<憑依>タイセツナトモダチ③~怨念~ (Pixiv Fanbox)
Content
「ねぇ、ナナちゃんー
あのね、
わたし、人形のナナちゃんが好きなの!
人形の姿のナナちゃんが!
だから、わたしの大好きなナナちゃんに戻ってほしいなー
あの人形の中に、戻ってほしいなー」
紗耶香は、人形・ナナちゃんに憑依されて乗っ取られている
親友の愛海に向かってそう言い放ったー
”愛海に憑依した状態のナナちゃん”よりも、
”本来の人形のナナちゃんのほうが好き”
そう、おだてることで、ナナちゃんに愛海の身体から
出て行ってもらい、
人形の身体に戻そうとしているのだー。
「--うふふふふふ~
紗耶香ちゃんにそう言われると嬉しい!
わたし、元の身体に戻るね!」
愛海が嬉しそうに言うー。
そして、棚の上に置かれた人形ー
”ナナちゃん”の方を向いて、紗耶香に背を向ける愛海ー。
「---」
紗耶香は、人形の方を見つめるー
”人形に意思がある”なんて信じられないー
確かに、人形には意識が宿るー
みたいなお話は聞いたことがあるし、
紗耶香も、そういうシチュエーションの
ホラー少女漫画を読んだことがあるー。
でもー
まさか、そんなことが現実に起こるなんて…。
人形・ナナちゃんには、意識が存在していて、
その意識が今、親友の愛海に憑依し、
愛海を完全に乗っ取っているー
さすがに日を跨いで、愛海が
”ドッキリ”を仕掛けるわけがないし、
自宅にも帰らず、大学にも来ないなんてことは、ありえないー
それにー
紗耶香は、昨日のことを思い出すー。
愛海の目が赤く光りー
愛海の髪が逆立っていた、悪夢のような光景ー。
人形の怨念に、憑りつかれたかのような、
愛海の異変ー。
紗耶香は、”現実で、人形に意識なんて宿っているはずがない”と
思いながらも、これまでに起きた数々の出来事から、
”人形・ナナちゃんには意識が元々宿っていて、
その意識が、愛海を乗っ取っている”という今の状況を
信じざるを得なかったー。
「--ーー(でも…)」
紗耶香は笑みを浮かべるー
愛海に憑依しているナナちゃんは
”人形”に戻ろうとしているー。
紗耶香が煽てたことによって、
ご機嫌そうに、愛海は人形を手にしているー。
”ナナちゃんが人形に戻ったらー
ナナちゃんの人形を燃やす”
「(小さいころ、遊んでいたとか、よく覚えてないけど…
気持ち悪いし、不気味なのよ!)」
紗耶香は、相変わらず小さいころに自分が
”ナナちゃん”と遊んでいた時のことは
思い出せなかったし、
思い出どころか、怒りすら感じていたー。
今の紗耶香から見れば
ナナちゃんは不気味でしかないし、
親友の愛海の身体を乗っ取って好き放題しているなんて
許せないー
小さいころはどうだったか、知らないけれどー
今の紗耶香にとって
ナナちゃんは”親友”などではなく、
ただの、”敵”だー。
「--(早く、元の身体に戻りなさいー)」
紗耶香は、思うー
「-(”親友”のわたしに燃やされるんだから…ありがたく思うことね)」
愛海が、紗耶香に背を向けたまま口を開いたー
その手には人形が握られているー
”ナナちゃん”だー。
「--わたし、お人形さんに戻るね」
愛海が呟くー
だがー
紗耶香は、知らないー
紗耶香に背を向けている愛海の顔はー
笑ってなどいないことにー
「--うん!やっぱり、ナナちゃんはナナちゃんじゃなくっちゃ!」
紗耶香の言葉に、
愛海は「紗耶香ちゃんってば~!」と照れ臭そうに声を出すとー
「じゃあ、元の身体に戻るね」
と、呟いたー
愛海が「ぁ…」と、うめき声をあげて、その場に倒れるー。
”ナナちゃん”が愛海の身体から抜け出してー
人形の身体に戻ったー。
愛海は倒れたままー
愛海のことも心配だったがー
まずは”ナナちゃん”だー。
昨日のように、怨念みたいのを発されてしまうと困るしー
隙を与えれば何をされるか分からないー
ナナちゃんが油断しているうちに、
人形を破壊して、燃やすー。
「--やっぱりナナちゃん!人形の姿が似合う~~~!」
紗耶香は、そう言いながら人形を手にするとー
思いきり、ナナちゃんを壁に叩きつけたー
「--気持ち悪いのよ!!!!!!!!!!!!」
紗耶香はそう叫びながら、ナナちゃんの人形を何度も何度も
壁に叩きつけてから、思いきり床に放り投げたー。
”ナナちゃん”の人形を見ることもなく、
足で何度も何度も何度も何度も
踏みつぶすと、
紗耶香は、部屋の外にあるベランダに”ナナちゃん”の人形を
放り投げると、マッチで”ナナちゃん”に火をつけたー
「---はぁっ…はぁっ…はぁっ……」
ナナちゃんの人形に火がつくー。
「--迷惑なのよ…!
今更小さいころのことを掘り返されても…!」
紗耶香は吐き捨てるようにして、そう呟くー。
母親も言っていたし、
確かに、紗耶香自身は、小さいころ、
この”ナナちゃん”という人形と遊んでいたのだろうー。
でもーーー
誰だってー
誰だって、少なからず
”小さいころに遊んだおもちゃ”のことなんて、
忘れるものー。
紗耶香は、燃える”ナナちゃん”を見つめながら
少しだけ、寂しそうな表情を浮かべるー。
確かにー
”ナナちゃん”の立場からすればー
”友達”という言葉は嬉しかったのかもしれないー
でもーーー
「---さよなら」
紗耶香は、そう呟いたー。
他に火が燃え移らないうちに、火を消して、後始末をしないと、
と、思いながら紗耶香が燃えているナナちゃんの人形の方に
近寄ろうとしたその時だったー。
「---ひどい…」
「--!?」
紗耶香はドキッとして振り返ったー。
紗耶香の背後にはー
倒れていた愛海が、立っていたー。
フリフリしたお姫様のような服装の愛海ー
「--あ、、愛海?」
紗耶香は、愛海が意識を取り戻したのだと思ったー
だがー
「--ひどい…!やっぱり、、やっぱり紗耶香ちゃんは…
わたしを、、わたしを、、裏切るつもりだったんだ!」
愛海が叫ぶー
”紗耶香ちゃんー”
その呼び方に、紗耶香はゾッとしたー。
愛海は、紗耶香を”紗耶香ちゃん”とは呼ばないー
今、目の前に立っている愛海が”紗耶香ちゃん”と
口にしたということはーー
「-ーーわたしーー
”まだ”この人間の身体から、抜け出してないよ?」
愛海が、無表情で言うー。
「え…」
紗耶香は、震えながら、愛海の方を見るー。
愛海が”ナナちゃん”の人形の火を素手で消すと、
人形を見つめながら「ひどい…」と涙をこぼすー。
「--ど、、どういう…?」
紗耶香が恐怖しながら言うと、
愛海はにっこりとほほ笑んだー
「紗耶香ちゃん、”嘘”つくとき、人の顔のほう、見ないもんね」
愛海が微笑むー。
「--!!」
紗耶香は表情を歪めたー。
「ねぇ、ナナちゃんー
あのね、
わたし、人形のナナちゃんが好きなの!
人形の姿のナナちゃんが!
だから、わたしの大好きなナナちゃんに戻ってほしいなー
あの人形の中に、戻ってほしいなー」
無意識のうちにー
紗耶香は、乗っ取られた愛海に、そう伝えたときー
愛海から目をそらしていたー
「--この人の頭の中に、
”紗耶香ちゃんが嘘をつくときは、人の目を見ない”って
記憶されてたもん!」
愛海が、笑いながら自分の頭を指さすー。
「---っ…」
紗耶香は、慌てて言い訳を考えようとするー。
「だから、わたし、”この人の身体から抜け出したふり”をして、
紗耶香ちゃんが何をするつもりなのか、確かめたの♡」
愛海が微笑みながら言うー。
「--ー」
さっきー、
愛海が倒れた時、紗耶香は、勝手に
”ナナちゃんが愛海から抜け出して人形の身体に戻った”と
思い込んでしまったー
だが、実際にはー
愛海から、ナナちゃんは抜け出しておらずー
”わざと”倒れたのだー
紗耶香が何をするか確かめためー
「---ひどいよ…紗耶香ちゃん…
友達を燃やすなんて…!
もし、わたしが、人形の身体に戻ってたら
わたし、紗耶香ちゃんに燃やされちゃうところだった」
愛海が頬を膨らませながら言うー
「--ご、、ご、、ご、、ご、、ごめん、、ごめんね…」
紗耶香は怯えながら、やっとの思いで
言葉を振り絞ったー
愛海は、穏やかな口調で微笑んでいるー
けれどー
愛海の目は赤く光っているー
”ナナちゃん”が怒っているー
紗耶香は、怯えながらー
「ごめん…もうしないから…
ナナちゃんは、、わたしの、、最高の親友…」と、
引きつった笑みで言うー。
「-うん!うれしい!♡
じゃあ、紗耶香ちゃん、何して遊ぶ~?」
愛海の目は赤く光ったままー。
紗耶香は、”恐怖”を感じながら
乗っ取られた愛海に言われるがままに
”遊んだ”
翌日ー
「--大学なんて、いかなくていいじゃん」
愛海が無邪気に笑うー。
髪型をツインテールに変えて、
さらに子供っぽい雰囲気になった愛海ー
「だ、、大学は、大学は、、行かないと…!」
紗耶香が言うと、愛海は、頬を膨らませたあとに
「わかった~」とだけ、呟いたー
大学に到着してからもー
紗耶香は、震えが止まらなかったー
”怖いー”
もはや、愛海を助けるどころではなくなっていたー
心底、”ナナちゃん”が
怖いー。
「--わたし、、どうすればいいの…?」
震える紗耶香ー。
愛海ーー
ナナちゃんに乗っ取られたままの愛海は、
思ったよりも、怒らなかったー。
それが逆に不安だったー。
どうしよう、どうしよう、と不安だけが膨らんでいくー。
彼氏の孝義が、そんな紗耶香に気づいて
「だいじょうぶか?」と、心配そうに尋ねてきた。
「え…あ、、、う、、うん…」
紗耶香は青ざめた表情でそう答えたー
「--大丈夫なんかじゃないだろ?
そんな顔色で… 一体何があったんだ?」
孝義の言葉に、紗耶香は首を振ったー
「ほ、ホントに、大丈夫だからー」
とー。
”孝義を巻き込むわけにはいかない”
そう思っての判断だったー
乗っ取られてしまった親友の愛海のように、
ナナちゃんに関わってしまったら
何をされるか、分かったものじゃないー。
♪~~~
「--」
紗耶香がスマホを手にすると、
友人の渋子からの電話だったー。
そういえば、今日は渋子を大学で見かけていないー。
「--もしもし?渋子?どうしt---
”--ナナちゃんだよ~♡”
「--!?」
電話の向こうから聞こえて来たのはーー
”愛海”の声ー
「え???」
もう一度スマホの画面を見つめるー
電話の相手は確かに”渋子”と表示されているー。
”昨日、わたしを燃やそうとしたお仕置き~!
LINEで送るから、見て~”
「--!?」
愛海の声に驚きながらも、紗耶香は慌ててLINEの
画面を見つめるー
そこにはー
渋子からのLINE-
「--ひっ!!!!!!!!!!!!!??!?!?」
そこにはーーー
無残な姿になった渋子の写真が映し出されていたー。
「---きゃああああああああああ…」
紗耶香は思わず悲鳴を上げてスマホを落としてしまうー
ガクガクと震える紗耶香ー
バラバラになった渋子の写真がスマホに表示されているー。
周囲が、紗耶香の悲鳴を聞きつけて、
紗耶香の方を見るー
紗耶香は咄嗟に「見ないで!」と叫んで、スマホを手に
走り出したー
”紗耶香ちゃんー
わたしたち、
ずぅ~っと、ずっと、友達!だよ!
でもね、紗耶香ちゃん、
嘘ついたら、わたしも怒っちゃう!♡
でも、紗耶香ちゃんはきっと悪くないんだよね!
紗耶香ちゃんの周囲にいる悪い人たちが
紗耶香ちゃんを嘘つきにしようとしてる!
紗耶香ちゃんに悪い影響を与える人たちを
わたし、みんなみんなやっつけることにしたの”
ナナちゃんの悪魔のような声が、
スマホから響くー
「---!!」
紗耶香はスマホの画面を見つめるー
”お母さん”
”お父さん”
”由愛菜”
”円佳”
”沙織さんー”
知り合いの名前や家族の名前が
次々と表示されるー
それぞれから電話ー
そして、LINE
”み~んな、やっつけたよ♡ほめてほめて”
愛海の笑い声ー
紗耶香はスマホを放り投げて、
泣き叫びながら悲鳴を上げたー
”--ぜんぶぜんぶ、紗耶香ちゃんのためなんだよ♡”
数日後ー
紗耶香は、虚ろな目で、
自分の部屋で、愛海に撫でられていたー
お姫様のような服装に
ツインテールの愛海が、
紗耶香を嬉しそうに撫でているー
紗耶香は口をぽかんと開いたままー
精神が崩壊しかけているー。
「--ずぅ~っと、ずーっと、友達、だよ♡」
愛海が笑うー
紗耶香はー
虚ろな目のまま「うん…」と答えたー
④へ続く
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コメント
次回が最終回デス~!
28日に執筆します!
今日もありがとうございました~!