけで、最高なのに、これからがあるとわ。今から興奮します。