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時代ももう令和だと言うのに、まだ本物の忍がいる。

大発見だった。

郷土の歴史の研究をしている俺が、森を探索中に迷い、たまたま見つけた場所が忍達の里だったのだ。

最初は森の中になんでこんな集落があるのかと、興味本位半分に助けを求めるためにその里へと入った。

しかしそれが良くなかった。

里に入った瞬間、俺は侵入者として里の忍達に捕まってしまったのだ。

俺を捕まえる姿は、まさにアニメで見ていた忍そのもので、ピンチながらも感動している自分がいた。

しかし事態はそう軽いものではないらしく、俺は拘束されて里の地下牢へと放り込まれてしまったのだ。

そこで俺は初めて自分が命の危険に晒されている事実を理解した。


「た、助けてくれ!!俺はたまたまこの里を見つけただけで、本当に何も知らなかったんだ!!」

牢の前で見張りをしている忍に必死に訴える。

「………」

しかし忍から返事が来ることはなく、俺の方を振り返ることすらしなかった。


クソッ…このことを発表すれば、俺もやっと民俗学者として胸を張れるようになると言うのに…


何としても生きて帰りたかった。

しかし状況は最悪だ。

大の字に広げられられて棒と紐で拘束されて床に寝かされてしまい、逃げるどころか身動き一つ取れない。


このまま俺は殺されるのか…?


それは絶対に嫌だった。

殺される恐怖もあるが、それよりも民俗学者としてこれ程の発見が発表できないことが悲しかった。

そんなことを考えていると、自然と涙が頬を伝っていた。


「よぉ」

「うわっ!!!」

突然現れた男に驚き、思わず大声を上げてしまう。

牢の扉は開いた様子はなく、見張りもいつの間にかいなくなっていた。

考えてみればこいつらは忍。

俺を捕まえた時もそうだったが、常識では計り知れない技を持っている輩だ。

扉を開かずに中に入ることも容易なのだろう。

「おい、こいつ泣いてるぞ」

「だろうな。こんなとこに入れられればそうもなるだろ」

牢にいる忍の数はいつの間にか二人に増えていた。

どちらも口元を布で覆っているせいで目元でしか判断はできないが、かなり若い雰囲気がある。

剥き出しになっている今時の若者のような髪型も相まって、着ている服が忍の衣装であることに違和感がある程だ。

十代…いって二十歳そこそこにも見える若い男二人は、俺を見定めるように上から下まで舐めるように見て来た。

「こ、ここから出してくれっ!俺は帰らないといけないんだ」

帰ってこのことを発表しなければいけない。

しかしそのことを正直に言う程俺はバカではない。

「家にはまだ幼い娘がいるんだ。ここであったことは絶対に口外しない!だから…」

「嘘つくなよ。民俗学者さん」

「っっ!?!?」

「お前のことはこの森に入った時点で把握してる。この里に足を踏み入れなければ見逃すつもりだったのに、愚かなことだ」

身体に冷たい汗が流れた。


なんで俺のことを…


こいつら忍の仕事は暗躍。

彼らが現代でも生き残っている理由は、現代社会に馴染んで仕事をしているからと考えてもおかしくはない。

「お前が帰ってこの里のことを黙ってるはずがないってことは分かってんだよ」

「可哀想だがお前には死んでもらう。それが長の決定だ」

「なっ!!!!」

可哀想だがと言う男の目は冷たく、俺に同情している様子では全く無さそうだった。

「や、やめてくれ!!殺すのだけは!!い、言わない!!絶対この里のことは誰にも言わないから!!」

「だーかーら、長の決定は絶対なんだよ」

「お前が何と言おうと結論は変わらない」

今から俺を殺そうと言うのに、この二人の別になんでもないことのような言い回しに恐怖を感じた。

「い、嫌だ!!」

俺は逃げようと必死にもがくが、棒に縛られた手足は外れそうにもなかった。

「まぁ安心しろよ。拷問じゃねぇんだ。殺すって言っても痛みなく殺してやる」

「俺達の淫技でな」

そう言って口元の布を外した二人の顔はまるで彫刻のように整っており、男である自分ですらドキっとしてしまう程に色気があった。

忍の仕事は暗躍であるが、時に人の色欲を利用した諜報活動も行っていたと言う資料を見たことがある。

確か淫技と言うのは、性の技によって相手を懐柔するものであったはずだ。

この二人の見た目を考えればその淫技を使うと言っても不思議ではないが、人を殺めるような技ではないと認識していた。

「じゃあお兄さん、今から文字通り天国に連れてってやるよ」

茶色い髪のヤンチャそうな方の忍はそう言うと、俺の顔の前で手を組んで何やら形を作り始める。

「忍法『臭気獄』」

その忍がそう言った瞬間、一瞬眠気で視界がトロンとし、すぐに覚醒するような妙な感覚に襲われた。

「な、何をした!!」

訳が分からず言うが、俺はその答えを聞く前に身体の違和感に気付いた。

「っっっっ!!」

先程までは感じていなかったが、妙に嫌な匂いを感じるようになったのだ。


この嫌な匂いはどこかで嗅いだことのあるような…そう、確か…


「く、臭い…」

もう一度その匂いを嗅いで分かった。

嗅いだことのあるこの匂いは足の匂い。

つまりこいつら二人の足の匂いが俺の鼻まで届いてきていたのだ。


さっきまではそんなの感じてなかったのに、なぜ急に…


二人の足が急に臭くなったとは考え難い。

「どうだ?お前の嗅覚を倍にしてやったんだ。さっきまでしなかった匂いまでするだろ」

その言葉で自分がされたことを理解した。

こいつらの足が臭くなったのではなく、こいつらの足は元々臭かったが、まだ距離が遠いせいで分からなかっただけ。

俺の嗅覚を上げられたことにより、その足の匂いを感じるようになってしまったのだ。

「まぁそれだけの術じゃねぇけどな」

そう言いながら俺の頭の方へと移動してくる茶髪の忍。

近づいたことによって更に足の匂いを感じてしまい、俺はあまりの悪臭に鼻で呼吸をするのを止めた。

臭さに気分が悪くなっていると、忍はそのまま俺の頭の上の地面へと座り、両足を俺の顔の左右に置く。

黒い足袋に草履を履いた薄汚れた足が顔の近くに来たせいで、その足の嫌な匂いを益々強く感じるようになってしまった。

「ぐっ…」

あまりの匂いに鼻での呼吸をやめ、これ以上この臭い足の匂いを嗅ぐまいと口呼吸へと変える。

しかし嗅覚が上がっているせいか、口から空気を吸っているというのにその匂いが僅かにだが香ってきていた。

「よし、処刑を始めるぞ」

匂いに苦しむ俺を見下ろしながらその忍びは両足の草履を脱ぐと、その足袋に包まれた足を俺の顔の上へと浮かせる。




続きは7月16日に他プランでも公開予定

現在タバコプランでも公開予定

全文約8300文字

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