<入れ替わり>二次元と三次元~再会と別れ~ (Pixiv Fanbox)
Content
※ゲームキャラとプレイヤーが入れ替わってしまうお話
「二次元と三次元」の後日談デス~!
本編を読んでからお楽しみくださいネ!
(過去作品を見る際は、↑のプロフィールのところにある、作品一覧から探すと
見つけやすい…かもデス! ずっと下にスライドするの面倒だと思いますし汗)
それでは、二次元と三次元後日談、お楽しみください~☆
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
恋愛アドベンチャーゲーム
”ラブ・サプリメント”
当時、最新鋭の技術が使われていて、
話題になったゲームソフトー。
だがー
あれから60年ー。
既に、ラブ・サプリメントは
人々の記憶から消え去りー
”レトロゲーム”として一部のマニアが
知るだけの存在となったー
「-----」
とある老人が、一人、自宅で
のんびりと暮らしているー
彼は、もうすぐ80になるー。
自分の死が近いことも理解しているー
「---やっぱじいちゃんの家は落ち着くな~」
今日は、高校生になった、孫の竜太郎(りゅうたろう)が
遊びに来ている。
「…ゆっくりしていっておくれー」
優しく微笑むおじいちゃんー。
彼の名は、川辺 伸介ー。
60年ほど前ー
ラブ・サプリメントという恋愛アドベンチャーゲームに
はまっていたー。
しかし、ある日、
ラブサプリメント内の彼女”紗枝(さえ)”と
入れ替わってしまいー、
本当の伸介は、今、ラブサプリメントの内部で
紗枝として生きているー
そしてーー
ここに今いる伸介の中身は、
伸介ではないー
ゲームキャラクターの紗枝だ。
ゲームのキャラクターとして自我を持ち、
何の疑問も抱かず、プレイヤーの伸介を
好きになったー。
だが、トラブルにより、伸介と入れ替わってしまって
紗枝は伸介として色々なことを知った。
伸介は、紗枝の前にも、2人の彼女を
作っていて、データ削除を繰り返していた。
紗枝もまもなく、自分が削除される運命だったことを知り、
”元に戻る方法”を探すのをやめて、
自分が伸介の人生を奪った。
あれから60年ー
紗枝は伸介としてー
人間として生きてきたー。
ゲームの世界にいる紗枝になった伸介はーー
”電源を切られている間”は、”無”だー
60年前ー
紗枝になった伸介はこう叫んでいたー
「…俺…しょせん…ゲームはゲームだって…
そう思ってた…
でも、こんなにつらいなんて…
こんなに怖いなんて…」
「ご、、、ごめん…本当に…ごめん…
元に戻れたら…元に戻れたら、絶対消さないって
約束するから…」
ーと。
でもー
ゲームのシステムで、伸介の本心は丸見えだったー
”助かりたい!助かりたい!
消すかもしれないけど、今はこう言っておかないと”
あのときー
伸介になった紗枝は、完全に伸介に愛想を尽かしー
ゲームの電源を切断したー。
紗枝になった伸介の意識は、あれから60年、
眠ったままー
紗枝も知っているー
電源を切られている間は、完全な”無”
次に目覚めるときまで、本当に、何も感じないー
人工知能を搭載されて生み出された紗枝のような
ゲームキャラからしてみればー
とても、とても悲しい時間ー。
10年ほど前、
孫の竜太郎が小さいころに、一度
ラブサプリメントを起動したが
すぐに電源を切ってしまって
紗枝(伸介)と会話する機会はなかったー
伸介(紗枝)も、もう80間近ー。
もうじき、自分にもお迎えが来るー
伸介になった紗枝ー
伸介(紗枝)は、自分が死ぬ前に
”ちゃんとお別れ”しておかないとー、
と考えていたー
正直、伸介(紗枝)からしてみれば、
もう紗枝(伸介)となんて話したくないー。
自分のことを”削除”しようとしていた相手のことなんか知らない。
このまま、永遠に”無”を味わっていればいいー。
そうも思うー
けれどーーー
ラブサプリメントのゲームで、紗枝を作ってくれたのは
伸介自身だー
ラブサプリメントでは彼女を自由に作ることができるー。
伸介が作ってくれなければ、
紗枝はこの世に存在しなかったー
だからー
自分を消そうとしていた相手であることは事実でも、
自分を生んでくれた親のような存在であるのも事実ー
「--この彼女うぜーな!ゲームのクセに~!」
孫の竜太郎が叫んでいる。
竜太郎がプレイしているのは
今の時代ではやっている
恋愛アドベンチャーゲーム「ラブ・デラックス」というゲームだ。
「---竜太郎」
伸介(紗枝)は静かに呟いたー
「どうしたの?じいちゃん?」
竜太郎が伸介(紗枝)のほうに寄ってくる。
車いすの向きを変えながら
孫のほうを見ると、伸介(紗枝)がほほ笑んだー。
「ゲームの中の彼女でも、
ちゃんと大切にしてあげなくちゃ、だめだぞ」
とー。
「---え~?だって、ゲームじゃん!」
竜太郎が笑う。
竜太郎がプレイしている「ラブ・デラックス」にも
特殊な技術で人工知能のようなプログラムが
埋め込まれているー
と、なれば紗枝のように、ゲーム内の彼女も
自我を持っているかもしれないー
「----でも、その彼女も、
ちゃんと、いろいろなことを考えて
頑張って生きてるんだ」
伸介(紗枝)が言うー
あれから60年ー
今ではすっかり人間の身体にも慣れた。
ゲームキャラとして生まれた紗枝はー
今や、伸介の身体で生きている時間のほうが
遥かに長いー。
「--どうしてじーちゃんにそんなことわかるのさ~?」
竜太郎が苦笑いしながら言う。
「--おじいちゃんもな…
昔、ゲームの中にいたからー」
「え???」
竜太郎が驚くー
少し間をおいてから伸介(紗枝)が笑う。
「な~んて、な」
「なんだよ~!驚かすなよ~」
竜太郎が笑う。
しかしー
竜太郎は少し真剣な表情になると、
「わかった。できるだけ大事にするよ」と言いながら、
伸介(紗枝)に向かって頷いたー
・・・・・・・・・・・・・
数日後ー
体調が悪いー
伸介(紗枝)は自分の寿命が
近づいていることを悟るー。
あの時、
ゲームキャラとして”データ削除”されて
そのまま消えるかもしれない運命だった自分が
こうして、60年も、伸介の身体で
生きることができたー
このまま自分が死ねば
”ラブ・サプリメント”は恐らく2度と誰にも
起動されず、紗枝(伸介)は永遠の闇に
眠ったままー
あるいは、中古として誰かの手に渡り、
”前の人のデータが残っている”と言われて
データ削除されて消えるかー。
そのどちらかだろうー。
「----やっぱり…」
伸介(紗枝)は呟くー
「やっぱり、自分の手で、ちゃんと別れなくちゃね…」
伸介(紗枝)は悲しそうに呟いたー
恋愛アドベンチャーゲームのキャラとして生まれた
紗枝は、最初から
”プレイヤーが好き”と刻まれていたー
その感情は、伸介の身体で
60年生きてきた今もー
消えてはいないー
「---伸介」
伸介(紗枝)は、久しぶりに
ラブ・サプリメントを起動したー
・・・・・・・・・・・・
パチッ!!!
「-----えっ!?!?!?!?」
ゲームの中にいた紗枝(伸介)が
目を覚ますー
周囲の世界が広がるー
「---あ、、あれ…」
紗枝(伸介)はぼーっとしている。
感覚的には一瞬な気もするー
けれど、また、長い時間眠っていた気がするー
「あれ…俺…」
紗枝の姿のまま、伸介は考えるー。
そうだー
紗枝と入れ替わってしまって
自分が紗枝になって、
ゲームの世界にーーー…
”久しぶり…”
老人の声が聞こえた。
ゲームの世界からは、
喋っている人の姿が見えないー
「---さ、、、紗枝なのか!?」
紗枝(伸介)が叫ぶ。
”そう…
声が違って驚いた?
あれから、60年も経っちゃったからね”
「--60年!?!?」
紗枝(伸介)は叫び、
唖然とするーーー
ずっと、その間、電源を切られていたのかー?
そういえば、この前、一瞬だけ意識が戻った時も、
老いた自分の声がしていたー
「……」
紗枝(伸介)は絶望するー
60年も経過してしまったー
なら、自分の身体はもう、80近いー
「…ははは、、、ははははははは!
満足かよ、紗枝…!
俺の人生を奪って、みじめな俺を
今更笑いに来たのか?」
紗枝(伸介)は開き直ったー。
「--ははは、ははははははは…
ゲームキャラと入れ替わって人生奪われちゃうなんて
あはははは、最悪な人生だ!」
紗枝(伸介)が笑うー
自暴自棄な紗枝(伸介)の姿を見ながら
伸介(紗枝)は悲しそうな表情を浮かべるー。
”わたしは、ずっと、ずっと伸介くんが好きだったー…
これは、本当だよ”
伸介(紗枝)の声が聞こえてくる。
「うるさい!ゲームキャラのクセに!
俺の人生を奪って!」
紗枝の姿のまま泣き叫ぶ伸介。
「もう、どうにでもなれ!!!もう、、どうにでもっ…!」
紗枝(伸介)は狂ったように自分の胸を
触りまくるー。
伸介(紗枝)は、それを止めることはしなかったー。
臭いもー
何もかも感じない
このゲームの世界ー
紗枝(伸介)は、自暴自棄になりながら叫ぶー
「---今更俺に何のようだ!
もういい…もう疲れた!
さっさと、さっさと俺を消してくれ!」
紗枝(伸介)が叫ぶー
60年前-
紗枝(伸介)は、データ削除される直前まで行ったー
周囲の世界が黒く塗りつぶされていきー
自分も消滅するー
あの恐怖ー
でもーーー
電源を切られたまま、永遠に無ならー
それはもう死んでいるのと同じだー
「もういやだよ…紗枝…
俺が悪かったよ…
だから、俺を消してくれーー」
紗枝(伸介)がゲーム内の世界で泣き始めるー
「----」
伸介(紗枝)は、複雑な表情で
それを見つめていたー
人間と入れ替わってみて、60年ー。
今ならわかるー
伸介はーー
確かにひどいことを自分のブログに
書いたりしていたけれどー
人間が、ゲームのことをああいう風に書くのはーー
別に、珍しいことじゃないー
彼女のデータを消して
新しい彼女を作るのもーーー
伸介が悪いーー、というよりかは、
人間にとって、それが当たり前だったのかもしれないー
入れ替わった直後ー
まだ、ゲームの世界が自分の中の中心だった紗枝は、
感情的になって、伸介を責めたー
けどー
今となってはーーー
何とも、言えない。
ゲームキャラの紗枝からしてみれば
紗枝のデータを消そうとしたり、
紗枝のことを悪く書いたりしていた伸介は、悪だ。
でもー
人間からしてみれば、伸介はただゲームを
遊んでいただけだし、人生を奪われるほどの
悪いことを、したと言えるのだろうかー?
ただ、純粋に
高校生としてラブ・サプリメントを遊んでいただけなのにー
60年もーー
人生の全てを奪われてしまった伸介ー。
これで、良かったのだろうかー。
”そっちに戻る方法、見つけたの”
伸介(紗枝)が呟くー
あれから60年ー
伸介になった紗枝は、ゲームのバグについて調べ続けて
ようやく”入れ替わり現象”にたどり着いたー。
そして、それを応用して伸介になった、紗枝が
ゲームの世界に戻る方法を考え付いたのだったー
「戻る?」
ゲーム世界の中で泣きながら叫ぶ紗枝(伸介)-
「今更ーー
今更、、おじいちゃんになった自分の身体に戻ったって!!
俺は、、俺は!!!!」
紗枝(伸介)が叫ぶー
その叫びを聞いて現実世界の伸介(紗枝)は
ゲーム機に特殊なケーブルをつなぐー
ゲームの世界に戻るための方法ー
伸介になった紗枝はー
入れ替わって元に戻るのではなくー
ゲームの世界に戻ろうとしていたー
結局ー
入れ替わる方法は見つからなかったー
見つけられたのは、紗枝がゲームの中に戻る方法だけー
”人間”と”ゲームキャラ”という立場の違いー
伸介は、ただ、ゲームをゲームとして遊んでいただけー
そんな、伸介の人生を奪ってしまったー
紗枝からすれば、伸介は、自分を消そうとした”敵”
でもー、彼はゲームをプレイしていただけー
「---終わりにしよう…伸介」
伸介(紗枝)は、そう呟くと、
”ゲームの世界に戻るため”注射針のようなものを自分にさして、
そこから出ているケーブルをゲーム機に繋いでーー
静かにほほ笑んだー
孫ともうちょっと一緒にいたかったー
でもーー
この身体は自分のものじゃないしー
なにより、もうすぐ寿命を迎えるー
だからー
”紗枝とお別れしますか?”
はい いいえ
削除画面を開くー
伸介(紗枝)は、悲しそうな表情で
「はい」を押してーーー
そして、ゲームの世界に戻ったー
・・・・・・・・・・
ゲームの世界にいる紗枝(伸介)が
異変に気付くー
哀愁漂うBGMが流れ始めるー
周囲が、黒い粒粒になって、消えていくー
「これは…」
部屋だけじゃないー
世界が、黒い粒になって、消えていくー
徐々に黒い粒が広がっていき、
消えていくー
物悲しげなテーマ曲と共に
”エンディング”が流れる。
消えるまでの時間は約5分ー。
その間にエンディングが流れる。
これまでの思い出と共に、世界が消えていくー
”データを削除しています 48パーセント”
「----やっと…やっと…終わりか」
紗枝(伸介)が自虐的に笑うー
データ削除ー。
今度こそ、自分は消えるーーー
「---伸介!」
紗枝(伸介)の背後から声がしたー
振り返るとー
そこには、紗枝の姿があったー
紗枝になったはずの伸介が
自分の姿が伸介の姿に戻っていることに気づくー
「これは…?」
伸介が言うと、
ゲームの世界に戻ってきた紗枝がほほ笑んだー
「やっぱり…わたし、、伸介くんのことが好きだからー」
紗枝が悲しそうにほほ笑むー。
「--紗枝…」
伸介が悲しそうな表情で呟くー
「--伸介くんは…普通にゲームを遊んでいただけ
だったんだもんね…
わたし、人間として、伸介君の身体で、60年を
過ごして気づいたの…
伸介くんは、ただ、普通にゲームしてただけだって。
データ削除されたら、わたしは消えちゃうけど…
人間からすれば…別に何も悪いことしてないんだなって…」
紗枝はそこまで言うと、
目に涙を浮かべたー
「ごめんね…、人生、、奪っちゃってーー」
その言葉に、伸介は複雑な表情を浮かべるー
自分が、人生を奪われたー
正直、紗枝が憎いとさえ思えるー
でも、それは、”消されそうになった”紗枝も
同じような気持ちだったのかもしれないー
「--……ゲームのキャラと、人間が分かり合うのって、
難しいんだな」
伸介が、消えゆく世界を見つめながら呟くー
「---……うん」
紗枝は静かに伸介を抱きしめるー
紗枝が選んだのはーー
伸介と一緒に消えるー
という道ー。
「---一緒に消えられても…
別に、嬉しくなんかないなぁ…」
伸介が不貞腐れて言うー。
「--……そうだよね…ごめんね」
紗枝が静かに呟くー。
「----でも…
一人で消えるより、、寂しくないか」
伸介が、悲しそうにー
けれど、ちょっとだけ嬉しそうにほほ笑んだー
”データを削除しています 90パーセント”
「--------
でも、ずるいなぁ…」
紗枝に抱きしめられながら伸介は呟いた。
「え…」
紗枝が消えゆく世界で聞き返す。
「だってさ、、紗枝は、俺の身体で60年、生きたんだろ。
なのに、俺は電源ずっと切られてたから
ほぼずっと無だったからさ」
伸介が言うー。
紗枝は「ごめんなさい…」と申し訳なさそうに謝るー。
”データを削除しています 98パーセント”
伸介は複雑な感情を抱きながら呟くー。
「---そういえばさ、、、
現実世界の俺の身体、どうなってるの?」
「--え?わたしが抜けたから…抜け殻…
たぶん、身体も死んじゃうと思う…」
紗枝の言葉に、伸介は苦笑いしたーーー
「---老人が、ラブサプリメントを起動しながら
孤独死してる光景なんか、見たくないな」
とー。
”データを削除しています 99パーセント”
伸介は、ゲームキャラとは言え、紗枝を雑に扱ってしまったことを後悔するー
紗枝は、人間のことを理解せず、伸介の人生を奪ってしまったことを後悔するー
ふたりは、見つめ合いながら
悲しそうに呟いたー
「---紗枝の気持も知らずー」
「---伸介くんのこと、何も理解しないで勝手に人生を奪ってーーー」
少しだけ、笑う二人ー
ふたりは同時に、最後の言葉を口にしたー
「--ごめんねー」
”データ削除完了 100%”
・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・
後日ー
中身の紗枝がゲームの世界に戻ったことで、
抜け殻となり、息を引き取った
伸介の遺体が発見されたー
その部屋ではー
ゲーム「ラブ・サプリメント」のタイトル画面が
寂しげに輝いている。
その画面にはーー
「NEW GAME」と表示されていたー
おわり
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
「二次元と三次元」の後日談でした~!
いつか書いてみたかったのですが、
書かないまま時間だけが経過してしまって、
本編からだいぶ間隔が空いてしまいましたが
ようやく、こうして形にできました!
お読み下さりありがとうございましたー!!