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「兄ちゃん。あんた、ここの生徒さんの保護者かい?」


「……えっ?」


 不意にかけられた男性の声に、俺はハッとした。声がしたほうへと目をやると、日に焼けて褐色の肌をした中年親父が立っている。作業着姿で、首からは【冴島】という名前の彫られた木札を掛けている。服の上からでもわかる、筋肉で盛り上がった大柄な体躯。その上に収まった、額に捻り鉢巻きをした顔は厳つさを感じさせるが、どこか人懐っこい印象を与えるものだ。

 だが、その彼の顔はどこか戸惑ったような表情を浮かべている。そんな彼の頼りない顔を見た俺は、キョロキョロと辺りを見回した。


 周りに広がっているのは、綺麗にならされた濃い茶色の土のグラウンド。視線の端には、学校の校舎らしい建物が映っている。


「よーい、ドンッ!!」


 今の状況を理解できず、フワフワとした面持ちで四方八方を観察していた俺を驚かせるように、パンッという乾いた音が響き渡った。音の鳴るほうへと目を向けると、そこでは体操服姿の学生達が一斉に走り出したところだった。皆、真剣な眼差しだ。体育の授業中だろうか? しかしギャラリーの多さや、集まった面々の年齢層から察するならば、運動会かもしれない。なぜ、そんな場に結婚もしておらず子供もいない自分がいるのかわからない。隣の男性──、冴島に再び視線を戻すと、彼もまた両腕を横に広げて何事か理解できないといった様子を見せた。



***


「次はぁ~、自分に自信のない生徒たちによるぅ~、借り“者”競走になりまぁ~す」


 間延びした女子生徒のアナウンスを聞いた俺の身体は、電流が走ったようにビリビリと痺れ始めた。


「な、なんだこりゃ?! 体が動かねえっ!!」


 冴島も俺と同じように身体が動かなくなったようで、パンパンに膨れ上がった筋肉に血管を浮き上がらせ、全身から汗を噴き上がらせながら喚いている。彼以外にも、声を上げる者たちがいた。だが、そんな俺たちの声に耳を貸す人間は、この場に一人もいなかった。


 そうこうしているうちに、借り“者”競走に出場する生徒たちがトラックの中に入ってきた。一言で言えば、パッとしない面々ばかりだ。やる気があるのか無いのか覇気の無い顔をして、皆がみな、のそのそとスタート地点へと向かって歩いている。

 でっぷりとした体に陰鬱な表情を浮かべた男子生徒、ガリガリに痩せ細って生気を感じさせない女子生徒など、明らかに健康とは言い難い風貌をしているものばかりだ。そんな彼らが渋々といった感じで、定位置につくと、銃砲の音が鳴り響いてレースが始まった。


 虚ろな表情で、ダラダラと走る彼ら。そんな彼らを、動けないままの状態で眺めていると、地面に落ちていた紙を拾ったデブ男が声を発した。


「吉岡遼介(よしおかりょうすけ)さん、いませんか~?」


 俺の名前だ。彼に名前を呼ばれた瞬間、俺の身体は操り人形のようになってしまった。意思とは関係なく、ギクシャクと勝手に動き出す体。必死に抵抗しようとしたものの、俺の意思に反して体は前進していく。そして、俺の手はデブ男の手に握られてしまっていた。


「良かった~、【よしおかりょうすけ】さん。ぐふっ♥ いい身体だ~♥ 僕と一緒に来てください~」


 気色の悪い笑い声を上げた彼に手を引かれた俺は、トラック上に備え付けられた、密閉された透明の箱の中へと連れ込まれた。


「ちょっと待ってくれ! なんなんだ、君は?! 教えてくれ。これはいったいどうなってるんだ?!」


 見た目も大きさも、今となってはあまり目にしなくなった電話ボックスほどの狭い空間の中で、俺は声を大にして叫んだ。すると、デブ男は薄気味悪い笑みを浮かべながら、口を開いた。


「ふひひっ、大丈夫ですよ。痛くはありませんからね……。ほら、壁に手を当てて、その形の良いデカ尻をこっちに向けてくださいよ」


 ゾワリとするような耳障りな声に操られた俺の身体は、彼の命令通り壁に手を当て、彼のほうに向かって尻を突き出した。


 デブ男の顔が醜悪なものへと変わっていくのが、目の前のガラスに反射して、うっすらと映っている。彼はズボンとブリーフをずり下ろすと、上に着ていた体操服も脱ぎ去って、汗ばんだその裸体を俺の全身に重ね合わせた。首筋にデブ男の荒い鼻息がかかり、気持ちが悪い。息子と言ってもいいほどに年の離れた男に抱きつかれた俺の身体には鳥肌が立ち、冷や汗が流れ落ちる。


「ぬおお゛お゛あぁぁっ!!」


 突如として聞こえてきた野太い男の悲鳴に視線を向けると、そこには俺と同じように、透明のボックスに閉じ込められた褐色の肉体を持つ男性が壁に手をついていた。さっき、俺に声をかけてきた冴島だ。彼は精悍な顔を歪め、太い眉を八の字に曲げている。先ほどよりもさらに戸惑ったような表情。

 だが、その彼の股間部分はジャージを盛り上げてテントを張らせており、竿は苦しそうにもぞもぞと動いている。そんな彼の背中の中に、青白い顔をした女子生徒の上半身が沈んでいくのが見えた。それはまるで、映画やドラマでしか見たことがないような、幽霊が人の身体に憑依するかのような光景だった。


「お゛っ♥ お゛ぉっ……♥ あぁあ゛ぁっ♥♥♥」


 またも響く、地鳴りのような絶叫。股間で勃起していた肉棒はさらに反り返り、ジャージから飛び出して先走り汁を流し始める。そんな彼の身体の中へ、女子生徒の貧相な身体がズブリと呑み込まれていく。


「ふうっ……、ぐっ……♥」


 ヒゲ面を涎まみれにして、冴島が歯を食い縛って耐える中、女子生徒は容赦なくどんどんと彼の身体と融合していき、やがて二人は完全に同化してしまった。


「んああ゛ぁぁあっ♥♥」


 冴島はガッチリとした身体をビクビクと震わせると、ガチガチに硬くなったチンポを天高く突き上げ、勢いよく射精した。バチャバチャという、ガラスに精液がぶつかる音が聞こえる。


 二人の人間が、くっついてひとつになってしまった。そんな非現実な出来事を目の当たりにした俺は、恐怖に震えた。


(なんなんだ、あれは?! これは夢なのか? なんでこんなことに……?!)


 気が狂いそうになった俺は、彼らから目を背け、反対方向を向いた。しかし、そちらでも同じような光景が繰り広げられていた。ガチムチの体育教師。その彼の肉体の中に、全裸になって包茎チンポを勃起させたガリガリの男子生徒が、全身を沈み込ませている。


「うごぉぉぉ!! やめっ……、俺の、俺の体がぁ……やめ゛ろぉぉぉ!」


 獣のように野太い声で彼は叫んだが、その悲鳴は虚しくグラウンド中に響き渡るだけだった。そして男子生徒の体は、みるみるうちに彼の体内に吸い込まれるように消えていった。


「い、嫌だぁ……! 誰か……、誰か助けてくれえぇぇ!!」


 そんなことを口にしても、誰も助けてはくれないだろう。だが分かっていても、叫ばずにはいられなかった。必死に抵抗する俺の目に映っていない場所でも、男女問わず様々な人々が、次々とお互いの身を重ね合い、融合していってしまっているのを否応なく感じる。そんな俺を嘲笑うように、目の前のガラスが鏡に変わり、俺の肉体の中に太った男子生徒が侵入してくるのが見えた。


「んぎっ♥♥」


 生温い湯のような他人の体温が、俺の身体に入り込んでくる。その感覚は不快極まりないもので、思わず吐き気をもよおすほどだった。だが、それは俺の頭の中だけの話で、俺の肉体は他人と同化することに悦楽を見出し、快感に打ち震えていた。太ったガキの手足が俺の丸太のように鍛え上げた手足に、醜く弛んだガキの腹が、苦労して絞り込んだ俺のシックスパックに沈んでいく。そして俺の背中には、贅肉でムチムチに膨れ上がったガキの乳房が押し付けられ、ドプンという音とともに、俺の体の奥深くに温かいものが注がれ始めた。


 ガキの粗末な包茎チンポから放たれた、青臭い精液が、融合した俺の体内に放出されている。その行為に俺の全身は粟立ち、全力で拒絶しようとして、激しく身悶えた。しかし、そんなことは無意味だった。息も絶え絶えに鏡を凝視していた俺の目には、ニヤニヤと笑みを浮かべたデブ男が俺の全身を堪能しながら、俺の身体の中に入り込んでいる姿が映っていた。


「ふひひっ、吉岡さん……。僕とひとつになりましょうね……♥」


 デブ男のそんな気持ちの悪いセリフを最後に、俺たちはひとつになった──。




「ぬあ゙あ゙あぁ!!!」


 いつの間にか意識を失っていた俺は、自分の叫び声で目を覚ました。どうやら、まだ借り“者”競走の最中らしい。俺は……、それにデブ男はどうなったんだ?

 手を広げて動かしてみたが、自分の思い通りに動く。四方を覆っていたガラスの箱は、撤去されたのかなくなっていた。先ほどまでの出来事は、酷い悪夢だったのか……?


 とにかくこの状況を打破するには、ゴールするしかない──。


 訳がわからないままだというのに、なぜかそう確信した俺は、ヨタヨタとおぼつかない足取りでトラックを走り出した。まるで二日酔いにでもなったみたいに、足元がふわふわしている。そんな俺の目に、再び裏返しになった白い紙が飛び込んできた。これを拾うと、また受け入れがたいような内容の指令が書かれていて、実行しなければならないのだろうか?


 不安に駆られながらも、朦朧とした意識の中それを拾い上げると、そこに書かれていた内容は──。


『隣のレーンの走者と、濃厚なキスをする』


「キッ、キ、キッス……!? はぁっ?!」


 一瞬、意味がわからなかった。見たくない。見たくはないが、俺の首は反抗するように曲がり、隣を見た。そこには、さっき俺のすぐ近くで、女子生徒と肉体を融合させていた筋肉モリモリのヒゲ面の男が、うっとりとした表情で立っていた。

 まさか、この男と唇を重ねろということなのか? 冗談じゃない。こんな汗臭くてむさ苦しいオッサンなんかと、キスなんてできるわけがない。ジムで鍛えている俺とは違って、現場仕事で真っ黒に焼けた、ゴツゴツした肌。全身が筋肉の塊のようでありながら、脂肪がその上をほどよく覆っている。脂ぎっていて、テカついた顔。その口元からは、煙草の匂いが混じった口臭がプンと漂ってくる。

 少しずつ、俺たちの顔が近づいていく。ぐっ……、ヤニ臭いっ! 俺が、こんなオッサンとキス? ふざけるな、有り得ない! 絶対に嫌だっ──。


 そんな思いで頭の中をいっぱいにさせながら……、俺は冴島の唇に、自分の唇を寄せてキスをした。互いの分厚い唇が重なり合い、舌と唾液が絡み合う。俺の身体は、心とは裏腹に悦びに満ち溢れていた。女とのキスでは味わえないような、乱暴で力強い接吻。鼻から息を吸うと、俺の肺の中にはオッサンのタバコ臭い口臭が充満していく。


「ん゙むゔぅっ!!」


 俺はたまらず、くぐもった声を上げた。そんな俺の頭の後ろに手を回した彼は、力強く俺を引き寄せた。互いの分厚い胸板が擦れ合い、筋肉同士が圧迫し合う。口の中に流し込まれる唾液をゴクリと飲み込むと、何とも言えない風味が鼻へと抜けていった。それはまるで甘美な蜜のようで──。


「ぷふぅっ……♥」


 思わず漏れた俺の声に、冴島は興奮した様子で、さらに強く抱きしめてきた。鼻息が荒くなり、口の中で動き回る彼の舌の動きが激しくなる。そして次の瞬間、俺は股間に熱いものを感じた。俺とのキスで興奮した彼の硬くなったチンポが、ジャージ越しに触れたのだ。以前の俺なら、その事実に気味悪がって彼を突き放していただろう。しかし、今の俺にとって彼のその反応は、俺を喜ばせるものでしかなかった。下品な表情を浮かべた厳つい顔の男とのキスが、俺の全身を痺れさせる。その快楽に溺れてしまいそうになったとき、ようやく彼の唇から俺は解放された。


「んあ……♥」


 俺の体格には到底見合わない、甘い吐息。それを聞いた冴島は、ニヤリと笑うと、そのまま走り去っていった。俺も慌ててその後を追いかける。これが他者との競争だということも忘れ、ただ走ることだけに必死だった。目の前を駆ける彼のたわわな尻が、揺れている。あれを揉みしだいたら、どんな感触がするのだろうか? あの太い首筋に吸い付いたら、どんな感触が味わえるのだろうか? 俺のチンポで、彼のケツの穴をめちゃくちゃにしてやりたい──。


 いつしか俺の頭の中は、彼のことでいっぱいになっていた。




 とは言え、肝心なのはゴールテープを一番に切ることだ。俺より先に走っていたはずの冴島は、もうかなり前のほうにいる。このままでは、負けてしまう。俺は必死になって、丸太のように太い手足を懸命に動かして走った。


「うおぉぉぉ……って、どわぁっ!!」


 無心になって走っていた俺は、突如として障害物に激突して尻もちをついてしまった。何が起きたのかわからず、呆然と上を見上げると、冴島が手に持った紙を俺のほうに突きつけていた。


『今すぐ全裸になり、あとから来た人間と濃厚なセックスをする』


 その紙には、そう書かれていた。


(なんだよ、これ……。セックスって……、あのセックスだろ?! なんで俺が、そんなことを……?)


 狂ってる。頭がおかしくなりそうだ。なんで……、なにが悲しくて、この俺がこんなガチムチ親父とセックスなんてしなくちゃならないんだ──。

 だが、いくら嘆いても、命令されたことは実行しなければならない。それがこの競走のルールなのだから……。


「……クソッ!」


 俺は悪態をつきながらも、その場で服を脱ぎ捨て、パンツ一丁になった。そして、恥ずかしい気持ちを抑えつつ、同じように素肌を晒した冴島のもとに歩み寄ると、躊躇することなく抱きついてキスをし、互いの肉棒を擦りつけ合った。


「はぁ……♥ に、兄ちゃん、俺たちどうなってんだよぉ……? 俺たち男だろ? なんで、男同士でチンポ擦り合わせちまってんだよぉ……」


「うぐ……、俺にもわかりません。とにかく、やめましょうよ、こんなことっ……。生温かくて気持ち悪い……」


 困惑しながらも耳元に生温かい息を吹きかける男に、嫌悪感で背筋がゾクっとする。気持ち悪くて気持ち悪くてしかたがないのに、彼の野太い囁き声と熱い吐息が俺の身体を興奮させ、硬く勃起したチンポからは先走り汁が溢れ出す。嫌だ、こんな親父に犯されるなんて……。そう俺が考えていると、不意に冴島が仰向けに倒れた。地面に横たわった彼自身も、何が起こったのか不思議そうな顔をしている。


「あ? 俺ぁなんで……、どうなってんだ? あ、そうか。さっきまで【あたし】は女だったから、おチンポ突っ込まれる側だったんだよな……。それなら、俺が挿れられる側にならないとな……」


 そう言うと彼は、仰向けに寝転んで足をガバッと開いたまま両手で膝の裏を抱え込み、ケツの穴を見せつけるようにしながら俺に向かって微笑んだ。




──パンッパンッパンッ……


 カンカン照りの蒼天の下、熱さで蜃気楼の漂うトラックに響き渡るのは、肉と肉がぶつかり合う音と、中年男たちの野太い喘ぎ声。そしてその光景には不釣り合いな、運動会向けにアレンジされた今年の流行ソング──。


 俺と冴島は、汗でヌラヌラと光る全身を密着させながら、音楽に合わせて互いの肉体を重ね合わせていた。その周囲でも、俺とまったく同じようなたくましい体格の男たちが、マットの上で汗だくになりながら絡み合っている。


「んはっ……♥ そうっ、そこぉっ……♥」


 褐色の肌をしたゴツイ男たちが、土埃まみれになりながら激しくセックスをし、あまつさえ「そこ」とか「もっと強く」とか言っているのを見ると吐き気を覚える。そしてそれ以上に気持ち悪いのは、そんな彼らの乱れ合う痴態を目にして興奮している俺自身だった。

 なぜ俺は、こんなことを続けているんだろう? もうゴールしなきゃならないのに……。いや、そもそもどうしてゴールしなきゃいけないんだ?



 いくら考えても答えを出せないまま、全裸で汗まみれになりながら、男同士で絡み合うことに没頭していた。最初は嫌で嫌でしかたがなかったというのに、そのうち不思議な感覚が胸の奥から湧き上がり、嫌悪感とは別の何かが俺の中で目覚め始めていた。


「はぁっ♥ そこっ♥ もっと強く突いてぇっ♥ 【あたし】のケツマンコめちゃくちゃにして、奥までハメてくれよぉっ♥♥」


 冴島が媚びるような声音でそんなことを叫び出し、我慢できなくなったかのようにデカい上半身を捩じらせ、めくれ上がったケツ穴を見せつけてくる。その様子を見ていた周囲からは歓声が上がり、俺の中に入り込んでいる【誰か】の興奮も最高潮に達しているようだった。


「んっ……♥ はぁぅん♥♥」


 俺の唇から甘い吐息を振りまきながら、【誰か】はゴツイ中年親父のケツに自分の剛直を押し込むと、激しく腰を振り始めた。汗で輝く身体がぶつかり合い、その雫が周囲に飛び散っていく。女とのセックスのときとは比ではないレベルの穴の柔らかさと滑りの良さに、俺はもうメロメロになっていた。


「お゛っ♥ お゛ぉっ♥♥ すげぇ……っ♥♥」


 ケツ穴をゴリゴリと抉る自分のデカマラのカリ首が絡め取られる感覚に、全身が震えるほどの快感を覚えながら、俺は一心不乱にチンポを穴の中へと叩き付けた。亀頭から先走り汁がドバドバと溢れ出しているのが自分でもわかるほどに興奮しているというのに、いくらチンポを擦りつけても射精することができない。俺の中の【誰か】がストップをかけているからだ。


「あ゛っ♥ んぎぃっ♥♥」


 肉同士がぶつかり合う音と、冴島の野太い喘ぎ声に混じり、俺の口からも堪え切れない声が漏れる。互いにもう完全にケツ穴セックスに夢中になっているというのに、勝手に動く俺の身体を支配した【誰か】は、まだまだ満足してくれそうにない。延々と襲い掛かる快楽と背徳感。臭くてたまらないヤニ臭いオッサンの舌と唾液を貪りながら、俺は必死に同性の尻の穴の中に自分の肉棒を突き刺し、腰を振り続けた。


「あっ……♥ もっと強くぅ……っ♥♥」


 冴島は目に涙を浮かべながら、甘えた声でそんなことを言ってくる。なんてエロイんだ。真っ黒に日焼けした褐色の肌。汗だくの胸板には鬱蒼と胸毛が生え揃い、同じように密林のような腋の下からはムワッと熱気が立ち上っている。そんな雄臭い肉体を持った中年親父が、まるで女みたいに媚びた声を出して俺を求めているのだ。その事実に頭がくらくらしてくる。


「あ゛っ♥ あ゛んっ♥ あ゛ぁぁああっ♥♥」


 野太い喘ぎ声を上げながら、一心不乱にチンポを求め続ける彼の全身からは、汗が噴き出すように流れ出し、褐色の全身をテカらせている。それがまた艶めかしくて愛おしくて、俺は相手が男であることも忘れてむしゃぶりつくように舌を這わせた。


──女とのセックス?


 正直にいって、平均的な男どもよりも異性と肉体関係をもってきたという自負がある俺だが、今味わっている快感とは比べ物にならない。そう、これはそんな生易しいものではないのだ。もっと激しくて官能的で……、それでいて最高にキモチイイ──!!


「俺っ……、もう……♥♥」


「兄ちゃん、俺もだっ! 一緒にイこうぜっ♥♥ イぐぅっ」


 そう叫びながら冴島が俺に抱きつき、尻穴を締め上げながらブルリと身体を震わせた。俺の肉体も負けじと、睾丸の中から精子を排出しようと激しく痙攣する。そして次の瞬間、彼のケツ穴の中で、俺のチンポが猛り狂った。


「ん゛っ♥ イ゛ぐ……♥♥ あ゛ぁぁあああぁあ~~~っっ♥♥」


 尿道を駆け抜けた精液が勢いよく飛び出していく感覚。それは、今までに感じたことのないような凄まじいものだった。背中が弓なりに反り返り、足が勝手にピンと伸びる。全身がビクビクと痙攣し、射精が止まらない。あまりの気持ちよさに意識が飛びそうになる。


「お゛っ♥ お゛ぉっ♥♥」


 俺の身体を強く抱きしめながら、低い唸り声を上げるマッチョな親父。厳つい顔は真っ赤に紅潮し、大量の汗が筋となって流れ落ちている。口の端からは唾液が垂れ、その目は虚ろに宙を彷徨っていた。可愛すぎる。厳つい筋肉野郎の無様なイキ顔を目の当たりにした俺の胸が、キュンキュンと高鳴っていく。


「あぁ……♥ すげぇ良かったぜ、兄ちゃん♥」


 中年男同士の汗だくセックスに耽り終えた彼はその場に倒れ込むと、そのまま俺のほうに抱きつき、チュッチュッと唇に吸い付いてきた。そしてそれに応えるように俺が舌を絡ませると、彼は「んっ……♥♥」と色っぽい鼻声を上げて身を捩じらせた。




 なんだか酷く長いレースに感じたこの競争も、ようやくゴールが見えてきた。トラックの反対側では、さっきよりも多くの男たちが肉体を重ね合っている。きっと彼らも俺たちと同じように、【誰か】に身体への侵入を許し、快楽を貪らされているのだろう。


「んっ……♥」


 俺の腋の下に顔を埋めた冴島が、汗で塩辛くなったそこをレロレロと舐め回してくる。そんな汚い場所を舐められて気持ち悪いはずなのに、俺はなぜか興奮していた。今日初めて会ったばかりの親父なんて、見捨ててゴールに向かってしまえばいい。そんなことを思ったりもしたし、相手からそうされるのも覚悟していた。でもどうしてだろう。今はもう、互いに相手から離れられなくなっていた。彼のことが無性に愛しくなってしまっていたのだ。俺たちはヨタヨタと二人三脚をするようにしながらジリジリと前に歩を進め、とうとうゴールテープを切った。


「はぁ……♥ はぁ……♥♥」


 これで、この苦痛とも快楽ともつかないレースから解放される。俺たちはゴールと同時に、その祝いとばかりに唇を重ね合わせた。そして、トラックの反対側で絡み合っている男たちと同じように、汗だくの身体を密着させあいながら抱き合った。互いの鼓動が、張り付いた肌を通してうるさいほどに伝わってくる。身体の節々も痛みはじめているし、筋肉には乳酸が溜まりすぎてギシギシいっている。正直、もうこれ以上動きたくないとすら思える状態だ。だが、俺たちはゴールしたんだ。きっと、この悪夢もこれで終わるはず──。


 そのとき、再び女子生徒の気だるげなアナウンスが辺り一帯に響き渡った。


「ゴールした方々、おめでとうございます~。あなた方はゴールした報酬として、憑依した生徒に永遠に肉体を借りられた状態になりま~す。……うふふ、それじゃぁお疲れさまでした~」


 そのアナウンスが終わった瞬間、全身にビキビキと激痛が走った。思わず呻き声を上げてしまうほどの痛みに脳が支配され、脂汗が全身から噴き出してくる。それは隣にいた冴島も同じようで、声を漏らしながら、もがき苦しんでいる。痛みのあまり意識が朦朧としてきた頃、ようやく痛みを感じなくなると、身体が内側から何者かに乗っ取られていくのを感じた。筋肉が──、神経が痺れ、ジワジワと感覚が失われる恐怖に支配されながら、俺はこれまでで一番チンポを硬くしつつ意識を失った。



***


「うひっ……♥ 今日からこの身体が僕の……、いや【俺】のモノか……♥♥」


 全身に甘い快楽が迸る。あぁ、気持ちいい……。なんていい気分なんだろう……♥


 僕は自分の新しい肉体を抱きしめながら、チンポの先から精液を垂れ流した。さっきまで苦痛を覚えるほどだった肉体的な痛みや疲労感など、まるで気にならない。むしろ、他人の肉体を奪い取ったのだという実感が湧いてきて、興奮が抑えられない。この身体の主導権は、本来の【吉岡遼介】から僕へと移った。僕は今日から【俺】だ。今までこの男が持っていた記憶や感覚は、俺がすべて受け継いだ。


「う~ん、素晴らしい肉体だ……。デカくて、ムキムキで、それでいてエロく締まっていて……」


 思わず感嘆の吐息が漏れてしまう。年齢は倍以上になってしまったが、そんなことなどまったく問題にならないほど満足いく肉体だ。引き締まった全身に浮かぶ汗が艶めかし過ぎる。そして、この筋肉の盛り上がりが……、特にこの胸筋なんかは最高だ。分厚い大胸筋の上にポツンと存在する乳首も、なんとも愛らしい。俺は胸を揉みしだきつつ乳首も弄りながら、ゴールに置かれた鏡に新しい自分の姿を映した。


「顔も……、悪くないじゃないか♥」


 鏡に映った顔をじっくりと眺めながら呟く。目つきは悪いが、引き締まった顔立ちをしていると思う。学生時代も女子からそこそこ人気があったくらいだしな。おっと、この肉体の以前の記憶も蘇ってきているみたいだ。【吉岡遼介】は高校時代、ラグビー部に所属していたらしい。身長は178cmとそこまで高くはないが、ガッシリとした体型をしていて、筋肉の質も申し分ない。


「ふぅっ……♥」


 新しい自分の姿を改めて確認したことで興奮してしまったせいか、自然とチンポが勃起してしまった。


「おぉ、兄ちゃん♥ 兄ちゃんもゲットした新しい身体を堪能してるみたいだな♥」


 マッチョな中年親父──、冴島が俺の姿を見て嬉しそうに話しかけてきた。


「はい……♥ 最高ですよ、この身体は♥♥ あなたの身体もエロくて最高です……♥♥」


 俺はそう答えると、彼のチンポをそっと掴んでやった。「んっ♥」と小さな声を上げながら身を捩じらせ、彼が期待に満ちた目でこちらを見つめてくる。


「兄ちゃんの手、ゴツゴツして気持ちいいぜ♥ んぉっ♥♥お゛っ♥ またケツ穴が疼いてきやがった♥ さっきまで女子中学生だったっつーのに、この俺が妻子持ちの毛むくじゃらのオッサンになっちまうなんてな……。マンコは無くなっちまったが、ケツでチンポ咥えられるし、なんつってもこのチンポってやつが最高に気持ちイイから別にいいんだがよ。……なぁ、兄ちゃん♥ さっきみたいに、また俺と一緒にキモチヨクなろうぜ♥♥」


 彼がそう言いながら俺の手を握り返すと、俺たちはそのまま二本のチンポを兜合わせし始めた。


「あぁ……、気持ちいい……♥♥」


 他人のチンポと兜合わせするのは初めてだったが、その快感は想像以上だった。互いの亀頭が擦れ合うたびにゾクゾクとした感覚が背筋を駆け上り、脳天まで突き抜けるような快楽に襲われる。彼の剛直がビクビクと脈打つのを手の平に感じるたび、俺の鼓動も興奮で加速していった。どんどん身体が熱を帯びていき、息が荒くなっていく。

 頭の中に、さっきまでの【吉岡遼介】の記憶が流れ込んでくる。どうやらこの男は、かなりのエロ好きだったらしい。見た目の良さを利用して、女性ともいろいろ遊んでいたようだ。だが、これからは俺の好き勝手にできる。これほどの肉体だ。マッチョな男を好むゲイの男たちも放ってはおかないだろう。今日この日からは、この男の肉体で遊び放題だ。


「「くぅっ……、イクッ、イックゥッッ♥♥」」


 あっという間に絶頂に達し、俺たちの新しいチンポから大量のザーメンが噴出した。勢いよく飛び出したそれが、互いの腹筋を白く汚していく。あぁ……♥ なんて気持ちいいんだ……♥♥


 俺たちはハァハァと息を荒げながら、最後の一滴まで互いの肌に己の子種をぶっかけた。



 ──借り“者”競争。この学校で年に一度行われる特別行事。それは運動会の一項目を思わせるような名称でありながら、実際は学校内に数人いる学力・体力の劣った生徒たちを口減らしする行事であった。毎年、借り“者”競争を行う前に特殊なアイテムを使用し、肉体的に優れた人間を呼び寄せ、生徒たちに彼らの肉体を奪わせる。その結果、【落ちこぼれ】と呼ばれていた生徒たちは、新しい【自分】へと生まれ変わることができ、学校側は未熟な生徒たちを学校から追い出すことができるという仕組みだ。


 今年もまた例年通り、この借り“者”競争によって数人の生徒たちが巣立っていく。ゴールテープを切り、たくましい男たちの肉体を我が物にした彼らは、新しい身体を堪能するべく、その鍛え上げられた身体を重ね合い、乱れ合うのだった。


(了)



以下、差分イラストです









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Comments

黒竜Leo

こんな素敵な借り者ゲーム、何回でも参加したい!!

くろねこ@9605

入れ替わりかと思ったら融合で、融合かと思ったら乗っ取りで、最後までどうなるのかドキドキしつつ、しっかりとエロくて、とても良かったです! 個人的には冴島さんの中身が女の子になったせいで、女の子みたいに媚びたり喘いだりするところが倒錯的で、興奮しました!

ムチユキ

ありがとうございます! 乗っ取られたあとの冴島さんは、妻子の前や職場では今までどおり雄臭さをプンプン放ち続けますが、吉岡さんや好みの男の前では、メスになって股を広げちゃう男(女の子)になってしまいました 笑

ヒトシ

初めまして、投稿お疲れ様です、土方の筋肉おじさんの裸足の足の裏も見れて最高です!

ムチユキ

初めまして、コメントありがとうございます。励みになります! 土方おじさんの足裏いいですよね!