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入れ替わってから1年が経過したー。


転校生も加わり、新たな春を過ごす中、

あの日から、ちょうど1年のタイミングを迎えた翔太と綾。


二人は、”同じ日” ”同じ場所” ”同じ条件”であれば、

元に戻れるのではないか、と、危険を承知で

あの時と同じように、”階段から転落”を試みたー。


そして、転落する二人ー。

1年前と同じように、階段を転がり落ちる二人ー。


元の身体に今度こそ、戻ることが出来ると…

そう、信じてー。


★前回はこちら↓★

<入れ替わり>僕とわたしの不思議な青春㉕~新学年~

1年目が終わり、2年目を迎えたー。 2年C組となった翔太と綾は、以前として入れ替わったままー。 そしてそこにー、 二人の転校生がやって来るー。 一人は、爽やかそうな眼鏡の男子・都会 和之ー。 もう一人は、お嬢様育ちの世間知らず・神宮寺 真莉愛。 新たに2人のクラスメイトが加わり、波乱の2年目が幕を開けようと...

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★主な登場人物★


遠藤 翔太(えんどう しょうた)

C組生徒。大人しく、奥手な性格の持ち主。綾と入れ替わってしまう。


星村 綾(ほしむら あや)

C組生徒。可愛らしい雰囲気に、明るい性格の持ち主。翔太と入れ替わってしまう。


神田 哲真(かんだ てつま)

C組生徒。翔太の中学時代からの友人。女子は苦手。


山井 穂乃果(やまい ほのか)

C組生徒。綾の親友。嫉妬深い性格の持ち主。


神宮寺 真莉愛(じんぐうじ まりあ)

転校生の一人。お嬢様育ちの世間知らず。


倉守 詩音(くらもり しおん)

C組生徒。中性的な風貌の持ち主。美術部に所属している。


★脇役も含めた人物紹介はこちら↓★

<人物紹介>僕とわたしの不思議な青春~登場人物図鑑~

長編入れ替わりモノ 「僕とわたしの不思議な青春」の 登場人物図鑑デス! 連載前に予告として掲載した、 主人公たちのクラス名簿の内容に加え、登場する教員や その他の人物もご紹介しています~! ※ネタバレは控えめ(漫画や小説の最初の方のページに書かれている  人物紹介ぐらいの内容…)デス~!  最初にクラス名...

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「ーーーー」

教室にやってきた翔太は、少しだけ寂しそうに

窓側の方の座席を見つめるー。


「ーあ、笹野さんおはよ~!」

綾が、前の座席の笹野翔子と挨拶を交わして、

そのまま雑談を始めるー。


やがて、そこに野坂優菜や、綾の親友である山井穂乃果も

加わり、楽し気に話を続けるー。


「ーーー……そんな顔すんなってー」

親友の哲真が、そんな翔太に声をかけるー。


「ーー…あ、神田くん」

翔太が、哲真に気付き、そう言葉を口にすると、

「元気出せよー。」と、励ましの言葉を続けるー。


「ーー…ーー…うん、ありがとうー」


翔太の心にはぽっかりと”穴”が空いてしまっていたー。


元に戻ったあとー、”綾”は、やっぱり”雲の上の存在”に

なってしまったー。

あれからー、綾とゆっくり話したのは1回だけー。


”遠藤くん!元気?”とか、そんな風に気遣って声は掛けてくれるもののー、

それだけー…。


綾の身体だった頃に仲良しだった翔子や、優菜、穂乃果ー…

女子のみんなとの距離も遠くなってしまったー。


「ーーーーあれ?君はー?」


放課後ー

寂しそうにカードゲーム部の部室の前に立っていた翔太に

カードゲーム部部長で、三年生になった石島 恭一が

声をかけて来るー。


「ーーあ…い、いえ」

翔太は寂しそうに、言葉を口にするー。


”カードゲーム部”に所属しているのは、”綾”ー。

翔太ではないー。


「ーーー…もしかして、入部希望?」

恭一の言葉に、翔太はー”あれ?君は?”と、他人のように

言われてしまったことにショックを受けながら

「いえ、すみませんー」と、そのまま足早に立ち去っていくー。


「ーーー僕はー…僕はー…」

自分の身体に戻った寂しさー…


綾の妹・美桜にも会えなくなったしー、

やっぱり、入れ替わる前と変わらない、”僕の日常”に戻っただけー。


「ーーー元に戻りたいって思ったのにー……」

翔太は、下校中に一人、涙をこぼすー。


「ーーー…元に…元に戻ったらーなんだかー……」

翔太は学校の方向を振り返るとー

悲しそうに言葉を口にしたー


「ーー知らない世界に”転校”しちゃったみたいだーー」


自分は綾のようなキラキラした子ではないー。

そう、”僕”は、クラスの端っこにいるような目立たないタイプだー。


そうーーー


僕はーーーーーー



「ーーーー!?!?!?!?!?!?!?!?」


ガバッ!と起き上がる翔太ー。


「ーーーぇ…」

周囲を見渡すと、そこは”保健室”だったー。


「ーーー!」

思わず、自分の身体を見下ろすと、そこには胸の膨らみが見えたー。


「ーーー……え……ぼ、僕…元に戻ったはずじゃー…」

そこまで言いかけて、自分の声が”綾”の声のままであることに気付くー。


「ーーー!」

ようやく、翔太は理解したー


”元に戻った日常”は、夢だったのだとー。


そうー。

1年前と同じように、二人で階段から転落した綾と翔太はー、

”元に戻れなかった”のだー。


転落して、意識を失っていた綾(翔太)が、

”元に戻った夢”を見ていただけー。


「ーおはよ 戻れなかったねー」

翔太(綾)が残念そうに言葉を口にするー


「ーうわっ!びっくりした!」

背後から声を掛けられて、思わず声を上げる綾(翔太)ー


「あはは、ごめんごめんー。

 ーー意識戻らなかったから、心配したんだよー?」

翔太(綾)はそんな言葉を口にしながら、

「ーー泣いてる…?だいじょうぶ?」と、

心配そうに言葉を続けたー。


「え… ぁ…」

慌てて目の涙を拭きとると、綾(翔太)は、

「ーちょ、ちょっと変な夢見ちゃってー」と、

”元に戻った夢”を見たと説明したー。


けれど、夢の中では元に戻って、”綾”として過ごした1年間が

なくなっちゃったような感じになってー、

綾ともまた”ただのクラスメイト”に戻ってしまってー、

寂しくてー、

と、そう言葉を吐き出したー。


「ーーーそんなの、正夢にはならないよー」

翔太(綾)は、穏やかな口調で、綾(翔太)の頭を撫でると、

「元に戻っても、わたし、そんな風に冷たくならないからー」

と、笑いながら言葉を口にしたー。


「ーーー…うんー」


何故だろうー。

”翔太”ー…”元・自分”に撫でられているのに、

なんだか、ドキドキしてしまうー。


翔太(綾)も、”元・自分”を撫でながら

少しだけドキドキしている自分に戸惑いながら、

「ーまた、頑張ろー」と、微笑むーー。


”元に戻る”ことが本当に幸せなのだろうかー。

入れ替わってからの時間が経てば、経つほど

迷いが生まれていくー。


時間が経てば経つほど、

”僕は遠藤翔太に戻れるのだろうかー”と、そんな不安が増していくー。


身体は戻れても、そのことを受け入れられるのかどうかー。


「ーーーーーーーー…」

翔太(綾)は、綾(翔太)が目を覚ましたことに安堵しながら

複雑そうな表情を浮かべるー。


”ーー元に戻れなくてショックだったー”

と、同時に、

”元に戻れなくてホッとしたー”そんな、自分のいるからだー。


「ーーーーー…どうなっちゃうのかなー…」

ボソッと、翔太(綾)が呟くー。


綾(翔太)が「え?」と聞き返すと、

翔太(綾)は「なんでもないー」と、笑顔でそれを誤魔化したー。


やがてー、保健室の担当の染谷先生が戻ってきて、

「去年も、こんなことあったわよねー」などと言われて

しまったものの、何とか誤魔化して、そのまま保健室の

外へと出たー。


「ーーー…実は僕ー…」

綾(翔太)が廊下を歩きながら、申し訳なさそうに言葉を口にするー


「ーーさっき、目を覚ました時ー

 ”夢でよかった”って思っちゃったんだー…


 元に、戻れなかったのにー…

 星村さんの身体を、奪ったままなのにー…


 ”よかった”ってー」


悲しそうに綾(翔太)が言うー。


「ーー…」

翔太(綾)も、悲しそうにそんな綾(翔太)のほうを見つめるとー、

「僕、酷いよねー…」

と、呟く綾(翔太)のほうを見て、静かに首を振ったー


「ーーそんなことないよー

 わたしだって、”迷う”ことはあるしー…

 1年も相手の身体で過ごしたらー…

 そういう風に思っちゃうことも、あるよー。」


翔太(綾)のそんな言葉に、綾(翔太)は少しだけ驚きながらも、

「ーやっぱり、入れ替わった相手が、星村さんでよかったー」と、

改めて、感謝の言葉を口にしたー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


翌日ー。


英語の授業が行われる中ー、

綾の親友・山井穂乃果は、表情を歪めていたー。


「ーーははは、まぁ、僕は生涯独身だからねー」

英語の担当の小日向(こひなた)先生は

”冴えないおじさん”という感じの先生ー。


去年、英語の担当だった室松先生は、2年の英語の担当からは

外れているため、違う先生に変更になっているー。


「ーーえ~?まだまだ結婚できますよ~!」

先生に対してもフレンドリーな霧崎 理子がそう言うと、

小日向先生は少し困りながら、

「ーでも、僕、もう生涯独身率に入ってる年齢だし?無理だよ」と、笑うー。


すぐに思い出したかのように

「おっと、失礼ー。英語の授業を進めないとねー」と、微笑むと、

そのまま授業を再開するー。


転校生のお嬢様・神宮寺 真莉愛が指されて、

英語の教科書を読み始めるー。


さすが、お金持ちのお嬢様ー

英才教育も受けているのか英語を完璧な発音で読み上げて見せるー。


感心する小日向先生ー。


そんな中ー、穂乃果は綾と翔太の二人を見つめながら

”あること”を考えながらー…

昼休みに入ると、二人を呼び出したー。



「ーー穂乃果ちゃん…どうしたの?」

綾(翔太)が”綾”のフリをしながら言うー。


翔太(綾)も、不安そうに「山井さんー話ってー?」と

言葉を口にすると、

「ーー何で”去年と同じ日”に、同じ階段から落ちたの?」と、

穂乃果が表情を歪めながら言葉を口にしたー。


「ーーえ……き、去年とー?」

綾(翔太)が少し動揺しながら、チラッと翔太(綾)のほうを見つめると、

「ーえ…あ、そ、そういえばそんなこともあったねー

 あははー、偶然って怖いなぁ」と、

翔太(綾)が、そう言葉を口にしたー。


しかしー…


「ーーーしかも、ほぼ同じ時間ー」

穂乃果はそれだけ言うと、

綾(翔太)は「よ…よく覚えてるね…」と、そんな言葉を口にするー。


「当たり前でしょー。わたしは”綾”推しなんだからー」

穂乃果がそんな言葉を口にするー。


確か、以前、穂乃果は綾に親切にされたことをきっかけに親しくなり、

そこから綾を通じて友達が増え、今に至ると聞いたー。

少し嫉妬深い性格で、当初、穂乃果が翔太のことを敵視していたのも、

綾と親しくしている翔太を見て”綾を取られるような気がした”

と、そういう理由だったと、去年の体育祭の時に話していたのを

覚えているー。


「ーーー…あ、綾推しってー…」

翔太(綾)が苦笑いするー。


つい、”自分のこと”を言われていて、

反応を隠せなかったようだー。


「ーー”わざと”でしょ?去年と同じタイミングで同じように

 階段から落ちるなんて」


穂乃果が疑いの目を二人に向けて来るー。


綾(翔太)は「す、すごい偶然だよねー!」などと

わざとらしい言葉を口にするとー、

穂乃果は「ねぇ…綾ー。教えてよー」と、悲しそうに呟くー


「何か、理由、あるんでしょ?」

穂乃果のそんな言葉に、綾(翔太)は「え…えーっと…それはー」と、

翔太(綾)のほうを見つめるー。


すると、翔太(綾)は、”もう隠せない”と判断したのかー、

「ーーー…大丈夫ー」と、だけ呟くと、

「ーー全部、話そうー」と、そう言葉を口にしたー。


翔太(綾)と綾(翔太)は、

”唯一”入れ替わりのことを知る翔太の親友・哲真以外に

初めて”入れ替わり”のことを話したー。


入れ替わった直後、周囲には隠そうと約束した二人ー。

当時は”こんなに長く”この状態が続くとは思っていなかったし、

数日で戻れると思っていたー。

すぐに戻れるなら、混乱を隠すためにも言わない方がいいと、

そんな風に当時は考えたのだー。


それが、まさか1年後の今もそのままだとは、夢にも思わなかったー


「ーーーう…嘘でしょ!?」

穂乃果が戸惑いの声を上げるー。


「ーーー…今まで、黙っててごめんなさいー」

翔太(綾)が言うと、

「じ、じ、じゃあーーーあ、あ、あんたはー!」

と、穂乃果が、綾(翔太)を指差しながら

「ーあ、あ、あ、綾じゃなかったの!?」と、

騙されていた怒りのようなものを少しだけにじませたー。


「ご、ごめんー…」

綾(翔太)が戸惑いながら言うー。


翔太(綾)は、すかさず

「わたしが隠そうって言いだしたのー。

 だってー、こんなこと、混乱するでしょ?」と、

事情を説明すると、

穂乃果は不服そうな表情を浮かべながらー、

「ーーー……分かったー

 でもー、もっと早くわたしに話しくれれば良かったのにー」と、

そんな言葉を口にするー。


「ーーーーー……」

気まずそうな沈黙が流れるー。


「ーーーほ、本当に、ごめんねー…?」

翔太(綾)が申し訳なさそうに言うとー、

ムスッとした表情で穂乃果は二人を見つめるー。


気まずい雰囲気の二人ー。

がー、少し間を置いてから、穂乃果は少しだけ笑うと、

まず、綾(翔太)のほうを見て、言葉を口にしたー。


「ー綾…ううんー、あんたは、綾の身体を使ってるんだから、

 絶対に、絶対に、綾に恥をかかせるようなことはしないこと!

 もしも、それができなかったらー…わたしがぜーったいに許さない」

と、穂乃果は綾(翔太)を見つめながら言い放つー。


「ーーーだから、約束して、綾に恥をかかせるようなことは絶対に

 しないってー。」


穂乃果のそんな言葉に、綾(翔太)は戸惑いながらも

「う、うんー…約束するー」と、頷くー。


そしてー、

穂乃果は、翔太(綾)のほうを見つめると、

ムッとした表情をしながら、

言葉を吐き出したー。


「ーーー隠し事はダメ!傷つくから!」

とー。


「うんーーー…ごめんねー。

 どうすればいいか、分からなかったからー…」


翔太(綾)が、今までこのことを秘密にしていたことを

改めて謝罪すると、

穂乃果は、「でもー」と、言葉を続けるー。


「ーーー…二人ともー…今までよく頑張ったねー…


 ーーー…わたしだったらー…1年も耐えられないと思うー。

 綾もー、あんたもー…ホントに凄いー」


ムッとしていた穂乃果が、表情を緩めてそう言うと、


「ーーわたしも、綾の力になれることがあれば

 何でもするから!

 いつでも言ってー!」


穂乃果の言葉に、翔太(綾)は「うんー!ありがとうー穂乃果ちゃんー」と、

嬉しそうに微笑んだー。


久しぶりに”綾”として、穂乃果と会話した

翔太(綾)は、目に涙を浮かべながら

「やっとー…穂乃果ちゃんといつも通り喋れたー」と、嬉しそうに微笑んだー。


「ーーー…あ、あの…ぼ、僕はー?」

綾(翔太)が言うと、

穂乃果は少しだけ笑ってからー、

「ーー”綾のついで”に、あんたにも力を貸してあげるー」と、

そう言葉を口にしたー。


これで、”二人”ー

翔太と綾の入れ替わりを知る人間が、”二人”になったー。


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翌日ー。


穂乃果と哲真に”お互い、相手が入れ替わりのことを知っている”

ことを、翔太と綾の二人がそれぞれ教えていたー。


「ーーな~んだ…わたしが一番じゃなかったんだー」

穂乃果が少しムスッとするー。


哲真は苦笑いしながら

「ーはは、悪かったなー」と、穂乃果に向かって言うと、

穂乃果と軽く、改めて挨拶を交わしたー。


そしてー、この日もいつものように授業が始まるー。


1時間目は社会ー。

担任の若松先生による授業が始まるー。


「ーーーーー…(僕たちは、この先、どうすればいいんだろうー)」

綾(翔太)は、そんな風に思いながら、授業を受けるー。


元に戻りたい気持ちはあるー。

でも、元に戻りたくない気持ちもあるー。


だんだんと、”星村 綾”としての人生が名残惜しくなっているー。

元に戻るのが”正解”なのか、それともー


「ーー…大丈夫か?」

そんな声に、綾(翔太)は少しドキッとするとー、

以前”綾”に告白してきた男子・須藤 渉が、隣の座席から

心配そうに、綾(翔太)のほうを見つめていたー。


「ーーあ…え?」

綾(翔太)が少しだけ戸惑うと、

渉は「いや…難しい顔してたからー」と、そう言葉を口にしたー。


「ーーあ、うんー。大丈夫ー。

 心配してくれてありがとうー」


綾(翔太)がそう言うと、渉は安心した様子で笑うー。



今はー…

とりあえず、悩むのはやめようー。


綾(翔太)はそう心の中で決意するー。


もちろん、元に戻る方法を見つけ出すことも諦めないー。

二人が”どんな”選択をするにせよ、

元に戻る方法を探すのをやめた時に”未来”は決まってしまうー。


未来を決めるにはまだ早すぎるー。

選択肢は、可能性は多い方がいいー。


けれど、悩んでばっかりいる必要もないー。


もう、自分は”教室の端っこで細々と友達と話していた”

自分ではないのだからー。

たとえ、元に戻ったとしても、この前見た夢のように、

なってしまうことはきっと、ないのだからー…。


”よし、今日も頑張ろうー”

綾(翔太)は、そう思いながら、

今日もお調子者の栗原誠一に絡まれながら、苦笑いしている

若松先生のほうを見つめると、

黒板の内容をノートに書き写し始めたー…。



㉗へ続く


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★2-Cの日常★


「ーーーー倉守さんって、最初、イケメンさんかと思ってましたー」


転校生の一人、お嬢様育ちの神宮寺 真莉愛が、

中性的な雰囲気の女子生徒・倉守 詩音に声をかけて来るー。


「ん?ボク?」

詩音が不思議そうに自分を指差すー。


翔太(綾)と同じ美術部所属の詩音ー。

詩音は、”両親が離婚”した際に、母親が溺愛していた”兄”が

父親側に引き取られて以降、母親が豹変ー。

娘である詩音のことを兄の名前で呼ぶようになり、

少しでも”女”のような振る舞いをすると、母親が泣き叫ぶように

なってしまったため、家では男として振る舞っているー。


以前、翔太(綾)にも、詩音はそのことを話しているー。


そんなことを当然知らない真莉愛は、

「でも、よく見たら倉守さん、とても可愛いですよねー。

 よければわたしが、もっともっときれいにして差し上げましょうかー?

 お父様に言えば、色々お金も出してくれると思いますしー」

と、言葉を口にするー。


真莉愛に全く悪気はないー。

しかし、詩音は少しムッとした様子で、

「ボク、可愛いって言われるのはあまり好きじゃないー。

 余計なお世話だよー」と、言いながら立ち去ろうとするー。


「ーーあら?遠慮なんて知らなくていいんですよー

 わたしと倉守さんは、もう友達ですしー。」

真莉愛がそう言うと、

詩音は立ち止まって「友達?」と、表情を歪めるー。


「ーはい!

 お父様が平民の皆さんとたくさん友達になれって、

 言ってたのでー。


 わたしと倉守さんは、もう友達です!」


ずっと、屋敷の中で育ってきた真莉愛は壊滅的に

世間知らずー。


詩音は、不快感をあらわにすると、

「ボクは君と友達になったつもりはないー。

 悪いけど、これで失礼するよ」と、

そのまま立ち去ってしまうー。


「ーーー…あらら…?」

一人残された真莉愛は不思議そうに首を傾げると、

「倉守さんーご機嫌斜めだったのでしょうかー」

と、一人、そう呟くのだったー。


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コメント


元に戻ることは…今回はできませんでした~!★


卒業までを描くお話なのに、

ここで戻ってしまったら入れ替わりモノじゃ

なくなっちゃいますからネ~笑


まだまだ入れ替わりの状態は続くのデス…!


今日もお読み下さりありがとうございました~!!

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Comments

じゃいあん

思春期真っ只中、異性として一年が経過するなかで、二人にいろんな変化が出てくるような気がしてきますね!これからの展開も楽しみです。ありがとうございます。

無名

じゃいあん様~! ありがとうございます~!★ たっぷり話数を使うからこそ書けるお話を目指して これからも頑張ります~!★