イラストなんてなくても生きていける・・けど (Pixiv Fanbox)
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ここのところ石油王用の記事を書いてて支援者全体記事がなかったことに気づいて慌てて記事を更新しています。
今日は「なぜこのご時世にイラストで商売をしているのか」という話をします。
イラストってなくったって生きていけるじゃないですか。衣食住さえあれば人は生きていけます。正直に言うと、この商売を始める5~6年前は「イラストってそもそも必要?」って聞かれると、昔は「まあ・・癒やし?ペットみたいなもんじゃない?」くらいの答えしか持っていませんでした。
サルトルって作家、皆さんご存知ですか? その人がノーベル賞贈られるときに辞退したんです。なんて言って辞退したかというと、「飢えた子供の前では文学は無力である」そう言ったんですよ。それ聞いたときは「本当だよな」って笑
この商売やってていいのか、と思いましたもの。やってちゃいけないんじゃないか、環境問題の解決(笑)とか、AIを使ったサービス立ち上げるとかもうちょっと社会に有益なことをやらなきゃいけないんじゃないかなとか。
・・で、知ってる人も多いと思うんですが、昔メガネ屋の二階で「徒浪」ってイベントしたんですね。全てがいい加減で、あまりの運営のダメっぷりに見かねたお客さんが列整理したりという、学際みたいなイベントでした。
#学際でももっとマシだね。
そしたらなんか、会場内で小学生くらいの女の子が、こっちに話しかけたそうにずーっとまごまごしてて。挙動不審な感じで行ったり来たりしてたんです。
「なんか変だな」と思ってパッと「なんでした?」って話しかけたら、その女の子が突然泣きだしたんですよ、ぼろぼろぼろぼろね。それで腰が抜けそうになっちゃって、座り込んじゃったんです。
ぽたぽたぽたぽた服の上に涙が落ちてる。落ち着かせて聞いてみたら「桜もよん先生の熱狂的なファンでその絵を生で見たくて」って。県外からお母さんと来てたんです。デジタルアートなのに「生で」っていうのも変な話ですが、少女にとってはSNSで高速で消費され、扱いが軽くなりガチなイラストに対して、「質量を持った作品」のことを「生」と表現したんだろうと思います。
これがその作品
遡ること数ヶ月前。
「名古屋のイベント(徒浪)」にどうしても行きたいという女の子に対して、「勉強頑張っていい成績をとったら行っていいよ」ってお母さんが約束して、その子は本当に頑張ってテストでいい成績をとっちゃった。お母さんに聞いたら「本当に我が娘なの?」と、びっくりするくらいいい成績だったそう。そしてイベントに来てくれた。あまり友だちはいなくて絵を描くことだけが大好きだった。少女が神のように崇める桜もよんさんに会うために、苦手だった勉強を何ヶ月も頑張った。
桜もよんさんに渡そうと持ってきたポストカードには手描きで絵守未來の絵が描いてありました。
そこに、小さな女の子の物語があったんですよね。
で、そうか、絵っていうのはこんなふうに人の心を動かすことがあるんだ。だからイラストの仕事をしててもいいんだ。飢えた子供を救うことはできないけれど、心が飢えた子供は救えるかもしれない、心が飢えた人は救えるかもしれない。創造物って皆そうなんです。映画がある、音楽がある、絵がある。いろんな表現物がありますよね。
そういう表現物ってやっぱり私の人生の中でも「この音楽があってよかったな。あの音楽に救われたな。」と思った瞬間が何回もあります。
「この絵があってよかった。自分はこの絵があったんで救われた」と思ってもらえるような絵を作れればいいと思います。人は、心が飢えたときに、ちゃんと癒やす方法を持っているんです。それは大事にしましょう。
絵っていうのはそうやって大事にするものなんです。絵が何かって考える必要なんかないです。絵は大事なものです。映画も大事なものです。音楽だって大事なものです。みんな、いつどれだけ力を与えてくれるかわからない大事なものだろうと思います。
実際は絵なんて、生きるためにはいりません。映画だって音楽だっていらない。人間が生きていくためには、水や塩、米があれば十分。
でもここの皆さんなら誰にも「あの本に救われた」とか「あの映画に励まされた」「あの絵にぐっときた」という経験があるでしょう。絵や映画、音楽といった表現物は、そういうもの。命を維持するためにはいらないけれども、人間が人間であるために必要なものだと思っています。
絵によって経験する圧倒的な感動や喜びを私たちは「エクスタシー」と定義しています。
作品を作り、TwitterやFANBOXで発表し、ストアで製品として販売する。これらはすべてエクスペリエンス。「体験」です。
2023年。私たちは体験の先にある「圧倒的な気持ちよさ」、エクスタシーを大切にしていこうとしています。
絵画の色彩や構図、テクスチャー、絵師さんの筆致によって生み出される美的な表現は、観る人に強烈な感情や没入体験をもたらすことがあります。観る人は作品の世界に没入し、その瞬間のみに集中する。日常の煩わしい考えから解放され、心身ともにリラックスします。
特に個性豊かな絵師さんの作品は、観る人に新しい世界観を楽しませてくれます。その世界観に酔いしれるように没頭することで、観る人は一時的に現実を忘れられるエクスタシーを経験できます。心が奪われ、感動に包まれたその時間は、観る人にとって特別な体験となります。精神的にも肉体的にもやわらげる圧倒的な感覚に満ちたその瞬間が、絵の鑑賞によって得られるエクスタシーなのです。
観る人が作品の世界に没入することで得られるエクスタシーは、単なる一時的な楽しみにとどまりません。作品の持つ芸術的価値や、絵師さんの表現したテーマやメッセージを理解しようとする取り組みは、観る人自身の精神的成長にもつながります。新しい世界観に触れることで、自分自身や周りの世界についての認識が広がり深まります。また、絵師さんや作品が表現する人生観や価値観に共感することで、観る人の人生の在り方にも影響を与えます。
絵の鑑賞によって得られるエクスタシーの効果は一時的であるものの、そこから得られる気づきや学びは持続的です。作品を通して得た新しい価値観は鑑賞者の中にしみ込み、その後の生活に影響を与えていきます。その意味で、作品の鑑賞は単なる楽しみの追求にとどまらず、人生を豊かにしてゆく上で重要な意味を持つと考えています。
私たちは今後も「圧倒的な気持ちよさ」をテーマに絵師さんとこれまで以上に緊密に連携しながら作品を作り、そして作品を持続的に鑑賞できるような製品をつくり続けていく予定です。
PS
エピソードに登場したのは弊アルバイトのゆめかです。当時は中学生でした。いまでは立派な大学生になりました。人の目を見て話せず、言葉が出てこなくて泣くことしか出来なかった少女は、今ではイベントの際にはにこやかに押し売りができるまでになりました。すごい。