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昔ながらの商店を経営する藤吉ー。


そんな藤吉は、

店を立て直すきっかけ作りとして、

孫娘の愛梨と1週間だけ入れ替わって、

店を切り盛りしていくー。


藤吉になった愛梨から色々アドバイスを受けながら、

愛梨の身体で、色々なことに挑戦していく愛梨(藤吉)ー。


しかし、藤吉になった愛梨が、突然自宅で倒れてしまい

救急車で運ばれる騒動にー…


★前回はこちら↓★

<入れ替わり>孫娘は看板娘③~試行錯誤~

夏休みを利用して、遊びに来ていた孫娘の愛梨に頼み込みー 1週間だけ入れ替わった状態でお店に立たせてもらうことになった藤吉ー。 愛梨の身体で、なんとか商売を繁盛させようと奔走するも、 つい胸を揉んでしまい、さらにはその光景を常連客に見られてしまい、 藤吉になった愛梨に報告されてしまうー。 気まずい雰囲気...

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


救急車で病院に運び込まれた藤吉(愛梨)は、

すぐに手術室に運び込まれたー


「せ、先生ー…あ、愛梨に…愛梨の身に何が!」

愛梨(藤吉)は思わずそう叫ぶー。


「ーーえー…えっと、」

病院の担当者が戸惑っているのを見て

妻の佳代子は、表情を歪めながら

「ーすみません。妻の佳代子ですー。

 こちらが、孫娘の愛梨ー」と、

病院の担当者にではなく、愛梨になった藤吉に

”今、あんたは愛梨ちゃんの身体でしょ”ということを

思い出させるために、そう言葉を口にするー


「あー…えーーーお、おじいちゃんは、

 おじいちゃんは!」


愛梨(藤吉)が慌てた様子で言うー。


すると、病院の担当者は、

神妙な面持ちで答えたー。


その表情はー

”言葉を聞く前から”

あまり良くない状況だと言うことは、安易に

想像することができてしまうー


そんな、表情だったー。


「ーーーーーー」

担当者はようやく重い口を開き、

藤吉の身体に何が起きたかを伝えるー。


「ーー脳出血ー…」

愛梨(藤吉)は表情を歪めるー


藤吉は、元々高血圧で、

しかも、それなりに高齢であるために、

”いつ”それが起きてもおかしくない状況ではあったー


年齢を重ねれば重ねるほど、人間、あらゆるリスクが

高まっていくー。

藤吉の身体もそうー。


入れ替わったこと自体が何か引き金になった可能性も0では

なかったが、今回のようなケースの場合

”たまたま”藤吉の身体にそういう異変が起きるタイミングで

不運にも入れ替わってしまっていたー


「ーーー…それで、愛ーー…いや、おじいちゃんは

 助かるんですかー?」


愛梨(藤吉)が険しい表情でそう言葉を口にすると、

担当者は「率直に言いますとー」と、

藤吉の身体が”危篤”であるように告げたー。


この数時間が山でありー、

大切な人を呼ぶのであれば、できるだけ早い方がいい、と、

愛梨(藤吉)と佳代子に説明するー


「ーそ…そんなー」

愛梨(藤吉)は呆然としたー。


もう、十分長生きしたー。

藤吉本人は、常々、そう思っていたー。

もしも、お迎えが来ることがあれば、

その時は、それが天命であると、受け入れる覚悟はできていたー。


しかし、よりによってー

たったー、”たったの1週間”

入れ替わっているそのタイミングでー

こんなことになってしまうなんてー


病院の担当者が頭を下げて、危篤状態の藤吉(愛梨)のいる

部屋へと戻っていくー。


「ーーー…ど、どうするんだいー…!

 あんたが、あんたがこんなことするから!」

妻の佳代子は叫ぶー。


愛梨(藤吉)は、放心状態で、藤吉(愛梨)が

運び込まれて、現在も懸命の治療が行われている手術室を見つめるー。


「ーーーー……」

愛梨(藤吉)は、自分の綺麗な手を見つめるー。


奪ってしまったー

大事な孫娘の人生をー、身体をー…


「ーーー……」

愛梨(藤吉)は瞳を震わせながら、

手術室と、自分の手を繰り返し、交互に見つめるー


「ーーなんとか言いなさいな!」

佳代子が、放心状態の愛梨(藤吉)のほうを見て叫ぶー。


”孫娘が危篤状態ー”

そんなことに立ち会うことになるなんてー。


”ふつう”であれば、

祖父である自分より、孫娘である愛梨が”先に逝く”なんてこと、

あってはならないー


先に”逝く”べきなのは自分であり、愛梨ではないー。


それもーー

事故や事件に巻き込まれて命を落とすわけでもなくー

まるで”本来死ぬはずだった自分の身代わり”にするかのようなー

そんな、死なせ方をしてしまうことになるなんてー


愛梨(藤吉)は目に涙を浮かべながらー

藤吉(愛梨)の無事を祈るー


そしてー

妻の佳代子に何も言わず、突然病院から逃げ出すように

走り始めたー


「ーちょっと!あんた!

 愛梨ちゃんを見殺しにするのかい!?ちょっと!」

佳代子が叫ぶー。


しかし、そんな佳代子の叫び声も無視して、

愛梨(藤吉)は必死に走ったー


”わしの人生で、もう一度こんなに走ることができるなんてー”

愛梨(藤吉)はそんな風に思いながら

髪を振り乱し、スカートの中が見えることも何も気にしないままー、

全力で走ったー


「はぁっ…はぁっー」

愛梨の口から、苦しそうな吐息が漏れるー


その吐息がー

今、まさに”危篤状態”の愛梨の苦しみのように、

聞こえてきて、罪悪感を噛みしめながら

なおも、愛梨(藤吉)は走るー。


「ーーーーーはぁっ…はぁっ…はぁっー」

あまりの全力疾走にー

愛梨の身体の体力が持たず、息切れして、

途中で立ち止まるー。


しかし、それでも、歯を食いしばってー

愛梨(藤吉)は再び走り出すー。


そしてー

愛梨(藤吉)は、逃げ帰るようにして、

店舗兼自宅へと舞い戻ったー。


はぁはぁ、と額から汗を流しながらー

愛梨(藤吉)は、自宅で膝をついたー。


「ーーーーーはぁ…はぁ…」

”数秒”だっただろうかー。

数秒間、家で膝をついたまま何かを考えた

愛梨(藤吉)は再び、すぐに”目的”のために走り始めたー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ーーー」


病院では、藤吉(愛梨)が、

間もなく息を引き取ろうとしていたー。


もう意識は戻らないだろうーと。


あと何時間ー

いや、あと数分ー?

それとも、あと数秒ー?


藤吉(愛梨)の命の灯火は、今、まさに消え去ろうとしていたー


「ーー何てことするんだいー…」

藤吉の妻・佳代子は

藤吉(愛梨)の手を握りしめながら、

何度も何度も歯ぎしりをするー。


「ーーあんた、見損なったよー」


孫娘である愛梨の身体を奪い、

その上、病院から逃げ出した愛梨(藤吉)ー


自分の孫娘の身体を奪って、生きながらえようなんてー。


苦しそうにー

どんどん生気を失っていく藤吉(愛梨)を見て、

佳代子は目から涙をボロボロとこぼすー。


”孫娘”の死をこんな形で見たくなかったー

どうして、こんなー

こんなことにー。


”もう限界ー”

誰の目から見ても、それは明らかー。


藤吉(愛梨)はーーー

そのままーーー


・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「へへへ…お嬢ちゃん可愛いねぇ

 そんなに慌てて、どうしたのかなぁ?」


一方ー、

一度帰宅して、家から飛び出した愛梨(藤吉)は、

チャラそうな男たちに絡まれていたー


”可愛い”雰囲気の愛梨を見つけて、

絡んできたのだー


「ーーー俺たちと遊ぼうぜー?」

チャラそうな男三人組ー。


だがー

愛梨(藤吉)にはー

こんな人たちに構っている時間は

もうなかったー


「ーーーどいて」

愛梨(藤吉)が男たちを睨みつけるー。


「ーあ?」

男の一人が不機嫌そうに愛梨(藤吉)を見つめるー。


しかしー、

愛梨(藤吉)は大声で叫んだー


「どけって言ってんだよ!」

若い頃以来だろうかー。

こんなに怒りを露わにしたのはー。


愛梨(藤吉)は、愛梨の鬼の形相に呆然とする男たちを

無視してそのまま走り続けたー。


そして、愛梨(藤吉)はたどり着いたー。


「ーーー!?」

病室で、今、まさに最後を迎えようとしていた

藤吉(愛梨)ー。


それを涙ながらに見守っていた佳代子が

驚いて振り返るー。


愛梨(藤吉)が、

真っ赤な顔で汗を流し、息を切らしながら

病室に駆け込んできたのだー


「あ、あんたー何をー」

佳代子はそこまで言うと、愛梨(藤吉)の手に、

”壺”が握られているのに気づいたー


”入れ替わりの秘薬”が入っている壺ー


それは、つまりー


「ーー部屋から、出てー」

愛梨(藤吉)が叫ぶー


佳代子と医師が戸惑うー。

だが、佳代子は、愛梨(藤吉)が何をするつもりなのか理解しー

「ほんの少しでいいのでー…孫がおじいちゃんと二人きりに

 なりたいみたいです」と、医師に告げるー。


医師が承諾し外に出て行くと、佳代子は

愛梨(藤吉)のほうを振り返ったー


「あんたー…入れ替わって、自分が死ぬつもりかいー?」

とー。


「ーーー」

愛梨(藤吉)は少しだけ寂しそうに頷いたー


「だって、これはわしの身体じゃからー。

 死ぬのは、わしだからー

 愛梨を代わりに死なせるわけにはいかんじゃろ?


 だからー

 これを取ってきたんじゃー」


愛梨(藤吉)が入れ替わりの秘薬が入った壺を

手にしながら笑うー。


愛梨(藤吉)は病院から逃げ出したのではなく

これを取りに、家に戻って、また病院に戻ってきたのだったー


「ーーあんたー……」

佳代子が、涙目でそう言うと、

愛梨(藤吉)は少しだけ苦笑いしたー


「でもー、実はー数秒、迷ったんじゃー」

愛梨(藤吉)は言うー。


家に戻った時ー

”ほんの少しだけ”迷ったー


”このまま”いれば、また何十年も生きることができるー、

とー


ほんの少しだけ、”悪魔のささやき”に負けそうになったー


たった数秒だけど、そんな考えが浮かんでしまったー


「ーわしは、やっぱダメじゃなー」

愛梨(藤吉)は自虐的に笑うと、

佳代子は「そんなことないー。あんたはちゃんと戻ってきたじゃない」

と、言い放つー。


その言葉に、愛梨(藤吉)は

「今までありがとうなー」と、佳代子に伝えるー。


そしてー愛梨に対しての言葉も、

佳代子に伝えー、伝言をお願いしたー


「ーわしは幸せじゃー」

壺を手にしたまま、愛梨(藤吉)は呟くー


「だってー

 死ぬ瞬間ー、こんなに元気にー

 こんなに、ハッキリと大事な人に言葉を

 伝えられたんじゃからー」


愛梨(藤吉)はそれだけ言うと、

佳代子に今一度感謝の言葉を口にして、

病室の外に出るように促したー。


「ーー愛梨ー…ありがとうなー」

愛梨(藤吉)はそう呟くと、藤吉(愛梨)が死んでしまう前にー

入れ替わりの秘薬が入った壺を開きー、

煙が充満するのを待ったー


少しだけ、拳をぎゅっと握りしめる愛梨(藤吉)ー


再び入れ替わって、自分の身体に戻れば

藤吉は死ぬー。

それが分かっていて戻るー。


それが、”怖くない”はずはなかったー。

戻れば、死ぬのだー


意識のハッキリした状態で

”わしは今から死ぬ”なんて、思うことー


それが、自分の人生の終わりだとは思わなかったー


けれどー

もう、覚悟はできているー。


「ー最後に、若い身体で過ごせてー楽しかったー」


人生に悔いはないー?

いや、あるー。

まだ、やりたいことはあったー


でも、悔いを満足が上回れば、それでいいー。


悔いはあるー

でも、満足だー。


やがてー

煙は充満しー、


「ーーー!!!」

愛梨が、愛梨の身体に戻り、意識を取り戻すー


「ーお、おじいちゃー……」

愛梨は、”自分が死の間際”にいたことを朧気に覚えていて、

すぐに藤吉のほうを見るー


藤吉は、今、まさに死を迎えようとしていたー


「おじいちゃん!」

愛梨が、そう叫ぶも、藤吉は既に返事をすることはできないー。


けれどー

最後に、呼びかけに応じるかのように、

もう意識のない藤吉の口元が少しだけ動きー、

ありがとう、と呟いたー。


・・・・・・・・・・・・・・


「ーーーでも意外だったなぁ~

 おばあちゃんが、お店を続けるなんてー」


冬休みー。

愛梨がおばあちゃんの家に遊びに来た際に

そう呟くー


「ーあの人が大事にしていた店だからねー

 いつまで続けられるか分からないけど、

 できるところまでやってあげよう、ってさ」


佳代子がそう呟くー。


夫であった藤吉の死に、

平澤商店を続けることには良い感情は持っていなかった

佳代子の考えも変わりー、

今は自分の人生が続く限りは、藤吉が守ろうとしたこの店をー

そして、孫の英輔がもしも継ぎたいということであれば

その時まで、店を守っていく決意を固めたのだったー。


「ーーー…わたしも、できることは何でも手伝うからねー!」

愛梨は笑いながら、”このお店の看板娘として!”と、呟くー。


「ーーーーー」

店内を見回す愛梨ー。


店内には、あの日から、写真が飾られているー。

あの夏ー最後に撮影した愛梨と、おじいちゃんとおばあちゃんの写真ー。


そんな写真を見つめながら愛梨は

優しく微笑むと、

「ーじゃあ、久しぶりにお店の手伝いしようかな~」と、

祖父の佳代子に対して言い放ったー



おわり


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


コメント


孫娘は看板娘の最終回でした~!


ちゃんと、中身は戻ってますから

安心してくださいネ~笑

実は間に合わずに、おじいちゃんが愛梨のフリをし続けている…

なんてことは、今回は起きてないデス~☆


ここまでお読み下さりありがとうございました~!

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