初夜(完全版) (Pixiv Fanbox)
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※第1部完結後のお話です。
※18才以下の方の閲覧を禁じます。
クレア様と結婚した。
結婚といっても、男女の間のそれのような法的な裏付けがあるものではない。
お互いを一生のパートナーと認めて、内々でパーティーをしただけの簡単なものである。
パーティーの参加者も少数に絞らせて貰った。
もともと、この混乱の中では十分なおもてなしをするのは難しかったし、クレア様と私の共通の友人はもれなく新政権の重要人物で忙しいのだ。
それでも、忙しい合間を縫って、レーネ、ランバート様、ミシャ、ドル様、そして私の両親とクレア様のご友人が数人が来てくれた。
ロッド様とセイン様、リリィ様は欠席である。
二人の王子は一般市民となった私たちをひいきするわけにはいかなかったし、リリィ様はまだ取調べ中だ。
三人はパーティーこそ欠席したが、密かに手紙を書いて送ってくれた。
パーティーはささやかながら盛り上がり、クレア様と私は最高の結婚式だと思った。
そして――。
「クレア様、初夜です」
「?」
クレア様と私は、寝間着に着替えてベッドの上で対面している。
クレア様の寝間着は最近クレア様がこり出した裁縫の産物で、いちごの模様が刺繍されている。
大変にお可愛らしい。
ちなみに私のもクレア様のお手製で、柄は猫である。
私はタチだと思うのだが、まあそれはどうでもよろしい。
「初夜というのは、結婚したカップルが初めて迎える夜のことです」
「ええ、そうでしょうね」
クレア様は何を当然のことを言っているのかという顔でいます。
えええ……。
これ、私が説明しないといけないの?
「初夜というのは一般的にその……大切なものです」
「そうなんですの?」
「はい、とても」
「何か儀式でもあるんですの?」
「あります。とても大切な儀式です」
私は重々しく頷いた。
「わたくし、その辺りは詳しく存じませんの。レイが教えて下さる?」
「ええ、もちろんです」
よし、言質は取った。
とはいえ、この雰囲気からどうやってピンクなムードに持って行こうか。
クレア様は何やら厳粛な面持ちでいる。
完全に誤解している顔だ。
「えっとですね。その儀式はその……男女のそれと言いますか……」
「わたくしとレイは女性同士ですわよ? 男女のそれと言われても、それでは出来ないのではなくて?」
顔にはてなマークを貼り付けているクレア様。
いや、そうではなくて、
「いえ、男女のそれというのは比喩です。ようするにその……」
「なんですの。ハッキリ仰いな」
「……くっ……、無垢な目で汚れた私を見ないで下さい」
恐らく、というか確実にクレア様は純潔だろう。
私も今世ではそうだが、前世では爛れた関係を散々持ってしまっている。
今更こんな初心(うぶ)なクレア様にどうしろというのか。
「……むむむ」
「……す」
「……? クレア様?」
「……くすくす」
何やらクレア様が突然笑い始めた。
それはもうおかしそうに。
「なんで笑うんですか」
「くすくす……だって、レイがあんまりにも困っているから」
「そりゃあ困りもします……って、クレア様もしかして?」
私はある予感がしてそれとなくクレア様に聞いてみた。
「ええ。初夜の意味も、そこですることも分かってますわ。元貴族の令嬢ですもの。当たり前でしょう?」
そう言うと、ぺろりと舌を出して笑った。
「……からかいましたね?」
「ふふ、ごめんあそばせ? 普段はレイに翻弄されてばかりですもの。たまにこうするくらい許してちょうだい」
そう言ってクレア様は笑い続けた。
こんにゃろ。
「許しません」
「くすくす……。ごめんなさい。許して、レイ?」
「……ダメです」
「レイ……。機嫌を直して?」
「いいえ、お仕置きします」
そう言うと、私はクレア様をベッドに押し倒した。
「……」
「……」
そのまま、至近距離で見つめ合った。
視線が絡む。
どちらからともなく口づけを交わした。
それはまだ軽い唇だけのキス。
「クレア様。深く口づけてもいいですか?」
「? これ以上がありますの?」
「……それもとぼけてるんじゃないですよね?」
「……くすくす。どうかしら?」
それなら唇に聞いてみよう、とクレア様の口を割って舌を絡め取った。
柔らかくてざらついた舌の感触に、ぞくりと身体が震えた。
そういえば、前世今世を含めて、深いキスはしばらくお預けだったなあと思い出す。
クレア様はやはりとぼけていたようだった。
積極的に舌を絡めて、こちらのキスに応えてくる。
なぜか妙に上手い。
「クレア様……まさかと思いますが、ご経験がおありで?」
「失礼ですわね。私は清い身ですわよ。ただ、貴族の令嬢として、閨(ねや)のいろはは色々と知っておくべきものだったというだけですわ」
「安心しました」
「それに……知識として知っているのと、実際にするのとではだいぶ違いますわね」
「いやですか?」
「いえ、とても気持ちいいですわ。レイはキスが上手ですわね」
なんて可愛らしいことを言うんだろう。
私は愛おしさがこみ上げて、夢中でクレア様の唇を奪った。
もっともっと。
クレア様を味わいたい。
「ふふ、レイったら余裕がありませんのね?」
「あるわけないですよ。こんな可愛い人を前にして」
「あらお上手。普段、余裕綽々にわたくしを弄ぶあなたが、こんなに余裕をなくして求めてくるなんて……ふふ、ちょっと気分がいいですわ」
そう言うと、クレア様は艶やかに笑う。
「クレア様は余裕ですね」
「レイが必死だからよ。わたくしは冷静でいなきゃって思ってしまうんですのよ」
「その余裕、崩してみたいです」
「ふふ、やってみてちょうだい?」
そう言うと、クレア様が下からついばむようなキスをしてくる。
悔しいが、私はクレア様がそういう行為をしてくれるというだけで、この上なく興奮する。
「脱がしていいですか?」
「イヤと言ったらやめて下さるの?」
「……今ならまだ」
「聞くだけ野暮、というものですわ」
そう言うとクレア様は私の耳元に口を近づけて、
「見て……、レイ」
少し低い声で、そう囁いた。
私は理性の糸がねじ切れそうになるのを感じた。
「失礼します、クレア様」
「ええ……」
私はクレア様のパジャマのボタンを一つずつはずしていった。
上着が取り払われ、ブラジャーに包まれた胸が目に飛び込んでくる。
すぐにでも手触りを確かめたい気持ちを必死に抑えて、下のパジャマも脱がす。
目の前には、下着だけを身につけたクレア様がいた。
「レイは脱ぎませんの?」
「私はいいですよ」
「ダメですわよ。私にも見せてちょうだい」
「私の裸なんて見てもしょうがないですって」
「好きな人の身体ですわよ? 見たいに決まっているじゃありませんの」
そう言うと、クレア様も私のパジャマに手を掛けた。
慣れない手つきで一つ一つボタンを外していく。
無理もない。
貴族の身分であった時には、着替えすらレーネや私が手伝っていたのだから。
でも、そのもどかしさが、余計に私の興奮をあおり立ててくる。
「ふふ、レイってば可愛いですわね」
「からかわないでください」
「本当のことよ? レイは可愛いですわ」
楽しげにそう言って、クレア様は私のパジャマをすっかり脱がしてしまった。
「下着も取りますよ?」
「やっぱり、そうなりますわよね?」
普段、着替えを手伝う時とは行為の意味合いが違う。
クレア様もやはり恥ずかしいのだろう。
「ブラを外しますね」
抱きつくように後ろに手を回してホックを外す。
ついでに口づけも一つ落として。
「じゃあ、わたくしも」
同じようにクレア様も抱きついてきた。
しかし、思うようにホックが外れないようだ。
「あ、私が自分で」
「うう……ごめんなさい。不器用な自分が恨めしいですわ」
ちょっとしょぼくれてしまったクレア様を見つつ、自分でブラを外した。
「後は下ですね。クレア様、いいですか?」
「だから、野暮だと言っているでしょう……」
先ほどまでの余裕が嘘のように、クレア様の顔が赤い。
いじわるしたくなるね。
「そんなに見られるのが恥ずかしいですか?」
などと聞いてみる。
「違いますわよ。レイの綺麗な裸を直視出来ませんの」
予想外の答えが返ってきた。
「私の裸で興奮するんですか?」
「当たり前でしょう」
「そうですか……」
少し……いや、かなり自尊心が満たされる言葉だ。
クレア様に比べるとかなり貧相という自覚がある身体だが、それでもクレア様は興奮してくれるのか。
「ありがとうございます、クレア様」
「さっさと続きをなさいな」
クレア様の言葉に促されて、クレア様のショーツを下ろした。
生まれたままの姿になったクレア様は、私こそ直視するのが難しいほどの美しさだった。
肌は新雪のように白く、身体のラインは女性が理想として描く曲線を描いている。
どのパーツを見ても、非の打ち所がない女性の裸体がそこにあった。
触れるのを我慢することは、出来なかった。
私が手を伸ばそうとすると、
「レイもまだ下が残っているでしょう?」
と、叱られてしまった。
こんな美の化身とも言える裸がそこにあるのに、触れるのを我慢しろとはどんな拷問か。
「ほら、足を抜いてちょうだい?」
私は急いで足を抜く。
少しでも早く、クレア様に触れたかった。
「ふふ、レイはやっぱり可愛いですわ。まるで汚れを知らない子どものような無垢な身体ですわね」
そのコメントは私の興奮をほんの少し冷ました。
子どものようってちょっと。
確かに私の身体は幼児体型に近いけど。
「あ、違いますのよ? 悪い意味で言ったつもりはありませんの。なんというか、子どもに手を出しているような背徳感があるというか」
いえ、クレア様。
全然フォローになってないです。
「触れてもよろしくて?」
「私も触れたいです」
自然と二人は抱き合うことになった。
遮るものなしに、肌と肌が触れあう。
抱きしめてみると、クレア様は恐ろしく華奢だ。
苛烈な性格に誤魔化されがちだが、こんな儚げな身体の人があの過酷な革命を駆け抜けたのだと思うと、奇跡かと言いたくなる。
腰のくびれ方も私の寸胴とは偉い違いだ。
いや、私だって多少はくびれているとは思うが、クレア様のそれは同性の目にはえぐい。
しばし、お互いの体温を交換し合いながら口づけを交わす。
舌を絡めて口づけが深くなるごとに、意識がとろけそうになる。
「温もりが心地よいですわね……。いつまででもこうしていたいですわ」
「それは半分同意ですが、私はもっとクレア様を味わいたいです」
「あ、味わうってあなた……」
ボッとクレア様の顔の赤みが増した。
「いけませんか?」
「いけなくはないですけれど、言い方がなんかいやらしいですわ」
「いやらしいことをしているんですから、当然です」
「……もう」
困った人、と呟いたあとクレア様は、
「……優しく……ね?」
と無垢な微笑みで首を傾げたのだった。
「クレア様!」
私はクレア様の後ろに回り込むと、抱きしめるように手を回して、その神の造形ともいえる胸をまさぐった。
理性など、もう欠片も残っていなかった。
「ぁん……レイってば……優しくしてっていったじゃありませんの……ん……」
非難するように言いながら、鼻に掛かった声を出すクレア様。
私の指でクレア様の乳房が柔らかく形を変える。
マシュマロよりも遙かに柔らかく、それでいて私の指を心地よく押し返してくる。
「レイ……気持ち……いいですわ……」
その言葉は嘘ではないのだろう。
薄紅色に色づいた先端は、その存在を主張するように硬くなっていた。
クレア様の胸を堪能しながら、この世にこんなにいやらしいものがあるのかと私は思った。
「下も……触って下さいまし……」
クレア様が切なげに私に求めてくる。
言われたとおりにクレア様の女の子に手を伸ばすと、そこは既に湿り気を帯びていた。
「はぁ……っ……ぁ……!」
複雑な襞を指で書き分けるように刺激すると、クレア様が色っぽい吐息を漏らした。
クレア様が感じている。
その事実だけで、どこを触られなくても私も濡れてしまう。
「レイ……も……」
クレア様は後ろ手に私の女性器に触れると、容赦なくそこを刺激してきた。
「うわ……っ……ぁ……」
既に硬くなりつつ合った豆粒を執拗に責めてくる。
私は負けじとクレア様の花芯をなでさすった。
「あ……っ……レイ……そこ……は……!」
お互いに女性の最も感じる場所を責め合った。
にじみ出てくる愛液をすくい取って、粒に塗り込めると、さらに激しくこすり上げる。
私はもう限界に近かった。
このままでは私の方が先に達してしまう。
経験は自分の方が豊富だと思っていたが、クレア様という最愛の前にはそんなものは消し飛んでしまう。
「クレア様、ちょっと体勢を変えますよ?」
「……え?」
私はクレア様を横たえると、その足を大きく開かせてその間に頭を差し込んだ。
「ちょっと、レイ! あなたなんてことを……あぁ……っ……!」
クレア様の抗議を無視して、私はクレア様の秘部を舐め上げた。
独特の味がする粘液を味わいながら、ピンク色の尖りを執拗にねぶりあげた。
「待って……レイ……そんな……あぁ……!」
上目遣いに見ると、クレア様は顔を両手で覆ってイヤイヤするように顔を振っていった。
恐らく、クレア様の知識にクンニリングスはなかったのだろう。
身も世もなく身体を震わせている。
「クレア様……もっと感じて下さい……」
私は指も使ってクレア様の浅いところを刺激しながら、淫靡な粒をより丁寧に舐めしゃぶった。
舌をいやらしく這わせ、陰部を隅から隅まで舐め回す。
「レイ……わたくし……そんな……もう……!」
クレア様が限界を訴えてくる。
私は指と舌の動きを加速させた。
「レイ……、ホントにもう……ダメ……だから……!」
「そのまま……感じて下さい。クレア様……」
より入念に、クレア様の女性器に快楽を刻んでいく。
割れ目はもちろん、皮に包まれた突起、蜜があふれてくる穴にまで舌を差し込みなぞり、唇で吸い付いた。
逃げようとする細い腰を両手で抱え込み、逃げ場を塞ぐ。
秘部の包まれていた突起周辺を指で押し上げ、剥き出しにした。
慎ましかった突起は、今は完全に充血し、その存在を主張している。
一番敏感で、一番気持ちの良い場所。
私はそこを柔らかく、しかし一切の容赦なしに、唇で吸い付いた。
クレア様の身体が、白魚のように跳ねた。
「~~~~~っ――!」
クレア様は私の腕の中で身体をびくびくと震わせ、子ウサギのように声もなく果てた。
「は……っ……あ……はぁ……」
荒い息をつくクレア様の花弁を弱く刺激しつつ余韻を味合わせる。
クレア様はそのままぐったりしていたが、やがて身体を起こすと、
「よくもやってくれましたわね」
そういって挑戦的な瞳で私を見た。
「初めてのことでびっくりしてしまいましたけれど、大体やり方は分かりましたわ……。レイ、今度はあなたの番ですわよ」
意外なほどに力強い腕で、私はベッドに引き倒された。
攻守が入れ替わる。
私はタチなことが多いので、こうして下から見上げる光景は少し新鮮である。
「……」
クレア様はしばらくの間何もせずに私の身体を見つめていた。
視線が自分の身体に注がれているのが分かる。
何もされなくても、胸や秘部を凝視されていると、それだけでむずかゆいようなそんな感覚に襲われた。
しかも、見ているのは他ならぬクレア様なのである。
「……私の身体なんて、そんなに見ていて楽しいですか?」
「ええ、とても。レイの身体は可愛いですわ。まるで積もったばかりの新雪のよう」
「大げさですってば」
「いいえ。でも、だからこそ、そこに自分の足跡をつけて汚したくなるんですのよ」
「……クレア様?」
よく見ると、クレア様は昏い笑いを浮かべている。
獣欲に満ちた目に、私はどきりとした。
私、これからどうされてしまうんだろう。
「や、優しくして下さいね?」
「わたくしがそう言ったのに、レイは手加減してくれませんでしたわ」
「いや、しましたってば」
「どうだか」
ホントにしたんだけどなあ。
「レイ……」
クレア様は私に覆い被さると、深く口づけてきた。
その舌使いは積極的――いや、貪欲とさえ言える。
それなりに経験豊富な私ですら、主導権を握られてしまうほどに。
歯列をなぞり、舌をからめとり、上顎に這ってくる。
私はそれに必死で応えた。
「こっちも……触りますわね……」
クレア様の細い指が私の女性に触れてきた。
最初は秘部全体をなで上げるように、そして次第に襞の浅い部分をゆるゆるとなぞり始めた。
「ん……クレア様……」
「気持ちよくて……?」
「はい……」
正直、クレア様の指技はそれほど巧みというわけではない。
でも、心から愛する人とこういう行為に耽っているという事実が、私の脳を灼いた。
「ここも……触りますわね……」
「……!」
知らず、身体がびくんと跳ねるのが分かった。
クレア様は私の淫らな粒を嬲り始めた。
その指使いはどこか機械的で、リズムを保ったまま一定の間隔で刺激を与えてくる。
強くもなく、弱くもない。
とても、もどかしい快感だ。
「クレア様……いやぁ……」
「ふふ……もどかしいでしょう? もっと強くして欲しくて?」
「はい……」
「ふふ、素直で可愛いですわ、レイ。でも、ダメ。もう少し我慢してちょうだい」
クレア様は艶然と微笑むと、私の花芯に緩慢な刺激を与えたまま、身体のあちこちに唇で触れてきた。
唇や頬だけでなく、額や首筋、胸やお腹、腕や指先、足にまで。
クレア様の唇が触れる度、そこが熱を持ったように熱くうずく。
私はお腹の奥にじわじわと快感が溜まっていくような感じがした。
「レイ……愛しい人」
「クレア様ぁ……」
自分でも信じられないほど甘い声が漏れた。
クレア様の少しかすれた声に堪らなく煽られる。
大好きな人が私の身体に溺れているのだと思うと、それだけで愛しさが溢れてくるのだ。
クレア様は片手で私の陰部を刺激したまま、もう片方の手で私の胸を弄ってきた。
下から持ち上げるように揉み上げたかと思えば、先端の尖りを指先でいじめてくる。
下半身への機械的な責めに比べて、胸への責めは巧みだった。
「ん……」
「あっ……クレア様……そんな……」
クレア様が胸の先端に吸い付いてきた。
唇で乳頭を含み、舌先でチロチロと刺激してくる。
視線を落とすと、クレア様も上目遣いでこちらを見ていた。
その目が、意地悪く笑う。
私はぞくりとした。
腰の奥から、何かが這い上がってくる。
それはクレア様の攻めに呼応して、じわじわと私の脳髄を犯していく。
「……可愛いですわ……レイ……もうこんなになって……」
「……言わないで下さい……」
下の粒への責めは止めずに、クレア様が指で器用に私の中をすくい取ると、そこは驚くほど濡れていた。
私は猛烈に恥ずかしくなって、クレア様から視線を外そうとする。
「ダメよ、レイ。こっちを見なさい」
「だって、恥ずかしいんです」
「恥ずかしがるレイが見たいんですのよ。目を逸らしたら、このままずっと絶頂させて上げませんわ」
クレア様が恐ろしいことを言った。
腰に堪った熱は行き場を失って堪り続けている。
これが解放されずにずっと生殺しにされたら、私はきっと狂ってしまう。
私はやむを得ず、クレア様と視線を合わせた。
「いい子ね。じゃあ、ご褒美を上げますわ」
嗜虐心のこもった眼差しで、クレア様が言うと同時、ずっと緩慢なリズムを刻んでいた秘芯への責めが激しくなった。
コリコリと包皮の上から断続的に深い快感がもたらされる。
「はっ……ああ……!」
「ふふ、いいですわ……その顔……。感じているんですのね……。もっと……もっと感じなさい、レイ……」
「いや……、見ないで……下さい……」
一番気持ちよくなれる場所からもたらされる快感は、やはり機械的なリズムを刻んでいたが、先ほどとは比べものにならない。
女性の気持ちいい所は、女性が一番分かっている。
クレア様の指は、的確に私の気持ちいい所を責め上げ、私を身も世もなく啼かせた。
「ほら……レイ……。あなたが果てるところを見せて……? 一番恥ずかしくて、一番可愛らしいところを……わたくしに見せてちょうだい……?」
「いやぁ……クレア様……許して……!」
快楽と羞恥の間で翻弄されながら、私はクレア様に懇願した。
自分でも何を言っているのかよく分からなくなっていた。
解放されたいのは恥ずかしさからか、それともこの悶えるような快楽からか。
「ダメよ、レイ……。達しなさい」
残酷な宣言と共に、クレア様は私のクリトリスを撫で潰した。
一際強い刺激に、私の脳裏が白く飛んだ。
「~~~~~~っ!!」
私は下から見上げてくるクレア様の頭にすがりついて、身体を震わせながら果てた。
これまでに経験したことのない、身体と心を完璧に犯される快感だった。
「ふふ……。可愛らしく達しましたわね、レイ……。でも、まだですわよ?」
「……あっ……、クレア様……そんな……!」
私の淫らな粒への責めはまだ続いていた。
機械的なリズムを刻む刺激が達したばかりの私を、さらなる高みへと押し上げようとする。
「クレア様……待って……。少し休ませて……!」
「ダメよ。まだまだイジメ足りませんわ。もっともっと、レイの可愛いところを見たいんですの、わたくし」
ネズミをいたぶる猫のような口調で、クレア様がいっそ楽しげに言う。
胸に口づけられ、下半身にも強制的に快楽が送り込まれてくる。
単調だと思っていた淫らな粒への刺激のリズムは、機械的だからこそ残酷だった。
強くもならない代わりに決して弱くもならない。
残酷に与えられ続けられる強い快楽に、私の身体はあっという間に高められてしまった。
「クレア様……無理……もう無理です……!」
「ふふ、もう一度達しなさい、愛しい人。あなたが泣き叫んでドロドロになるまで、こうして責め続けて上げますわ」
昏い笑みを浮かべたクレア様が残酷に宣言する。
その日私は、クレア様がベッドの上でも悪役令嬢であることを知った。
◆◇◆◇◆
行為のあと、私はクレア様と抱き合いながら心地よいけだるさを味わっていた。
私がするだけでなく、クレア様にもたくさんされたため、いつもよりもけだるさが深い。
でも、それがとても心地いい。
とはいえ、クレア様の責めはちょっとやり過ぎだと思ったが。
「レイってばどこであんなことを覚えたんですのよ。戯曲の娼婦でもあんなことしませんわ」
私がしたのはまだまだ抑えめな甘々えっちだったのだが、クレア様には色々と刺激が強すぎたようだ。
今の段階でこれだと、大学時代にしていたあれそれとかを試したらどうなってしまうのやら。
今から楽しみである。
「レイ、顔が意地悪になっていますわよ?」
「おっと失礼しました。でも、クレア様がお可愛らしいのが悪いんですからね」
「なんですのその論理の飛躍は……」
不満そうに言うクレア様に一つ口づけを落とす。
くすぐったそうにするクレア様が愛おしくて、もう一つ、二つと口づけの雨を降らせた。
「もう、レイってば。まだするつもりですの?」
「いえ、さすがにちょっと疲れました。キスだけにしておきます」
「ふふ、よろしい」
そう言うと、クレア様の方からもキスをしてくれた。
深いキスではない、ついばむような優しいキスだった。
「それにしても、今夜のレイは可愛かったですわ」
「クレア様、やり過ぎですからね? あんなにねちっこく何度も何度もするなんて……」
「だって、感じているレイが可愛すぎるのがいけないんですのよ。わたくしは悪くありませんわ」
可愛らしくクレア様が拗ねた。
こんな可愛らしい人が、ベッドの上ではあんななんだから怖い。
次は主導権を渡さないようにしよう、と固く決意をする。
「……しちゃいましたね」
「そうですわね」
いよいよ、後戻り出来ない関係、というわけである。
いや、後戻りなんてするつもりは欠片もないが。
「っくしゅ!」
腕の中でクレア様が小さくくしゃみをした。
おっと。
クレア様に風邪を引かれてはたまらない。
「服着ましょうか」
「そうですわね。でも、もうちょっとだけ」
そういうとクレア様は私に甘えるように抱きついてきた。
非常に愛おしい。
私も緩く抱きしめ返す。
「レイ」
「なんですか」
「……素敵な夜でしたわ」
「そういう可愛いことばっかり仰っていると、また襲っちゃいますからね」
私の返事にクレア様は満足したように微笑んだ。
二回戦に挑まないようにするために、私が悶々としたのは言うまでもない。