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海凪です。いつもご支援いただき誠にありがとうございます。

今回はあるイラストの製作についての解説というか所感というか、描くにあたっての思考過程について、「今はこんなふうにカラーイラストを描いてる」という備忘録も兼ねて書きます。

今回はこちらのイラストについて解説します。


Twitterでは特に好評をいただき、イラストのなかでも圧倒的な数のインプレッションをいただくことができました。


デジタルでイラストを描き始めて今年で10年、フリーのイラストレーターとして活動し始めてからは2年になります。しかし、厚塗り〜水彩系の作風は大して変わらないのに描き方や製作ステップを何度も何度も変え、描画方法が定まらないまま悶々とした日々を過ごしておりました。

仕事をするうえで、再現性というのは非常に重要です。唐突ですが、就職活動ってありますよね。いわゆる就活における人事側の判断基準の一つと言われているのが、再現性です。成功談をどれだけ並べ立てたところで、「どうやって成功までたどり着いたか」を本人が自覚し理解できていないと、恒常的に成果を生み出すことはできません。

少し横道に逸れましたが、今回の投稿は現在の「再現性のある方法」を忘れないための備忘録でもあります。そのため、この方法やセオリーが絶対不変のメソッドであるといものではなく、ただ現在時点での思考過程を残したメモ書きであるとういうことをご了承ください。

今回の製作方法を用いて描いたのはちょうど"mass production"というイラストからです。

正確にはC98新刊作業中から用いました。

この方法は

・可能な限り短い時間で

・人目を引き評価される作品を

・高い品質で

という3点を担保しながらできるレシピを模索した結果でした。

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前置きが長くなりました。

まずこちらがカラーラフです。


タイトルでも申し上げましたが、この時点で結果は9割決まります。

この時点で一旦Twitterのテスト用アカウントにアップしてみて客観的に自分のイラストを見ます。

ここで微妙なものはどれだけ時間をかけて作っても微妙なインプレ結果しか得られません。

なぜなら「カラーラフでの見た目≒パッと見た人に残るイラストの印象」だからです。

そしてあくまでこれは私のケースですが、ラフでワクワクできるものでないとその後の作業に気分が乗りません。そんなものを+10〜20時間かけて仕上げきっても時間の無駄です。保存して新規キャンバスを開き、新しいラフを切りなおします。

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では実際の作業の流れです。

〜カラーラフまで〜

①コンセプト決め

②構図ラフ

③線ラフ

④基本色着色

⑤ライティング

〜清書〜

⑥描き込み

⑦線画

⑧パーツごとに色分け

⑨着色

⑩仕上げ

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(この子に運転させたい、ベントレーのきれいな内装を描きたい…)

①コンセプト決め

A.描きたいもの→B.どう見せるか

ほとんどはこの順序で決めます。

私の場合ですが、描きたいものは机の前で焦りながら出るものでは決してありません。

なのでAだけに関しては、普段の生活をする中で出します。散歩中とか、買い物中とか、趣味の時間とか、お風呂とか、映画を観たあとや本を読んだあと、SNSをしたり友達と飲んだり、そんな普段の何気ない時間の中で組み立てられたりするものです。

思いついたら逐一スマホのメモに残します。投稿時のキャプションまで思いついているものはTwitterの下書きに投げたりしてます(アプデ時に消えたりするので気をつけてください)。その中で固まり始めたものから形にしていきます。


②構図ラフ

先述の「B.どう見せるか」はこの段階になります。机に向かい、新規キャンバスを開きます。こういう見せ方がいいかな、いや違うな、こうしよう、といった検証作業の繰り返しをします。ザクザクとやっていきます。使用している筆は「フラット」で、5年くらい主力の筆です。「A.描きたいもの」のイメージが曖昧であればあるほど、この構図ラフでかなり苦労しますし、構図ラフで実際に描いてみると描きたいものが変わってしまったりすることもありますが、このイラストではほぼ迷いなく描き上げました。

余談ですが横長キャンバスサイズはTwitter横長サムネイルと同じ9:16です。せっかくサムネで全体を見せられるのに微妙に見切れたりバランスが崩れるのがイヤなのです…


③線ラフ

構図ラフの不透明度を10〜20%くらいに下げ、別レイヤーで線ラフを描いていきます。

不透明度を若干下げたデフォルトGペンかデフォルトの鉛筆、筆の大きさはグッと細くなり15〜17pix(350dpi)くらいです。昔はよく太いペンサイズで線ラフを雑にやってたのですが、色ラフで印象を判断するので苦労を後回しにしないようにしてます。(それでも他の方よりは多分かなり荒い方だと思います…)


④基本色着色

線ラフとは別にレイヤーを作り、ベースとなる色で塗り潰します。

ほとんどの場合、影色のベースとなりうるこのあたりの青色です。

そこからざっくり塗っていきます。ここでも「フラット」を使っています。私は一発で適した色を出せないのでそれぞれのパーツの固有色(肌は肌色、木は茶色くらいの感覚)を明度明るめで選択して、ベース色と重ねていく…といった方法です。デジタルならではですが、油絵の描画技法にも近いと思います。

この段階ではほとんど着色レイヤーを分けません。背景、車、人物の3枚程度です。

直感的に描くので、レイヤーを往復するのがストレスになってしまうのです。

⑤ライティング

リニヤライトレイヤーでライティングしていきます。昔はよく覆い焼きでライティングしていたのですが、現在の画法でライティングに最も適しているのはリニヤライトとの結論に至りました。

ライティングは非常に重要です。作風にもよりますが、背景ありのシーンイラストの場合

見せたい部分を絞り、がっつり明暗を分けた方が様になります。見せたい部分にだけ光を当てれば良いのです。このイラストの場合は「人物」と「細かい金属パーツが美しいベントレーのセンターコンソール」です。ホワイトバックの人物メインの場合、グラビア撮影のようにレフ板があることを想定して全体的にライトを当てています。


この段階では「フラット」を使っています。どうだ明るくなったろう。


さらにぼんやりした発光表現をリニヤライトで別レイヤーを作り、デフォルトの「柔らかいエアブラシ」で重ねていきます。


金属部分には加算レイヤーに不透明度を下げたデフォルトGペンで光沢を描き込んでいきます。

この段階でカラーラフは完成です!

ぱっと見のイメージは完成したものとほぼ同じですよね。

次回は続きの清書⑥〜⑩について解説いたします。

次回更新は来週6月28日(日)14時予定です。

ご質問等あればお気軽にメッセージください!

ありがとうございました。

海凪コウ

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