246.背負うもの (Pixiv Fanbox)
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2021-01-24 10:00:00
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2022-04
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※한국어판도 밑에 있어요.
「クレア様、そろそろ見回りの時間……何をご覧になっていらっしゃるんですか?」
決戦準備の最終チェックを兼ねた見回りの当番がやって来たので部屋に迎えに行くと、クレア様は何やら長方形の薄っぺらいものを愛おしげに眺めていた。
「ああ、レイ。ええ、ちょっとね」
「それは……栞ですか?」
「ええ。ピピとロレッタに貰ったものよ。学院の花壇で一緒に育てた花を押し花にしてね」
へー、ふーん?
別に羨ましくなんかないけどね。
「じゃあ、出会ったばかりの頃、私の机に飾った花瓶のマーガレットも?」
「え、ええ」
「なんでもっと早く言ってくれなかったんですか! クレア様が育てたお花なら押し花になんてせず、食べて血肉にしたのに!!」
「あの時は申し訳ありませ……は?」
おっと、暴走してしまった。
「戦いが終わったら、お二人にも会いに行きたいですね」
「ええ、こんなことがあったのよ、ってお茶でも飲みながら話したいですわ」
「はい」
「そろそろ時間ですわね、行きましょう」
◆◇◆◇◆
魔王との決戦のために出立する日を明日に控え、ここズルックでは最終確認と兵たちの別れの挨拶が行われていた。
別れの挨拶と言っても、別に悲観的になっているわけではなく、ほとんどは叱咤と激励のためのそれだった。
「負けるなよ。必ず帝都を取り返してくれ」
「ああ、魔族のやつらに、きつい一発をくれてやるさ」
「無理しないでね。無事に帰って来てくれればそれでいいから」
「おとーさん、がんばってね」
クレア様と私は連れだって歩きながら、ズルックの町を見て歩いている。
メイとアレアは宿舎でメイド長たち護衛と一緒である。
「……兵たちを、必ずご家族の元に返して差し上げませんとね」
「ええ。クレア様も含めて」
「分かっていますわ。メイとアレアをもう一度孤児にはしたくありませんもの」
二人ぼっちはいやだと泣かれた時のことを思い出しているのだろう。
革命の時のように自分の命をいたずらに捧げることは、守るべきもの、帰るべき所の出来た今のクレア様にはない。
「こちらにいらっしゃいましたか、クレア先生、レイ先生」
「あら、トリッド先生」
「こんにちは」
私たちを探していた様子なのは、トリッド先生だった。
先生は戦装束ではなく平服である。
彼は決戦部隊には参加しないからだ。
「バウアーから手紙が届いていました。生徒さんたちからですよ」
「ラナたちからですの?」
トリッド先生は鞄から三通の手紙を取り出してクレア様に渡した。
「決戦の報を受けてから急いで書いたのでしょう。あの三人にしては宛名の字が乱れています」
さすがトリッド先生。
よく見てるなあ。
「では、私はこれで」
「ありがとうございましたわ、トリッド先生」
「ありがとうございます」
トリッド先生は黙礼して去って行った。
先生は決戦には参加しないが、やるべき仕事は多い。
「たくさんお世話になったのに、先生のことあんまり知らないままですね」
「帰ったら色々お話をうかがいましょう。もちろん、お礼も」
それもこれも、生きて帰っての話だ。
「クレア様、手紙にはなんと?」
「ええと……」
クレア様が封を剥がして手紙の中身を改める。
最初の一通はラナからのものだった。
『レイセンセ、クレアセンセ、魔王との戦いのこと聞いたよ。大変な時に力になれなくてごめんね』
書き出しは、彼女らしくない謝罪の言葉で始まっていた。
『心配だけど、私の大好きなレイセンセと、そのセンセが大好きなクレアセンセなら、きっと大丈夫だって信じてる』
こういうところはいつものラナらしい。
『センセたちから学びたいこと、まだいっぱいある。だから、きっと無事に帰って来てね』
簡潔な手紙はそう締めくくられていた。
「ラナなりに心配してくれてるみたいですね」
「そうみたいですわね。でも、レイはわたくしのものですわ」
「お。デレ期ですか?」
「そうですわよ」
なんだなんだ。
かわいいかよ。
続いての手紙はヨエルからだった。
短く一行で、
『無事を信じて待ちます。ご武運を』
ラナ以上に簡潔で、いっそ素っ気ないとすら言える文面は、なるほどヨエルらしいと思えた。
「でもきっと、この一文を書くのにきっと一時間以上掛かってますわよね」
「ええ、私もそう思います」
ヨエルにはそういう所がある。
出力が少ない割に、その出力に至るまでの感情と思考が多いというか。
最後はイヴの手紙である。
彼女の手紙は一番長かった。
『レイ先生、クレア先生へ』
手紙はそう始まっている。
『散々迷惑を掛けてしまった私が言えることじゃないですが、どうかお願いがあります。マナリア様を助けて上げて下さい』
手紙は続く。
『マナリア様はとても強い方ですが、反面、思いも寄らない所でやらかす人です。あの人がうっかり死んでしまわないように、どうか二人で気を付けて上げて下さい』
びっくりした。
あの完璧超人のマナリア様も、親しく仕えていたイヴからするとそう見えるのか。
『特にレイ先生。先生はマナリア様の弱点になります。先生はマナリア様のことを見るのと同時に、自分の身もしっかり守って下さい』
言葉もない。
この手紙が四カ国会談前に届いていたら、どれだけ良かったかと思う。
『クレア先生。先生のことは心配していません。どうかマナリア様とレイ先生のことをよろしくお願いします』
手紙はそう締めくくられていた。
「マナリア様も私も信用ないですね」
「心配されているんですわよ。それだけ二人が大切ということですわ」
マナリア様はともかく、私はどうだろう。
思い人のついでという気もするが、洗脳が解けた今のイヴはそれほど私を嫌っていないかも知れない。
そうだといいな。
「わざわざ手紙を寄越してくれるなんて、わたくしたちはいい生徒に恵まれましたわね」
「全くです。帰ったらお礼を言わないとですね」
うなずき合ってから、クレア様は手紙を大切に鞄の中にしまった。
そうして立ち止まっていた私たちに、掛けられる声があった。
「あら、あんたたち。こんなとこをふらふらしてていいのかい?」
「あー、えーっと……」
「ごきげんよう、マルテさん。お久しぶりですわね」
私が名前が思い出せなくて挨拶を返せないでいると、クレア様が助け船をだしてくれた。
ふくよかな体型のエプロンをした中年の女性――マルテさんは、帝国国学館の学食のおばちゃんである。
ラナとともに、料理対決の実況をしてくれた人でもある。
「わたくしたちは、最後の見回りですわ。マルテさんはどうしてズルックに?」
「あたしは決戦部隊の補給係さ。なにをするにも腹ごしらえは肝心だよ。そうだね、マルコ?」
「んだな」
マルコと呼ばれたマルテさん似のふくよかな男性に、私は見覚えがなかった。
「あの……?」
「どちら様ですの?」
今度はクレア様も分からなかったらしい。
「お前ぇさんら、そりゃあねぇだろう!? おいらだよ、おいら! 厨師長っつったら分かるかい?」
「えええ!?」
「……随分とその……ふくよかになられましたわね……?」
以前、料理勝負をした時は、もっとシュッとした体型だったと思うのだが、今の厨師長はまるまるとしている。
「いや、だって考えてもみねぇ。大手を振って美味ぇもんが食えんだぜ? そりゃあ太るってもんだろうがよ?」
「開き直るんじゃないよ、この青二才が!」
マルテさんの雷が落ちて、厨師長が首をすくめた。
「まあ、食事のことは心配しなくていいからね。あたしたちがしっかり支えてやるよ。あんたらはあんたらの役目を精一杯果たしな」
「ありがとうございますわ」
「よろしくお願いします」
この二人が補給を担当してくれるなら、兵士たちの士気も上がるだろう。
腹が減っては戦はできぬというのは、本当のことなのだ。
二人と別れ、更に歩いていると、また見覚えのある顔に出会った。
「サンドリーヌさん!?」
「まぁ、教皇様!?」
修道衣姿の彼女はサンドリーヌさん。
教皇様と私が入れ替わっていた時に、私のお世話をしてくれていた、教皇様の側仕え兼毒味役の人である。
私の首絞めプレイ第一号さんでもある。
「どなたですの?」
「えーっと……」
思わず声を掛けてしまったが、彼女とは教皇様としてしか接したことがない。
彼女と私は面識がないことになっていたのを忘れていた。
「……教皇様ではいらっしゃいませんね。するとあなたがレイ=テイラーさんですか?」
「レイのことをご存知ですの?」
「ええ。教皇様暗殺未遂事件の際に、その身を挺して教皇様を守って下さった方とうかがっています。その節は大変なご迷惑をおかけいたしました」
そう言うと、サンドリーヌさんは深々と腰を折った。
どうやら既に、当時の事情説明を受けているらしい。
「とんでもないです! 私こそ騙すような真似をして申し訳ありませんでした」
私もつられて頭を下げる。
「二人ともその辺りで。過ぎたことじゃありませんのよ。それよりも、サンドリーヌさんはここで何を?」
「本当は教皇様のお世話をさせて頂きたかったのですが、私では足手まといになるということで、この町でお帰りを待たせて頂くことになりました」
不本意なのだろう。
サンドリーヌさんの眉がハの字になっている。
「私には戦う力がありません。お二人は決戦部隊に参加されるのでしょう? どうか教皇様のことをよろしくお願いいたします」
そう言うと、サンドリーヌさんは涙を浮かべて私たちの手を握ってきた。
私が動揺していると、
「ええ、お任せ下さいな。教皇様は必ずあなたの元へお戻りになりますわ。ですから、どうかあなたも心安らかにお待ちくださいな」
クレア様が私には滅多に見せてくれないような慈愛に満ちた笑顔を返した。
感じ入るサンドリーヌさんの元を辞去し、さらにズルックの町を歩いて行く。
「おい、そこのお前たち!」
女性の鋭い声で呼び止められたので振り向くと、そこには兵士の姿をした女性の姿があった。
「げ」
「こら、失礼ですわよ、レイ。ごきげんよう、アデリナさん」
「ふん。相変わらず澄ましているな、クレア=フランソワ」
アデリナさんはオットーの姉で、帝国軍の若手兵士を集めてクーデターを画策していた人だ。
クーデターは未遂に終わったが、私たちとの仲は決して良好とは言えない。
「アデリナさんも決戦部隊に加わるんですか?」
「嫌みか貴様! 私たちのようなぺーぺーが栄えある決戦部隊に参加させて貰えるわけがないだろう!」
知らんがな。
「じゃあ、どうしてあなたはこの町に?」
「これだから素人は。いいか? 部隊運用というのは最前線だけで行われるわけじゃない、長く伸びた戦列は補給線を維持しながら防衛個所もどんどん――」
アデリナさんはそのまま十分ほど軍事的な蘊蓄を延々と語ってくれた。
「――というわけだ。分かるか?」
「全然」
「お前、私をバカにしているのか!」
してないけど、話が長くて難しいんだもん。
「なるほど。つまりアデリナさんは、この決戦部隊を維持する非常に重要な役割を後方で担って下さるのですわね?」
「ふん、クレアの方はまあまあ分かっているようだな。生意気だがその通りだ。魔族との決戦を貴様らなんぞに任せなければならないのは業腹だが、フィリーネ陛下のご判断だ。陛下のご期待に背かぬよう励むんだぞ!」
アデリナさんは言いたいことだけ言うと、その場を去ろうとしたが、ふと足を止めて、
「……オットーが心配していた。生きて帰れよ」
ぼそりとそれだけ呟くと、今度こそ足早に去って行った。
「なんですか、あれ」
「わたくし知ってますわ。ああいうのをツンデレって言うんですのよ」
ついにクレア様がツンデレの概念を会得してしまった。
ツンデレにツンデレが加わったら、よりツンデレなのでは?
……我ながらよく分からないことを考えた。
その後も色んな人から声をかけられ、叱咤や激励の言葉を貰った。
「私たち、色んな人の思いを背負って戦うことになるんですね」
「……そうですわね」
魔王との戦いは、もう一人の私の暴挙を止めるというだけではなかった。
この世界に生きる人たちの日常を取り戻すための戦いでもあるのだ。
「負けられませんね」
「ええ」
見回りもひとまずこれくらいでいいだろう。
クレア様がふいに差し出して来た手をしっかりと握り返し、私たちは宿舎への帰路に着いた。
*아래의 번역은 "와타오시 번역"의 협력으로 실현되었습니다.고마워요, "와타오시 번역"
246. 짊어진 것
“클레어 님, 슬슬 순찰 나갈 시간…… 뭘 보고 계시나요?”
결전의 최종 체크도 할 겸, 마침 우리가 순찰을 돌 차례였기 때문에 클레어 님을 데리러 갔더니 얇은 직사각형 모양의 무언가를 애틋하게 바라보고 계셨다.
“아, 레이. 네, 그냥 조금요.”
“그건…… 책갈피 인가요?”
“네. 피피와 로렛타한테 받은 거예요. 옛날에 학교 화단에서 함께 키운 꽃으로 책갈피를 만들었어요.”
헤~ 흐응~
딱히 부러운 건 아니라구.
“그럼 저랑 만난 지 얼마 안됐을 때, 제 책상위에 놔두신 꽃병의 국화꽃도?”
“네, 네에.”
“어째서 좀 더 빨리 말씀해주지 않으셨습니까! 클레어 님이 키우신 꽃이었다면 잘 말려서 보관하는 게 아니라 냉큼 먹어서 피와 살로 만들었을 텐데!”
“그때는 그런 짓을 해서 정말 미안했…… 네?”
엇차, 폭주하고 말았다.
“이 싸움이 끝난다면 그 두 사람과도 만나고 싶습니다.”
“네에, 이런 일이 있었다고 차라도 마시면서 얘기를 나누고 싶어요.”
“네.”
“슬슬 시간이 됐네요. 그럼 가볼까요.”
◆◇◆◇◆
마왕과의 결전을 위한 출정일을 하루 앞두고서, 즈룩에서는 마지막 최종 체크와 함께, 출정하는 병사들이 마지막 인사를 나누는 게 보였다.
마지막 인사라고는 해도 비관적이고 슬픈 분위기는 아니고, 대부분 병사들을 위한 질타와 격려를 위한 말들이었다.
“지지 말라고. 꼭 제도를 탈환해줘.”
“물론이지, 마족 놈들한테 따끔하게 한방 먹여주고 오겠어.”
“무리는 하지 말아줘. 무사히만 돌아와 주면 괜찮으니까.”
“아빠~ 힘내.”
클레어 님과 나는 함께 즈룩 성내를 걸으며 주변을 살펴보았다.
메이와 알레어는 메이드 장과 함께 숙소에 있다.
“……병사들을 꼭 가족들 곁에 돌아올 수 있도록 해야겠어요.”
“네. 클레어 님도 포함해서.”
“알고 있어요. 아이들을 또다시 외롭게 만들고 싶지는 않으니까요.”
둘만 남겨지는 건 싫다며 울던 순간을 떠올리고 있는 거겠지.
이제 지켜야 할 것과 돌아가야 할 장소가 생긴 클레어 님은 혁명 때처럼 스스로의 목숨을 망설임 없이 내던지는 짓은 하지 않는다.
“여기 계셨습니까, 클레어 선생님, 레이 선생님.”
“어머, 트레드 선생님.”
“안녕하세요.”
트레드 선생님은 우리들을 찾고 있었던 모양이다.
선생님은 전투복 차림이 아니라 평상복을 입고 있었다.
이번에 최종 결전부대에 참가하지 않기 때문이다.
“바우어에서 편지가 왔습니다. 학생들한테서 온 거군요.”
“우리 학생들한테요?”
트레드 선생님은 가방에서 세 통의 편지를 꺼내서 클레어 님에게 주었다.
“결전을 벌인다는 소식을 접하자마자 급히 썼던 거겠죠. 그 세 사람치고는 수신인부터 급히 휘갈겨 쓴 티가 납니다.”
역시 트레드 선생님.
학생들을 잘 보고 계시는구나.
“그럼 저는 이만.”
“정말 고마워요, 트레드 선생님.”
“정말 감사합니다.”
트레드 선생님은 조용히 인사만 남기고서 떠나셨다.
선생님은 직접 전투에는 참가하지 않지만 해야 할 일들이 쌓여있다.
“지금까지 굉장히 신세를 많이 졌는데도 여전히 선생님에 대해선 모르는 게 많네요.”
“바우어로 돌아가면 이런 저런 얘기를 여쭤보도록 하죠. 물론 감사 인사도 함께.”
일단은 살아 돌아오는 게 급선무다.
“클레어 님, 편지 내용은요?”
“어디보자…….”
클레어 님이 봉투를 열고서 편지를 펼쳤다.
제일 첫 편지는 라나한테서 온 편지였다.
『레이 선생님, 클레어 선생님, 마왕과 싸운다는 소식은 들었어. 이렇게 중요할 때 힘이 되어주지 못해서 미안해.』
첫 문장은 라나답지 않게 사과의 한마디로 시작하고 있었다.
『걱정은 되지만, 내가 정말 좋아하는 레이 선생님과 그런 선생님이 정말 좋아하는 클레어 선생님이라면 분명 괜찮을 거라고 믿고 있어.』
이런 부분은 평소의 라나다웠다.
『선생님한테서 배우고 싶은 것들이 지금도 잔뜩 있어. 그러니까 꼭 무사히 돌아와 줘.』
간결한 편지는 그렇게 말을 맺었다.
“라나 나름대로 걱정해주는 모양입니다.”
“그런 것 같네요. 하지만 레이는 제 것인걸요.”
“오. 부끄럼기인가요?”
“맞아요.”
뭐야뭐야.
왤케 귀엽냐고.
이어지는 편지는 요엘한테서 온 편지였다.
짧게 한 줄로,
『무사하실 거라 믿고 있습니다. 부디 무운을.』
라나보다도 훨씬 간결하고, 얼핏 보면 쌀쌀맞게 느껴질 정도로 짧은 문장이었지만 과연 요엘 답구나 싶었다.
“그래도 분명 이 한 문장을 쓰기 위해서 한 시간은 끙끙대고 있었을 거예요.”
“네, 저도 그렇게 생각합니다.”
요엘은 그런 면이 있다.
표현은 적은 반면에, 그걸 표현하기까지 많은 감정과 사고를 거친다고 해야 하나.
마지막은 이브의 편지였다.
그녀의 편지가 가장 길었다.
『레이 선생님과 클레어 선생님께.』
편지는 그런 말로 운을 떼고 있었다.
『여러모로 폐를 끼치고 말았던 제가 드릴 말씀은 아닙니다만, 꼭 부탁드리고 싶은 게 있습니다. 마나리아 님을 도와주세요.』
편지는 계속 이어졌다.
『마나리아 님은 정말로 강한 분이지만, 한편으론 생각지도 못한 부분에서 실수를 저지르는 사람입니다. 그 분이 실수로 죽어버리지 않도록 부디 두 분께서 신경을 써주세요.』
깜짝 놀랐다.
그 완벽 초인인 마나리아 님도, 곁에서 시중을 들었던 이브 눈에는 그렇게 보이는 건가.
『특히 레이 선생님. 선생님은 마나리아 님의 약점이 될 수 있습니다. 선생님은 마나리아 님을 지켜보시면서 동시에, 자신의 몸을 지키는 것도 꼭 신경써주세요.』
할 말이 없다.
이 편지를 4개국 회담 전에 받았더라면 얼마나 좋았을까 싶다.
『클레어 선생님. 선생님은 마음 든든합니다. 부디 마나리아 님과 레이 선생님을 잘 부탁드리겠습니다.』
편지는 그 말로 마무리 되었다.
“마나리아 님도 저도 신용이 없군요.”
“염려해 주는 거라고요. 그 정도로 두 사람이 소중하다는 뜻이에요.”
마나리아 님은 그렇다 쳐도 나는 어떨는지.
사랑하는 마나리아 님의 덤이라는 느낌도 들지만, 세뇌가 풀린 지금은 그렇게까지 나를 싫어하지는 않을지도 모른다.
그랬으면 좋겠네.
“이렇게 편지까지 보내주다니, 우리들은 좋은 학생들을 만났어요.”
“정말입니다. 돌아가면 꼭 인사를 해야겠군요.”
마주 고개를 끄덕이고서, 클레어 님은 편지를 소중하게 가방 속에 넣었다.
우리가 편지를 읽느라 멈춰서 있던 때, 걸려오는 목소리가 있었다.
“어머나, 너희들. 이런 곳에서 어슬렁 거려도 괜찮은 거야?”
“아— 저기…….”
“평안하신가요, 마르테 씨. 오랜만에 뵙네요.”
한순간 이름이 생각이 안 나서 어물대고 있자, 클레어 님이 옆에서 구원의 손길을 내밀어 주셨다.
복스러운 체구에 앞치마를 매고 있는 중년의 여성—— 마르테 씨는 제국 국학관 학식당 아줌마다.
라나와 함께 요리 대결 실황도 맡아주셨던 분이다.
“저희들은 마지막 순찰중이에요. 마르테 씨는 어떻게 즈룩에?”
“나는 결전부대의 보급 담당 쪽이야. 무슨 일이든 배를 든든히 채우는 게 중요하다구. 그렇지, 마르코?”
“물론.”
마르테 씨와 꼭 닮은 얼굴의 포동포동한 남성은, 나에겐 낯선 얼굴이었다.
“저기……?”
“누구신가요?”
“너희들, 너무한 거 아니냐?! 나라고, 나! 주사장이라고 하면 알겠냐?”
“네에에?!”
“……그게 상당히…… 복스러워지셨네요……?”
예전에 요리 대결을 했을 때는 좀 더 탄탄한 체구였던걸로 기억하는데, 지금 주사장은 풍만한 체형으로 변해있었다.
“아니 하지만 생각해보라고. 이젠 거리낌 없이 맛있는 음식을 먹을 수 있잖아? 살이 찔 만도 하지 않겠어?”
“무슨 뻔뻔한 소리야, 이 멍청아!”
마르테 씨의 호통에 주사장이 목을 움츠렸다.
“자, 식사는 걱정하지 않아도 괜찮아. 우리들이 든든하게 뒤에서 받쳐줄 테니까. 너희들은 너희들의 역할에만 집중하도록 해.”
“고마워요.”
“잘 부탁드리겠습니다.”
두 사람이 보급을 맡아준다면야 병사들의 사기도 올라가겠지.
배가 고파선 싸울 수 없다는 말은 비유가 아니다.
둘과 헤어지고 나서 계속 길을 걷다보니 낯익은 얼굴과 마주쳤다.
“상드린 씨?!”
“어머, 교황 님?!”
수녀복을 입고 있는 여성, 상드린 씨였다.
교황 성하와 내가 서로 바뀌었을 때, 내 곁에서 나를 돌봐주었던 분이자 교황 성하의 기미를 맡고 있는 사람이다.
내 첫 목조르기 플레이 상대이기도 하다.
“어떤 분인가요?”
“그게…….”
나도 모르게 말을 걸고 말았지만, 그녀는 내가 교황 성하 행세를 했을 때밖에 만나본 적이 없다.
나와 서로 면식이 없는 걸로 되어 있다는 사실을 깜빡하고 말았다.
“……교황 성하가 아니시군요. 그럼 당신이 레이 테일러 씨인가요?”
“레이를 알고 계세요?”
“네에. 교황 성하 암살미수 사건 당시, 몸을 던져 교황 성하를 지켜주셨던 분이라고 들었습니다. 그때는 정말로 많은 폐를 끼쳤습니다.”
그러면서 상드린 씨는 허리를 굽혀 인사했다.
이미 당시의 사정에 대해 설명을 들은 모양이다.
“천만의 말씀입니다! 저야말로 그렇게 속이는 짓을 해서 정말 드릴 말씀이 없습니다.”
나도 상드린 씨에게 고개를 숙였다.
“두 사람 다 그쯤 하세요. 이미 지나간 일이잖아요. 그보다 상드린 씨는 어쩐 일로 이런 곳에?”
“사실은 교황 성하를 곁에서 돕고 싶었지만 저로선 그저 방해만 될 게 분명하니, 즈룩에서 무사히 귀환해 오시길 기다리기로 했습니다.”
사실 바라던 바는 아니겠지.
상드린 씨는 우울한 표정을 짓고 있었다.
“저에겐 싸울 수 있는 힘이 없습니다. 두 분은 결전부대에 참가하시죠? 부디 교황 성하를 잘 부탁드리겠습니다.”
상드신 씨는 눈물을 매단 채 내 손을 쥐었다.
내가 당황하고 있자,
“네, 맡겨만 주세요. 교황 성하는 반드시 상드린 씨의 곁으로 돌아오실 거예요. 그러니 부디 당신도 안심하고 기다려 주세요.”
클레어 님은 나한테는 그다지 보여주지 않는 자애로 넘치는 미소로 화답했다.
크게 감격한 상드린 씨를 뒤로 하고서 다시금 즈룩의 거리를 걸었다.
“어이, 거기 있는 너희들!”
우리를 멈춰 세우는 날카로운 목소리에 뒤를 돌아보자, 그곳엔 군인 차림을 한 여성의 모습이 보였다.
“켁.”
“어머, 실례잖아요, 레이. 평안하신가요, 아델리나 씨.”
“흥. 점잔빼는 태도는 여전하구나, 클레어 프랑소와.”
아델라나 씨는 오토의 누나이자 제국군의 젊은 병사들이 가담한 쿠데타를 꾸몄던 사람이다.
쿠데타는 미수로 그쳤지만 우리들과 사이가 양호하다고 말하기는 좀 힘들다.
“아델리나 씨도 결전부대에 참가하는 겁니까?”
“알면서 그러는 거냐, 이 자식! 우리 같은 신참병이 영예로운 결전부대에 참가할 수 있을 리가 없잖냐!”
몰랐는데.
“그럼 당신은 왜 이곳에?”
“이래서 초짜들이란. 알겠냐? 부대운용이라는 건 최전선에서만 이루어지는 게 아니야. 길게 늘어난 전열은 보급선을 유지하면서 수비 거점을 곳곳에——.”
아델리나 씨는 그 후로 장장 10분에 걸쳐 군사적 지식을 줄줄 늘어놨다.
“——라는 뜻이다. 이해했나?”
“아뇨.”
“이녀석, 나를 바보 취급하는 거냐!”
그런 적은 없지만 얘기가 길어서 어려웠는걸.
“과연. 한마디로 아델리나 씨는 이 결전 부대를 지탱하는 굉장히 중요한 역할을 후방에서 수행해주신다는 뜻이네요?”
“흥, 클레어 쪽은 대충 알아들은 모양이군. 마음엔 들지 않지만 그 말대로다. 마족과의 결전을 너희들 따위에게 맡겨야만 하는 건 배알이 꼴리지만 필리네 폐하의 판단이다. 폐하의 기대에 부응할 수 있도록 힘내겠어!”
아델리나 씨는 자기 할 말만 남기고서 자리를 떠나려다가, 문득 발걸음을 멈추고는,
“……오토가 걱정하고 있었다. 살아서 돌아오라고.”
중얼거리듯이 한마디 하고서 다시 빠른 발걸음으로 자리를 떠났다.
“뭘까요, 저거.”
“이젠 저도 알겠어요. 저런 걸 츤데레라고 하는 거예요.”
마침내 클레어 님이 츤데레의 개념을 습득하고 말았다.
츤데레에 츤데레를 더하면 더 큰 츤데레 아닐까?
……나 자신도 무슨 소린지 모를 생각이 들었다.
그 뒤로도 많은 사람들이 말을 걸었고, 질타와 격려를 받았다.
“우리들은 많은 사람들의 마음을 짊어지고 싸우게 되는 거군요.”
“……그러네요.”
마왕과의 싸움은 그저 또 다른 내가 저지르는 폭거를 막기 위한 목적만 있는 게 아니었다.
이 세상을 살아가는 사람들의 일상을 되찾기 위한 싸움이기도 했다.
“질 수 없겠습니다.”
“네에.”
순찰도 이걸로 대충 일단락 됐겠지.
클레어 님이 조용히 내민 손을 꼭 마주 쥔 채로, 우리들은 숙소로 돌아가는 길을 걸었다.