【制作日誌】配信のこと 2021.03.08 (Pixiv Fanbox)
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少しセンシティブな話をします。
ナイツカレッジのリリースに関して「失敗したな~」と思うことがいくつかあって、
そのうち最大のものが「最初に配信範囲を広げすぎたこと」でした。
後から配信制限をかけることになるのですが、かなりの反発を招いたので、
最初から一章制限にしておくべきだったと後悔しています。
後出しで制限したことに関しては完全に僕が悪いですが、
じゃあなぜ制限したのか、ということについてお話していきます。
最初は「セーフモードをONにしていれば全章配信OK」にしていました。
ノベルゲームの配信って、ゲーム体験のほとんどを配信されてしまうので、
制作者側からするとあまり良くないと考えられているのですが、
僕はあくまで善意のつもりで配信許可を出していました。
ところがいくつかの実況動画を見て、ちょっと気になることがあったので、
配信制限をかけることにしたのでした。
どういう動画が気になったのかというと、例えばYouTubeの、
"All CGs of Knights College"というタイトルでCGだけを全てアップしていた動画。
これだけでもちょっとあれなんですけど、
エロ画像はYouTubeに載せられないので健全なCGだけ集めて載せられていて、
「他にもエロシーンのCGがあるよ」ってどこにも書かれてないんですよ。
だからこの動画を観た視聴者の人たちは、
「全部のCG観たし本編はやらなくていいや」って思うのでは?と不安になりました。
なんで"All CGs"とかいう書き方をするんでしょうね。それで全部じゃないのにさ~。
概要欄に「他にもエロシーンがありますよ」って一言書いてくれたらいいのに。
あとよりによってラストのテオをサムネイルにしていたりも。
サムネで思いっきりネタバレしてるんですよ。
こういうとこからも制作側軽視というか、
「ただ視聴者数稼ぎのために利用しただけ」に感じるんですよね……。
それと動画のコメント欄を見ていると、
「動画のアップありがとう。面白いゲームだった!」ってコメントが結構あったんです。
自分でプレイした後なら、他の人のプレイ動画を観るのもいいと思います。
他の人がどういう感じ方をしているのか観察するのも楽しいですしね。
それを否定はしませんし、むしろ僕はゲーム実況のそういう側面はとても好きです。
ただこれ、コメントを見る限り、
初見を動画で済ませてしまう層が結構いるんですよ。
制作側としては、一番最初の初めての体験だけは絶対に自分で遊んでほしいんです。
僕はナイツカレッジを「寮生活シミュレーター」として作っているので、
なるべくみんな自分自身でプレイしてほしいと思っています。
騎士学院に入学して、色んなキャラと交流する。
一度きりの初体験は、動画で他人を観察するのではなく自分で経験してほしい。
それだけでゲームに対する印象、評価、思い入れは全く違ってくると思います。
ゲームに限らず何事も、一番最初の体験が最も強く記憶に残るものです。
ナイツカレッジをどれだけ好きになるかは、
最初に自分でやるか他人のプレイを観るかで全く違ってくると断言できます。
……なのに動画で観ただけで体験した気になっている人が割といて、
それが結構ショックでした。
実況動画でかなり嫌だった部分の一つです。
自分でクリアしてから動画を観るのはいいと思います。
でも初見を他人のプレイ動画で済ませられるのは本当に嫌です。
それと他にもいくつか実況動画を観察してたんですが、
概要欄にSteamストアのページリンクや公式サイトへのリンクを貼ってくれてる動画、
かなり少なかったんですよね。
僕が配信範囲を変更した際、
「実況動画だってゲームの宣伝になってる」って批判が沢山来たんですけど、
じゃあストアページへのリンクを貼ってよ……って思うんですよね。
動画からゲームまで導線が繋がってないのに宣伝してると言われても……。
またゲームリンクを貼っていても18禁パッチの存在が伏せられていたりして、
その場合も「じゃあ動画観ればいいじゃん」と思われてしまうんですよね。
もちろん、中にはちゃんと宣伝してくれてる人もいるんですけどね……。
そういう方たちには申し訳ないことをしたなと思っています。
一律禁止は連帯責任を強いているようで心苦しいのですが、
例外を作るのも手間がかかるし面倒なので……。
動画そのものが宣伝になることも否定はしませんが、
明らかにゲームや制作サイドを軽視した動画を投稿されているのに、
「宣伝になるからまぁいっか」と割り切れるほど、作品への愛着は薄くありません。
というわけで、なんだか嫌な気分になったので配信制限をかけることにしたのでした。
もしみんながナイツカレッジをリスペクトしてくれて、
ゲームの宣伝までちゃんと考えてくれていたら、
たぶん配信制限はかけなかったと思います。
■
ここからは配信制限をかけた後の話です。
ご存知の方も多いと思いますが、海外からかなりの批判・中傷リプを貰いました。
ただ日本国内からは僕の知る限り1つも来てないんですよね。
リプライの意見などを観察していて気付いたのですが、
「配信者」と「クリエイター」の立場が、どうも日本と海外でかなり異なるようです。
日本ではクリエイター>配信者っていうのが一般的な関係だと思うんですよ。
クリエイターが配信範囲を指定したら配信者はそれに従うのが当たり前ですよね。
最近でも動画配信サイトMildomでCygamesや任天堂が配信禁止になりましたけど、
誰も騒ぎ立てずに粛々と従いましたよね。禁止なら仕方ないなって。
ところが欧米・スペイン語圏では全く認識が異なるみたいです。
まず動画配信者というのはコンテンツクリエイターという呼称で存在しており、
ゲーム制作者と対等な立場と考えられているらしいです。
「ゲームを作る人」と「ゲームを動画配信する人」が対等な立場。
だから僕も「配信制限はフェア(対等)じゃない」という批判を沢山受けました。
……でもフェアな関係だというならなおのこと、
ストアページへのリンクやR18パッチについての記述は必要だと思うんですけどね……。
またゲームは全ての範囲を配信できるのが当たり前という考え方が、
向こうでは一般的らしいです。
だから過去に任天堂がストーリー物のゲームを配信制限した時、
欧米・スペイン語圏からとてつもないブーイングと抗議運動が起きて、
配信制限の話は白紙になった(させられた)そうです。
日本とあまりにも文化が違いすぎて、僕は未だに完全には理解しきれません。
中国を始めとしたアジア圏の国はおそらく日本寄りの考えですよね?たぶん。
中国ユーザーからは配信制限について理解を示してもらえましたし。
だからこれは、「アジア圏」と「欧米・中南米圏」との違いだと思うんですけど……。
日本ではゲームを制作するクリエイターがまず最初に存在していて、
ゲーム配信者というのはあくまで、
「コンテンツを使わせてもらっている立場」というのが一般的な考え方ですよね。
ゲーム実況黎明期であるニコニコ動画時代からこの認識はずっと変わらないと思います。
なので欧米の「ゲーム制作者と配信者が完全に同じ立場」という文化は、
共感するのがかなり難しいです。
なるべく理解するようには努めていますが……。
それとスペイン語圏(中南米?)から特に多かったのが、
「配信を禁止されたらゲームを買うお金がない人はどうやって楽しめばいいのか?」
というクレーム。
冗談のように見えますが本当に多かったです。
正直これに関してはさっぱり意味が分かりません。
なぜ僕がゲームを買わない人たちを楽しませなければいけないのか?としか……。
もちろん楽しんでくれることに越したことはないのですが、
それを「当たり前の権利」かのように要求するのは、ちょっとどうかなと思います。
なぜこういう文化が生まれたのかよく分かりません。宗教関連でしょうか?
キリスト教の「貧しい者に施しなさい」という価値観から来てるのかな。
かなり理解しづらい考え方です。
誰か詳しい人がいたら教えてほしいです。
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なんか愚痴っぽくなっちゃいましたね。すみません。
最初に言いましたが僕にも悪いところがあって、そこは反省すべきなのですが、
文化の違いでここまで疲弊するのはちょっと予想外でした。
思ってた以上に、国による認識の差が大きかった。
そんなこんなで、配信に関しては基本的に嫌なことしかなくて、
モチベも集中力も削られてかなりしんどい思いをしました。
次回作は最初から一章のみに制限するつもりです。
その際の「前作の配信範囲拡大」は、今後どんな感じにするか検討します。
なるべくこういうことに意識を割きたくないので、
パッと決めちゃいたいところですね。